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2章 学園初等部~
2-36 こういう時に近いと便利ではある
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…‥‥聖国の穏健派、強硬派、過激派‥‥‥正直言って、どれもこれも面倒そうである。
というかそもそも、僕らを巻き込まないでほしいのに、引きずり込もうとするのは誰も彼も人の都合を考えていないせいなのか…‥‥いや、聞いた話だと都合よく解釈する国のようだし、言うだけ無駄であろう。
なので気持ちを切り替えつつ、今回強硬派からの襲撃者が遭ったことを考えると、残った穏健派や過激派が動き出す可能性が高く、また、しょうこりもなく強硬派も動く可能性がある。
ゆえに、警戒を怠らないほうが良いと言われつつ‥‥‥‥
【キュルル!右ストレート、左ストレート!!】
「どわぁぁぁあ!!」
「おべいらぼぅぅる!?」
【糸で引っ掛け、ぶん回し!!】
「ひげぇぇぇ!!」
「遠心力がぁぁぁ!!」
【食指アターック!キュル!!】
「あうっちぃ!?」
「あ、踏まれているようでこれはこれでぇぇぇ!!」
「…‥‥なんか変態が覚醒したような気がするなぁ」
授業中にふと校庭の方を見れば、どうやら武術を学ぶ授業にハクロが紛れている姿を目視出来た。
一応、騎士を目指す人や魔法を極めたい人でも、最終的には己の拳一本になる状況になることがあり、その時のためにある程度の武術を身に付けるという目的で行われている授業なのだが…‥‥そこで今、彼女はちょっと自身を鍛えているようだ。
対人戦を主に行うが、モンスターである彼女が混ざっても、それはそれで普段とは違う形式で相手できるので参加は歓迎されるらしい。
そして、彼女は僕を守るために、自分をちょっとは鍛えようと考えているようで…‥‥現在進行形で、授業内で教員が見せた技を見事に真似をして、自分の体に合わせて改善したものを模擬戦で実践しているようであった。
なお、服装はきちんと前に研究所で身体検査のために動きやすい服装としての体操服であり、それ目当ての下心ありきな奴らもいるようだが、見事にふっ飛ばされている模様。なんとなくスカッとする。
糸を飛ばして巻き付けて投げたり、縛りあげて固定したり、人の足のような食指で蹴り上げるなど、多種多様な格闘術を学び、ものにしているらしい。
…‥‥それでも、少し複雑な気持ちである。僕の方が彼女を守りたいとは思うのに、彼女が僕を守るために動くのはどうなのだろうか。というか、中等部・高等部で授業を受けている人たちや、挙句の果てにはその授業の担当教員も相手になっているのに‥‥‥素早い動きで翻弄し、軽く無双状態なのはどうなのか。
もう彼女一人で十分対応できるんじゃないかなと、僕はそう思ってしまうのであった。
ちなみに、彼女の死角になりそうな背後からの攻撃すらも、蜘蛛部分の糸の射出や体の柔らかさでぐるりと振り返って投げるなどの対応が可能なので、問題は無いみたいだ。
まぁ、蜘蛛のモンスターってガルバンゾー先生や研究所の人達曰く、狩りのプロフェッショナルともいえるらしいし…‥‥基本は周囲の皆を癒すだけのハクロでも、ある程度の戦闘力は保有していたようだ。
絶対に喧嘩したら負けるな‥‥‥‥暴力沙汰になるようなこともないだろうけれども、そこは気を付けよう。
そう思いながらも気が付けば、休憩時間。
【キュルル!!アルス、大丈夫――?】
「大丈夫だよ、ハクロ。流石に学園内じゃ、直ぐに手を出してくる様子もないからね」
【キュル、良かった♪】
先ほどまで校庭の方にいたというのに、瞬時に僕の側にまで接近するハクロ。
無事を確かめるかのようにぎゅっと抱きしめ、甘えるかのように擦り寄ってくる。
…‥‥襲撃の話に関しては、既に教員たちの方へ国から説明はされているようで、現在学園の周辺には帝国の騎士たちが巡回中。
ついでにある程度の間諜たちも各国へ回しつつ、妙な動きが無いかと警戒しているそうだ。
今もまだ、3ヵ国との戦争状態だが…‥‥そちらはそちらで明日辺りには直ぐに決着が付くらしく、被害などもあまりなかったようだが、面倒事をぶっかけてきたという事で厳重な処分を決定。
後は、聖国の動きに関しては目を離さずに監視しており、学園での生活をしていても万が一があればすぐに王城まで逃げるようにという逃走ルートも用意されていた。
一男爵家の子供に対しては過剰すぎるような気がするが、相手の目的などを考えるとこのぐらいで良いらしい。
むしろ、今まで散々迷惑をかけてきている国なので、この機会に徹底的に総入れ替えなどを行って国の中身そのものを変える計画すらも出てきたようだ。
それはそれで、一応大人の話になり、僕らが深くかかわる必要もないのだが…‥‥皇帝陛下とのその話し合いの後に正妃様が来て、話に関してこう告げたことだけは覚えている。
「ああ、あの国のせいなのは分かっているわよ。ええ、夫の心労にもなっているので…‥‥‥ここはもう、ぷちっとしましょう♪」
「う、うむ」
にこやかな笑顔でそう告げる正妃様に対して、皇帝陛下は頷いた。
けれどもそれは、何処か分かったというだけの空気だけではなく…‥‥なんとなく、正妃様から周囲へのすごい圧力が出ていたように思えるのは気のせいだったと思いたい。優しそうな人なのに、何となく鬼が見えたような気がするけれど無かったと思いたい。
ハクロの方は、そんな正妃様に憧れを持っているようで、目をキラキラさせていたが‥‥ハクロの場合だと、圧が無いからなぁ、難しいかも。
いや、前に本当に激怒した時の彼女は、モンスターとしての威圧を出していたような気がするが‥‥‥それでも普段の彼女から見ると、そんなことができるようには見えない。
それはともかくとして、ひとまずは学園内では安心が保証されたが、それでもハクロとしては不安はあるようで、授業が終わればすぐに駆け寄ってくる。
まぁ、ハクロも狙われているので、守る前に彼女に自衛をして欲しいのだが…‥‥この様子だと、多分大丈夫そうだ。
「それでも、事が収まるまで警戒をしないといけないのは、疲れるよねぇ…‥‥ハクロは大丈夫かな?」
【キュル、大丈夫♪私、アルス守る、そのために回り見る!だからこの時間、疲れているなら、私がアルス持って運ぶ!】
持つというよりかは背負うというの方が正しく、ふわふわしている蜘蛛の背中に僕を載せながらそう口にするハクロ。
ぎゅっと拳を握り締め、気合いを入れているようだが…‥‥‥先ほどの戦闘光景を見た後でも、こんな彼女が直接戦う光景が想像しにくいのは何故なのか。
「そうか、守ってくれるのは良いけど、ハクロ自身も大事にしてね。ほら、汗もかいて‥‥‥ないのか」
【このぐらい、平気平気♪】
…‥‥メチャクチャ激しく動いていたのに、人並外れている体力と言うべきか。
いや、こう見えてモンスターだし、人外じみた体力であってもおかしくないのか。納得した。
それでも、彼女が戦うようなことはあってほしくないと思いつつ、そっと猫を撫でるがごとく首のあたりに手を伸ばして書いてあげれば、ふにゃんっと脱力してキュルルゥっと気持ち良さそうな声を彼女はあげるのであった。
やっぱりハクロ、蜘蛛よりも猫よりな気がする。まぁ、可愛いから良いけど…‥‥頭も撫でてあげればすりすりと擦り寄って来るし、これはこれで癒されるなぁ‥‥‥‥
【キュルゥ♪キュル♪キュルル♪アルス、もっと撫でてー♪】
「あ、もうそろそろ授業なんだけど‥‥‥‥ギリギリまでなら良いか」
…‥‥アルスがハクロに癒されていた丁度そのころ。
フキマリア聖国のとある一室にて、その人物は報告を聞いていた。
「ショコラリア王国、ヘルン王国、ベルバラン王国‥‥‥敗戦濃厚ですか。いえ、元より期待していなかったので、それはそれでどうでもいいでしょう」
「そうですな。こちらのそれぞれの派閥が動くために、わざわざ陽動するためだけの囮になってもらっただけですが‥‥‥」
「報告では、強硬派の一部が帝国に人を出し、警戒態勢を高めたようなので、これがこれで失敗なのは想定内ですね」
聖国の中央部に建てられた巨大な神殿。
その神殿内に設けられた会議室内では、上層部の者達が集まり合って話していた。
各自、それぞれ派閥は違えども国を担う者たちとしての身分は同じであり、争う事はあるのだがそれを表に出さずに報告に耳を向ける。
「しかし、帝国の方で間諜たちの動きが、想定以上に迅速になっているのが厄介ですね。これもまた、話に出ていた白き蜘蛛の姫が原因でしょうか?」
「そうなるだろう。モンスターは絶対悪であるべき存在なのだが…‥‥報告にある姿絵だけでも人を惑わすような容姿をしているのを活かしているようだからな」
苦々しそうに彼らは語るが、人のその気持ちの部分はどうにもできない問題。
彼らがいかにモンスターは絶対悪であるという教義を持っていたとしても、人としての欲望はまた別というようなものであり、自分のものにしたいという想いがある。
だからこそ、ハクロに対することは「白き蜘蛛の姫」と呼ぶことによってモンスターである部分をごまかしつつも、ハクロがいるからこそ間諜たちの動きが早くなっていることを理解しているのだ。
「そしてその姫の飼い主と言う少年は、我々の生み出した呪いで、解呪できないはずの物を、いともたやすく解呪できる薬の精製‥‥‥情報では、その他にもあるようだが、医薬関係などに欲しいな」
「白き蜘蛛の姫も、元をただせば癒すモンスターらしいからね。ああ、その力をどうにかして手にいれたいなぁ」
そう語り合いつつも、各自の派閥を彼らが制御し切れるわけでもない。
どこかで勝手に暴走されて、動かされればそれだけでも各々が立てた計画が狂ってしまうのである。
ならば最初から一致団結しておけよというツッコミが出そうだが、言えないのは彼らもまた身勝手であり、誰が自滅しようがどうでもよく、自分さえよければすべて良しというスタンスをとっているからだろう。
「何にしても、穏健派に過激派はもうそろそろ動く。強硬派も一度は失敗したとはいえ、それで諦める気は無いな?」
「無いだろうな。とは言え、少し手を変えて…‥‥場合に寄っては混ざるだろう」
「そうなる可能性もあるしなぁ。そもそも強硬派自体が中途半端な部分だからこそ、どちらかに混ざってもおかしくは無いか」
平行線をたどりつつも、動き出すのは目に見えている。
だからこそもっと上を目指すためにも、己の欲望をすべて満たすためにも、すべての動きを見なければならないだろう。
「とりあえずは、他の動き次第か‥‥‥‥」
その言葉を最後にして、その集まりは解散するのであった…‥‥‥
というかそもそも、僕らを巻き込まないでほしいのに、引きずり込もうとするのは誰も彼も人の都合を考えていないせいなのか…‥‥いや、聞いた話だと都合よく解釈する国のようだし、言うだけ無駄であろう。
なので気持ちを切り替えつつ、今回強硬派からの襲撃者が遭ったことを考えると、残った穏健派や過激派が動き出す可能性が高く、また、しょうこりもなく強硬派も動く可能性がある。
ゆえに、警戒を怠らないほうが良いと言われつつ‥‥‥‥
【キュルル!右ストレート、左ストレート!!】
「どわぁぁぁあ!!」
「おべいらぼぅぅる!?」
【糸で引っ掛け、ぶん回し!!】
「ひげぇぇぇ!!」
「遠心力がぁぁぁ!!」
【食指アターック!キュル!!】
「あうっちぃ!?」
「あ、踏まれているようでこれはこれでぇぇぇ!!」
「…‥‥なんか変態が覚醒したような気がするなぁ」
授業中にふと校庭の方を見れば、どうやら武術を学ぶ授業にハクロが紛れている姿を目視出来た。
一応、騎士を目指す人や魔法を極めたい人でも、最終的には己の拳一本になる状況になることがあり、その時のためにある程度の武術を身に付けるという目的で行われている授業なのだが…‥‥そこで今、彼女はちょっと自身を鍛えているようだ。
対人戦を主に行うが、モンスターである彼女が混ざっても、それはそれで普段とは違う形式で相手できるので参加は歓迎されるらしい。
そして、彼女は僕を守るために、自分をちょっとは鍛えようと考えているようで…‥‥現在進行形で、授業内で教員が見せた技を見事に真似をして、自分の体に合わせて改善したものを模擬戦で実践しているようであった。
なお、服装はきちんと前に研究所で身体検査のために動きやすい服装としての体操服であり、それ目当ての下心ありきな奴らもいるようだが、見事にふっ飛ばされている模様。なんとなくスカッとする。
糸を飛ばして巻き付けて投げたり、縛りあげて固定したり、人の足のような食指で蹴り上げるなど、多種多様な格闘術を学び、ものにしているらしい。
…‥‥それでも、少し複雑な気持ちである。僕の方が彼女を守りたいとは思うのに、彼女が僕を守るために動くのはどうなのだろうか。というか、中等部・高等部で授業を受けている人たちや、挙句の果てにはその授業の担当教員も相手になっているのに‥‥‥素早い動きで翻弄し、軽く無双状態なのはどうなのか。
もう彼女一人で十分対応できるんじゃないかなと、僕はそう思ってしまうのであった。
ちなみに、彼女の死角になりそうな背後からの攻撃すらも、蜘蛛部分の糸の射出や体の柔らかさでぐるりと振り返って投げるなどの対応が可能なので、問題は無いみたいだ。
まぁ、蜘蛛のモンスターってガルバンゾー先生や研究所の人達曰く、狩りのプロフェッショナルともいえるらしいし…‥‥基本は周囲の皆を癒すだけのハクロでも、ある程度の戦闘力は保有していたようだ。
絶対に喧嘩したら負けるな‥‥‥‥暴力沙汰になるようなこともないだろうけれども、そこは気を付けよう。
そう思いながらも気が付けば、休憩時間。
【キュルル!!アルス、大丈夫――?】
「大丈夫だよ、ハクロ。流石に学園内じゃ、直ぐに手を出してくる様子もないからね」
【キュル、良かった♪】
先ほどまで校庭の方にいたというのに、瞬時に僕の側にまで接近するハクロ。
無事を確かめるかのようにぎゅっと抱きしめ、甘えるかのように擦り寄ってくる。
…‥‥襲撃の話に関しては、既に教員たちの方へ国から説明はされているようで、現在学園の周辺には帝国の騎士たちが巡回中。
ついでにある程度の間諜たちも各国へ回しつつ、妙な動きが無いかと警戒しているそうだ。
今もまだ、3ヵ国との戦争状態だが…‥‥そちらはそちらで明日辺りには直ぐに決着が付くらしく、被害などもあまりなかったようだが、面倒事をぶっかけてきたという事で厳重な処分を決定。
後は、聖国の動きに関しては目を離さずに監視しており、学園での生活をしていても万が一があればすぐに王城まで逃げるようにという逃走ルートも用意されていた。
一男爵家の子供に対しては過剰すぎるような気がするが、相手の目的などを考えるとこのぐらいで良いらしい。
むしろ、今まで散々迷惑をかけてきている国なので、この機会に徹底的に総入れ替えなどを行って国の中身そのものを変える計画すらも出てきたようだ。
それはそれで、一応大人の話になり、僕らが深くかかわる必要もないのだが…‥‥皇帝陛下とのその話し合いの後に正妃様が来て、話に関してこう告げたことだけは覚えている。
「ああ、あの国のせいなのは分かっているわよ。ええ、夫の心労にもなっているので…‥‥‥ここはもう、ぷちっとしましょう♪」
「う、うむ」
にこやかな笑顔でそう告げる正妃様に対して、皇帝陛下は頷いた。
けれどもそれは、何処か分かったというだけの空気だけではなく…‥‥なんとなく、正妃様から周囲へのすごい圧力が出ていたように思えるのは気のせいだったと思いたい。優しそうな人なのに、何となく鬼が見えたような気がするけれど無かったと思いたい。
ハクロの方は、そんな正妃様に憧れを持っているようで、目をキラキラさせていたが‥‥ハクロの場合だと、圧が無いからなぁ、難しいかも。
いや、前に本当に激怒した時の彼女は、モンスターとしての威圧を出していたような気がするが‥‥‥それでも普段の彼女から見ると、そんなことができるようには見えない。
それはともかくとして、ひとまずは学園内では安心が保証されたが、それでもハクロとしては不安はあるようで、授業が終わればすぐに駆け寄ってくる。
まぁ、ハクロも狙われているので、守る前に彼女に自衛をして欲しいのだが…‥‥この様子だと、多分大丈夫そうだ。
「それでも、事が収まるまで警戒をしないといけないのは、疲れるよねぇ…‥‥ハクロは大丈夫かな?」
【キュル、大丈夫♪私、アルス守る、そのために回り見る!だからこの時間、疲れているなら、私がアルス持って運ぶ!】
持つというよりかは背負うというの方が正しく、ふわふわしている蜘蛛の背中に僕を載せながらそう口にするハクロ。
ぎゅっと拳を握り締め、気合いを入れているようだが…‥‥‥先ほどの戦闘光景を見た後でも、こんな彼女が直接戦う光景が想像しにくいのは何故なのか。
「そうか、守ってくれるのは良いけど、ハクロ自身も大事にしてね。ほら、汗もかいて‥‥‥ないのか」
【このぐらい、平気平気♪】
…‥‥メチャクチャ激しく動いていたのに、人並外れている体力と言うべきか。
いや、こう見えてモンスターだし、人外じみた体力であってもおかしくないのか。納得した。
それでも、彼女が戦うようなことはあってほしくないと思いつつ、そっと猫を撫でるがごとく首のあたりに手を伸ばして書いてあげれば、ふにゃんっと脱力してキュルルゥっと気持ち良さそうな声を彼女はあげるのであった。
やっぱりハクロ、蜘蛛よりも猫よりな気がする。まぁ、可愛いから良いけど…‥‥頭も撫でてあげればすりすりと擦り寄って来るし、これはこれで癒されるなぁ‥‥‥‥
【キュルゥ♪キュル♪キュルル♪アルス、もっと撫でてー♪】
「あ、もうそろそろ授業なんだけど‥‥‥‥ギリギリまでなら良いか」
…‥‥アルスがハクロに癒されていた丁度そのころ。
フキマリア聖国のとある一室にて、その人物は報告を聞いていた。
「ショコラリア王国、ヘルン王国、ベルバラン王国‥‥‥敗戦濃厚ですか。いえ、元より期待していなかったので、それはそれでどうでもいいでしょう」
「そうですな。こちらのそれぞれの派閥が動くために、わざわざ陽動するためだけの囮になってもらっただけですが‥‥‥」
「報告では、強硬派の一部が帝国に人を出し、警戒態勢を高めたようなので、これがこれで失敗なのは想定内ですね」
聖国の中央部に建てられた巨大な神殿。
その神殿内に設けられた会議室内では、上層部の者達が集まり合って話していた。
各自、それぞれ派閥は違えども国を担う者たちとしての身分は同じであり、争う事はあるのだがそれを表に出さずに報告に耳を向ける。
「しかし、帝国の方で間諜たちの動きが、想定以上に迅速になっているのが厄介ですね。これもまた、話に出ていた白き蜘蛛の姫が原因でしょうか?」
「そうなるだろう。モンスターは絶対悪であるべき存在なのだが…‥‥報告にある姿絵だけでも人を惑わすような容姿をしているのを活かしているようだからな」
苦々しそうに彼らは語るが、人のその気持ちの部分はどうにもできない問題。
彼らがいかにモンスターは絶対悪であるという教義を持っていたとしても、人としての欲望はまた別というようなものであり、自分のものにしたいという想いがある。
だからこそ、ハクロに対することは「白き蜘蛛の姫」と呼ぶことによってモンスターである部分をごまかしつつも、ハクロがいるからこそ間諜たちの動きが早くなっていることを理解しているのだ。
「そしてその姫の飼い主と言う少年は、我々の生み出した呪いで、解呪できないはずの物を、いともたやすく解呪できる薬の精製‥‥‥情報では、その他にもあるようだが、医薬関係などに欲しいな」
「白き蜘蛛の姫も、元をただせば癒すモンスターらしいからね。ああ、その力をどうにかして手にいれたいなぁ」
そう語り合いつつも、各自の派閥を彼らが制御し切れるわけでもない。
どこかで勝手に暴走されて、動かされればそれだけでも各々が立てた計画が狂ってしまうのである。
ならば最初から一致団結しておけよというツッコミが出そうだが、言えないのは彼らもまた身勝手であり、誰が自滅しようがどうでもよく、自分さえよければすべて良しというスタンスをとっているからだろう。
「何にしても、穏健派に過激派はもうそろそろ動く。強硬派も一度は失敗したとはいえ、それで諦める気は無いな?」
「無いだろうな。とは言え、少し手を変えて…‥‥場合に寄っては混ざるだろう」
「そうなる可能性もあるしなぁ。そもそも強硬派自体が中途半端な部分だからこそ、どちらかに混ざってもおかしくは無いか」
平行線をたどりつつも、動き出すのは目に見えている。
だからこそもっと上を目指すためにも、己の欲望をすべて満たすためにも、すべての動きを見なければならないだろう。
「とりあえずは、他の動き次第か‥‥‥‥」
その言葉を最後にして、その集まりは解散するのであった…‥‥‥
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