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12.神様、わかってないです
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(これって本の挿絵で見たような気がするけど……。英国貴族のお屋敷にいるような感じの)
美奈子さんにお借りした恋愛小説だったと思う。
英国貴族の青年が、少し下の階級の娘と恋をするみたいなお話だった。
(すごく浪漫てぃいくだったわ)
でも現実にはありえない。
ありえない夢だからこそ、あの小説は面白いんだけど。
(とにかく、このお姿じゃダメってことだけは確かだわ)
白銀の長毛、輝くように美しい大型犬なんて、この町はおろか日本中探してもそんなにはいないと思うから。
「ダメですよ。こんな綺麗な犬がその辺を歩いてたら、すぐに捕まります」
「な……! 誰が我を捕まえるというのだ」
くわっと大きな口を開けて、白い犬姿の神様が抗議してくる。
「そのような罰当たりは……」
「罰当たりでもなんでもです。すぐに捕まって売られてしまいますよ。都会のお金持ちに。言いましたよね? みんな生活が苦しいって」
「美しすぎるということか? このように身をやつしたのにか?」
「はい。そうです」
きっぱり言ってやった。
神様の基準はやはりおかしい。
犬に化けるのでさえ、美しさは譲れない基準みたいだ。
「犬に化けるなら、もっとどこにでもいそうなのにしてください。大きさもですよ? 大きいってだけで目立ちますからね」
野良犬の荒々しさは、どう頑張っても神様には無理だ。
飼い犬に化けるなら、あまり大きすぎちゃダメだと思う。
軍用犬は別だけど、それ以外でこの町に大きな犬はいない。
「う……う……」
ものすっごく嫌そうに、白い犬の神様は唸っておいでになる。
「仕方あるまい」
ぼそっと声がして、ぽんっと今度はあまり強くない光が神様の身体を包んだ。
「これが我の譲れる限界だ」
光が消える瞬間、不本意極まりないのがすぐわかる不貞腐れた声がする。
茶の毛並みの、ころころした柴犬が、ぷいっと横を向いていた。
三角の耳がピンと立って、小さな尻尾はくるんと巻いている。
体長五十センチくらい。
ちゃんと小型犬だ。
「かっ……かわいい!」
思わず手を伸ばして抱き上げた。
「やめぬか! 咲耶子、我をなんとこころえる?」
短い手足をジタバタさせているので、エラそーな口調がかえっておかしい。
「これなら大丈夫です。あ、でもかわいすぎるから、連れていかれるかも。私の側を離れないでくださいね」
もふもふした茶と白の頭を見ると、思わず頬擦りしたくなる。
だからした。
短い手足がまたジタバタ暴れる。
「よさぬか、咲耶子。は……はしたない」
超絶美貌の神様になら絶対こんなことはしない。
でもこの姿なら、むしろしないでいる方が難しい。
「だってかわいいんです。もう神様、これからずっとこの姿でいてください」
少し間があって。
「咲耶子が望むなら」
ジタバタをやめた神様は、ふいっと顔を背けていた。
美奈子さんにお借りした恋愛小説だったと思う。
英国貴族の青年が、少し下の階級の娘と恋をするみたいなお話だった。
(すごく浪漫てぃいくだったわ)
でも現実にはありえない。
ありえない夢だからこそ、あの小説は面白いんだけど。
(とにかく、このお姿じゃダメってことだけは確かだわ)
白銀の長毛、輝くように美しい大型犬なんて、この町はおろか日本中探してもそんなにはいないと思うから。
「ダメですよ。こんな綺麗な犬がその辺を歩いてたら、すぐに捕まります」
「な……! 誰が我を捕まえるというのだ」
くわっと大きな口を開けて、白い犬姿の神様が抗議してくる。
「そのような罰当たりは……」
「罰当たりでもなんでもです。すぐに捕まって売られてしまいますよ。都会のお金持ちに。言いましたよね? みんな生活が苦しいって」
「美しすぎるということか? このように身をやつしたのにか?」
「はい。そうです」
きっぱり言ってやった。
神様の基準はやはりおかしい。
犬に化けるのでさえ、美しさは譲れない基準みたいだ。
「犬に化けるなら、もっとどこにでもいそうなのにしてください。大きさもですよ? 大きいってだけで目立ちますからね」
野良犬の荒々しさは、どう頑張っても神様には無理だ。
飼い犬に化けるなら、あまり大きすぎちゃダメだと思う。
軍用犬は別だけど、それ以外でこの町に大きな犬はいない。
「う……う……」
ものすっごく嫌そうに、白い犬の神様は唸っておいでになる。
「仕方あるまい」
ぼそっと声がして、ぽんっと今度はあまり強くない光が神様の身体を包んだ。
「これが我の譲れる限界だ」
光が消える瞬間、不本意極まりないのがすぐわかる不貞腐れた声がする。
茶の毛並みの、ころころした柴犬が、ぷいっと横を向いていた。
三角の耳がピンと立って、小さな尻尾はくるんと巻いている。
体長五十センチくらい。
ちゃんと小型犬だ。
「かっ……かわいい!」
思わず手を伸ばして抱き上げた。
「やめぬか! 咲耶子、我をなんとこころえる?」
短い手足をジタバタさせているので、エラそーな口調がかえっておかしい。
「これなら大丈夫です。あ、でもかわいすぎるから、連れていかれるかも。私の側を離れないでくださいね」
もふもふした茶と白の頭を見ると、思わず頬擦りしたくなる。
だからした。
短い手足がまたジタバタ暴れる。
「よさぬか、咲耶子。は……はしたない」
超絶美貌の神様になら絶対こんなことはしない。
でもこの姿なら、むしろしないでいる方が難しい。
「だってかわいいんです。もう神様、これからずっとこの姿でいてください」
少し間があって。
「咲耶子が望むなら」
ジタバタをやめた神様は、ふいっと顔を背けていた。
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いつも応援をありがとうございます!
大正ロマンの香り高き物語です。瀬戸内の情景と文調が実にしっくりきます。奇想天外でわがままな美神のマーケティングは、田舎町の繁栄につながるのか?展開が楽しみです。
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神様が何をしでかしてくれるか、楽しみながら書いています。
これからもよろしくお願いします。