転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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5章 高等部~そして卒業まで

5-3 それは聞いてないのだが

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‥‥‥びゅおおおおっと空を切り裂き、それは飛翔する。

 本来であれば人里へ向かうことなく、どことも知れないとある秘境の奥深くでゆったりと生活していただろう。

 けれども、感じ取ったのだ。その生活を脅かす存在に。

 ゆえにどうしたものかと思考をめぐらし…‥‥その結果、明かに自分以上の力を持つ者の側にいけばいいという結論を導き出し、その者を勘で探り出す。

 だからこそわざわざ大空を飛びぬけ、庇護を求めてゆくのである…‥‥






「‥‥‥今日は良い日だけど、疲れたよハクロ」
「キュルル、アルス、お疲れ様。剣術、かっこよかったよ♪」

 休み時間になり、学園の運動場の片隅で僕らは一休みをしていた。

 一応、ハクロが滅茶苦茶強いとはいえ僕自身も彼女を守りたくもあるのでちょっとは鍛えておくべきかと思って、剣術の授業を選択していたのだが…‥この授業、選択しなきゃよかったと思っていたりする。

 というのも、将来的に貴族家当主になれない人や平民が取って、騎士や傭兵に護衛などを目指すことができるということで何かと人気であり、結構受けている人が多い。

 それに剣術は素振りなどの練習があるとは言え、実践したほうが経験を積んでより修得しやすいという事で模擬戦もあるのだが、木刀を使って安全性を確保しているとはいえ人数がそこそこいる分、対戦数も自然と増えており、授業後にはそこいらに受講していた人たちが倒れてしまうのである。

 まぁ、くたくたになってもこれはこれで結構運動になるし、やっぱり男のロマン的なものもあるのか辞める人は少なく、剣術を極めようと武者修行の旅に出る問題児も出たりするらしいが、人気の授業なのは間違いないだろう。

 後ついでに言えば…‥‥

「でも、ハクロが戦う事はないと思うんだけどね…‥」
「キュル、私、糸や魔法使えても、アルス守るの完全じゃない。だからこそ、ちょっとは強くなりたいという気持ちもあるの!」

 蜘蛛の身体が無いのに何もない場所から糸を出すようになって、三~百刀流、いや、それ以上の剣を扱えるのに何を言っているのだろうか。

 むしろ一人で一国の軍隊も相手できるのではないかと思えるほどであり、しかも頭が良い分それを剣術に活かすので、相手の隙や癖などを見ぬいて、全員フルボッコにできる程の腕前だよね?

 ますます強くなってきているような気がしつつも、僕との相手の時はまだ優しいのだが‥‥‥あれはあれでいちゃついているように見えると言われて嫉妬の目線を向けられて、結構後方からの目が痛かったりする。
 
 それでも彼女との戦いで弱い部分が見つけられ、自主練に活かせるという事で全員望んで対戦を行っていたりするけれどね。お仕置き顧問も兼ねているけれど、良い教師にもなっているようだ。強すぎるけど。



 何にしてもあちらこちらの木蔭で休み時間を皆がゆったりと過ごし、ゆったりと癒されていた‥‥‥そんな時だった。

「アルス、次の授業、座学。そろそろ教室に‥‥‥キュル?‥シュルルルルル」
「‥‥‥どうしたの、ハクロ?」

 寝転がる僕を起こそうとしていたところで、ふと何かに彼女は気が付いたかのように、顔を空に向けた。

 翼以外はもうほとんど人の身体に近いけれども、鳴き声は変わることもなく、威嚇の声を上げ始める。

「何か、来る…‥アルス、私の側にいて」

 ぎゅうっと糸を飛ばして僕を体に巻き付けつつ、翼を広げて守る気全開のハクロ。

 何事かと思う中で、周囲に異変が現れた。




――――キィィィィィィィィィィィィン!!
「ん?」

 何処からともなく、物凄い速度で風を切り裂くような音が鳴り始める。

 発生源はどこなのかと思うと、次の瞬間。


ぶわっさぁぁぁぁああああああああああああああ!!
ごおおおおおお!!
「うわぁぁぁ!?何この強風!?」
「シュルルル!!何か、飛んで来た!!」

 ハクロの糸に巻き付けられていなかったら、吹っ飛んでいた可能性が高い。

 何かが突っ込んで急ブレーキをかけつつも勢いが暴風と化したようで、その辺にいた生徒たちが巻き添えに合って吹っ飛んでいく。

 だがしかし、僕の方を優先するとはいえ他の生徒たちとも友人でもあるハクロなので見捨てることは無く、糸を出して守り切った様だ。

「シュルルル…‥‥何者!!」

 ハクロが広げていた翼を羽ばたかせ、舞い散った土煙を吹き飛ばす。

 もくもくと舞い上がっていた煙があっと言う間に消え去り、そこに現れたのは…‥‥‥



【…‥‥ホホホホホホ―――――――ゥ!!】

「‥でっかい、フクロウ?」

 暴風を起こした正体は、何やら巨大なフクロウ。

 前世で言う所のシロフクロウに近いが、その巨体は比較にもならず非常に大きい。下手すると一軒家サイズ位である。

 しかし普通のフクロウは基本的に夜行性だし、モンスターにも確か同様のものもいたが、この巨体ほどでもないしあちらも夜行性だったはず。

 であれば、この巨大なフクロウは何なのかと思う中‥‥‥フクロウが動いた。

【ホホ、何もしないから、どうか助けてくだせぇぇぇ!!】
「しゃ、喋ったぁ!?」
「しかも見事な土下座だぞ!?」
「あの巨体でどうやって!?」
「かなり綺麗な土下座だが、結構苦労していそうな感じがするぞ!」

 華麗な土下座を決め、周囲でかたずをのんで見守っていた生徒たちが驚愕を代弁する。

 でも、喋った事よりも土下座の方に驚愕する生徒が多いのは何で?あ、考えて見たらハクロがいるせいか。モンスターがしゃべる前例を学園の生徒たちはよく見ているせいで、そこまで驚かなかったのか。

「‥‥‥助けて?‥‥キュル?どういうこと?」
【いや本当に、まずはお助けくだせぇ!!命乞いでもなんでもしますから、今はとりあえず庇護下におねげぇしやぁぁあすぅぅぅ!!】

 敵意のなさと必死さに、威嚇を止めて困惑するハクロ。

 ひとまずは話が見えないという事で、落ち着いてもらうことにしたのであった…‥‥








【‥‥ふぅ、ひとまずは自己紹介をしやそう。あっしは流れの『ワイズオウル』。名前はとりあえずあったほうがいいかと思い、『フック』と名乗っているものでございやせぇ】

 必死に土下座も収まり、周囲の安全をハクロの糸を張り巡らせて確保しつつ、落ち着いてもらったところで事情を聴くことにした。

 幸い、モンスターなのに人語を話せるおかげで、いちいち翻訳してもらう必要がないけれども‥‥‥某森の中のお化けみたいなのが喋っている光景はちょっと迫力がある。

―――――
『ワイズオウル』
真っ白な個体から波模様やぶち模様、豚花模様まであるというフクロウのモンスター。
基本的に夜行性でありつつ、狩りの名手。人を襲うこともあるが基本的に悪人しか襲わず、別名『闇夜の仕事人』と呼ばれている。
悪人しか襲わない理由としては近年の研究として、悪党ほど無駄に鍛えていたりその逆だったりして肉の質が常人と異なっており、その味が好みであるという結果が出ているらしい。
―――――

 普通のワイズオウルは3~5メートルほどの大きさらしいが、このフックとなのるやつはどう考えてもそれ以上。闇夜の中で襲われたら、死を覚悟してもおかしくないだろう。

 でも、さっきの土下座のせいで恐ろしさはないというか、変な喋りかたのせいで三下のチンピラにしか見えない。

「キュル‥‥‥でも、そんなのがどうして、ここに来たの?」
【それでやすよ!!あっしはあんさんの下で守ってほしくて、ここに来たのでやすホホホーウ!!】

 ハクロの問いかけに対して、泣きながら鳴きながらそう口にするフック。

 なにやら訳アリのようなので、詳しく話を聞くと、どうやら命の危機を最近感じ始めたのが原因らしい。

【あっしは本来、こんな人がたくさんいるようなところへ来る気はなかったのでやす。何しろお婆ちゃんのお爺ちゃんのそのまたお婆ちゃん…‥‥ご先祖様の時から、人前に出てこないようにしておけと言われていたのでやすからねぇ。人の言葉を理解して、会話が成り立つ不気味さがあるせいだと言われているのでさぁ】

 どうやら先祖の時から口酸っぱくして言われていたらしく、律義にフックはその言いつけを守っていた。

 というか、そもそも人のところへ行こうにも彼がいる場所は何処かの知られていない人里離れすぎた大秘境にあるらしく、向かう気もなかったのでのんびりと暮らしていたらしい。

 時々海へ向かい砂場で砂浴びをして、熊が出れば熊狩りをして捕食し、夜行性のくせに早寝早起きの規則正しい生活をして満喫していたそうだ。

 だがしかし、最近その生活に影が見え始め、命の危機を感じたそうだ。

【熊を狩ってもやけに味が悪く、しかも数が多い。その上あっしを嘗め回すような視線も感じるようになり、ものすごく怖くなってきたのでさぁ】
「うわぁ‥‥‥」

 要は粘着質なストーカーらしい気配と、最近の餌の異常に嫌な予感を覚え、それでも何とか過ごしていたそうなのだが‥‥‥先日、ついに駄目になったそうだ。

【居心地悪いなと思い、引っ越しを検討していた矢先‥‥‥ある日の晩、寝床に戻ろうとしたら大炎上していたのやすぅ!!いつもなら寝ている時間だったけれども、その日はちょっと夜更かしで飛んでいたから難を逃れたのだけれども、どう考えても自然発火するはずもなく、人為的なものだったのでさぁ!!あっしを燃やして焼き鳥にでもしようと考える輩がいるようで、怖くて怖くてここへ逃げて来たのでさぁ!!】
「待って、それで何でハクロのもとに?」
【あっしは考えた。怖い奴らが狙っているのであれば、それを簡単に撃退できそうな強き者の元へ行けばいいと!こう見えて昔から勘は良く当たるからこそ、探し人として飛び回り‥‥‥念のために周辺の鳥たちと話し合って、たどり着いたのでごぜぇやす!!】

 命の危機を感じたからこそ、守ってくれそうな相手を探した。

 その結果、ハクロが見事に該当して、頼ってここに飛んできたようだ。

【だからおねげぇでごぜぇやす!!貴女様の庇護下に、どうか、あっしを置いてくだせぇ!!】

 そのまま必死になって土下座をし始め、頭を下げるフック。

 その必死さには、本当に頼るのがハクロしかいなかったと感じさせる。

「うーん…‥‥庇護下、とか、よくわかんない?」
「簡単に言うとこの人、いや、モンスター?とにもかくにも、何か怖い目に合いそうだから、ハクロに守ってほしいってことのようだよ」
「私に?…‥‥でも私、アルスを優先するよ?それでもいいの?」
【それでもいいのでごぜぇやすぅ!!あっしはこの巨体で熊も倒せるでやんすけれども、流石に怖いものは怖いのでごぜぇやすぅ!!人に頼むのであればそれ相応の土産物も用意しておけと、亡くなったお母ちゃんが言っていたのでそれも持ってきたのでさぁ!!】

 土下座をしながら器用に翼で、羽毛に埋もれていた風呂敷包みのようなものをフックは取り出した。

 そしてそれをほどけば、そこにはキラキラと輝く宝石のような木の実が10個ほどそろっていた。

【お母ちゃん曰く、これは人里だとひっじょうに価値があるヤンベェものだから、万が一人里で頼るのであれば、これを持って行けと言われたのでごぜぇやすぅ!!だからこそ、どうかどうか!!】

 何なのかはわからないが、この必死さを見ると哀れにしか思えない。

 どうしたものかとハクロと話し、哀れさから木の実の方は皇帝の方へ献上して僕らは貰わないことにして、ひとまずはフックを守ることを約束したのであった‥‥‥

【ありがとうごぜぇやす!!ありがとうごぜぇやす!!あっし、これでようやく助かったのでさぁ!!‥‥‥ところで、この土産物、あのおっきなお城に住まう方へあげればいいのでごぜぇやすか?】
「うん、僕らはいらないからね」

…‥‥単純に、面倒なものを押し付けただけでもある。辺境伯にされた件に関しては、領地の拡大は牧場経営にやりやすいので感謝はしているけれども、責任の増大に恨みが無いわけじゃないからね。




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