王家の影ですので

渡辺 佐倉

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王子の願いについて

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* * *

指示された通り手勢を使ってカイルは伯爵家特に実家の稼業について調べた。

カイルのうちだって周りの人間の知らない“王家の影”という仕事を担っている。
多かれ少なかれそういう裏の顔はあるモノだろう。

けれど、これはいただけないというものが見つかってしまった。
ルイス王太子は恐らく提出された税の報告書などから勘を働かせたのだろう。


王族として必要な嗅覚であり、自分で調べず配下を使うところまで完璧な仕事ぶりだった。

伯爵家は禁制品の輸入に手を染めていた。
これはどうやってもリスクが高すぎて彼女というか、この家門に近しい子女と婚姻を結ぶのは無理だ。
この家門に養子縁組をしてなども不可能だろう。

事の公表がいつになるのか、それに関してカイルは管轄外だ。

ただ、ルイスに報告書を渡し「非常に残念です」というだけだった。

ルイスは、ふうとため息をついた。
候補の女性はまた減ってしまった。

「どうする、おつもりですか?」

多かれ少なかれどの貴族も、その令嬢も叩けば埃がでるものだ。
どこかで妥協せざるを得ない。
今回の様な禁輸品に手を出している家門は論外として、誰かを必ず選ばねばならない。

「なら、いっそ駆け落ちでもしようか?」

ルイスが言った。

「誰とです?」

結ばれぬ身分のものをお望みなのだろうかとたずねる。

「カイルとだよ」


基本、影の名を王家の者は呼ばない。
どこで誰が聞いているのかも分からない。
情報は極力少ない方がいい。

けれど、ルイスははっきりとカイルの名を呼んだ。

質の悪い悪戯にしては度を越している。
そして、王の資質をこれでもかと備えている男の言う事にはとても思えずカイルは少し間を開けてから「……何を御戯れを」としか言えなかった。

けれど、そのカイルの返しに対してルイスは冗談だと笑ってはくれなかった。

カイルはじっとルイスを見つめ返す。
ルイスは何も言わなかった。

カイルは、本来、冗談だと言ってくださいといさめないといけない立場なのに、何も言葉が出ない。


彼は、ルイスは選ばれた素晴らしい女性と婚姻を結ぶ義務のある立場だ。
彼が結婚し、子を産ませる。それでこの国の治世は安定する。

それ以外の道を選べない男だ。


王位継承権のあるものは他にもいるが、ルイスよりも数段見劣りする者だらけだという事は王家の影であるカイルもよく知っていた。
王家に影のように付き従う者。
勿論諜報としてそのように呼ばれるようになったことは事実だが、彼らに常に影のように寄り添っているという事でもある。
もしも王家のものの命が狙われる事態になった場合、その身にかけてお救いするのも仕事だ。

だから、王族たちのことはよく知っている。
最も王にふさわしいのがカイルであるという事も。
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