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第42話:襲って来ないじゃないか、あれはオオサンショウウオっすね
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
村の近くの山の滝がある場所に行く。
滝と言っても小さい滝が五本あるだけだ。
高さはなかなかあるが、そんなに見栄えのいいものでもない。
俺も以前から知っていた場所だ。
「ここが『ドラゴンの爪の滝』っす」
「え、そんな名前だったっけ」
「本当は『五本滝』って名前だったんすけど、例の村主催のドラゴンテーマパークに関連して、『ドラゴンの爪の滝』って名前に変更したようっす。落ちてくる滝の水を爪に例えたみたいっすね」
「何だよ、ドラゴン岩みたいもんだな。名前で観光客を呼ぶつもりかよ。せこいぞ、村役場」
「まあ、ドラゴンテーマパークを成功させなきゃいけないっすからねえ」
「けど、ドラゴンって、五本指だったっけ」
「さあ、そこら辺は適当じゃないすかね」
「いい加減なもんだな」
しかし、俺は張り切ってる。
今日は久々に狂暴なモンスターが相手だ。
いつものスライム退治ではない。
相手はアーヴァンクだ。
姿はビーバーに似ていて、人間を襲って食い殺す狂暴なモンスターだ。
「よくわからない生き物の目撃情報があったんだが、冒険者ギルドに言わせるとアーヴァンクらしい。いいか、ビーバーに似ているからって油断はするなよ」
「でも、ビーバーもけっこう危険って聞いたことがありますよ。自分たちの方から人を襲ったりはしないすけど、姿が可愛いのでちょっかいかけたらあの大きい前歯で足を噛まれて、出血多量で死んだ人がいるみたいっす」
「本当かよ。うーん、まさかビーバーがそんなに危険とは知らなかった。つーか、目撃者はビーバーとアーヴァンクを間違えたんじゃないだろうな。相手がビーバーなら倒す必要はないぞ」
「ここら辺にビーバーはいませんすよ。それにビーバーとアーヴァンクじゃあ、大きさが全然違うっす。アーヴァンクは人と同じくらい背の高さがありますよ」
そうか、じゃあ、とにかく不審な獣がいることは事実なんだな。
最近、演劇のリハーサルで紙の剣ばっかり振り回していたんで、思わず、腕に力が入る。
「かかって来い、モンスター!」
「ちょっと、剣を振り回すのはやめてくださいよ。危ないっすよ」
「いや、久々にスライム以外のモンスターが相手だしな。肩慣らしだ」
「そんなこと言って、また肝心な時に腰が痛くなったり、肩が使えなくなったり、またリュウマチがひどくなっても知りませんっすよ」
「うむ、そうだな。ここは慎重にいくか」
さて、俺たちは滝の上流に行く。
山道を上ると普通の川があるのだが、岩がいくつか並んでいて、それが水流を邪魔して五本の滝になっているようだ。
一番端っこのはかなり細い。
ここで、モンスターは目撃されたようだ。
「さあ、出てこい、アーヴァンク! そして、ようこそ美少女姫!」
「姫はよけいっすよ、何でこんなとこに出てくるんすか。おっさんの妄想もいい加減にしてくださいっすよ。アーヴァンクもアホらしくなってどっかへ行っちゃいますよ」
「うるさいぞ」
しかし、周辺を探索するが、アーヴァンクの姿は全く発見出来ない。
「うーん、アーヴァンクの奴、場所を移動したのだろうか」
「姫、姫とか騒いでいるハゲデブ腰痛膝痛肩こりでリュウマチのおっさんを見て嫌気がさしたんじゃないすか、アーヴァンクも」
「うるさいぞ」
すると、俺の目の前に突然、全身がヌメヌメしたモンスターが現れた。
俺よりデカいんじゃないか。
「うお、出たなモンスターめ。よし、かかって来い」
俺は剣を構える。
しかし、そのモンスターは俺の事を無視して、のそのそと川の中に入って行く。
「何だよ、襲って来ないじゃないか」
「あれは、オオサンショウウオっすね」
「もしかして、目撃者はあれをアーヴァンクと見間違えたのかなあ」
「その可能性が高いっすね。確かに、今のはオオサンショウウオにしてはデカいっすね。でも、こっちから近づかなければ全く危険のない生き物っすね」
がっかりする俺。
何だよ、久々にモンスター相手に大暴れしてやろうと思ってたのに。
「やれやれ。けど、サンショウウオを主人公にした小説を思い出したぞ」
「どんな内容すか」
「ねぐらにしていた岩の洞穴にいたら、いつの間にか大きくなっていたサンショウウオが狭い出口から出られなくなってしまうって話だ。脱出不可能とわかると、自分の世界の中にひきこもって、外の世界の連中をバカにし始めるんだ。おまけに入り込んできた小さいカエルを出られないようにしてしまうんだ」
「そのサンショウウオのように妄想の中にひきこもってばかりいるリーダーはいつの間にか出腹のおっさんになって人生終了って感じっすね。俺っちをその小さいカエルのように巻き込まないでくださいっすよ」
「うるさいぞ。俺の人生はまだ終了してないぞ。まあ、とにかく今日は帰るか」
しかし、相棒が言う通り、やたらお姫様やらドラゴンが出る冒険小説のような妄想をしていたら、いつの間にかおっさんになっていた。
愕然としてしまう。
「おっと、冒険者ギルドからもう一つ仕事を頼まれてたんすよ」
「何だよ。他にもモンスターがいるのか」
「いえ、この周辺の清掃っすね」
「何だと! また清掃かよ。あのギルドの主人、俺たちを完全に清掃員と思ってるな。アーヴァンクで誘いやがって。実はアーヴァンクなんていないのを知っていて、清掃のために派遣したんだろ。ふざけんな!」
「まあまあ、清掃員も立派な仕事っすよ」
仕方がない。
引き受けた以上は川の周辺を清掃する。
「おっと、他にも仕事を頼まれてたっす。危険だから川には入るなって掲示を立てろってことっすよ。ここで川に落ちたら、滝つぼへ落ちて大ケガ、下手すれば死にますからね」
「何だよ、観光客用かよ。俺たちは冒険者なのに、清掃やらせたり、工事業者みたいな仕事ばかり押し付けやがって。ギルドの主人に文句を言ってやる」
「そうやって、ギルドで暴れてばかりいるから、嫌がらせでこんな仕事を押し付けられたんじゃないんすか。だいたい出腹で腰痛持ちの冒険者に重要な仕事をまかせないっすよ。もっと痩せたらどうすか」
「うるさいぞ。これでいいんだ」
けど、引き受けた以上、掲示を立てる作業はしなくてはいかん。
俺たちは近くの森から適当な木を切り出して、「危険、川に入るな!」と刻んで、何本か川岸に立てていく。
二十本くらい立てる。
ああ、疲れた。
「もう、このくらいでいいだろう」
「そっすね。帰りましょうか」
俺は川岸から山道に戻ろうとするが、突然、腰が痛くなる。
「ウッ」
「どうしたんすか」
「また腰痛だ」
俺は思わず、川岸でスっ転んでしまう。
そして、そのまま川の中へ落ちて、流されてしまった。
「うわー、助けてくれ」
「リーダー、ロープを投げますからそれに掴まってくださいっす」
慌てて、相棒がロープを俺に投げようとするが、川の流れが速い。
ああ、このまま滝つぼに落ちて、俺はあの世か。
川岸の清掃後にスっ転んで死ぬとは、何と下らない人生であったのだろうか。
しかし、急に俺の体が止まった。
俺は一番端っこの細い水流の岩の間に出腹が挟まれて、そこで何とか滝つぼに落ちないですんでいる。
相棒が投げたロープに掴まると、そのまま引き上げられた。
「ああ、助かった」
「危なかったすねえ」
「しかし、この出腹のせいで助かったんだ。どうだ、この出腹も役に立つだろう」
「何言ってんすか。出腹のせいで腰痛がひどくなって、それで転んだんじゃんないすか」
「うるさいぞ」
「しかし、リーダーも痩せないとサンショウウオのようにいつの間にか宿屋の扉に出腹が邪魔をして出られなくなるかもしれませんっすね」
「そんなことあるわけないだろ!」
「まあ、妄想の世界に浸る前に痩せてくださいっすよ」
「わかったよ」
しかし、おっさんになるとなぜ腹が出るのだ。
なぜだろうか。
考えても仕方がないか。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
村の近くの山の滝がある場所に行く。
滝と言っても小さい滝が五本あるだけだ。
高さはなかなかあるが、そんなに見栄えのいいものでもない。
俺も以前から知っていた場所だ。
「ここが『ドラゴンの爪の滝』っす」
「え、そんな名前だったっけ」
「本当は『五本滝』って名前だったんすけど、例の村主催のドラゴンテーマパークに関連して、『ドラゴンの爪の滝』って名前に変更したようっす。落ちてくる滝の水を爪に例えたみたいっすね」
「何だよ、ドラゴン岩みたいもんだな。名前で観光客を呼ぶつもりかよ。せこいぞ、村役場」
「まあ、ドラゴンテーマパークを成功させなきゃいけないっすからねえ」
「けど、ドラゴンって、五本指だったっけ」
「さあ、そこら辺は適当じゃないすかね」
「いい加減なもんだな」
しかし、俺は張り切ってる。
今日は久々に狂暴なモンスターが相手だ。
いつものスライム退治ではない。
相手はアーヴァンクだ。
姿はビーバーに似ていて、人間を襲って食い殺す狂暴なモンスターだ。
「よくわからない生き物の目撃情報があったんだが、冒険者ギルドに言わせるとアーヴァンクらしい。いいか、ビーバーに似ているからって油断はするなよ」
「でも、ビーバーもけっこう危険って聞いたことがありますよ。自分たちの方から人を襲ったりはしないすけど、姿が可愛いのでちょっかいかけたらあの大きい前歯で足を噛まれて、出血多量で死んだ人がいるみたいっす」
「本当かよ。うーん、まさかビーバーがそんなに危険とは知らなかった。つーか、目撃者はビーバーとアーヴァンクを間違えたんじゃないだろうな。相手がビーバーなら倒す必要はないぞ」
「ここら辺にビーバーはいませんすよ。それにビーバーとアーヴァンクじゃあ、大きさが全然違うっす。アーヴァンクは人と同じくらい背の高さがありますよ」
そうか、じゃあ、とにかく不審な獣がいることは事実なんだな。
最近、演劇のリハーサルで紙の剣ばっかり振り回していたんで、思わず、腕に力が入る。
「かかって来い、モンスター!」
「ちょっと、剣を振り回すのはやめてくださいよ。危ないっすよ」
「いや、久々にスライム以外のモンスターが相手だしな。肩慣らしだ」
「そんなこと言って、また肝心な時に腰が痛くなったり、肩が使えなくなったり、またリュウマチがひどくなっても知りませんっすよ」
「うむ、そうだな。ここは慎重にいくか」
さて、俺たちは滝の上流に行く。
山道を上ると普通の川があるのだが、岩がいくつか並んでいて、それが水流を邪魔して五本の滝になっているようだ。
一番端っこのはかなり細い。
ここで、モンスターは目撃されたようだ。
「さあ、出てこい、アーヴァンク! そして、ようこそ美少女姫!」
「姫はよけいっすよ、何でこんなとこに出てくるんすか。おっさんの妄想もいい加減にしてくださいっすよ。アーヴァンクもアホらしくなってどっかへ行っちゃいますよ」
「うるさいぞ」
しかし、周辺を探索するが、アーヴァンクの姿は全く発見出来ない。
「うーん、アーヴァンクの奴、場所を移動したのだろうか」
「姫、姫とか騒いでいるハゲデブ腰痛膝痛肩こりでリュウマチのおっさんを見て嫌気がさしたんじゃないすか、アーヴァンクも」
「うるさいぞ」
すると、俺の目の前に突然、全身がヌメヌメしたモンスターが現れた。
俺よりデカいんじゃないか。
「うお、出たなモンスターめ。よし、かかって来い」
俺は剣を構える。
しかし、そのモンスターは俺の事を無視して、のそのそと川の中に入って行く。
「何だよ、襲って来ないじゃないか」
「あれは、オオサンショウウオっすね」
「もしかして、目撃者はあれをアーヴァンクと見間違えたのかなあ」
「その可能性が高いっすね。確かに、今のはオオサンショウウオにしてはデカいっすね。でも、こっちから近づかなければ全く危険のない生き物っすね」
がっかりする俺。
何だよ、久々にモンスター相手に大暴れしてやろうと思ってたのに。
「やれやれ。けど、サンショウウオを主人公にした小説を思い出したぞ」
「どんな内容すか」
「ねぐらにしていた岩の洞穴にいたら、いつの間にか大きくなっていたサンショウウオが狭い出口から出られなくなってしまうって話だ。脱出不可能とわかると、自分の世界の中にひきこもって、外の世界の連中をバカにし始めるんだ。おまけに入り込んできた小さいカエルを出られないようにしてしまうんだ」
「そのサンショウウオのように妄想の中にひきこもってばかりいるリーダーはいつの間にか出腹のおっさんになって人生終了って感じっすね。俺っちをその小さいカエルのように巻き込まないでくださいっすよ」
「うるさいぞ。俺の人生はまだ終了してないぞ。まあ、とにかく今日は帰るか」
しかし、相棒が言う通り、やたらお姫様やらドラゴンが出る冒険小説のような妄想をしていたら、いつの間にかおっさんになっていた。
愕然としてしまう。
「おっと、冒険者ギルドからもう一つ仕事を頼まれてたんすよ」
「何だよ。他にもモンスターがいるのか」
「いえ、この周辺の清掃っすね」
「何だと! また清掃かよ。あのギルドの主人、俺たちを完全に清掃員と思ってるな。アーヴァンクで誘いやがって。実はアーヴァンクなんていないのを知っていて、清掃のために派遣したんだろ。ふざけんな!」
「まあまあ、清掃員も立派な仕事っすよ」
仕方がない。
引き受けた以上は川の周辺を清掃する。
「おっと、他にも仕事を頼まれてたっす。危険だから川には入るなって掲示を立てろってことっすよ。ここで川に落ちたら、滝つぼへ落ちて大ケガ、下手すれば死にますからね」
「何だよ、観光客用かよ。俺たちは冒険者なのに、清掃やらせたり、工事業者みたいな仕事ばかり押し付けやがって。ギルドの主人に文句を言ってやる」
「そうやって、ギルドで暴れてばかりいるから、嫌がらせでこんな仕事を押し付けられたんじゃないんすか。だいたい出腹で腰痛持ちの冒険者に重要な仕事をまかせないっすよ。もっと痩せたらどうすか」
「うるさいぞ。これでいいんだ」
けど、引き受けた以上、掲示を立てる作業はしなくてはいかん。
俺たちは近くの森から適当な木を切り出して、「危険、川に入るな!」と刻んで、何本か川岸に立てていく。
二十本くらい立てる。
ああ、疲れた。
「もう、このくらいでいいだろう」
「そっすね。帰りましょうか」
俺は川岸から山道に戻ろうとするが、突然、腰が痛くなる。
「ウッ」
「どうしたんすか」
「また腰痛だ」
俺は思わず、川岸でスっ転んでしまう。
そして、そのまま川の中へ落ちて、流されてしまった。
「うわー、助けてくれ」
「リーダー、ロープを投げますからそれに掴まってくださいっす」
慌てて、相棒がロープを俺に投げようとするが、川の流れが速い。
ああ、このまま滝つぼに落ちて、俺はあの世か。
川岸の清掃後にスっ転んで死ぬとは、何と下らない人生であったのだろうか。
しかし、急に俺の体が止まった。
俺は一番端っこの細い水流の岩の間に出腹が挟まれて、そこで何とか滝つぼに落ちないですんでいる。
相棒が投げたロープに掴まると、そのまま引き上げられた。
「ああ、助かった」
「危なかったすねえ」
「しかし、この出腹のせいで助かったんだ。どうだ、この出腹も役に立つだろう」
「何言ってんすか。出腹のせいで腰痛がひどくなって、それで転んだんじゃんないすか」
「うるさいぞ」
「しかし、リーダーも痩せないとサンショウウオのようにいつの間にか宿屋の扉に出腹が邪魔をして出られなくなるかもしれませんっすね」
「そんなことあるわけないだろ!」
「まあ、妄想の世界に浸る前に痩せてくださいっすよ」
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