転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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3章 学園中等部~

3-24 高さの変化があるからこそ

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「‥‥‥ふぅむ、いやはや、蜘蛛頭部分の消失と移動か‥‥‥話題に事欠かぬものじゃなぁ」

 興味深そうに出てきた検査結果を見ながら、ドマドン所長はそうつぶやく。

 エルスタン帝国の都市の一つアルバニアの地下にある研究所内。

 休日となり、日帰りの行程で僕らは今、検査をしに来ていた。


「それで、ハクロの状態はどうなんでしょうか?」
「まぁ、おおむね健康状態に異常はないと言っていいじゃろうな。蜘蛛部分の頭が‥‥‥腰を掛けていたように見えて繋がっている分が消失したのは驚いたのじゃが、それでもまだ許容範囲と言えるじゃろう」

 検査結果に目を通しながら、僕の隣の方にいるハクロの方にも目を向け、ドマドン所長はそう答える。

「じゃけど、消失には何か意味がありそうじゃから、内臓部分とかを調べてみるとのぅ‥‥‥これはこれで、興味深い変化になっておるのじゃ」
【何か、変わっているの?】
「うむ。魔道具によって体内の状態を探って見たのじゃが…‥‥先日、魔石が胸元の方に移動していたじゃろう?それと同じで、今度は内臓の一部が移動しているようじゃよ」

 ドマドン所長の説明によれば、ハクロの蜘蛛部分に存在していた消化器官などが、人型の方へ大半が移行しているらしい。

 頭の部分の方にもそれなりにあったはずだが、頭が消失した今ではすべてハクロの人型の方に移動しており、大分中身が詰まって来たと言えるようだ。

「モンスターであるはずなのに、ほぼ人に近い容姿となっている体の部分なのじゃが、この様子じゃと人に近く成ろうとしている様子が見えるようじゃ。とは言え、まだまだ人に有らず、いくつかはこっちの方に残っているようじゃが…‥」

 ぽんぽんっとハクロの蜘蛛部分の腹を触る所長。

 内臓の大部分が人型部分に移っても、ハクロの体は相変化は見えないのだが…‥‥小型化・効率化などがされているそうで、蜘蛛頭が消えた程度ぐらいにしか、容姿に大きな変動を与えていないようである。

「しかし、モンスターであるからこそ、人とは内臓の造りが異なるのじゃし、わからぬものも多いのじゃよ。体内で全部を完全に自身のエネルギーにしている還元構造は不明な点も多いのじゃし、経過観察が必要と言うべきか」

 ある程度人に近くなったとはいっても、この変化がどう影響を及ぼすのかがわからない。

 だからこそ、ある程度様子を見るが、彼女の体の方が勝手に判断してまた大きな変化を起こす可能性もあるようだ。

「とは言え、別の面も気になるのじゃよなぁ」
「別の面?」
「うむ、ハクロ、お主ちょっと糸を出してほしいのじゃ」
【わかったよ】

 こくりと頷き、ぴゅっと糸を出して素早く玉にして渡すハクロ。

 その糸玉を貰いつつ、虫眼鏡のような魔道具を取り出してドマドン所長は良く目を凝らして確認する。

「‥‥‥ふぅむ、糸は質の向上が見られるのぅ‥‥‥‥光に反射もやりようによっては行えるようじゃが、全体的な強さとしては耐久性の向上もしておるようじゃし‥‥‥あれじゃな、無駄が省かれてより一層、洗練されているようじゃ」

 内臓系統が移動した分、蜘蛛部分の体の方で糸を作る領域が発達できたのか、彼女の出す糸の状態も向上しているらしい。

 ついでに言うのであれば、内臓部分の小型化・効率化などもあったので、全体の重量としてはだいぶ軽くなったようである。

「とは言え、体重の減少は注意じゃ。前以上に踏ん張りがきかぬことになる」

 ある程度の重さがあったからこそ、何かが合っても物理的には受け止めやすい面もあった。

 けれども、体の重さのバランスも変化しているようで、慣れないうちは立体軌道もやめた方がいい。

【んー、でも、普通に駆けれるよ?】
「走るだけならば問題はない。軽くなった分、速度も向上したようじゃが…‥‥体が変わった分、前の方にやや重心が寄っているようじゃし、コケると大回転して転がっていくじゃろうよ」

 だからこそ転倒防止の役目もあるのか、彼女の人の足のように見える食指も変化したらしい。

 白いハイヒールを履いているように見えるのも、地面に突き刺さりやすくしてコケるのを防止するために体が作られたというべきか。

「というか、前から思ってましたけどココの部分って普通は『触肢』って言うらしいんですけれど、『食指』で表現してますよね?」
「む?まぁ、それには色々と思う部分が有ってなのじゃが…‥‥とは言え、この変化でちょっと変えるべきかのぅと思うと事もある。普通に足になりそうじゃしな」

 何か気になるような、思惑を聞かないほうが良いような、そんな気にはなる。

 とは言え、一応それ以上の変化点などを調べて見ても、現状は問題が無いようである。

「とはいえ、新しい臓器も形成されているようじゃし、まだまだ分からぬ。今後も注意深く観察しつつ、何かあったらまた来るのじゃ」
「そうします。調べてくださり、ありがとうございました」
【ありがとうございます、ドマドン所長、お婆ちゃん】
「そこはどっちかにして欲しいのぅ…‥‥できれば普通にお婆ちゃんと呼んでほしいのじゃ。孫はいるのじゃが、お主らも儂の孫のように思えるしのぅ」

 見た目が瓶底メガネ幼女なドマドン所長はふぇっふえっっと老人が出すような笑い声をあげながら、そう口にするのであった。

…‥‥違和感あるけど、この人結構歳とっているんだよなぁ。

 なお、先日何かモンスター研究の発表会とかいうものから帰還後に、衛兵たちに職員が通報された騒動が起きたらしい。絵面が確かに色々怪しいし、ココの都市の人は慣れているらしいけれど、初めて見た人たちなら無理もないか…‥‥僕だってまだ、所長が年齢だけならお婆ちゃんなのは驚きだもの。

 とにもかくにも検査のお礼を言いつつ、僕らは学園へ帰還するのであった…‥‥






「‥‥‥しかしのぅ、内臓系統の移動と、新たな臓器の形成とは言ったのじゃが‥‥‥ここまでくると、何かと考えるところが出るのじゃな」
「まだ何か、あるのでしょうか所長?」

 アルスたちが去った後、研究所内で報告書を見ながらつぶやくドマドン所長に、職員が問いかける。

「うむ。通常の蜘蛛とモンスターの蜘蛛は内臓的に似たような造りも多いのじゃが、ハクロの方はその造りが色々と変わりつつ…‥‥やはり、人に近い形態になっているようなのじゃよ」

 いくら内臓が移動したとか変化したとはいえ、彼女の容姿に大きな変化を起こさないわけがない。

 そもそもそんなことが起きるならば、余った分とかが色々と出そうなものなのだが…‥‥

「モンスターの行う脱皮の際は、一瞬中身が溶けて、再形成している可能性も出てきたのぅ‥‥‥それも、自覚しないでの部分のようじゃが、そうじゃないと説明が付かぬし…‥‥それに、気になる変化もあるのじゃ」
「と言いますと?」
「裸になってもらったりしつつ、細部まで色々と見て分かったのじゃが…‥‥本当に人になろうかとしている変化もあるようじゃ。まだ未熟とは言え、それでも成長が見込める臓器もあるようじゃし‥‥‥将来的には、もしかすると人の子を産むことができるかもしれぬのじゃ」

…‥‥モンスターと人の、間の子。その話は、実はないわけでもない。

 とは言え、その例の場合大抵の場合モンスターしか生まれないというか、何かと表現の都合上大ぴらに出すこともできないが、それでも人が産まれる可能性は無いに等しい。

 けれども今、ハクロの体の中身の変化を探る限りでは、もしかすると人の子を産む未来がありそうなのである。

「まぁ同じような子が産まれるのならそれはそれで見たかったが、それもありなのかもしれぬが‥‥‥そう考えると、下手すると不味い領域に思考が行きそうなんじゃよなぁ…‥‥」

 モンスターから人がもし生まれたのであれば、どうなるのか?

 人とモンスターの違いであれば魔石の有無があるのだが、それでも人はいつから自分を人として定義づけているのか。

 もしかすると、自分達人間もはるか昔は…‥‥いや、そう考えこむと各方面に喧嘩を売るような真似になりかねず、色々と追及は出来ないだろう。

「そうじゃなくて人が人なら良いのじゃが…‥‥ここまでの変化じゃと、流石にハクロ自身の意思ですべてがなっているようにも見えぬし…‥‥まるで、神の手が加わっているようじゃよなぁ‥‥‥」

 そもそも、モンスターが人になるという話すらもそう聞くものでもないし、実際に目にすることもほとんどない。

 けれども、ハクロと言う存在がいる以上、人になる可能性はあるのだろうが…‥‥変化のありようが、偶然ではなく必然と言うか、どことなく仕組まれたもののようにも見えなくはない。

「まぁ、もしかすると本当に神の寵愛とかあって、それによって引き起こされた可能性もなきにしもあらずか」

 神と言う存在が本当にいるのかはわからない。

 この世界には様々な宗教も存在しているが、誰も神を見たことが無い。

 けれどももし、モンスターに対しての神が、いや、それ以外の神だろうがなんだろうがそのような存在があり、それがハクロに目を付けて変化を起こしているのであれば、なくもないだろう。

 あやふやなものを信じるのではなく、徹底的に調べたい研究者としての性もあるが、その答えはまさに神のみぞ知るしかないようであった…‥‥‥

「む?待てよ、孫のように思えてしまうのじゃが、子供が産まれたらひ孫となって、儂の立ち位置がひいお婆ちゃんに…‥‥むぅ、悪くはないのじゃが、歳をとったと自覚することになるのじゃよなぁ‥‥…」
「そう言えば所長、所長のお孫さんで確か本当にひ孫をもうじき産む人いませんでしたっけ?」
「…‥‥あ、忘れていたのじゃ!?ヤヴァイ、今すぐに孫の元へ向かわぬと、誕生の瞬間を見逃すのじゃぁぁあぁぁぁぁあ!!」

‥‥‥何処の世界に、見た目瓶底メガネの老女がいるのだと職員たちは思いたくもなる時があるのだが、目の間にいるので何も言えない。

 そしてこのお婆ちゃんが後日、ひいお婆ちゃんへとランクアップし、ひ孫自慢が出てきてしばらくの間「ひ孫話」を聞かされる羽目になるのであった‥‥‥‥

「‥‥‥と言うか所長、若すぎる容姿なのに本当に元気過ぎるご老体なんだよな」
「あの人、実は寿命が1000年もあるすごい人とか言われても驚かんぞ」
「モンスター研究云々前に、所長の活発さを研究したほうが世のため人のためになるような気がするなぁ‥‥‥」



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