転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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2章 学園初等部~

2-35 墓穴は掘るのだろうか

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‥‥‥帝都内の襲撃事件。

 何とか難を逃れて逃げ延び、王城の方へ報告しに向かったが、どうやら既に皇帝陛下たちの方では把握し切ったようで、到着した時には捕縛の連絡が入っていた。

「帝国の情報網の方が早いなら、襲われる前にどうにかして欲しかったね」
【キュルゥ‥‥‥】

 とはいえ、襲われた事実があるのは変わらず、しかもその対象が僕とハクロ。

 何故狙ったのかという事を吐かせるには一日ほどかかるそうで、とりあえずは第2第3の襲撃の可能性も考え、一時的にだが王城の方に避難させてもらえることになった。

 学園の寮も警備はあるのだが、それよりもはるかに厳重な王城の方が良いと判断されたらしい。

 男爵家に過ぎない子供とそのモンスターがそんな簡単に王城で保護されていいのかと思うのだが‥‥‥まぁ、今回の相手がどうも王城の方では心当たりがあるらしく、厄介さを考えると許可されたようだ。

 そして保護された翌日に、予想よりも早く襲撃者たちが自白をしてくれたらしく、皇帝陛下に呼び出されて謁見室で話を聞けば…‥‥


「…‥‥予想通りというか、そちらを狙った輩の正体が分かった」
「どこの誰だったのでしょうか?」
「聖国‥‥‥いや、聖なる国と自称している『フキマリア聖国』の者たちだ」

―――――――――
『フキマリア聖国』
フキマリア教という宗教を国教にしており、周辺諸国へ信仰するようにと働きかける国。
何かと自分たちの信仰するフキマリアという神を出して口出しする煩い国でもあるが、呪いの解呪や最先端の治療など、医学や呪術に関しては帝国すらも凌駕するほどである。
ゆえに、何か呪いなどにかかった際にはある程度の金を積みさえすればどんなものであっても解決してみせると言っているほどである。

『フキマリア教』
この世界の宗教は各自自由だが、その中でもこのフキマリア教は聖国だけで信仰されている物。
フキマリアという神を崇め奉りつつ、モンスターを絶対悪として、その神のためにも常日頃発展を目指すべしという教義がある。
ただし、それだけなら研鑽を積めばいいだけの話のように思えるのだが、上層部の方が腐敗しているという話があり、曲解によって初期のころとは比べようのないほどひどい状態になっている。

―――――――――

「‥‥‥どうやら、その聖国のトップが狙っていたようだ。今回の戦争もこの行動を起こすための囮であったとも自白していたぞ」

 三ヵ国による一斉宣戦布告だが、どうやら裏で聖国が動いていたらしい。

 何かと弱みを握っているのもあるようで、その弱みを利用して戦争を引き起こさせ、勝っても負けてもいいから囮として注目を集め‥‥‥その隙に、僕らを帝国から拉致しようと企んでいたようだ。

 でも、それでなぜ僕らが狙われるのか?

「答えはすごく単純だった。解呪できる能力に、癒しの力を持つモンスター…‥‥両方とも、聖国が狙うに値するのだ」

 聖国は医学や呪術に長けている国だが、それでもまだまだ発展を目指しているらしい。

 しかもその発展が、普通に自己研鑽に励むとか世のため人のため世界平和のためとかならまだ良かったのだが……質の悪いことに教義がどこかで曲解されたらしく、自分達の利益を、欲望をより満たすためにも何もかもを高めようというものになって、腐敗を蔓延させたようだ。

 そんなありさまゆえに周辺諸国で信仰するものもいないのだが、おかしい状態なのをおかしいとは気が付けない人たちでもあるようで、色々な強硬手段をとるらしい。

「その中でも、先日の第1皇子の解呪の話を耳にしたようだ。情報統制によって洩れていなかったはずだが、どうやらその呪いの根源こそが聖国の関係者だったらしく、解呪による呪い返しによって知ったらしい」
「あー…‥‥それで、僕らの事を聞いたのか」

 そう言えば、先日第1皇子が呪われたという話があったのだが…‥‥諸悪の根源を辿ってゆくと、フキマリア聖国にたどり着いたらしい。

 解呪はお手の物と謡っておきながら、自分達で呪術の研究もしていたからこそ作れた強力な呪いであり、作ったはいいものの解呪不可能になっていたそうだ。

 だがしかし、そんな呪いを僕の薬で解呪したことで……解呪できる薬の存在を知り、聖国の上層部は慌てふためいたそうだ。

 それもそうだろう。呪いを簡単に解呪できるような存在があったら、聖国での解呪よりもそっちのほうに頼みたくなるのは目に見えている。

 まぁ、呪いとかそういうものには関わりたくないし、金なども取る気はないのだが…‥‥商売あがったりだというかのように不安になり、急きょ僕を聖国へ取り込もうという話になったそうだ。

 ついでに僕の周辺も調べる事で、ハクロの存在を知り…‥‥

「ハクロの前の種族は、ホーリータラテクト…‥‥癒す力を持ったモンスターだ。今でこそ人の姿も取っているが、それでもその特性はあるな?ゆえに、ついでに狙う事にしたようだ」

 医学の発展なども目指す聖国にとって、癒す力を持ったモンスターの力も分析して我がものにしたい。

 モンスターを絶対悪という教義にしているのに求めるのは、悪であるモンスターが人を差し置いて癒す力を持つのが許せないのもあるそうだ。

 ゆえに、ハクロも狙う事にしたらしく、場合によっては力を奪えないかどうかという事も考えていたようだ。

‥‥‥でも、それだったら普通は、欲望を隠して勧誘から入りそうなものなのだが‥‥‥何故、いきなり拉致を企んできたのか?

「その理由も、襲撃者たちの自白と、こちらの間諜たちが調べ上げたようだが…‥‥どうも今、3つに分かれて争うことになったようだ」
「え?」


 解呪能力に、癒しの力、その両方とも欲しい。

 でも、そんな簡単に聖国へやって来てくれそうにもないし、何よりも調査したら帝国側についているので、自分達のものにはできなさそうだ。

 であれば、どうするべきかと話し合った結果…‥‥

「腐敗していた国なうえに、教義を自分達に都合のいいように曲解している者たちが、全部同じような思考になると思うか?」
「ならないと思いますね」
「その通りでな、見事に意見が割れたらしい。気長に勧誘を行う穏健派に、強硬手段で連れ去ろうとする強硬派。さらには凶行すら生ぬるく、いざとなれば命を奪えば問題にならないと考える過激派に分かれたそうだ」

 今回襲撃してきたのはその中の一つ、強硬派の手の者たちだったらしい。

 だからこそ、僕らを無理やり連れて行こうとしていたようなのだ。

「となると、他に穏健派と過激派がどう動くのかという不安があるのですが‥‥‥」
「ああ、間違いなくその二つも動くだろう。強硬派が失敗したのであればそれで手を出さないほうが良いと思ってくれればいいのだが‥‥‥あの国は曲解好きの都合のいい事しか考えないものしかいないところだからな‥‥‥」


 僕の言葉に対して、そう答える皇帝陛下。

 重い溜息を吐くと、他にいた臣下の人達も同じように溜息を吐き、どれだけ聖国に関する迷惑を被って来たのかということがうかがえる。

 そんな国ならばいっその事帝国が攻め入ってしまえば良いという意見もありそうだが…‥‥馬鹿みたいに医学や呪術が発展している国なので、ゾンビ戦法というべきような手段を取りかねず、まともに戦いにくくもあるようだ。



 だけど、今回はそんなことを言ってられないというか、わかりやすく野球のアウトルール風に例えるのであれば、僕自身はこのエルスタン帝国の男爵家とは言え貴族だし、他国の貴族に手を出そうとしている時点でワンアウト。

 また、先日の第1皇子の呪いに関しても関与しているらしく、それも加えるとツーアウト。

 さらに言ってしまえば、残った二つが動いた時点でスリーアウトが確定で…‥‥3ヵ国が攻めてきている状態なのに、更に聖国にはこちらから宣戦布告をして相手をしないといけなくなるようだ。

「あれ?でもその3ヵ国って、聖国に弱みを握られて、僕らを拉致するための囮として動いているんですよね?失敗した今、その囮は囮として機能しないのではないでしょうか?」
「そうなるな。ただ‥‥‥‥先ほど、それらの国の王城に、間諜から聖国の書簡が来たという話があり…‥‥どうやら完全に関係ないと言い張る準備をし始めたらしい。宣戦布告をした以上、戦争はすぐにはやめられぬし、見事に切り捨てられそうだ。元から捨て駒扱いで、成功すれば大儲け、失敗しても知らぬふりをするだけでするつもりで、聖国にとっては痛くもかゆくもない様だ」

 なお、戦況も帝国側が有利であり、1週間もかからずに返り討ちが可能らしい。

 今回の件によって、聖国のせいとは言え、攻めてきたことには変わらないので徹底的にやるようだが‥‥‥こう聞くと、これはこれで見事なトカゲのしっぽ切りと言えてしまうだろう。

 ただし、一応弱みを握って動かしたことなどが既に判明しているので、完全に切り捨て切れていないので、ちょっと甘いともいえる。

「とはいえ、ここからさらに聖国に関しての動きを出さないといけないが‥‥‥非常に面倒なことになるな。過激派の動きや、穏健派でも洗脳などの手段を用いる危険性もある。今後、身の回りには注意を行え」
「はっ」
【キュルゥ】

 相手がどう出てくるのか、まだわからないところもある。

 間諜の人達の情報収集は優れているが、それでも聖国の方は腹黒さは1枚上手のようで、隠しているところがあるのだ。

 ゆえに今後もどうしかけてくるのかは不明らしく、収まるとすれば聖国の動きが無くなる時しかない。

「一応、戦後処理まで済めばすぐに対策に乗り出す。知らぬ存ぜぬを突き通す国は放置すると後々厄介なことになるからな……徹底的に蹂躙し、国の形すら消し去る予定だ」

‥‥‥動きが無くなる前に、聖国の方が消えないだろうか?

 一男爵に過ぎない子供たちを狙ってきたのだろうけれども、帝国という大きな竜を聖国は見事に激怒させてしまったようであった…‥‥いや、普段から面倒な国でもあるようだし、前々から潰す予定とかも立てていそうだ。

「何にしても、今後面倒だな…‥‥」
【キュルゥ‥‥‥あの、皇帝陛下、質問、して良い?】
「ん?構わぬが‥‥‥何かあるのか?」
【私、アルス、守る。でも、やり過ぎると、怪我人出るかも。そうなったら、どうしたらいい?】
「狙われているのはそちらもなのだが…‥‥自衛が可能であるならば、できれば生け捕りにするように心がけてほしい。ああ、どれだけ重傷で有ろうとも、そこは気にせぬからな」
【キュル、分かった。回答、ありがとうございます】

……ハクロはハクロで、僕を守るやる気を出したらしい。

 うん、できれば彼女には戦ってほしくないんだけどなぁ……僕の方が弱いのが悲しい気分になるなぁ。
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