ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話

NANiMO

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家主の距離が近すぎる

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予約公開の日付ミスにより、⑧より先に⑨を公開してしまいました。
申し訳ありません。
______



「ありえない!!」

ブライアン、トーマス、両者ともにキンとする耳を撫でる。リエは周囲からの不審と批判的な眼差しをもろともせずまくしたてた。

「ありえないわ! 日本人にとって告白は大事な文化なの。二人が付き合う時に告白がないなんて! 海外では問題なくても、こっちは脈アリなんだかキープなんだか理解できなくてストレスが溜まる状況にさらされるの! っていうかトーマス、あなたカレに自分が同性愛者だってこと、伝えているの? もしくはカレもなの?」

「あー……伝えてない。それに、カレはノンケだよ。でも、でもね? カレはJPとUKのハーフで、昔は向こうで暮らしていたんだ。それにパートナーだと認めてくれた。キスだってした。カレは嫌じゃないと言った」
「でも、あなたのカレ、気が弱いんでしょ?」
「それは言い方の違いだよ。シャイなんだ……ほんの少しだけね。ああ、待って」

一言断って、トーマスはスマートフォンの画面に目を移す。人差し指をこめかみに当てるのは、どうしたものかと困っている時の癖だ。

「あぁ……彼は食事とはどういったものなのかを知らないのか? いつも同じエネルギーバーを食べて、スポンサー契約でもしているのか?」
「噂のカレ?」
「そうだよ、噂のカレだ。ちゃんと食事しているか気になってね。だけど、私に監視されているからといって、彼は彼のスタイルを変えるつもりはないみたいだ。今日もエネルギーバーだよ、ありえないだろ」

スマートフォンを覗き込んで、首を横に振る。
『大豆バーだから健康だよ』なんてメッセージが添えられた写真に隠し切れない失望のため息。
一部始終を見ていたブライアンがブッと噴き出す。

「監視! ペットカメラでもつけてるのか? カレは子猫ちゃんかな」
「体はシリアル並みに軽いし、小さいし、目を離すと死んでしまいそうで不安なんだ。一番下の妹より心配になる」

思わぬ過保護ぶりにブライアンが体をのけ反らせ、リエは目を輝かせた。色恋の話が大好物のようだ。

「お、おい。僕は確かにきみのことを認め、理解しているけど、さすがにペドはマズいだろ……」
「彼は成人男性だよ。少し年下だけど、カワイイ子なんだ」
「そうか……僕はもう関与しないよ。僕は僕の恋愛で手一杯だからね」
「きみのことも応援してるよ。新しい恋を始める踏ん切りがつかなくても、とりあえずバーに行ったらいい」
「僕は振られてない!」
「それで、話はあなたのシリアルカレシのこと。正面から話し合った方がいいと思うわ」

カレから連絡が来たことは、ナイスタイミングな口実になったが、リエは話を逸らすことを許してくれなかった。トーマスはがっかりして首を横に振る。

「リエ、何度も言うけどそんなに心配しなくてもいいよ。私たちはうまく行ってる」
「今後もそうだとは言えないじゃない。ほら、ブライアンを見て。付き合ってるつもりだったのにカノジョにすげなく振られた男がここにいるのよ」
「うーん……」
「僕を『反面教師』にするな! トーマス、納得するなよ!」

トーマスは己を省みる。
しかし、自らの行動になんら問題があったとは思えない。

自分がゲイだと伝えなかったのは、意図的にそうしたわけではなく、単にタイミングを逃した状態で前進してしまったからだ。何の計画も持たずに旅行へ行くようなものだったが、結果的にトーマスとハイネは行き当たりばったりでもなんとかやっていけるほど相性が良かった。

それに、いくら2年以上の付き合いとはいえ、好意のない相手から突然一緒に住もうと提案されたら断るなり訝しむなりするだろう。ところがハイネは二つ返事で了承して、事実、現在自分の家にいる。それはつまり、ハイネも運命を感じたということに他ならない。
気のない相手とキスするか? 同棲の誘いをした時点で、自身が同性愛者であることは簡単に察することができるはずだ。ハイネはそれを承知で了承し、キスまでは許してくれた。

リエの言い分からすると、ハイネは流されるままに同棲の了承をして、キスを許したということになる。
そんな、まさか。

トーマスは内心で笑い飛ばすが、同時に、心の底に燻っていた黒い塊も、のっそりと首をもたげた。
ハイネに不満が無いと言えば嘘になる。シャイでウブだから、キスだけであんなに慌てるのだと納得していたが、本当はすぐにでもベッドに押し倒したい。しかし無理やり奪ってしまったらハイネの心は遠ざかってしまうだろうという煩悶。その不満には根本的な原因が存在して、万が一、もしかしたら……という心配である。

「わかった、わかった。それで、なにを言えばいいんだっけ?」
「自分が相手を好きだってこと、付き合いたい……あなたの場合は付き合っているつもりだってことを」
「きみたち僕のことを『ダシ』にしておいて無視か? 名誉棄損で訴えるぞ!」
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