スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第122話:猫がゴキブリを退治したっすよ、リーダーより猫の方がよっぽど役に立ちますね、次回のクエストはこの猫にリーダー変更っすね、うるさいぞ

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 そして、今は宿屋の屋根裏に猫と住んでいる。

 今日はまた雨が降っている。

「仕事はどうすんすか、リーダー」
「雨が降っているので休みだな」

「小雨っすよ」
「まあ、しょうがない。最近、急に寒くなって来たな。残暑も終わりだ。雨にうたれて風邪にひいたりしたら、元も子もないぞ」

「冒険者とは思えないセリフっすね。大嵐ならともかく、こんな小雨なのに屋根裏にこもるんすか。もうハゲデブブサイクの引退爺さんすね」
「うるさいぞ。冒険者たるもの、常に最善の注意を払って行動するのだ」

 俺は毛布の上でゴロリと横になる。

「なんすか、だらしがない。全然、最善の注意を払ってないじゃないすか」
「いいんだよ、屋根裏なら安全だろ」

「そんなんだから、出腹が引っ込まないんすよ」
「うるさいぞ。じゃあ、冒険に備えて運動でもするか」

 俺は腹筋運動をする。

「一、二、三……十、十一と、ああ、疲れた。でも、大進歩だな」
「何が進歩したんすかね」

「前に十回やったことがあるんだ。今回は十一回した。一回超えたんだ。これは偉大な一歩である」
「何言ってんすか。腹筋運動十回も十一回も変わりませんよ」

「千里の道も一歩よりって言うだろが」
「もうリーダーは人生の道、行き止まり寸前、先に進むと崖から真っ逆さまに落ちるってところなのにいいんすかね」
「うるさいぞ。では、スクワットでもするか」

 俺は、スクワット運動をする。
 一度立ち上がり、腰を落として、また立ち上がる。

「ウォ!」
「どうしたんすか」

「腰痛だ、腰痛。そういうわけで、終了」
「一回で終わりっすか、何にもしてないのと同じですよ」
「うるさいぞ。じゃあ、腕の運動だ」

 俺は猫じゃらしで猫と遊ぶ。

「全然、運動してないじゃないすか。何、猫と遊んでるんすか」
「俺は肘も痛めているんだ。だから、この猫じゃらしを動かして、リハビリ運動だ」

 しかし、猫は猫ハウスへ行ってしまう。

「ほら、猫も呆れて、ハゲデブブサイクのリーダーを相手にしてくれないじゃないすか」
「うーん、猫は気まぐれだからな。まあ、今日はこれで運動は終了だ」

「いい加減すね」
「雨の日は調子が悪いんだ。天気病だな」

 俺は再び、毛布の上でゴロリと横になる。

「やれやれ。もう、すっかり屋根裏の浮浪者爺さんすね。俺っちは地下室へ行ってきますよ」
「宿屋の地下室に何の用事だ」
「投げナイフの練習すよ。ハゲデブブサイクのリーダーと居ると、こっちまで体がなまってしまいますよ」

 うんざりして、相棒は屋根裏から出て行った。
 猫は猫ハウスで寝ている。

 もう、誰も相手にしてくれないのか。
 つまらん人生だ。

 俺はのっそりと起き上がる。
 窓を開けて、外を見る。
 ポツポツと雨が降っている。

 気が付けばこんな人生だ。
 と何度思ったことだろうか。

 悲観論者は、雨が降るのを嘆く。
 楽観論者は、雨がやむのをゆっくりと待つ。
 そう、ゆっくりと待てばよい。

 しかし、俺はもうゆっくりとはしていられないおっさんなんだよな。
 全て諦めて、冒険者年金事務所に勤務しようか。

 生活は安定するだろう。
 猫の生活も支えなくてはいかんからな。

 ああ、でもこのまま事務員になって終わるっては、何ともじくじくたるものがあるんだな。
 それなら最初から事務員を目指せば良かったんだから。

 ああ、考えていると疲れてきた。
 だらんとまたまた毛布の上でゴロリと横になる。
 寝てしまった。

 どれくらい寝たのか。

 ん?
 何か黒いものが動いている。
 ああ、ゴキブリか。

 叩きのめそうとして、逃げられる。
 イテテ、拳が痛い。

 俺が手を振っていると相棒が戻ってきた。
 鍋を持ってきたぞ。

「何してんすか、リーダー」
「いや、ゴキブリがいたんで退治してやろうと思ったら、床に手をぶつけてなあ」

「ゴキブリにも逃げられるなんて、冒険者として終わってますね。以前もゴキブリに襲われて腰だかを痛めませんでしたか」
「うるさいぞ。で、その鍋はなんだ」

「地下室でナイフ投げの練習してたら、スライムが侵入してきたんすよ。あっさり倒したんすけど、宿屋の主人に感謝されて、鶏肉のスープを貰ったっす。確か、慢性膵炎には牛豚肉はだめだけど、鶏肉はいいんすよね」
「おお、悪いな。では、さっそくごちそうになるかな」

 俺はついでに猫缶を開けてやる。
 高い場所にある猫ハウスに居る猫に呼びかける。

「おい、猫。食事だぞ」

 しかし、猫は俺の方を睨んでいる。

「どうした、猫。まさか、モンスターが現れたのか」

 すると、突然、俺に向かって猫が飛びかかってきた。

「ウォ!」

 思わずびっくりする。
 しかし、猫は俺の頭上を通り過ぎて、床に着地。

「おお、すごいっすよ、猫がゴキブリを退治しましたっすよ。いやあ、ハゲデブブサイクのリーダーより猫の方がよっぽど役に立ちますね。次回のクエストはこの猫にリーダー変更っすね」
「うるさいぞ。猫は動く小さい生き物に反応するものなのだ」

 でも、猫缶の中身を美味しそうに食べている猫を見て、確かに俺より役に立っているなあと思ってしまう俺であった。

 これでは人生いかんなあ。
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