黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波

文字の大きさ
217 / 339
迷いの冬で章

閑話 とある国王陛下と王子たち

しおりを挟む
―――――我が名はハイドラ=バルモ=グレイモ。

 このグレイモ王国の現国王なのだが、ただ今会議室内では皆が難しい顔をしていた。

 この会議室、本来であれば貴族たちが国政を行うための場なのだが、ここに集められたのは、余が信頼できる重臣たちばかりである。

 そして中でも、今回の議題に関して、最も険しい顔をしているのは、余の親戚でもある公爵家‥‥‥カイゼル=バルモ=ミストラルであった。




 今回の議題、内容がかなり重要であり、その為にハイドラ国王に取って信頼のおける臣下たちの中でも、最も信頼のおける者たちばかりを急きょ招集したのだが…‥‥やはり、ミストラル公爵が渋い顔をするであろうという事は、予想ができていた。


「‥‥‥では、国王陛下はその案を通したいと?」

 しばしの無言の圧力が会議室内に浸透し、ようやく公爵が口を開いて尋ねてきた。

「ああ、その通りだ。来週には発表したいのだが…‥‥どうだろうか?」
「ふむ……我々も狙っていた人物に対して、まさか陛下が自ら動かれるとは少々予想外でしたが‥‥‥王命であるのならば、問題はないかと思われますな」
「ただ、それはあくまできちんと陛下の命令を受け入れられる者たちに限ってであり、当然反発する者がでるのは間違いないでしょう」

 意見が色々出るが、やはり一番問題なのはその反発する者たちである。

 迂闊に抑え込めば反乱が起きる可能性があるし、かと言って何もしなければ問題を起こすとしか思えない。

 何か問題が起きてしまえば、それこそ面倒ごとになり、下手すればフェイカーからの攻撃を受ける可能性も出てきてしまうのである。



「一応、本人たちは納得済みだが…‥‥」
「それでも、肝心のその相手の方が納得するかどうかというのも疑問ですよね?」

 国王の言葉に対して、ミストラル公爵が口を挟んだ。

 やはりというか、国益などを考えれば反対しないのだろうが…‥‥別の点でやや反発されているようである。

 ここで下手に出れば敵対され、そうなればそこからいろいろと面倒ごとが起きるのもまた事実。




 頭を悩ませつつ、ハイドラ国王はある事を思いついた。

「いや、納得する手段はあるだろう」
「というと?」
「好条件を出しまくるとのいうのはもちろんだが…‥‥最終的にはやはり相手の気持ち。そこに誘導できるように、それとな~~~~く雰囲気を創り出せばいいだけの話だ。また、本人たちに他からも口を出せる話し合いの場を設けさせれば、大丈夫だ…‥‥と思いたい」
「…‥‥」


 国王のその言葉に、その場に居た全員は考えこみ‥‥‥そして渋々と了承した。

「そうであれば、それでいいと思われます」
「異議なし」
「色々と言いたいことがありますが‥‥‥まぁ、王命とあらば逆らうこともありません」
「ですが国王陛下」
「「「「何かあれば、率先して動いてくださいね?」」」」
「…‥‥はい」

 一応、この場にいるのは国王の信頼のおける臣下たちのはずなのだが…‥‥皆から目を向けられ、告げられたその言葉に思わずハイドラ国王は身を縮め、小さく答えた。

 仮にも国のトップだが、臣下たちからのプレッシャーがすごかったのである。

 何にせよ、全会一致でその会議は終わるのであった‥‥‥‥。
 








 丁度その会議が終わったころ、王城のある一室に集まっている者たちがいた。

「‥‥‥なぁ、なんでここに我々が集まったのか理解できているな?」
「ああ、同じ意見でな」
「普段は王位を争うべきなのだろうが…‥‥皆が一つにまとまらなければいけない事態になったからな」


 そこに集まっていたのは、この国の第1王子アレス=バルモ=グレイモ、第2王子ハルバーン=バルモ=グレイモ、第3王子ギェーア=バルモ=グレイモであった。

 彼らは本来、この国の次期国王の座を争うべき王子たちであったが、とある共通点があったがゆえに、互いに蹴り落とそうなどというドロドロとした醜い争いにまではいかなかった。

 だがしかし、今回はそのとある共通点に関することが起き、その為に一旦争いを止め、共同戦線を張ることにしたのである。


 いくら国益につながりそうで、この国の安寧にもなるかもしれないとしても‥‥‥‥やはり、受け入れがたいことはあるのだ。

 次期国王になるのであれば、切り捨てていかねばならないことだってあるはずだ。

 けれども、切り捨てられないことだってあるのだ。



 その為、彼らは互に意思を確かめあい、暗黙の了解を互いに取って、心を一つにする。

 失敗すれば王籍剥奪の可能性もあるが、それでもかまわない。

 彼らにとって、大事なのは自分たちの権力ではなく‥‥‥‥愛すべき妹たちなのだ。

「いくら父上が決めたことでも」
「やはりまだまだ早いし、できればもっとそばにいて欲しい」
「その為にも、ここはやはり」
「「「我々が行動を起こさねば、誰がやるのだというのか!!」」」

 声を合わせ、その決断の強さを測り、そして互いに認めあう。

…‥‥重度のシスコン王子たちによる企みは、その日から念入りに練られていくのであった。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...