産土神(うぶすながみ)様に婚活エージェントを頼まれました

yukiwa

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11.神様、ついて行きたいって

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「それは良い」

 五崎の別荘へ伺う話をしたら、神様は心ここにあらずの生返事をくれた。
 咲耶子が捧げ持つ三方、お餅をこんもり盛ったそれを、琥珀の瞳はガン見している。

「吉田の伯父からです」

 差し出すと、神様はてっぺんのお餅をひとつ手に取って、ぱくりと召し上がる。
 
「餡入りとは、気が利いている」

 よほどお気に召したんだろう。
 すぐに二つ目に手を伸ばした。
 神様は甘いものが大好きだ。
 でもお砂糖は贅沢だから、滅多にお供えには回らない。

「まだたくさんありますよ。ゆっくり召し上がって……」
「なにを言う。餅はやわらかい方が美味い。硬くなる前に……」
「はいはい」

 両手に餡入りのお餅を持って、屁理屈をこねるんだから。
 おかしくて仕方ない。

「で、咲耶子。明日、豪族の息子に会いに行くのだな?」

 山盛りだったお餅をすっかりたいらげた後、神様は何もなかったみたいな表情かおで切り出した。

「ええ。明日、五崎様からお迎えが来るんですって。自動車よ、自動車!」

 ご挨拶に伺うだけの客に、お迎えを寄こしてくださるなんてかなりおおらかで太っ腹だと思う。
 それに自動車!
 この町で自動車なんて、軍隊とお役所、後は美奈子さんのお家でしか見たことない。
 もちろん乗ったことなんかない。

(馬も人も引かないのに動くんだって。あれに乗れるのよ。楽しみだわ)

 わくわくしていると、神様がふんと鼻を鳴らした。

「じどうしゃとやらが、それほど嬉しいのか」
「それは嬉しいですよ。とっても珍しい乗り物なんですから」
「心配だな」

 ぼそりと低い声。
 神様は綺麗な眉を寄せて、あからさまに不機嫌な表情をしている。

「我もついて行こう」
「え?」

 ついて行くって言った?
 明日の五崎家への訪問に?
 
「神様、どうやってついて来るつもりですか?」

 まさかこの姿のままとか言うのだろうか。
 見るからに人間離れした美貌とこの装束で来るとか。

(いやいや、無理。それはないわ)

「か……神様は、そのあまりにお美しくて人目をひきすぎるので」
「我が美しいのは当然のことだ。案ずるな、目立たぬよう変化してやる」

 褒めて断ろうとしたのに。
 あっさり流されてしまった。
 それに変化するって?

「変化ってどういうことですか?」
「そなたの言うとおり、この姿では神々しすぎよう。ゆえに俗な姿に身をやつす」
「俗な姿ですか……」

 人にでもお化けになるつもりか。
 神様にとって人とは、俗なものだといつも言ってたから。
 あまりきれいな人だと目立つと注意しようとしたところ。
 
 ぱぁっと白い光が拝殿を覆う。
 まばゆくて清らかな輝きの中に神様の声が響いた。
 
「これでどうだ?」

 輝く白銀の、美しい大型犬が立っていた。
 
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