スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

文字の大きさ
40 / 162

第40話:かかって来い、モンスターどもめ! ちょっと、暴れないでくださいっすよ

しおりを挟む
 俺はカッコよく剣を振り回し、モンスターたちをバッタバッタと斬り倒していく。
 目の前には囚われの姫が。

 姫を助けようとするが、俺の前に魔王が立ちはだかる。
 魔王が高笑いする。

「ハハハハハ、かかってこい勇者よ」

 魔王め、目に物を言わせてやるぞ。
 しかし、モンスターたちが殺到してきた。

 俺は大声で叫ぶ。

「かかって来い、モンスターどもめ!」
「ちょっと、暴れないでくださいっすよ」

 相棒に止められた。
 今、俺は村の集会場に作られた舞台に立っている。

「何だよ、せっかくカッコよく姫を助け出そうとしたのに」
「つーか、リーダーはゴブリンの役でしょ。出腹のおっさんが妄想して暴れるんで、周りの村の人たちが怯えてますよ」

 そして、舞台監督からも注意されてしまった。

「あのー、あなたはモンスターの役、しかもあっさりと倒されるその他大勢のモンスターですから、大人しくしてくれませんか」
「いえ、ちょっと剣の使い方を指導してみただけです。一応、現役の冒険者ですので」

 そんなこんなで、リハーサルは一旦、休憩。

 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 しかし、今日の仕事はスライム退治ではない。
 この村のドラゴンテーマパークで開かれる演劇のリハーサルに出演している。
 記念イベントらしい。

 役者は全員村人から募集したようだ。
 そして、俺も勇者役で応募したのだが、一次で落選。

 結局、端役のゴブリン役だ。
 つまらん。

「何で現役の冒険者が落選して、素人の村人が勇者の役に選ばれるんだよ」
「そりゃ、ハゲデブで腰痛、肩こり、リュウマチ持ち、ブサイクのリーダーが勇者の役なんて出来るわけないじゃないすか」
「うるさいぞ。それに剣の使い方は、この中では俺が一番上手いぞ」
「そりゃ、皆さん、ただの村人っすよ。リーダーが一番上手いのは当たり前っすよ。要は外見すよ」

「それにしても、この紙に銀色を塗った剣だとやる気が出ないなあ」
「当たり前じゃないすか。本物使ったら危ないっすよ」

「しかし、冒険者がゴブリンの役とは情けないぞ」
「まだゴブリン役ならマシっすよ。俺っちなんてスライムの役っすよ。着ぐるみでまだ勇者が子供の頃、襲いかかるんすけど、勇者によけられてあっさり崖から落ちて死ぬってしょうもない役っすよ」

「まあ、さえない俺たちに相応しいかもな」
「そっすね。今やスライム退治の仕事もなかなか取れなくなってきたっすね。ジリ貧っすね」
「そうだよなあ。こんな下らん劇でお金を貰って糊口をしのぐ始末だ」

 俺と相棒がつまらん会話をしているとお姫様が元気よく声をかけてきた。

「こんにちはー! ちょっとご相談したいことがありまして。よろしいですか」
「おお、姫様、何用でございますでしょうか」

 俺は姫の前で片膝をつく。
 相棒が嫌な顔をする。

「ちょっと、それ、もうやめたらどうすか。見ていると本当に恥ずかしいんすけど」
「いや、これはもう俺の様式美だな」

 その光景を見て、キャハハと明るく笑うお姫様を演じる村娘。

「面白い方ですねえ」
「いやあ、リーダーは頭の中は変な妄想でいっぱいなんで気にしないでくださいっす」
「うるさいぞ、これくらい許せ。ところで、お嬢さん、相談とは何だね」
「私、冒険者になりたいんですけど、実際のところ、冒険者生活ってどうですか」

 うーん、正直、返答に困ってしまう。
 なんせ俺たちのパーティーは毎日スライム退治やってる害虫駆除業者みたいなもんだからなあ。

「あんたのお父さんは何て言ってるんだ」
「猛反対されてます。やめとけって。父は農業をやっているんで冒険者なんてとんでもないって」

 確かに成功する確率の少ない職業だよなあ。
 この娘さんも、このまま農家で暮らす方がいいのではないか。
 相棒も同意見なのか、娘さんを説得しようとする。

「やめたほうがいいっすよ。うちのリーダーを見て下さい。妄想にとりつかれて冒険者生活に飛び込んで、今や体中故障だらけのハゲデブ、腰痛、肩こり、リュウマチ持ちのしょぼくれたおっさんになり果てたんすから。おまけに貧乏でブサイク」
「おい、言い過ぎだぞ」

 しかし、実際のところ事実ではある。
 何も先の事を考えずにいたら、いつの間にかおっさんだ。

 でも、若者には夢を持ってほしいんだよなあ、最初から諦めるのではなく。

 それにこの姫、じゃなくて、村娘さんは、この前見事ワイバーンを倒したんだよなあ。
 素質はあるんじゃないかな。

「まあ、もし冒険者になるなら、慎重にことを運ぶべきだな。何か手に職を持ちつつ、冒険者になる。お金も無駄遣いしない。いざとなったら、冒険者をやめても生活できるようにしなくてはいけないな」
「そうっすよ。でないと、ハゲデブのリーダーみたいに明日の食事にも事欠くようになりまっすよ」

「お前もそうだろ」
「そういや、そうっすね」

 しかし、村娘さん、納得していないようだ。

「でも、手に職を持つとかしてたら冒険者になる機会を失ってしまうんじゃないですか」

 そうなんだよなあ、時間なんてあっという間に過ぎていく。
 機会損失だなあ。
 おっさんおばさんになったら冒険者なんてなれない。
 
「うーん、まあ、少し冒険者をやってみて、うまくいかないようならすぐに方向転換したほうがいいと思うけどなあ」

 なんとも曖昧な返事しかできなかった。
 そんなところに舞台監督から声がかかる。

「あのー、すみませーん。リハーサルを再開します」
「はーい、わかりましたあ」

 お姫様を演じる村娘さんがしゃなりしゃなりと歩いていく。

「おお、あの娘さん、いつの間にか高貴なお姫様のようにしなかやに歩いているではないか」
「舞台監督の指導のおかげじゃないすか。さて、俺っちらも参加しましょう」

 再び、リハーサル開始。
 まずはスライムの着ぐるみを着た相棒が子供の頃の勇者に飛び掛かるが、よけられてゴロゴロと舞台へ上がる階段を転げ落ちる。

「ああ、痛いっす」
「何だか、しょうもない役にしては一番危険なんじゃないか」
「割りに合わないっすね」

 さて、次は俺の出番。
 成長したイケメン勇者がパーティーを組んで冒険に出かけるのだが、その最初の適役のゴブリンを演じる。演じると言っても、他のゴブリン役の村人とともにあっさりとやっつけられる役。

「ウギャア!!!」

 勇者に剣で刺されて、絶叫をあげて、俺は舞台を派手に転げまわる。
 そこで、また舞台監督に注意される。

「そんなに転げ回られると目立つんで、もっとあっさりと倒れてくれませんか」
「はいはい、わかりましたよ」

 何だよ、せっかく劇を盛り上げてやろうとしたのに。
 俺は監督の言う通り、バシッと勇者の剣でやられてそそくさと舞台から退場。
 それで俺の出番も終わりだ。

 後は、観客席から見学してるだけ。
 おお、ドラゴンが出現したぞ。

 着ぐるみだけどな。
 そして、最後にはそのドラゴンを操っていた魔王と対決。モンスターたちとチャンバラをした後、冒険の途中で見つけた秘密の剣で魔王を倒す。

 囚われの姫を助けて、なぜか勇者と姫が結婚して、めでたしめでたし。

「なんだかありきたりな話だな。しょうもない」
「リーダーがいつも妄想している話と同じじゃないすか。同じくしょうもないっすね」
「うるさいぞ」

 しかし、こんな仕事でもスライム退治よりは報酬がいいらしいので、まあいいか。
 さて、リハーサルも終わったことだし、帰ろうとかと思ったら舞台にスライムがいる。

 相棒の奴、何やってんだ。
 お前は序盤でやられただろ。

 と思ったら、相棒はすぐ隣にいる。

「おい、お前、着ぐるみを舞台にほっておくなよ」
「いや、ちゃんと小道具係に返しましたよ」

 じゃあ、あれは本物のスライムじゃないか。
 お姫様を演じる村娘に後ろから近づいていく。

「おい、スライムがいるぞ!」

 俺は叫ぶと舞台に駆け上り剣を抜いた。
 って、これは紙の剣じゃないか。

 いくらスライムでも紙では倒せないぞ。
 相棒に声をかける。
 
「おい、ナイフを持ってないか」
「いやあ、持ってないっすね」

 やばいじゃないか。
 しかし、お姫様役の村娘は振り向いてスライムを見つけると気合もろとも手刀を叩きつけた。

「えい!」

 あっさりとスライムを退治する村娘さん。
 喜んでぴょんぴょんと飛び跳ねる。
 思わず、俺は声をかけた。

「いやあ、すごい。スライムだけど、手刀で倒すなんて」
「私、やっぱり冒険者に向いてますかね」

「うーん、素質はあるかも」
「よし、私、やっぱり冒険者になろうと思います」
「そうか、がんばれ」

 そんなことを言う俺に相棒がささやく。

「ちょっと無責任じゃないすか。冒険者なんて止めた方がいいと思いますよ」
「いや、やはり若いうちは好きな事をしてもらいたいんだな、俺としては」

「で、貧乏ハゲデブの腰痛肩こり、リュウマチ持ちのおっさんになるんすか」
「うるさいぞ」
 
 でも、若いってのは、やはりいいなあ。
 まだ夢も希望もあるもんなあ。
 輝いているぞ。

 スライムを倒してはしゃいでいる娘さんを見てそう思う。

 いや、俺もまだ死んでない。
 なんとか一回でもいいから輝いてみせるぞ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...