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3章 学園中等部~

3-23 ある意味レアと言えばそうであり

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…‥‥真夜中、月明かりが辺りを照らし、星々が夜空に瞬いている。

 そして窓際では、蕾であったホタリナ草が開花し、水魔法で用意しておいた水によって、ほのかに発光していた。

 その光景は、前世で言う所のホタルの光のようであり、惜しむらくは一つしか咲いてないのだが、それでも明かりを消した室内で輝く光景は、何処か幻想的なものに近いだろう。

 ゆらりゆらりと花が揺れ、その光も一緒に動き出す。

 それと同時に蜜も垂れており、回収するのだがその蜜自体もほのかに輝き、まるで星の光を貯めているかのようだ。

【キュル、綺麗‥‥‥♪】
「一つだけなんだけど、それでもなんかいいなぁ…‥‥」

 ゆったりとした幻想の光の舞に、僕らはそう感想を漏らす。

 これがもっと咲き誇っている光景であれば、それはそれで見て見たい代物だが…‥‥一つでこれならば、どのぐらいなのかが見当つかないだろう。

【うん、良いかも。アルスと一緒に、幻想的で…‥‥っと、来たかも】
「あ、ちょうど脱皮か」

 輝き始める瞬間にはなんとかならなかったが、どうやら脱皮の時が来たらしい。

 全身の皮を脱ぐために、ハクロが邪魔になる衣服を脱ぎ始めるので、彼女の方を見ずに花の方に目を移し、脱皮の時を待つ。

 衣服を脱ぎ捨てる衣擦れの後に、ぴしり、ぴしり、っと皮が裂けるような音。

 ずるりっと今までの表面であった部分から這い出るような動きも聞こえ、また一つ、皮を脱いで成長したようだが‥‥‥‥

【キュル、キュル‥‥‥あれ?】
「どうかしたの、ハクロ?」

 ふと、ハクロが疑問の声を上げる。

 何があったのかは気になるが、流石に素っ裸の状態を目視しづらいので服を着てもらい、脱皮後の柔らかい状態からきちんと体を整えてもらいつつ…‥‥改めて見れば、その理由が判明した。

「…‥‥ハクロ、なんか目線が低くなってない?」
【そうかも?】

 いつものハクロの目線がだいぶ近くなっており、身長が縮んだように見える。

 でも、人型部分の座高が下がったとかそう言うことは無く…‥‥‥どうやら蜘蛛部分に変化があった。

 腰を掛けていたような旧頭と言うべき部分が失われており、体から直接生えているかのような状態へ。

 腰を掛けている状態ではなく、位置的には腰辺りから直接生えた状態となったせいか、文字通り頭一つ分下がった様だ。

「あと、食指も地面に近くなっているけど‥‥先端部分が、白くなっているね」

 人の足のように見えるハクロの食指だが、今までは黒いニーソを穿いているような状態だったのに、先端部分が白くなっている。

 白いハイヒールを履いているような…‥蜘蛛部分をどうにかして隠したら、つま先立ちで立っているようにも見えなくはないだろう。

【キュルゥ、目線下がった分、アルス近い。これはこれで、良い変化♪】

 体の変化が起きたようだが、それでも悪い方向へ働いたわけでもなく、むしろ僕に近くなったことに喜び、抱き着いてくるハクロ。

 足の方もやや形状が変化したらしく、曲げる動作が前よりもしなやかになっており、関節を曲げてちょうどいい位置へ体を落とせるようだ。

「しかし、頭一つ分が消えているか‥‥‥‥どうなっているんだろう?」

 旧頭と言う部分は、普段からハクロが腰をかけて座っているように見える部分に存在しており、元々の蜘蛛頭としての役目を果たしていたのかが、そもそも疑問である。

 むしろ、今回の脱皮で役目を終え、頭を退化させたのではないかと思えてしまう。

 わかりやすく例えるなら、深海魚とかのように目を退化させるのと似た理屈かもしれない。例外もあるだろうけれども、何も進化ばかりが成長でもないからね。

 何はともあれ、この変化に関しての体の具合なども気になるし…‥‥日帰りで、ドマドン所長のいる研究所の方に向かって検査してもらえばいいかな?

 そう思いつつも、まだまだ幻想的に輝くホタリナ草をゆっくりと見つつ、眠気に襲われ始め、僕らは仲良く一緒に寝始めるのであった…‥‥‥

【それにしても、この目線でも、アルスちっちゃいね(悪気0)】
「…‥‥」

…‥‥心にグサッと来たというか、悲しいというか。

 ちょっと小さくなるハンデを負った彼女ではあるが、絶対に大きくなってやる…‥‥‥!!僕だって、身長にコンプレックスぐらいはあるけど、高等部までには180センチ越えぐらいはしてやるーーーー!

 なお、薬でどうにかできないかと言う疑問はあるが、やったら負けなような気がする。ズルはいけないし、どうにかして身長を伸ばす努力…‥‥何があるかな?やっぱり、食べて運動ぐらいかなぁ‥‥?








‥‥‥そして、すやすやと互いに寝息を立てはじめた丁度その頃。

 天井裏では、その様子を見ていたファンクラブの者たちが慌ただしく動いていた。

「サイズ変更、新しいハクロちゃんの姿絵の記録を急げ!!」
「慌て過ぎずに、慎重に気配と音を消せ!!眠りを妨げるな!!」
「ああああ、新しい姿の誕生を、この目で見られるとは‥‥‥‥!!今晩の監視を変わってよかった‥‥‥!!」

 情報を伝えるために急ぐ者、伝えたいけれども眠りを妨げたくない者、自分の目で見ることができた変化に感激する者と、反応はそれぞれ違うだろう。

 けれども、ハクロが新しい姿を得たことに祝おうとする気持ちは同じである。

 また一つ成長したというか、新しいハクロになったというか…‥‥出くわすことができたのは、非常に貴重な経験なのだ。

「とは言え、目撃したのが我々だからな…‥‥生で最初に見てしまったが、これ後で会員たちに嫉妬の目を向けられそうなのだが」
「大丈夫だ。ここで見てしまったのは我々だからな…‥‥遺言状を今のうちに残しておけ」
「珍しく、女三人での監視だったからよかったが…‥‥これ、男の間諜でも混じっていたら、それこそ血の雨を見たかもしれないしね…‥‥」

 ある程度の惨劇は防げたかもしれないが、それでも回避し切れたわけではない。

 とりあえず今は、自分達の身の安全を確保するためにも、今できる限りの情報収集や記録を必死になって行うのであった‥‥‥‥


「しかし、これはこれで問題だな」
「どうしてだ?」
「いや、今度ファンクラブ市場で彼女を模した彫刻を出そうとしている者が多いのだが、新しく変化した分、修正が必要となるだろうし…‥‥徹夜の作業になりそうだなぁっと」
「…‥‥そう言えば、知り合いのあの人やこの人も、手を出していたっけ」
「書籍担当の人も…‥‥体の表現を文字だけで表すのは大変なのに、この変化を取り入れるための作業が鬼のように出てくるかもね」
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