王家の影ですので

渡辺 佐倉

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彼が伝えたいことについて ※

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扉の奥が仮眠室なことをカイルはよく知っている。
監視をすべき場所の間取りも知らない、なんてことはない。

一旦部屋を出て誰かと顔を合わせたく無い時その場所は使われる。
そして、そこは数代前好色として有名だった王が王子だったころ女性を引き入れて使っていたという情報は影として知っている。

そこは“そういう”部屋だ。

はぐらかし続けて、あり得ないと考えないようにカイルがしていたことをだったけれど、別に彼は鈍感という訳ではない。
鈍感な人間ができる仕事ではない。
こう話していたから、それと同じことを考えてるに決まっている。そんな感覚で諜報活動も警護もできるわけが無い。

ただ、誰かを陥れることと殺すこと、その二つへの罪悪感にだけに対して鈍感になっているだけだ。

カイルはほんの一瞬だけ彼の後についてこの部屋に入るかを考えた。

逃げることは多分出来る。
王太子殿下はそれを怒るだろうか。

カイルには分からなかった。

昔からのカイルの心の底に残した幼いころ友情は消えてしまうかもしれない。
けれど、影の一人であるカイルを切り捨てまでするかは分からなかった。

それは無いのかもしれないと思った。
命令したくは無いと言っていた。

命令に等しいけれど、これは命令ではない。

カイルはある覚悟を持って仮眠室に入った。

その部屋は王族が使うにふさわしく、しわ一つ無いシーツに清潔な枕、そういう風に室内は整っていた。
けれど部屋はとても薄暗い。

窓が無いからだ。

ばたん、と音をたててドアが閉まると完全にここは密室だった。

外界と切り離された様な場所だとカイルは思った。

ルイスはカイルをベッドのふちに座らせるとひざまずく。
話をするのかと思ったけれど、ルイスの次の行動にカイルは驚く。

ひざまずいたルイスはカイルの靴を丁寧に自らの手で脱がせたからだ。
王族がそのようなことをすべきではないことくらいカイルにだって分かる。

「自分で脱ぎますからおやめください!!」

カイルは思わず悲鳴を上げるように言ってしまった。

「俺がしたいからしてるんだよ。
抵抗しなくても大丈夫だよ。」

そこで王子の一人称が昔の様に俺に戻っていることに気が付く。
臣下の靴を脱がせることはしたいことではない気がする。

「これから俺が何をしようとしているのかは、さすがに気が付いている?」
「まあそれなりには……」

意味もなくベッドに座ったりはしない。
そういうことの練習がしたいなら専門家はいくらでもいる。
カイルの家門にはそういうことを専門に行い情報を引き出すものもいる。

「多分だけどね。俺はこういう時、全部したいタイプなんだよ」

ルイスが言った。
全部がどこまでの事なのかカイルには分からなかった。

カイルは影としての知識として男同士の交わりについて知っていた。
けれど、実技については必要ないという事で習得はしていない。

靴を脱がせたルイスはそのままベッドにカイルを押し倒すと、自分はその上にのしかかり、そのままぎゅうとカイルを抱きしめた。

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