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良からぬ企みは、なぜこうも生み出されるのか
#342 頭の悪い戦法に近いですが、割と正攻法でもあるのデス
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SIDEムーラッシュ
―――足リナイ
―――足リナイ足リナイ足リナイ
―――足リナイ足リナイ足リナイ足リナイ足リナイ!!
‥‥‥宙を舞いながら、賢者の石改め、愚者の石‥‥‥怪物名称ムーラッシュは、その出来立ての心の中でそう叫んでいた。
自分よりも小さな相手にふっ飛ばされ、魔法に関しても着実に耐性ができているはずなのに、なぜか今、怪物は目の前の相手を倒すことができていなかった。
何とか態勢を整え、魔法を正面から受きり、地面に立ち上がって攻撃を試みるも、その攻撃は全て交わされている。
いや、かわすだけではなく、何やら黒い布上のものが腕やハンマーなどに変化して打ち返し、攻撃そのものを利用してきているのだ。
破損しても、ムーラッシュは頭の愚者の石の力で、どこからでも材料を精製し、その部位を修復することができる。
だが、その愚者の石そのものは未完成なものに近く、材料が足りていないと本能的に理解しているのだ。
だからこそ、自身を完成させるための材料を喰らおうと動くのだが、大量にあると思われる先へ向かおうとするたびに、生まれた当初から邪魔する何者かに、再びふっ飛ばされ、何度も近づけないように妨害されてしまう。
―――何故ダ!!コノ石ハ完璧ナハズ!!
―――我々ガイルノニ、何故ウマクイカヌ!!
材料となった者たちの様々な思念が渦巻き、協議をし始めるのだが答えは出ない。
一つの強大な化け物となったはずなのに、それよりもさらに強大な化け物と言えるような相手に、勝てないのだ。
相手の魔法に対しては、既に耐性を得て、ほぼ無効化できているというのに。
相手の力に対して、自身の体表を固くして防御力を高めているのに。
相手の素早さに対して、目玉を増やして動きを捉え、避ける箇所を予想できているのに。
どのような手段を取っていても、目の前の存在に勝利することができていない。
相手が魔王ゆえか、それともムーラッシュ自身が未完成な粗悪品だからか。
その問いに、対しての答えは無いだろう。
ただ一つ、言えるのであれば…‥‥彼以上の完成品ともいえる存在が、戦闘に加わって、より戦況が悪化したぐらいである。
「ワゼ!発射用意!」
「すでにできていマス。ターゲットロックオン済みデス」
『グ、ゲ、ゴアアアアアアアーーーーーーー!!』
咆哮をあげるも、その声は届かない。
放たれる光の本流で胴体を貫かれ、再度再生することはできるのだが、ムーラッシュはそれを感じ取る。
自身の頭部に以上に膨らんだそれよりも、より純度の高い存在を。
自身の完成度よりも高く、製造工程が異なるのか、性質もやや違えども、似たような存在を。
―――ヨコセ
―――ヨコセヨコセヨコセ!!
―――ソレヲソレヲ!足リヌ物ヨリ優レタソノ、石ヲヨコセェェェェェェェェェ!!
全身全霊、自己再生をしながら心で叫び、求め尽くすムーラッシュ。
不完全であるがゆえに、完全なものを求めたくなり、そしてそれもまた、完全ではなかったりするが、それでも自身よりも優れた物を所持しているそれに対して、ムーラッシュは許すことができない。
「『プラズマ式放熱砲』発射!」
何を言って居るのか分からないが、強烈な灼熱感を感じ取り、失われた部位を高速で再生し、追い求めるムーラッシュ。
戦況は互に一手を欠くも、求める者と倒す者では、その戦闘のありように差が出ているのであった‥‥‥
―――――――――――――――――――――――――
SIDEシアン
『ギャゲゴガァァァァ!!』
「‥‥‥うわ。また超高速で再生しているな」
「いま一つ、攻めきれまセン」
あの王城から離れ、僕等は被害が周囲に及ばなそうな場所まであの怪物を運び、ここで戦闘を行っていたのだが‥‥‥いま一つ、決め手に欠けており、戦況が硬直していた。
相手にはどうも魔法に対しての耐性がかなり高くあるようで、既に魔法がほぼ通じなくなってしまった。
けれども、魔力の衣を利用した攻撃に対しては、魔法とはまた違うのか効果はあるようで、一撃、一撃っと攻撃はできる。
あとだてに魔王というだけ無くて、一応衣で強化して、ぶん投げたりとか荒業をやってみたりするけど‥‥‥これもちょっといま一つって感じがする。
そして、避難を終えさせ、追撃を求めてワゼ及びシスターズと共に現在、ムーラッシュと名付けた化け物相手に戦闘しているのだが‥‥‥うん、中々難しいな、この相手。
攻撃しても攻撃してもすぐに再生されるし、ゾンビ戦法というべき状態で、中々しつこい。
抉っては修復され、粉みじんにしては修復され、ぶった切られたらどっちかが消滅して、もう片方が修復して‥‥‥何だろう、このしつこさ。
「この様子だと、多分一気に全部を殲滅しなければいけないんだろうけれども…‥‥魔法が効果ないからな」
広範囲殲滅とか、そういう類をぶつければいいのだが、それがまた厳しい所である。
魔法耐性を持たれているようだし、攻撃をしても耐えきられては意味がないのだ。
「『荷電粒子砲』なども一部しかできませんからね…‥‥もっと大型でも、避けられては意味がありまセン」
ワゼの高火力武器でも、シスターズが常備している兵装でも、一部を攻撃することはできれども、全部を同時にとなると難しい。
相手が大きいのもあるし、強力な兵器となればそれだけ隙も大きくなってしまうのだ。
「‥‥‥合体とかは、どうだ?シスターズの合体フォルムの内、アレを一気に殲滅できる奴は?」
「厳しいデス。‥‥‥いえ、一つありますネ」
その問いかけに対して、考え込んだ後、ワゼはそう答えた。
「今、遠方のフロンに計算してもらったところ、敵を完全殲滅するには、何も全部を破壊する必要性はなく、あの頭の愚者の石そのものを消し飛ばせばいいだけのようデス」
そう言ってワゼが指をさしたのは、未だに赤く不気味に輝く、ムーラッシュの頭部にある愚者の石。
なにやら目玉も生えてきており、より一層不気味さを増していた。
「とはいえ、どうもあの石自体には、多くの攻撃耐性があるので‥‥‥威力が100分の1以下になってしまいマス」
胴体の魔法耐性以上に、あの頭部は全ての攻撃に対してかなり高い耐性を持ち、ワゼの兵装も全てに対応できてしまうようだ。
でも、あくまでも100分の1以下…‥‥ならば、それ以上の攻撃を叩きこめばいい。
「少々、出力オーバーになってしまうので、下手すれば少しの間動けなくなってしまいますが‥‥‥シスターズの合体で作る、特殊砲台で可能でしょウ。ただ、あれが動かれると意味がありまセン」
「じゃ、僕がその動きを止めるから、準備を頼む」
「了解デス!」
やれる方法があるのならば、やってしまえば良い。
強力な攻撃ゆえに相当な負担がかかってしまうだろうけれども、こいつを放置できないからね!
「『バインドシールド』!!」
魔力の衣を薄く伸ばし、あちこちへ向けて放出し、ムーラッシュの体へ捲きつけていく。
地面にしっかりとさして固定して、動けなくしていく。
その間に、シスターズがワゼの元へ集まり、彼女の右上に大きな大砲として合体する。
「‥‥‥エネルギー充填開始。ターゲットロックオン」
がシャンという音と共に、ワゼのメイド服から船のアンカーのような物が出現し、地面に刺さって固定する。
反動が大きい分、後退して狙いがずれないようになのか、大砲の後ろの方にもジェットエンジンの噴射口のような物が出現し、大きな砲身を敵へ向ける。
「ご主人様、場合によっては地面が完全にえぐり取られますので、できるだけ敵の愚者の石頭部を上の方へ向けてくだサイ」
「ああ、分かったよ」
魔王の衣を調整し、固定している敵の頭部をググっと押し上げる。
『グゲギャギゥイ…‥‥グゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!』
きゅいんきゅいんっとヤバ気な音がしてきているのを感じたのか、逃れようと動いているようだが、無理だろう。
逃す気もないし、この一撃で全てをかけて、潰すしかないと分かっているからね。
「哀れな愚者の石、愚か者の石。‥‥‥その力のあり方を見つめ直せば、もしかすると‥‥‥いえ、無理でしょウ」
砲口が輝き始め、発射まで数十秒ほどになったところで、ふとワゼが、どこか悲しげにつぶやく。
「なので、ここですべて消えてもらいます…‥‥シスターズ集合合体兵装『次元崩壊圧縮砲』、発射まで10秒‥‥‥という訳もなく、発射デス!」
カチッと言う音と共に、発射トリガーが引かれ、強烈なエネルギーの奔流がムーラッシュの元へ押し寄せう。
拡散することもなく、愚者の石を的確に包み込み、胴体部分に張っているであろう根の可能性も考慮して、全てを飲み込んでいく。
『グゲゲゲゲゲゲゲゲゲエエエエエエえ――――――――――――!!』
断末魔を上げ、消えていく怪物ムーラッシュ。
‥‥‥もしかすると、飲み込まれた者たちは、元々の根が悪くはなく、純粋に国のために想っていたのだろう。
でも、大きすぎる力を求めてしまう中で、変わってしまったのだろう。
人の欲望が人を変えてしまう恐ろしさの一端を、あの怪物は見せたに違いない。
そう思っている間にも、相手は全身が完全に光に包まれ‥‥‥‥その光が消え去った後には、塵一つ、何も残っていないのであった‥‥‥‥
「…‥‥ムーラッシュ、完全消滅を確認」
「よし、それじゃ、帰ろうか」
念のために周囲一帯を探索し、何か残っていないかと確認して、何も残されていなかったので、ハクロたちがいる場所へ向けて、僕等は帰還する。
ワゼがあの馬車を取り出し、それに乗車して、その場を僕らは去ったのであった。
(…‥‥哀れな愚者の石。あなたは、己の欲望だけに従ったがゆえに、その力は暴走してしまッタ。私は、ご主人様のためにということで、力を使っているのですが…‥‥愚か者になった末路を見せてもらい、危険性を把握できたその事だけは、感謝いたしマス。私の中にある賢者の石は、絶対にそうさせませんからネ)
…‥‥ワゼがそう心の中で思ったが、それはシアンには告げていなかった。
ある意味、彼女も同じようなもの持っていたが、その力の使いようは、愚か者たちとは異なっている。
欲望にさらされた場合の、末路を見て、ワゼが自身の力に気を引き締めていたが…‥‥少なくとも、あの愚か者どものようになることはないと、予感させるのであった‥‥‥‥
―――足リナイ
―――足リナイ足リナイ足リナイ
―――足リナイ足リナイ足リナイ足リナイ足リナイ!!
‥‥‥宙を舞いながら、賢者の石改め、愚者の石‥‥‥怪物名称ムーラッシュは、その出来立ての心の中でそう叫んでいた。
自分よりも小さな相手にふっ飛ばされ、魔法に関しても着実に耐性ができているはずなのに、なぜか今、怪物は目の前の相手を倒すことができていなかった。
何とか態勢を整え、魔法を正面から受きり、地面に立ち上がって攻撃を試みるも、その攻撃は全て交わされている。
いや、かわすだけではなく、何やら黒い布上のものが腕やハンマーなどに変化して打ち返し、攻撃そのものを利用してきているのだ。
破損しても、ムーラッシュは頭の愚者の石の力で、どこからでも材料を精製し、その部位を修復することができる。
だが、その愚者の石そのものは未完成なものに近く、材料が足りていないと本能的に理解しているのだ。
だからこそ、自身を完成させるための材料を喰らおうと動くのだが、大量にあると思われる先へ向かおうとするたびに、生まれた当初から邪魔する何者かに、再びふっ飛ばされ、何度も近づけないように妨害されてしまう。
―――何故ダ!!コノ石ハ完璧ナハズ!!
―――我々ガイルノニ、何故ウマクイカヌ!!
材料となった者たちの様々な思念が渦巻き、協議をし始めるのだが答えは出ない。
一つの強大な化け物となったはずなのに、それよりもさらに強大な化け物と言えるような相手に、勝てないのだ。
相手の魔法に対しては、既に耐性を得て、ほぼ無効化できているというのに。
相手の力に対して、自身の体表を固くして防御力を高めているのに。
相手の素早さに対して、目玉を増やして動きを捉え、避ける箇所を予想できているのに。
どのような手段を取っていても、目の前の存在に勝利することができていない。
相手が魔王ゆえか、それともムーラッシュ自身が未完成な粗悪品だからか。
その問いに、対しての答えは無いだろう。
ただ一つ、言えるのであれば…‥‥彼以上の完成品ともいえる存在が、戦闘に加わって、より戦況が悪化したぐらいである。
「ワゼ!発射用意!」
「すでにできていマス。ターゲットロックオン済みデス」
『グ、ゲ、ゴアアアアアアアーーーーーーー!!』
咆哮をあげるも、その声は届かない。
放たれる光の本流で胴体を貫かれ、再度再生することはできるのだが、ムーラッシュはそれを感じ取る。
自身の頭部に以上に膨らんだそれよりも、より純度の高い存在を。
自身の完成度よりも高く、製造工程が異なるのか、性質もやや違えども、似たような存在を。
―――ヨコセ
―――ヨコセヨコセヨコセ!!
―――ソレヲソレヲ!足リヌ物ヨリ優レタソノ、石ヲヨコセェェェェェェェェェ!!
全身全霊、自己再生をしながら心で叫び、求め尽くすムーラッシュ。
不完全であるがゆえに、完全なものを求めたくなり、そしてそれもまた、完全ではなかったりするが、それでも自身よりも優れた物を所持しているそれに対して、ムーラッシュは許すことができない。
「『プラズマ式放熱砲』発射!」
何を言って居るのか分からないが、強烈な灼熱感を感じ取り、失われた部位を高速で再生し、追い求めるムーラッシュ。
戦況は互に一手を欠くも、求める者と倒す者では、その戦闘のありように差が出ているのであった‥‥‥
―――――――――――――――――――――――――
SIDEシアン
『ギャゲゴガァァァァ!!』
「‥‥‥うわ。また超高速で再生しているな」
「いま一つ、攻めきれまセン」
あの王城から離れ、僕等は被害が周囲に及ばなそうな場所まであの怪物を運び、ここで戦闘を行っていたのだが‥‥‥いま一つ、決め手に欠けており、戦況が硬直していた。
相手にはどうも魔法に対しての耐性がかなり高くあるようで、既に魔法がほぼ通じなくなってしまった。
けれども、魔力の衣を利用した攻撃に対しては、魔法とはまた違うのか効果はあるようで、一撃、一撃っと攻撃はできる。
あとだてに魔王というだけ無くて、一応衣で強化して、ぶん投げたりとか荒業をやってみたりするけど‥‥‥これもちょっといま一つって感じがする。
そして、避難を終えさせ、追撃を求めてワゼ及びシスターズと共に現在、ムーラッシュと名付けた化け物相手に戦闘しているのだが‥‥‥うん、中々難しいな、この相手。
攻撃しても攻撃してもすぐに再生されるし、ゾンビ戦法というべき状態で、中々しつこい。
抉っては修復され、粉みじんにしては修復され、ぶった切られたらどっちかが消滅して、もう片方が修復して‥‥‥何だろう、このしつこさ。
「この様子だと、多分一気に全部を殲滅しなければいけないんだろうけれども…‥‥魔法が効果ないからな」
広範囲殲滅とか、そういう類をぶつければいいのだが、それがまた厳しい所である。
魔法耐性を持たれているようだし、攻撃をしても耐えきられては意味がないのだ。
「『荷電粒子砲』なども一部しかできませんからね…‥‥もっと大型でも、避けられては意味がありまセン」
ワゼの高火力武器でも、シスターズが常備している兵装でも、一部を攻撃することはできれども、全部を同時にとなると難しい。
相手が大きいのもあるし、強力な兵器となればそれだけ隙も大きくなってしまうのだ。
「‥‥‥合体とかは、どうだ?シスターズの合体フォルムの内、アレを一気に殲滅できる奴は?」
「厳しいデス。‥‥‥いえ、一つありますネ」
その問いかけに対して、考え込んだ後、ワゼはそう答えた。
「今、遠方のフロンに計算してもらったところ、敵を完全殲滅するには、何も全部を破壊する必要性はなく、あの頭の愚者の石そのものを消し飛ばせばいいだけのようデス」
そう言ってワゼが指をさしたのは、未だに赤く不気味に輝く、ムーラッシュの頭部にある愚者の石。
なにやら目玉も生えてきており、より一層不気味さを増していた。
「とはいえ、どうもあの石自体には、多くの攻撃耐性があるので‥‥‥威力が100分の1以下になってしまいマス」
胴体の魔法耐性以上に、あの頭部は全ての攻撃に対してかなり高い耐性を持ち、ワゼの兵装も全てに対応できてしまうようだ。
でも、あくまでも100分の1以下…‥‥ならば、それ以上の攻撃を叩きこめばいい。
「少々、出力オーバーになってしまうので、下手すれば少しの間動けなくなってしまいますが‥‥‥シスターズの合体で作る、特殊砲台で可能でしょウ。ただ、あれが動かれると意味がありまセン」
「じゃ、僕がその動きを止めるから、準備を頼む」
「了解デス!」
やれる方法があるのならば、やってしまえば良い。
強力な攻撃ゆえに相当な負担がかかってしまうだろうけれども、こいつを放置できないからね!
「『バインドシールド』!!」
魔力の衣を薄く伸ばし、あちこちへ向けて放出し、ムーラッシュの体へ捲きつけていく。
地面にしっかりとさして固定して、動けなくしていく。
その間に、シスターズがワゼの元へ集まり、彼女の右上に大きな大砲として合体する。
「‥‥‥エネルギー充填開始。ターゲットロックオン」
がシャンという音と共に、ワゼのメイド服から船のアンカーのような物が出現し、地面に刺さって固定する。
反動が大きい分、後退して狙いがずれないようになのか、大砲の後ろの方にもジェットエンジンの噴射口のような物が出現し、大きな砲身を敵へ向ける。
「ご主人様、場合によっては地面が完全にえぐり取られますので、できるだけ敵の愚者の石頭部を上の方へ向けてくだサイ」
「ああ、分かったよ」
魔王の衣を調整し、固定している敵の頭部をググっと押し上げる。
『グゲギャギゥイ…‥‥グゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!』
きゅいんきゅいんっとヤバ気な音がしてきているのを感じたのか、逃れようと動いているようだが、無理だろう。
逃す気もないし、この一撃で全てをかけて、潰すしかないと分かっているからね。
「哀れな愚者の石、愚か者の石。‥‥‥その力のあり方を見つめ直せば、もしかすると‥‥‥いえ、無理でしょウ」
砲口が輝き始め、発射まで数十秒ほどになったところで、ふとワゼが、どこか悲しげにつぶやく。
「なので、ここですべて消えてもらいます…‥‥シスターズ集合合体兵装『次元崩壊圧縮砲』、発射まで10秒‥‥‥という訳もなく、発射デス!」
カチッと言う音と共に、発射トリガーが引かれ、強烈なエネルギーの奔流がムーラッシュの元へ押し寄せう。
拡散することもなく、愚者の石を的確に包み込み、胴体部分に張っているであろう根の可能性も考慮して、全てを飲み込んでいく。
『グゲゲゲゲゲゲゲゲゲエエエエエエえ――――――――――――!!』
断末魔を上げ、消えていく怪物ムーラッシュ。
‥‥‥もしかすると、飲み込まれた者たちは、元々の根が悪くはなく、純粋に国のために想っていたのだろう。
でも、大きすぎる力を求めてしまう中で、変わってしまったのだろう。
人の欲望が人を変えてしまう恐ろしさの一端を、あの怪物は見せたに違いない。
そう思っている間にも、相手は全身が完全に光に包まれ‥‥‥‥その光が消え去った後には、塵一つ、何も残っていないのであった‥‥‥‥
「…‥‥ムーラッシュ、完全消滅を確認」
「よし、それじゃ、帰ろうか」
念のために周囲一帯を探索し、何か残っていないかと確認して、何も残されていなかったので、ハクロたちがいる場所へ向けて、僕等は帰還する。
ワゼがあの馬車を取り出し、それに乗車して、その場を僕らは去ったのであった。
(…‥‥哀れな愚者の石。あなたは、己の欲望だけに従ったがゆえに、その力は暴走してしまッタ。私は、ご主人様のためにということで、力を使っているのですが…‥‥愚か者になった末路を見せてもらい、危険性を把握できたその事だけは、感謝いたしマス。私の中にある賢者の石は、絶対にそうさせませんからネ)
…‥‥ワゼがそう心の中で思ったが、それはシアンには告げていなかった。
ある意味、彼女も同じようなもの持っていたが、その力の使いようは、愚か者たちとは異なっている。
欲望にさらされた場合の、末路を見て、ワゼが自身の力に気を引き締めていたが…‥‥少なくとも、あの愚か者どものようになることはないと、予感させるのであった‥‥‥‥
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