王家の影ですので

渡辺 佐倉

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カイルの考えについて

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「あなたが背負っているものはそんなに簡単に降ろせるものでもないのに」

カイルはそう言った。
逃げてそれで済む様な地位には目の前の人はいない。

冗談で言っている様には見えない。
言う意味もない。

それならいっそ、一緒に心中してくれの方が特別な教育を受けたカイルにとっては楽だった。
何かがあった時、身元がばれないようにしたのち自死を選ぶ。
そういう訓練を受けている。

王家も何かあった時のために“眠り姫の涙”という大層ロマンチックな秘薬を持っていると言われている。
それを使わせないのが王家の影の仕事ではあるが。


無理だとわかっていて提案する。
その真意が読めない。
そもそも何故カイルにそう言っているのかが分からない。

「考え込んでるね。
それは検討してくれているってこと?」

ルイスは言った。
駆け落ちの検討はしていない。

「正直に言って欲しい」

ルイスはカイルに言った。
正直に……。
少し悩んでから本当のことを言うことにした。
今きちんと話せば何らかの納得があって、ルイスは妃候補についてきちんと考えるかもしれないと思ったからだ。

「何故、一緒に心中しようじゃないのかと考えていました」


ルイスはガラスの様な目できょとんとカイルを見た。

それから口をもごもごとさせてから「あなたとなら死んでもいいの」とぽつりと言った。

お妃選びになるとルイスは少しおかしくなる、それ以外は賢王になるだろうと思う行動しかないので、ずっと無視してきたし、今回もカイルはそうした。
カイルは耳がいい。
同じ部屋にいる人間の言葉を聞き漏らすことは無い。

「カイルを死なせたくはないよ。
あと、いまいち何も伝わっていないことが分かった」

それからルイスはじっとこちらを見ていった。

「伝わっていない?」

それはルイスがカイルに何かを伝えようとしていたという事だ。

「言葉が皆命令になってしまう立場になってしまったけれど。
これは命令じゃなくてお願いだ。
抵抗しないで欲しい」

抵抗するなと願われたことは分かった。
何かを伝えようとして、だけど伝わっていないから抵抗してはいけない。

なんだか謎かけのようだと場違いなことをカイルは考えた。
王子は報告書を置いて立ち上がるそれからカイルの手を引いて奥の扉の方へと向かった。
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