転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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2章 学園初等部~

2-34 気にしていなかったことは表に出る事で

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 宣戦布告から数日は経過したが、生活がいきなり一変することはない。

 今日は学園は休日なので、買い物のために僕らは学外に出ていたが、帝都内の商店街に来てみれば賑わいは衰えていなかった。


‥‥‥一応、正妃様との取引によってお金ならあるし、使いたい時は使った方が良い。

 というか、ためておくとドンドン桁が増えてくるからね‥‥‥どれだけ上層部の人達が頭痛などで悩んでいるのかが良く理解できてしまう。

 ご苦労様ですと心の中で帝国のために働いてくれている人たちに感謝しつつも、そこまで高価なものを買う事は無いけど‥‥‥

「とりあえず、お菓子とかかな?」
【キュル!果物とか、美味しそう!】

 作る薬の中に、観葉植物から果物を作る物もあるが、たまにはしっかりと生産された果実を食べたほうが良いだろう。

 この世界だと他にも色々とあるし、味自体も季節によって変わるだろうから、安定供給できる物とは違った楽しみができるからね。



「お、ハクロちゃんとアルス君か!今日はぶどぅらの実が安いよ!」
「なんの!こっちは他国で開発された新しいお菓子などもあるぞ!!」
「可愛い小物などもあるから、きょうみがあればどうかな?」

 ハクロはモンスターとは言え、この帝都内であれば既に彼女の話は広がっており、既に商人さんたちとは顔なじみ状態。

 色々と珍しいのもあるんだろうけれども、何かと声をかけられてはおすすめされるし、悪くはない。

 しいて言うのであれば、お金はあるけど使いすぎないようにしつつある程度考えて必要なものを購入するんだけど…‥‥こうも進められるのが多いと迷うんだよなぁ。

 大人買いとかもして見たいけど、流石に若いうちからそれはしたくないし、きちんと必要な物だけを選びたい。

【キュル‥どれが良いのか、迷っちゃう】
「品数が多いのは良いけど、購入者側にとってみればかなり大変だよね」

 活気あふれているのは良いのだが、良すぎる気がしなくもないんだよなぁ…‥‥まぁ、何かと迷って選び抜けたらそれはそれで楽しんだけどね。



 


「ふぅ、何かと買っちゃったけど…‥ハクロ、重くないかな?」
【大丈夫、この程度、楽々♪】

 ある程度選びつつも、結局かなり多く買ってしまったので、一旦休憩のために近くに設置されているベンチへ僕は腰を掛けつつ、ハクロは買い物袋を堕とさないように糸で縛り直し、自身の体に付けていた。

 蜘蛛の体部分のふわふわな背中に荷物を載せているが、こういう時はその体は便利そうだ。

 限界は流石にあるけれど、それでもそこまで行かなければそれなりに搭載可能であり、糸で縛って落とさないようにもできる。

「そう言えば、そろそろお昼時だし‥‥‥今日は食堂じゃなくて、街中の店で食べようか」
【キュル♪】

 帝都は賑やかなだけに、商店街以外にも露店などがあり、飲食が可能なものがある。

 前世の記憶がある人が伝えたのか、それともこの世界で独自に生み出されたのかは不明だが、ファストフードモドキといえるようなものがあるのだ。

 まぁ、基本的に肉が牛とか豚ではなく、モンスターの肉だったりするが…‥‥美味しいので問題ないと思いたい。そう言えば、研究所の方でも肉の新しい調理法とかで色々開発していたが、もしやあそこでうまれたものではないだろうか?

 何かと疑問に思ったが、軽く昼食を食べることはできるのでベンチから立ち上がり、飲食が可能な露天のメニューでまた迷うかなぁと思っていた…‥‥その時だった。


【キュル♪キュルン♪キュ‥‥‥ん?】

 ふと、僕の横をご機嫌そうに鼻歌を歌いながら歩いていたハクロが足を止めた。

「どうしたの、ハクロ?」
【んー‥‥‥なんか今、変な気配がし…‥‥キュル!?】
「うわっ!?」

 きょろきょろと周囲を見渡していたハクロだが、突然僕を抱え込み、ばっと上へ飛びあがった。
 
 何事かと思っていた場所を見れば、そこには何かが突き刺さっていた。

「矢!?」

 帝都内では見ないようなというか、音もなくどこからともなく出てきて突き刺さってきたようで、何事かと思い目を見開く。

【キュルル…‥‥シュルルルルルル!!】

 ハクロの声が威嚇音へと変わり、僕を大事そうに抱える腕に少し力が加わった。

【そこっ!!】

 糸の塊を瞬時に作り出し、ハクロが投擲したのは建物の壁。

 だが、着弾する直前に、何者かが素早く飛び出し、べちゃぁっと広がった糸を避けた。

「何者だ!!」

 出てきたのは、全身黒づくめの人物。

 顔までもが全部色々と隠しており、何者なのかわからない。

‥‥‥ちょっとばかり、某体は子供心は大人にでてくる犯人風のいでたちだと思ったが、今はそんなことを考えている場合では無さそうだ。

 気が付けば周囲には同じような者たちがおり、僕らは囲まれているらしい。

【シュルルル…‥‥誰、何なの!アルス、傷つけるの?】

「‥‥‥安心したまえ、蜘蛛の者よ。我々は、何も殺害を企んではいない」

 ハクロの言葉に対して、その黒づくめの者達の一人がそう口にするが、全然信じられない。

 どう見たって、さっきの矢がデカすぎるからね‥‥‥むしろアレで音もなく狙撃してきたのに驚くんだが。


「我々は、ただ、お前たちを捕縛するために来たのだ」
「帝国ではなく、我々の国へ、その方がそちらのためにもなるだろう」
「ああ、何も抵抗しなければ何もしない。大人しくついてきてもらうのが身のためだ」

 いつのまにか周囲の人気が無くなっており、静かになっている中で伝わってくる黒づくめの者達の言葉。

 殺意とかは確かに無さそうだが…‥‥それでも、はいそうですといって従うつもりもない。

(…‥‥まぁ、こういう時のために、作っておいたものもあるけどね)

 ハクロの容姿が綺麗だからこそ、ちょっと変な人が出てきても逃げられるように、密かに作っておいた薬はあったりする。

 それを素早く精製しつつ、ハクロに眼で合図を送る。

「‥‥‥簡単についていく気もないけど、抵抗するって言ったらどうするのかな?」
「その時はその時だ。できるだけ生け捕りにして捕まえるように、眠らせよう」

 そう言いながら、彼らがじりじりと包囲網をつめてくるなかで‥‥‥僕はそっと、ハクロの腕に抱きしめられながら、手からわざと小瓶を落した。

 がちゃんっと音がし、なんだと彼らがいぶかしんだ様子になったところで…‥‥


ぶわっふぉい!!
「おぶわぁ!?」
「なんだ!?煙幕か!?」

 空気に反応した中の薬が、一気に気化して煙幕のように煙を思いっきり噴き出す。

 一応これは毒薬ではなく、本来は転生者でもある正妃様へ、献上しようかなと考えている中で出来ちゃった偶然の産物…‥‥お肌の潤いをしっかりと整えさせる加湿効果のある薬。

 塗り薬よりもサウナのようにしてしまう事で、全身に一気にかかるようにしたものであり、毒性は全くないのだが‥‥‥ちょっと想像でうまく出来ない部分があったせいか、大量の煙幕噴出薬になったんだよね。

 まぁ、それはそれでこういう時の目くらましに使えるので覚えておいたが、こういう時には使える。

「ハクロ、これ飲んで!」
【キュル!】

 続けていつもの小さくなる薬を飲ませ、ハクロの体を一気に小型化。

 そして僕の方も、変身薬を飲んで鳥になる。

 そのまま彼女を足の方に糸で巻き付けさせて、羽ばたいて脱出した。


「お、おい!!あいつらはどこへ行った!!」
「わからん!!人払いの魔道具が作動中だから、すぐに誰かに助けを呼ぶことはできないはずだが!!」
「とりあえず捜せ!!煙に紛れて逃げたに違いない!!」

 ようやく煙が晴れたところでそう叫ぶ様子が聞こえるが、空にいれば関係ない。

 久しぶりに変身薬で鳥になったが…‥‥思いのほか、空を飛ぶ可能性を考えていなかったのか、地上の方で僕らの捜索に躍起になっているようだ。

【キュルルゥ‥‥でも、何者?】
(…‥‥わからないけど、これはさっさと報告したほうが良いかも)


 取りあえず空に逃げたとはいえ、矢を使って狙撃をしていたところなどがあるので、狙撃手などが潜んでみている可能性がある。

 念のためにハクロの糸で全身を薄くコーティングして対空射撃を対策しつつ、この出来事に関して報告するために王城の方へ飛行するのであった‥‥‥‥



 



「くそう!!どこへ行きやがった!!」

 人気のない路地裏の場所で、黒づくめの者達の一人はそう叫んだ。

 簡単に捕縛出来そうかと思っていたが、どうやら煙に巻くなどの逃走手段をとっていたようで、うまくいかなかった仕事に対して思わず声を荒げてしまう。

 その場からそう離れてはいないとは思ったが…‥‥ばらけて捜したのだが、どこにも見当たらない。

 あの蜘蛛の体はそれなりにあるし、そうそう狭いところなどには逃げ込めないとは思っていたのだが‥‥‥どうやらその考えすらもあざ笑うかのように逃亡されたようだ。

「落ち着け、とりあえず一旦この場を引くぞ」
「ああ、人払いをする魔道具のおかげでまだ来てないようだが、さっきの煙は目立ちすぎるからな」

 悔しがっている者のところに戻って来た他の黒づくめの者達の言葉に、すぐに気を取り直して撤退し始める。

 今回、3ヵ国の戦争を引き起こさせることで、戦場の方に意識を向けさせてある程度の警戒を緩めて帝都に潜入したのは良いのだが、同じ手は何度も使えない。

 いや、むしろこうやって潜入していることもすでにバレている可能性があり、全員をおびき出すための罠にされた可能性だってある。

「仕方がねぇ、ひとまずは一旦逃げないとな」
「そうでないと、おっ、あふぉん!?」
「「!?」」」

 突然一人が、言葉の途中で奇声を上げて地面に倒れた。

 何事かと思って見れば、後頭部の方に小さな吹き矢が刺さっていたのだ。

「…‥‥動きが見えたから、何事かと思って見れば、変な気配」
「そして、妙な魔道具で行く気を失せさせるような真似をさせたようだが‥‥」
「生憎、我々にはいかなくてはいけないようなものがいるからこそ、効力は薄かったな」

「「…‥‥げっ!?」」

 声が聞こえてきたので見れば、いつの間にか彼らの周囲には何者かが大勢集まってきていた。

 しかも、各自の手元には散開していた他の仲間が捕まっており、全員ボッコボコにされている。

「な、何者だ!?」


 先ほどアルスに投げかけられた問だが、彼らも思わずそう問いかける。

 その言葉に対して、集まっていた者たちは顔を見合わせ…‥‥口をそろえた。

「「「「何者かと答える必要はない。我々はただ、彼女の笑顔を守り、その幸せを見守る者。そしてそれを妨害しようとする輩には…‥‥徹底的にその素晴らしさを叩き込んでしまう者だ!!」」」」
「「だから何者なんだそれは!?」」

 答えになっていない回答に対して思わずツッコミを入れたが、そうしている場合ではないだろう。

 慌てて逃げようにも周囲は既に囲まれており、先ほどの状況とは立場が見事に逆転していた。

「ぐっ‥‥‥ならばここで」
「おっと、自害などはさせぬぞ」
「げべぇっ!?」

 情報を洩らすことを防ぐために、奥歯に仕込んでいた毒でとっさに自害しようとしたが、どうやら相手はその動きを理解していたらしく、口に拳が突っ込まれて舌をかみ切ったりすることすらも防がれてしまう。

「さてと、とりあえずだが…‥‥普通ならば、我々は貴様らから情報を搾りだすのだが…‥‥」
「その前に、彼女に不安を与えたことに対する、刑罰を与えねばな」
「「あががががっ」」

 自害を封じられ、何も言えないのだが、黒づくめの者たちは冷や汗をかき始める。

 殺気?それはまだ手緩いものだっただろう。ココにあるのはそれすら超えた狂気と言うべきか、怒気と言うべきか‥‥‥少なくとも、手を出してはいけないところに、見事に出してしまったらしいという事だけは理解させられるのであった。




…‥‥そして後日、彼らは素直に自分たちがどこの何者で、アルスとハクロを狙っていた理由を素直に吐き出した。

 ただし、酷い尋問や拷問などで搾りだされたものではなく、自ら懺悔をするかのように、涙を流しながら自白してたのであった…‥‥

「な、なぜ我々はあの時に、そんなまねを‥‥‥」
「殺意こそなかったのだが、それでも恐怖を抱かせてしまったのは、本当に申し訳ない‥‥‥」
「ああ、どうして馬鹿な事をしてしまったのだろうか…‥‥」

「…‥‥素晴らしさが伝わり切ったのは良いのだが、コレって証拠になるのか?」
「本人の嘘偽りの無い自白なのだが…‥‥短い間に、ここまで変わるとはな」
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