拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波

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寒さ到来面倒事も到来するな

#179 利用はするのデス

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SIDEヌルダニアン王国貴族:衰退貴族

「「「…‥‥はぁ?」」」

 周囲の光景を見渡し、その場にいた者たちはそろってマヌケな声を漏らした。




……彼らはかつて、ヌルダニアン王国で、聖女が主導していた時代に栄えていた貴族たち。

 その中でも、甘い汁目当ての腐った根性ながら、それなりに駆け引きを見据え、ある程度の損失を覚悟しつつ、今の生活をできるだけ失わないようにした者たちである。

 ただ、それでも失う物は多く、その生活水準は大きく下がっていた。

 爵位も下がり、領地からの税収も国からの制限がかかって無理に取れず、贅沢を尽くせない。

 過去の甘い生活を覚えているがゆえに、今の一般市民がそこそこ暮らせるような状態でも、耐え切れなかったのである。


 そこで、彼らは過去の生活を取り戻すために、様々な動きを見せた。

 ある者は投資をすることで利益を得ようと試み、大失敗。

 また、ある者は開き直って借金をして贅沢な生活にいそしみ、結局返済できず鉱山送り。

 はたまた、ある者は犯罪組織を結成し、見事に身元がバレて拘束される。


 様々な動きがあれども、どれもこれも大失敗。

 もともと無能に近い者たちでもあったので、慣れないことをしたせいでその無能さが見事に明るみにされたとも言えよう。

 とにもかくにも、失敗に続く失敗、その例がどんどん積み重なっていく様を他の者たちは見て、明日は我が身かと震えながらも、やめる事ができない生活を送っていた…‥‥そんな中、ある貴族が妙案を思いついた。

「そうだ、借金を踏み倒せばいいのでは?」
「いや、無理だろう。借金取りがいるだろうし、それをやれば他からも借りれんぞ」
「だったら、その元にいる者たちを亡き者にすればいいだろう?ああ、何も暗殺者を雇うなどではなくて、自然に亡くなってくれればいいのだ」
「ふむ…‥だったらついでに、我々にとって都合の良いようにすることもできるかもしれぬな」


 無能とは言え、甘い汁を吸う事に関しての案を出すだけで有れば、ある意味有能だったかもしれない彼ら。

 今の生活を切り替え、かつての栄華を取り戻すために議論しあい、一致団結してその案を実現できる物へと移行させていく。

 自然な死への手段として病を選び、なおかつ世の中を自分たちの良いようにするにはどうすべきかと考え、自分たち以下の弱者だけを残し、手駒に、いや、隷属させようと思いつく。

 されども、耐えて自分達よりも強い者が残ってくる可能性もあるため、そう言った者たちにも強気に出られるような方法としては、何かと探って、ある手段が選ばれた。



 それが、シックルライヤーと呼ばれる、極小サイズのモンスターを利用したパンデミック。

 殺傷性を高めつつ、ワクチンをした者と、弱者・強者を除き、その間にいるような者たちのみを狙い、数を減らさせる。

 強者も残すのは、治療薬を用意しつつ、それを手にして脅し、いう事を聞かせる。

 後に残るのは弱者ばかりであり、自分たちの座が脅かされる可能性は低い。

 借金取りたちも潰せるだろうし、強者を脅して配下にし、弱者を隷属させて搾取する。

 
 この方法を使えば、あの甘い汁の生活が再び…‥‥っと、彼らは考え、そのためにはどうすればいいのかを再び議論し、実行へ移した。

 研究を行うための秘密の施設を製作し、各地から変人・奇人と呼ばれるような外部へ洩らさないような研究者たちを集めそこへ集約させる。

 あとはそこで依頼通りの研究をさせつつ、出資してその開発を急がせる。

 借金の返済で首が回らない現状で、借金取りたちに引きずられるのが先か、それとも研究の完成が先か。

 

 大きなかけではあったが…‥‥どうやらまずは、実験ができる段階まで出来た知らせを受け、行わせた。

 対象は無差別で各国に散布し、その様子を観察する。


 結果としては、生憎ながら殺傷性が低いようだが、それでも感染範囲は予定内にあった。

 借金取りたちもダウンしたようで、この隙にさらなる研究の進展が望まれ、今のうちにより一層完成を急がせようとしていた矢先であったのだが‥‥‥‥‥




「どこだ?ここは‥‥‥?」
「何もないというか、我々しかいませんな」
「おおう?意味が分からんぞ?」

 気が付けば、いつの間にか彼らはこの場所に立っていた。

 先ほどまで人間の三大欲求に溺れていた記憶もあったのだが、どのタイミングでここに来たのか頭がはっきりとしない。

 気絶した覚えもないし、先ほどまで何かを各々はしていたことを覚えてはいるが‥‥‥‥ここにいる原因が妙に浮かばないのだ。

 同時タイミングで、同時に気が付き、同時にこの状況を理解できない。

 何が起きたのか理解できない彼らは、不安を覚え、互に歩み寄る。

「ああ、そちらは侯爵殿。ここがどこなのか、わからないでしょうか?」
「いやいや男爵殿、そちらこそわからぬのか?」
「うーん、準男爵から侯爵、平民落ち状態の皆さまがたまで‥‥‥‥なぜこれだけの者たちが集められているのだ?」
「いや、そもそもここはどこなのだろうか?」

 悪事には頭が働けど、この状況に誰もが理解できず、議論をしても平行線。

 辺りは何もなく、本当に自分達だけがいる空間なのだが…‥‥何もなさすぎるがゆえに、不安はどんどん大きくなっていく。

 そこでふと、その中の一人があることに気が付いた。

「おや?貴殿、目は赤かったか?」
「ん?いや、瞳は青いはずだが…‥‥そちらこそ、何やら頭が増えておるぞ?」
「「ん?」」

 互いに何か異常を見つけ、周囲を見渡せば各々に異常が出ていた。

 異常な発熱、発疹、分裂、目の濁り、強烈な頭痛、腰痛の悪化…‥‥その他諸々、多種多様な症状。

 次第に体調が悪化していくが、瀕死になったところで……


ざばぁぁぁぁぁ!!
「ごえぼっぶべべね!?」
「な、なんだ!?」

 突然、上から滝のような勢いの液体が振りかけられ、その体は元に戻るが、今度は別の症状が現れる。


 感染し、瀕死になり、治療され、また感染し…‥‥終わらない非情なる繰り返し。

「誰か、誰か助けてくれぇぇぇぇ!!」
「ああああああああああ!?今度は腐っているぞ!?」
「ぎえぇぇぇぇぇ!!眼が眼がぁぁぁ!!」
「ごぼぼぶぶさ!!な、治されても…‥‥またかぁぁぁぁぁ!!」

 阿鼻叫喚、病地獄。

 治療されても再び感染し、その度に回復させられては苦しみを味わされる。

 もはやだれがどのような病状になり、どこまで進行し、新たな病にかかるのかわからない。

 ただ一つ言えるのであれば、この地獄に終わりが見えないことであろうか‥‥‥‥

「た、助けてくれぇええぇぇぇぇ!!」
「借金取りがいるなら、連れて行ってもかまわん!!この地獄から抜け出させろぉぉぉ!!」
「くそう!!弱者共を嬲り君臨するはずが、なぜこんな目に遭うのだぁぁぁぁぁぁ!!」


……地獄に陥っても、元々の性根が腐っている者たちは変わらない。

 彼らは気が付かないだろう。その心が本当に入れ替わった者しか、この場からいなくなっていることに。

 残されるのは、本当にどうしようもない者たちだけで、何時しか互に罵倒しあい、このような目に遭ったことへの責任転嫁を議論し始めるが‥‥‥‥もはや、救いようのない者たちしか残らなかったのであった。


――――――――――――――――――――
SIDEシアン

「…‥‥うわぁ、やっておいてなんだけど、これちょっとドン引きするな…‥‥ワゼ、蓋をもう閉じてくれ」
「了解デス」

 僕の言葉に対して、ワゼはその箱の中身が見えないように蓋を閉じ、厳重に封じた。

 念入りに簡単に逃げられないように細工を施しつつ、内部の音が聞こえないようにさらに別の箱でその箱を封じた。


「さてと、とりあえず厳選したどうしようもない奴らは…‥‥そうだな、預言者にでも送っておくか」
「ええ、それしかないですけどネ」

 今回の騒動の元凶の内、本当にどうしようもない輩たちはこのまま神聖国へ送られることになる。

 罪をこのまま表に出して裁く方法もあったが…‥ヌルダニアン王国内で失脚したとはいえ、ギリギリ今の状態を保っているこいつらは、性懲りもなくやらかすのが見えているし…‥‥予防策、いや、断絶策を取るだけだ。




……今回、騒動の元凶となった者たちだが、どれも重要な役職についていない事は調査済みだった。

 研究所内の顧客リストから割り出しつつ、全員をひとまとめにしてワゼの特性の箱の中に入れ、刑を執行した。

 それは、あの研究所内から少々拝借した特性のやばいものばかり。

 ワゼたちでさらに改良も短時間で施し、治療薬もたまにかける程度の病地獄。

 阿鼻叫喚ではあるが、狂えないように細工を施しており、自力では抜け出せないだろう。



 まぁ、それではちょっとマンネリ化すると思って、別の細工も仕込んでいた。

 それが、改心したらしいのであれば、自動的に放出するシステム。

 腐っている者たちとは言え、流石に完全ではなく、何処かに改心できる余地があれば‥‥‥ある程度は逃がしても良いと思ったのだ。

 こんな事もあったし、二度とこのような馬鹿な真似はやらかさないと思うが‥‥‥‥念には念を入れて、ご丁寧に彼らの悪事を調査した証拠資料を、ついでに付けておく。

 いつでもばらせるという事で牽制しつつ、これで本当に性根が変わるならばいい。

 駄目だったら、自動的にまた箱行きだけどね。技術が上がってそのあたりが楽できるから良いか。


 それはそうとして、本当に改心もないような者たちは、このまま地獄を味わいつつ、神聖国の方へ送る事にした。

 以前、預言者はきちんと選別され、救いようの無い、腐って転生すらも望めない様な悪質な魂を持つ人物を捕食しているとか言っていたし、箱の中に残った人物たちは、それに当たるだろう。

 まだあの預言者に対しては、色々と警戒すべき部分があるだろうけれども…‥‥こういう贈り物をしておくことで、適当な距離感を保ちつつ、敵対しないようにしておく。





 何にしても、これで元凶共は潰せたが、まだ残る問題が、広まってしまった病。

 治療薬もあの研究所で手に入れたとはいえ…‥‥堂々と配布するわけにもいかないからなぁ‥‥‥。


「どうしたものかな‥‥ワゼ、隠れて散布できる?」
「‥‥‥可能デス。とは言え、量をもう少し増やさないといけまセン」

 流石に全部を見捨てるのも後味が悪いし、助けられそうであれば散布したほうが良いだろう。

 ちょっと苦労はしつつも、後始末をしっかりとしておくかと僕らはそう思うのであった。






「‥‥‥にしても、研究資料とか色々あるな」
「中々面白そうなものもありますが…‥‥改善の余地はありマス。ちょっと、実験してみるべきですカネ」
「ああ、役立つものならばいいかな。でもね、ワゼ」
「ハイ?」
「お仕置き、忘れてないよね?」
「‥‥‥」

 無言の逃亡は許さない。

 今回の件、あの自爆しかけミサイル移動に関してのお仕置きは残っている。

 そうワゼに告げると、大人しく彼女は従う事にしたようであった………ご主人様とされても、まぁしっかりとやっておかないとね。
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