屋上の合鍵

守 秀斗

文字の大きさ
19 / 20

第19話:私が出張

しおりを挟む
 さて、夫が帰国する日が近くなった頃、私は鈴木さんのアパートに行った。予想以上のボロアパートね。

「あの、本当にすみません。こんな汚い家で」

 そう、鈴木さんは言ったけど、部屋の中に入ると割ときれいにしているなあと思った。まあ、六畳一間、後はキッチンに狭いユニットバス。そして、鈴木さんが聞いてくる。

「幻滅しましたか」
「え、なんでそんなこと聞くの」
「あのタワーマンションに比べたら、もう家とはいえないんじゃないかって」

 別に私は貧乏育ちなんで大して気にならなかった。もう、鈴木さんにぞっこんなの。

「家ですよ、ちゃんとした。私は全然気にならないわ。ああ、むしろ今日からここに一緒に住みたいなあって思うくらい」
「本当ですか」
「本当よ」
「ただ、そろそろ引っ越さなくてはいけないんですよ」
「え、なんで」
「建て替えることになったそうなんです。築五十年というアパートですから。もう皆引っ越しして僕だけなんですよ、住んでるのは」
「そうなの、じゃあ、エアロビクス教室も違う場所にしなきゃ」
「あれ、エアロビやってたんですか」
「えーと、そう、この近くのエアロビ教室」

 今はエアロビはどうでもよく、鈴木さんとしたいだけ。いやらしい私。でも、ふーん、まあちゃんと就職しているから、他のアパートに住むのはかまわないんじゃないかと私は思った。似たような安いアパートでしょうけど。それより、私は他の事であそこが疼いちゃった。このアパートには彼一人。じゃあ、あの時、大声出して喘ぐ事が出来る! いやらしいことをいっぱい叫べるわ、ああん、私っていやらしい。

「あの、でも本当に大丈夫なんですか、その、僕と一緒になんて」
「ええ、夫と離婚が成立したらそのつもりだけど。だいたい、あのタワマン暮らしはもうこりごりよ。愛は金では買えないわ」
「えっと、タワマン自体は嫌いじゃないんですよね」
「だから、気の合わない人と暮らすって本当に嫌なのよ。その点、あなたとはばっちり。まあ、屋上では出来ないけどって、いやらしいこと言って、ごめんなさい」

 ああ、いやらしいことを言ってしまった。鈴木さん引いてないかなあと思ったけど、なんだか嬉しそうにしている。ああ、よかった。そして、お互い見つめ合う。彼に抱きしめられる。気持ちいいわ、タワマンなんぞいらないわよ。そして、私は強引に服を脱がされる。

「ああん……」
「あ、いやですか」
「ううん、全然いいよ、もう早くして!」
「僕は本当に理央さんのことが好きなんですよ、好きで好きでたまらない」
「私もよ。ねえ、激しく愛して……抱いてよ、早く!」

 彼も服を脱いだ。お互い絡み合って愛し合う。もう、いろんな格好で。私は喘ぎ声を出す。

「いいわ、いい、あん、気持ちいいわ、もう胸もあそこも好きにしてえ、ああ、入れて、入れてえ、お願い、私をいかせて」

 大声を出すと気持ちがいいわ。何で大声を出すと興奮するのかしら。よくわからない。でも、彼の大きなアレで貫かれて、私は気持ち良くて仕方が無い。そして、絶頂へいく。

「ああ、いく、いくう」

 彼に抱かれながら、もう一回、夫と離婚の話をしようと私は思った。あっと、そう言えば、私、彼の前でしなかったなあ。いつもそれを見せて一度いってから抱かれてたんだけど。でも、この部屋、鏡がないから省略ね。

……………………………………………………

「おかえりなさい」

 夫が帰宅してきた。しかし、無視。なんなのよ、もう一か月振りだってのに。でも、私はなんとか夫と話をすることにした。

「あの、すみません」
「なんだよ、疲れてんだよ」
「離婚の件ですけど」

 黙ってしまう夫。 
 しばらくして私に言った。

「まあ、もう少しだな」
「どれくらいですか」
「数ヶ月かな」

 あら、前は二、三年とか言ってたのに。やっぱり夫の方も気の合わない女が居るのは嫌になったようね。親にどう説明しようか考えているのかしら。まあ、後、数か月なら我慢するわ。

 そして、私はまたエアロビクス教室へ行く。そこの近くに鈴木さんのアパートがあるから都合がいいわね。夫は私がエアロビ教室に行くことに全然興味なさそう。エアロビよりも汗だくになりに行くんだけど。

 そんなわけで、会社でするのはやめた。あの地下室や電気室での行為、気持ち良かったなあ。でも、しょうがないわね。それに彼の家には休みの日、日曜日だけにしたんだけど、その時はいつもかなり激しくやったの。もう、朝から夕方まで抱き合った。いろんなことをしたわ。夫には友人とお喋りして遅くなるって話したけど、やはり興味ないみたいね。

……………………………………………………

 さて、もう夏も終わり。
 私は出張を命じられた。珍しいわね、総務担当が出張なんて。出張の計算はしたことはあるけど。社長のお供かしらね。そして、企画部から数人同行、私はそのサポートかしらね。そして、なんとその中に鈴木さん。思わず、出張先のホテルの屋上で愛し合うとか考えてしまったけど、さすがにまずいわよね。

 二泊三日。
 出張先はプライム市場に上場している超一流企業。そっちの社長は一代で築き上げた半導体関連の会社。あら、うちの中小企業にも取引あったのね。知らなかった。場所は浜松。東京からだったら日帰りでいいじゃないと思ったけど、いろいろとかなり重要な打ち合わせをするらしい。どうやら、共同であたらしく開発拠点を作るみたい。わが社も勝負に出たのかしら。

 その事を夫に言ったけど、やはり全然興味無し。まあ、どうでもいいや。そんなわけで新幹線で浜松まで行く。鈴木さんとは一切喋らないと事前に約束。やっぱりバレるとやばいもんね。本当はべったりとくっ付きたいんだけどなあ。

 それで、向こうの超一流会社へ訪問。社長さんが出迎えてくれた。こっちはただへいこらするだけ。でも、会議ではけっこう突っ込んだ話をしている。なんだか、私も久々に仕事してるなあって気持ちになった。いつもルーチンワークで後は鈴木さんとやりまくってたもんなあ、最近。やりまくるって、あら、恥ずかしい。するにしておこうっと。そして、なぜか向こうの社長さんが私を見ているの、何だろう。顔になにか付いていたのかしら。

 そして、近くのホテルに宿泊。女性は私一人なんで、当然、一人部屋。ああ、鈴木さんと抱き合いたいわと悶々とする。もう性欲ばっかりの女ね。物欲はないんだけど、性欲が強すぎる。結局、シャワーを浴びながら自分でしてしまった。そうしないと、鈴木さんが近くにいるんだもん、明日の会議中に発情してあそこを濡らしちゃいそうだわ。

 で、次の日、また会議。和やかな雰囲気。ただ、午前中で私は帰っていいことになった。

「昨日の会議でわが社の事情はわかったみたいだから、進藤さんはもう帰宅していいよ。後は商品開発関係なんで」
「はあ、わかりました」

 大した発言してないけどなあ。鈴木さんとちょっとだけ目が合う。なぜか恥ずかしそうな感じ。どうしたのかしら。私みたいなことシャワーを浴びながらしたのかしらって、またいやらしいことを考えてしまう。

 一日早く帰って、タワマンの部屋のドアを開けると、あれ、こんな女性用の靴、私、持ってないわ。
 え、まさか。

 私は夫の部屋に行く。すると裸で絡んでいる男女を見つけてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

密事 〜放課後の秘め事〜

月城依織
恋愛
放課後の数学科準備室。 ずっと『先生と生徒』として、彼の補習を真面目に受けていただけなのに。 高校卒業まであと僅かだという、1月下旬のある日。 私は先生と、一線を越えてしまった。 それから先生とは何もないまま高校を卒業し、大学で教職を取った。県立高校の教員として採用され、楽しく充実した人生を送っていたのに……。 高校を卒業して7年後、私が勤務する学校に、あの時の数学の先生が異動してきた────。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

継承される情熱 還暦蜜の符合

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...