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第41話:フフフ、よく来たな勇者たちよ、覚悟しなさい魔王!
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魔王城の最上階にある魔王の間。
その広い部屋に勇者たちが乱入してきた。
俺は魔王専用の豪華な椅子から立ち上がる。
「フフフ、よく来たな、勇者たちよ」
「覚悟しなさい、魔王!」
女勇者が剣を構える。
後ろには斧や弓矢を持った仲間たちもいる。
「あの四天王たちを倒すとはさすがだな。褒めてやろう。どうだ、私の仲間にならないか」
「ふざけないで。あんたなんかの仲間になんてならないわ。さあ、姫様をすぐに解放しなさい」
「そうか、では、後悔させてやろう。魔王の力を思い知るがいい」
俺は両腕を大げさに広げる。
そして、空中に浮かぶ。
「ハハハハハ、さあ、かかって来たまえ、勇者たちよ。私を楽しませてくれたまえ。しかし、その前に……」
すると、突然、俺の体が下に落下した。
舞台の床に腰を打つ。
「イテテテ」
「だから太りすぎっすよ、リーダー」
勇者の仲間役の相棒が近づいてきた。
そして、大道具係が俺に平謝り。
「本当に申し訳ありません。体を吊っていた縄が切れてしまって。おケガはありませんか」
「いやあ、こんなことはモンスター退治で慣れてる。全くケガなんぞしてないぞ」
本当は痛かったのだが見栄を張るそんな俺に、相棒が小声で言った。
「大丈夫すか。思いっ切り腰を打ったみたいすけど。本番でまたぎっくり腰になったらまずいっすよ」
「うーん、もし観客の前で腰痛で倒れたら恥ずかしいなあ」
さて、一旦、リハーサルは中断。
俺たちは観客席に座る。
俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
今日は、この村のドラゴンテーマパークで開かれる演劇のリハーサルに出演している。
「とにかく現役冒険者が腰が痛くて舞台でへばったら笑いものっすよ。おまけに肩こり、膝痛、リュウマチ持ちだし、リーダーは。やっぱり、魔王役は断った方がいいんじゃないすか」
「けど、魔王役の村人が出れなくなったから、俺にやってくれないかと頼まれたんだ。どうやら、俺の貫禄が魔王にふさわしいと思われたらしい」
魔王役の村人は農作業中に事故で足の骨を折ったようだ。
それで、魔王の役が俺に回ってきたのだ。
「なにが貫禄すか。ハゲデブでおっさん、ブサイクなんでこいつを魔王にしてしまえって感じで頼まれただけじゃないすか」
「うるさいぞ。そういや、何でスライム役だったお前が四天王役になるんだよ」
「どうもスライムの階段落ちが危険ってことでシナリオから削ったらしいっすね。それで代わりに四天王役っす。でも、勇者と戦って敗れて、改心して、その後仲間になるんすけどね」
「何かよくある展開だよな。お前にその役、出来るのかよ。スライムの着ぐるみで階段を転げ落ちるだけの役はセリフなんてなかったんだろ」
「大丈夫じゃないすか。仲間になったら、急にセリフとか無くなるんす。すっかり地味になるんすよ」
「それもよくある展開だなあ。敵の時は強くて怖いのに、味方になると急に目立たなくなるんだよな」
「リーダーはその出腹が目立ちすぎっすよ。おかげで体が重くて落下。カッコ悪いので本番の時はお腹を引っ込めてくれませんすか」
「うるさいぞ。腹を引っ込めたら、セリフが言えないじゃないか」
俺と相棒がいつものように下らない会話をしていると、美少女お姫様改め美少女勇者役の村娘さんが話しかけてきた。
「大丈夫ですか、冒険者さん」
「おお、姫、じゃなくて、勇者。大丈夫だ。こんなことくらい大したことではない。冒険ではケガなんてしょっちゅうなんだぞ」
村の美少女コンテストで一位になったこの娘さんは、最初はお姫様役だったのだが、舞台に入り込んできた本物のスライムを手刀で叩きのめしたのを見た監督がお話を変更、女勇者役に抜擢したのだ。ちなみにお姫様役はコンテストで二位になった娘さんだ。
「ところで、冒険者になることをお父さんは許してくれたのか」
「それが、相変わらず猛反対されて、もう、家出しようかと思ってます」
それを聞いた相棒が慌てて娘さんを説得。
「ちょっと家出はダメっすよ。いつでも帰れるようにしとかないと。冒険者なんてほとんどは我がリーダーのようにハゲデブになって、終いには演劇で魔王の役やって、舞台装置が故障して腰を打って死んじゃうんすよ」
「おい、まだ俺は死んでないぞ。勝手に死人にするな」
「そうなる可能性の方が多いっすよ。モンスターにやられるよりは」
またも俺と相棒が下らない会話をしているが、娘さんは少し元気が無い。
「あの、なんとか父親を説得してくれませんか」
「うーん、難しいなあ」
そこにまた相棒が口を出す。
「こんなリーダーに説得を頼んでもお父さんは聞いてくれないっすよ。ハゲデブで腰痛持ち、肩こり、リュウマチなどで体調不良、やってることはスライム退治だけの貧乏人。おまけにブサイク。人生終了間近。こんなおっさん冒険者を見たら、ますます態度が硬くなるだけっすよ。冒険者ギルドでもっと優秀でイケメン冒険者に頼んだ方がいいっすよ」
「おい、言い過ぎだぞ。おっと、思い出したぞ。確かお嬢さんは秘かに剣技とか習っている冒険者がいたはずだが。その人に説得してもらえればいいのではないかな」
「その人は、今、冒険に出かけているんですよ」
そうだよなあ。
みんな、華々しい活躍をしているんだろうなあ。
それにくらべて、俺は普段はスライム退治。
そして、その仕事さえ貰えず村の演劇で魔王の役。
何だか情けなくなってきた。
さて、娘さんとそんな会話をしていると大道具係がやって来た。
「すみません、修理が終わりました。今度は絶対にさっきのようなことのないように頑丈にしました」
「うむ、わかった。では、お嬢さん、この話は後日に」
「はい、わかりました」
サササとカッコよく走って、舞台に戻る冒険服の娘さん。
「うーん、なんだかカッコいいぞ、あの娘さん。オーラがあるぞ。本当に勇者みたいだ。冒険者の素質があるんじゃないかな」
「確かに出腹のリーダーみたいにカッコ悪くのそのそとは歩いていませんっすね」
「うるさいぞ。さて、俺たちも舞台に戻るか」
そして、また魔王と勇者の対決場面。
俺はロープで空中に吊り上げられる。
「ハハハハハ、さあ、かかって来たまえ、勇者たちよ。私を楽しませてくれたまえ。しかし、その前にこいつを倒してからだ」
ドラゴンが出現する。
着ぐるみだが。
焦る勇者たち。
「ハハハハハ、私が召喚したレッドドラゴンだ。君たちに倒せるかね」
ドラゴンが咆哮をあげる。
そして、木の棒を振り上げる。
あれ、何でドラゴンが木の棒を持っているんだ。
俺が不思議に思っていると、そのドラゴンが勇者ではなく、魔王役の俺の腹を木の棒でぶっ叩いた。
「痛い、痛い、何するんだよ。勇者は向こうだぞ。それともドラゴンが勇者側に寝返るってシナリオに変更したのか」
「うるさい! お前が俺の大事な娘を惑わしたりしてるんだろ」
さんざん棒で腹を殴られる俺。
抵抗しようにも宙吊りなんでされるがまま。
そして、着ぐるみドラゴンは周りの村人に抑え込まれた。
どうやら、着ぐるみの中の男は、あの冒険者になりたがっている娘さんの父親のようだ。
俺が娘を冒険者に誘っていると思い込んだらしい。
宙吊りから解放されて、ボコボコにされた腹を擦っている俺に、娘さんが深々と頭を下げる。
「本当に父が大変なことをして、申し訳ありません」
「あ、いやあ、いいよ、こんなこと冒険で慣れてる」
そこに相棒が嫌味を言う。
「どこが慣れてんすか。ドラゴンと戦ったこともないのに」
「うるさいぞ」
しかし、父親としては娘を冒険者にするわけにはいかないよな。
俺には娘なんていないけど、俺でも止めるよなあ。
でも、あの娘さんは冒険者に向いているような気もする。
「しかし、リーダー、ひどい目に遭いましたっすね」
「そうだな。って、おい、お前。相棒だろが。俺が宙吊りでポカポカ殴られてるのに、何、ボーっとしてんだよ。さっさと助けに来いよ」
「いやあ、そういう演出かなあって思ったんす」
「何でドラゴンが木の棒で魔王の腹を叩くんだよ。おかしいと思わなかったのか」
「コメディかなあと思ったんすよ。だから、リーダーを魔王役にしたのかなあって。さえないハゲデブのおっさんのほうがコメディに合ってるじゃないすか。いや、リーダーの人生自体がもうコメディみたいなもんすからね」
「うるさいぞ」
しかし、この喜劇的人生からなんとか英雄的人生になる方法はないかと悩む俺でもあった。
その広い部屋に勇者たちが乱入してきた。
俺は魔王専用の豪華な椅子から立ち上がる。
「フフフ、よく来たな、勇者たちよ」
「覚悟しなさい、魔王!」
女勇者が剣を構える。
後ろには斧や弓矢を持った仲間たちもいる。
「あの四天王たちを倒すとはさすがだな。褒めてやろう。どうだ、私の仲間にならないか」
「ふざけないで。あんたなんかの仲間になんてならないわ。さあ、姫様をすぐに解放しなさい」
「そうか、では、後悔させてやろう。魔王の力を思い知るがいい」
俺は両腕を大げさに広げる。
そして、空中に浮かぶ。
「ハハハハハ、さあ、かかって来たまえ、勇者たちよ。私を楽しませてくれたまえ。しかし、その前に……」
すると、突然、俺の体が下に落下した。
舞台の床に腰を打つ。
「イテテテ」
「だから太りすぎっすよ、リーダー」
勇者の仲間役の相棒が近づいてきた。
そして、大道具係が俺に平謝り。
「本当に申し訳ありません。体を吊っていた縄が切れてしまって。おケガはありませんか」
「いやあ、こんなことはモンスター退治で慣れてる。全くケガなんぞしてないぞ」
本当は痛かったのだが見栄を張るそんな俺に、相棒が小声で言った。
「大丈夫すか。思いっ切り腰を打ったみたいすけど。本番でまたぎっくり腰になったらまずいっすよ」
「うーん、もし観客の前で腰痛で倒れたら恥ずかしいなあ」
さて、一旦、リハーサルは中断。
俺たちは観客席に座る。
俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
今日は、この村のドラゴンテーマパークで開かれる演劇のリハーサルに出演している。
「とにかく現役冒険者が腰が痛くて舞台でへばったら笑いものっすよ。おまけに肩こり、膝痛、リュウマチ持ちだし、リーダーは。やっぱり、魔王役は断った方がいいんじゃないすか」
「けど、魔王役の村人が出れなくなったから、俺にやってくれないかと頼まれたんだ。どうやら、俺の貫禄が魔王にふさわしいと思われたらしい」
魔王役の村人は農作業中に事故で足の骨を折ったようだ。
それで、魔王の役が俺に回ってきたのだ。
「なにが貫禄すか。ハゲデブでおっさん、ブサイクなんでこいつを魔王にしてしまえって感じで頼まれただけじゃないすか」
「うるさいぞ。そういや、何でスライム役だったお前が四天王役になるんだよ」
「どうもスライムの階段落ちが危険ってことでシナリオから削ったらしいっすね。それで代わりに四天王役っす。でも、勇者と戦って敗れて、改心して、その後仲間になるんすけどね」
「何かよくある展開だよな。お前にその役、出来るのかよ。スライムの着ぐるみで階段を転げ落ちるだけの役はセリフなんてなかったんだろ」
「大丈夫じゃないすか。仲間になったら、急にセリフとか無くなるんす。すっかり地味になるんすよ」
「それもよくある展開だなあ。敵の時は強くて怖いのに、味方になると急に目立たなくなるんだよな」
「リーダーはその出腹が目立ちすぎっすよ。おかげで体が重くて落下。カッコ悪いので本番の時はお腹を引っ込めてくれませんすか」
「うるさいぞ。腹を引っ込めたら、セリフが言えないじゃないか」
俺と相棒がいつものように下らない会話をしていると、美少女お姫様改め美少女勇者役の村娘さんが話しかけてきた。
「大丈夫ですか、冒険者さん」
「おお、姫、じゃなくて、勇者。大丈夫だ。こんなことくらい大したことではない。冒険ではケガなんてしょっちゅうなんだぞ」
村の美少女コンテストで一位になったこの娘さんは、最初はお姫様役だったのだが、舞台に入り込んできた本物のスライムを手刀で叩きのめしたのを見た監督がお話を変更、女勇者役に抜擢したのだ。ちなみにお姫様役はコンテストで二位になった娘さんだ。
「ところで、冒険者になることをお父さんは許してくれたのか」
「それが、相変わらず猛反対されて、もう、家出しようかと思ってます」
それを聞いた相棒が慌てて娘さんを説得。
「ちょっと家出はダメっすよ。いつでも帰れるようにしとかないと。冒険者なんてほとんどは我がリーダーのようにハゲデブになって、終いには演劇で魔王の役やって、舞台装置が故障して腰を打って死んじゃうんすよ」
「おい、まだ俺は死んでないぞ。勝手に死人にするな」
「そうなる可能性の方が多いっすよ。モンスターにやられるよりは」
またも俺と相棒が下らない会話をしているが、娘さんは少し元気が無い。
「あの、なんとか父親を説得してくれませんか」
「うーん、難しいなあ」
そこにまた相棒が口を出す。
「こんなリーダーに説得を頼んでもお父さんは聞いてくれないっすよ。ハゲデブで腰痛持ち、肩こり、リュウマチなどで体調不良、やってることはスライム退治だけの貧乏人。おまけにブサイク。人生終了間近。こんなおっさん冒険者を見たら、ますます態度が硬くなるだけっすよ。冒険者ギルドでもっと優秀でイケメン冒険者に頼んだ方がいいっすよ」
「おい、言い過ぎだぞ。おっと、思い出したぞ。確かお嬢さんは秘かに剣技とか習っている冒険者がいたはずだが。その人に説得してもらえればいいのではないかな」
「その人は、今、冒険に出かけているんですよ」
そうだよなあ。
みんな、華々しい活躍をしているんだろうなあ。
それにくらべて、俺は普段はスライム退治。
そして、その仕事さえ貰えず村の演劇で魔王の役。
何だか情けなくなってきた。
さて、娘さんとそんな会話をしていると大道具係がやって来た。
「すみません、修理が終わりました。今度は絶対にさっきのようなことのないように頑丈にしました」
「うむ、わかった。では、お嬢さん、この話は後日に」
「はい、わかりました」
サササとカッコよく走って、舞台に戻る冒険服の娘さん。
「うーん、なんだかカッコいいぞ、あの娘さん。オーラがあるぞ。本当に勇者みたいだ。冒険者の素質があるんじゃないかな」
「確かに出腹のリーダーみたいにカッコ悪くのそのそとは歩いていませんっすね」
「うるさいぞ。さて、俺たちも舞台に戻るか」
そして、また魔王と勇者の対決場面。
俺はロープで空中に吊り上げられる。
「ハハハハハ、さあ、かかって来たまえ、勇者たちよ。私を楽しませてくれたまえ。しかし、その前にこいつを倒してからだ」
ドラゴンが出現する。
着ぐるみだが。
焦る勇者たち。
「ハハハハハ、私が召喚したレッドドラゴンだ。君たちに倒せるかね」
ドラゴンが咆哮をあげる。
そして、木の棒を振り上げる。
あれ、何でドラゴンが木の棒を持っているんだ。
俺が不思議に思っていると、そのドラゴンが勇者ではなく、魔王役の俺の腹を木の棒でぶっ叩いた。
「痛い、痛い、何するんだよ。勇者は向こうだぞ。それともドラゴンが勇者側に寝返るってシナリオに変更したのか」
「うるさい! お前が俺の大事な娘を惑わしたりしてるんだろ」
さんざん棒で腹を殴られる俺。
抵抗しようにも宙吊りなんでされるがまま。
そして、着ぐるみドラゴンは周りの村人に抑え込まれた。
どうやら、着ぐるみの中の男は、あの冒険者になりたがっている娘さんの父親のようだ。
俺が娘を冒険者に誘っていると思い込んだらしい。
宙吊りから解放されて、ボコボコにされた腹を擦っている俺に、娘さんが深々と頭を下げる。
「本当に父が大変なことをして、申し訳ありません」
「あ、いやあ、いいよ、こんなこと冒険で慣れてる」
そこに相棒が嫌味を言う。
「どこが慣れてんすか。ドラゴンと戦ったこともないのに」
「うるさいぞ」
しかし、父親としては娘を冒険者にするわけにはいかないよな。
俺には娘なんていないけど、俺でも止めるよなあ。
でも、あの娘さんは冒険者に向いているような気もする。
「しかし、リーダー、ひどい目に遭いましたっすね」
「そうだな。って、おい、お前。相棒だろが。俺が宙吊りでポカポカ殴られてるのに、何、ボーっとしてんだよ。さっさと助けに来いよ」
「いやあ、そういう演出かなあって思ったんす」
「何でドラゴンが木の棒で魔王の腹を叩くんだよ。おかしいと思わなかったのか」
「コメディかなあと思ったんすよ。だから、リーダーを魔王役にしたのかなあって。さえないハゲデブのおっさんのほうがコメディに合ってるじゃないすか。いや、リーダーの人生自体がもうコメディみたいなもんすからね」
「うるさいぞ」
しかし、この喜劇的人生からなんとか英雄的人生になる方法はないかと悩む俺でもあった。
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