ダンジョン配信ですよ、我が主 ~いや、貴女が配信したほうが良いような~

志位斗 茂家波

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チャンネル2 地道に広がる他者との交流

第五十六話 敵情視察と交流

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…血のつながりはない、それでも大事な兄との話。

 それが例えたわいのない世間話になったり、懐かしい思い出に浸るものだとしても、様々な話を交わせるのは楽しく、異土雪夜にとっては何物にも代えがたいこの話の時間が過ぎるのも忘れて…


「っと、しまった。だいぶ話し合っていたら外が暗いけど…雪夜、お前明日は学校あるなら早く帰ったほうが良いんじゃないか?」
「あら、大丈夫ですわよ、お兄様。明日は都合よくこちらは休みなのですわ。なので、今日はこちらの方で適当に泊まるところを探しますわよ」

 気が付けば時間が過ぎていて、外が暗くなり始めていた様子。

 そのこともあって、大事なお兄様は一人帰宅するのを心配されたようだけど、そのような心配をさせるような真似はしない。



「あ、でも探すってことは今はまだ見つけてないよね…?うちの寮、確か一応関係者であれば宿泊できるけど、どうかな?」
「そうですの?なら、お言葉に甘えさせてもらいますわ」
【大丈夫です、そうなるかと思いまして、手続きは既に行っておきまシタ】
「ああ、仕事が早いね、エリーゼ」

…お兄様のメイドのマジックアイテムことエリーゼさん。

 既に読めていたのか、宿泊手続きを済ませてもらったのは良いですけれども、やはり油断できない相手ですわね。





「…そして招かれたのが、この三人の住まう女子寮の方ですのね」
【いやまぁ、流石に主殿の男子寮で泊まるわけにもいかないだろう?】
主様ぬしさまの妹ですし、私たちの部屋なら、とびきり安全ですから、遠慮しなくても大丈夫ですよ】
 
 安全と言えば、確かに安全なのだろう。

 ダンジョンを貫けるメイドに、鉄壁のナーガ、捕縛や回復拷問が可能なタラテクト…こんな彼女たちがる場所を襲撃しようとする輩がいる方が、命知らずである。

(…お兄様の配信で、ある程度の事前知識はありますものね)

 大事な兄の周囲にいる人の調査は、しっかりやっておくものである。

 義妹のやることとしては当然のことであり、あのろくでなしだったDVな父親のような女が来ないようにするためのものだ。

「それで、招かれたのは良いですけれども…なんですの、これ」
【いたって普通の、女性三人住まう部屋ですガ?】
「明らかに、!!」

 予想以上に、これはやらかしている様子。

 異土を守るためとはいえ防具も桁違いにヤバいものを渡していたことから考えていたが、彼女たちは常識から考えても色々とおかしな部分が多すぎる。

【これですカ?メイドたるもの、主に窮屈さを感じさせないように、ある程度の空間圧縮工法技術の取得を行っておりまして、『ハコニワ』と呼ばれるモノの応用でやったのデス。何しろ、皆大きいので…】
【それを言われたくはないが、まぁ否定はしない】
【ふふふ…快適に過ごせるのならば、問題は無いですものね】

 エリーゼの言葉に、大きな蛇の下半身を持つサクラに、蜘蛛の下半身を持つクロハがそう答えるので間違ってはいない使い方ではあるが、やっていることは滅茶苦茶なもの。

【ついでに、風呂場も女子寮の風呂では手狭になりがちでしタシ、他の皆さまでは人間と、マジックアイテムやモンスターでは見た目が似通っても不安を隠せない部分もあると思われましたノデ、こちらに我々用の風呂場も増設してるのデス。ああ、水道は私のサブ炉心の一つ、『ブルーコアブロック』で無限に湧き出る水で転送して代用してますので、問題は無いのデス】
「風呂場も作ってどこまでやってますの…わぉ、こちらも広いですわね」

 大きな風呂場があるのは嬉しい事ではあるが、さらっと何やらさらなるとんでもないことを混ぜ込まれた気がしなくもない。


(いやほんとうに…心配して身に来てよかったかもしれないですわね。彼女たちの常識、お兄様の常識をゆがめかねないですもの…)

 心から思う兄への心は、間違っていなかったのかもしれない。

 しいて言うのであれば、血のつながりは無くとも似通った突っ込み属性は有しているため、どれほどの心労があったのかも察してしまい、兄への心の負担軽減策を色々と用意しなければいけないかと、その緊急性を見直す必要が増えたことだろうか。

 とにもかくにも、まずは目の前の大きな風呂に浸かって考えを放棄したほうが良いのかもしれない。

 そう考えた雪夜ではあったが…


「…」
【ふぅ、いい湯ですねネ】
【ん?どうしたのだ、主殿の妹殿】
【私たちの、大きさのだと深すぎますでしょうか…?】

 思わずじとっとした目で見てしまうのは、湯船に浮かぶ豊かな証。

 自分もまたそこまでではないとは思うのだが…いかんせん、相手が規格外すぎる。

「…皆さまが色々と健康体なのが良いなと思いましてね。昔、病弱だった時に、お兄様に不安にさせてしまったことがあったのですもの」
【ふむ、なるほどデス。しかし…その、私はマジックアイテムですし、他の方々はモンスター。人間とはそもそも構造が色々と違いますからネ】

 勢いで少々ごまかしたが、言われてみればその通りでもある。

 まぁ、という部分はあったりするが…これに関しては兄にも秘密であり、彼女たちに話すようなことではない。


【それでもま、せっかくの裸の付き合いという奴だし‥妹殿、主殿に関してのお話とかしていただけないだろうか】
「え?」
【そうですね…ふふ、主様ぬしさまの幼い時のお話なども、伺いたいです】
「…まぁ、良いですわ。せっかくの宿泊の恩義ですし、お兄様の特別秘話をいくつか伝えても良いですわね」


 色々と思うところはあれども、彼女たちが純粋に異土を思っているのは、間違いないだろう。

 悪意はなく、そしてしっかりと仕えるべき相手とみなし、その感情や有りようは短い間の交流だけでも伝わってくるもの。

(まぁ、お兄様に対して常識と女性の理想を色々とおかしくしそうな方々ですので、そこはまだ警戒すべきですわよね…)

 確実に、放置しぱなっしでは将来的に兄に悪影響を与えることがあるかもしれない。

 そう、妹として、血のつながりの無い義妹だからこそ、密かに抱く考えにも影響を及ぼす可能性だってある。


 だからこそ、しっかりと眼を光らせていくべきだと心の中で想いつつも、それなりに異土に関しての幼い時の話をいくつか話してあげるのであった…




「ああ、そうだわ。せっかくですし、お兄様での秘蔵画像もいくつか持っておきます?普段、お兄様は色々と素直ですけれども、本当に頑固になった時に使えばいいですわ」
【秘蔵画像?その手の類は普通、青少年の思春期には見られたくないようなものばかりだと思うのですガ】
「実家での、お兄様がわたくしや近所のみっちゃんなどに女装させられた時のいくつかのものですわよ」
【【【もらいましょう】】】





「ーーーひぇっ?なんか今、すっごい悪寒が…」


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