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第86話:マンドラゴラをうっかりひき抜くと絶叫をあげるんだ、その声を聞いた者は死んでしまうんだぞ、これはマンドラゴラではないでしょ
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俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
残念ながら、今日はそのスライム退治の仕事も取れなかった。
情けない。
しかし、宿屋に戻ったら、昨日雹が落ちてぶち抜いた天井を修理しているので部屋に入れない。
「仕方が無いから一階のロビーで修理が終わるまで待ってましょうかねえ」
「いや、何かしら仕事がないか宿屋の主人に聞いてみよう。別に廊下の清掃でもかまわんぞ」
「働き者っすね。病気持ちの爺さんのくせに」
「金がないんだからしょうがないだろ。それに軽度の運動は医者に勧められているからな。後、まだ爺さんではない」
「歯抜けのおっさんですけどね」
「うるさいぞ」
さて、そんなわけで主人に何か仕事はないかと聞いたら裏庭の整理を頼まれた。
確か、いろんな廃材とか置いてあったな。
「よし、裏庭の清掃をするぞ」
「何だか張り切ってますけど、またぎっくり腰になっても知らないっすよ」
「注意しながら行うから大丈夫だ。それに宿屋の裏庭だから、もし倒れてもすぐに人を呼べるだろ」
「やれやれ。また倒れるのが関の山っすよ」
「とにかく、今日の夕食代を無料にしてくれるんだからいいだろ」
裏庭に来ると以前にあった屋外便所が取り壊されている。
「おや、あの便所がなくなっているなあ」
「リーダーが壁板に描いてあった紋章のようなものを見て魔法陣とかわけのわからないこと言ってた便所っすね。リーダーのせいで変な噂を立てられるのが嫌だから撤去したんじゃないすか。ハゲデブブサイクのおっさんの妄想にはかまってられないと」
「うるさいぞ」
そんなわけで、裏庭にあるガラクタを整理、処分していく。
「うむ、正直、つまらん仕事だな」
「自分で請け負っておいて、なに文句を言ってんすか」
「しょうがないだろ。これも食費代節約のためだ」
さて、だいたいきれいになったと裏庭を眺める。
すると、屋外便所があった場所の隅っこに妙なオレンジ色の植物がある。
「おお、これはもしかしてマンドラゴラじゃないか」
そのオレンジ色の植物は半分ほど土から出ていて人の形をしている。
「おい、マンドラゴラとはなあ、人の形をしている植物で錬金術の原料とかになるのだが、しかし、こいつをうっかりひき抜くと絶叫をあげるんだ。そして、その声を聞いた者は死んでしまうんだぞ」
「知ってますよ、その伝説。まあ、これはマンドラゴラではないでしょ。つーか、実際にマンドラゴラって呼ばれてる植物はありますよ。毒を持ってるみたいっすけど、別に引き抜いたって絶叫はあげませんよ。でも、これはニンジンが自生したんじゃないすか」
相棒はその植物を引き抜こうとする。
「おい、待て。もし、本当にマンドラゴラだったらどうするんだ。やはりあの便所は魔法陣でこのマンドラゴラを栽培するのに使っていたのではないか、宿屋の主人は」
「何をバカなことを言ってんすか。子供向け冒険小説の読みすぎっすよ。じゃあ、俺っちの耳をリーダーが両手でしっかりとふさいでくれますか。それなら安全でしょ」
「おお、そうか、それなら大丈夫だな」
俺は屈んだ相棒の後ろに立って耳をふさいでやる。
「じゃあ、引き抜きますよ」
あれ、おかしいぞ。
「おいおい、俺はどうすんだよ。死んじゃうじゃないか」
焦る俺を無視して相棒はマンドラゴラを引き抜く。
「ギャアアアアア!」
悲鳴があがった。ああ、その悲鳴を聞いた俺は死んでしまうんだ。こんな安宿の裏庭の便所があった場所で死ぬとは何て情けない人生だったんだ……って、死なないな。
「おい、今の悲鳴はお前が出したんだろ」
「そうっす。面白かったすよ。慌てるリーダーを見てると」
ヘラヘラしながら笑っている相棒。
「全く、ふざけんな。で、この植物はなんなんだ」
「だからニンジンっすよ。どうします。まあ、便所のあった場所に生えていたニンジンは食べる気にはならないっすね」
「何言っている、節約だ、節約。便所がどうしたって言うが、畑には肥しを使ったりするじゃないか」
「言われてみればそうすね」
そんなわけで、そのニンジンを掘り起こす俺たち。
けっこう採取できた。
「うむ、これで当分食費に困らないな」
「でも、ニンジンばっかりだとつまらないすよ」
「冒険者とはいつ何時でも過酷な状況でも耐えられなくてはいけないんだぞ。どんな恐怖にでも打ち勝つ必要があるんだ」
「何を偉そうに言ってるんすか。俺っちの悲鳴にびびっていたハゲデブブサイクの歯抜け爺さんのくせに」
「うるさいぞ」
いつも通りの下らない会話を相棒としながら、宿屋に戻って主人に報告する。
「裏庭の整理は終わりました」
「お疲れ様です。あれ、その持っている物は何ですか」
「いやあ、ニンジンが生えていたんで食べようかと。それとも勝手に抜いたのはまずかったですか」
俺が恐縮していると主人が慌てている。
「それ、毒ニンジンですよ。食べられませんよ」
「ええ、そうなんですか」
……………………………………………………
天井の修理が終わった部屋でくつろぐ俺と相棒。
「やれやれ。マンドラゴラではなかったが、毒ニンジンとはなあ。マンドラゴラならともかくニンジン食って死んだら笑いものだったなあ」
「でも、あの毒ニンジンって薬草になるって聞いたこともありますねえ」
「なに、ではやはりあの宿屋の主人は悪の魔法使いであの毒ニンジンで怪しげな薬でも作ろうとしたのではないか」
「またわけのわからないことを言ってますね、リーダーは」
「冗談だ。さて、飯でも食べに行くか。今日は無料だぞ」
俺は立ち上がる。
「ウォ!」
「どうしたんすか、またぎっくり腰っすか」
「いや、今度は右膝に痺れがきたぞ」
「裏庭の整理くらいで張り切り過ぎっすよ。ちょっと休みますかね」
「うむ、少しベッドに横になるぞ」
「じゃあ、食事はここに運んできますかね」
相棒が食堂から食事を持ってきた。
「野菜スープっす」
「おお、ありがとう……って、おい、ニンジンが入ってるぞ」
「大丈夫っすよ。あの毒ニンジンとは全然色が違うじゃないすか」
それでも恐々ニンジンスープを食べる俺。
「何をびびってるんすか。冒険者ならどんな過酷な状況でも恐怖にも打ち勝つ必要があるんじゃないすかね」
「うるさいぞ、冒険者ならいつ何時でも慎重に行動すべきなのだ」
相棒と下らん会話をしながら野菜スープを食べる俺。
けっこう美味しいな。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
残念ながら、今日はそのスライム退治の仕事も取れなかった。
情けない。
しかし、宿屋に戻ったら、昨日雹が落ちてぶち抜いた天井を修理しているので部屋に入れない。
「仕方が無いから一階のロビーで修理が終わるまで待ってましょうかねえ」
「いや、何かしら仕事がないか宿屋の主人に聞いてみよう。別に廊下の清掃でもかまわんぞ」
「働き者っすね。病気持ちの爺さんのくせに」
「金がないんだからしょうがないだろ。それに軽度の運動は医者に勧められているからな。後、まだ爺さんではない」
「歯抜けのおっさんですけどね」
「うるさいぞ」
さて、そんなわけで主人に何か仕事はないかと聞いたら裏庭の整理を頼まれた。
確か、いろんな廃材とか置いてあったな。
「よし、裏庭の清掃をするぞ」
「何だか張り切ってますけど、またぎっくり腰になっても知らないっすよ」
「注意しながら行うから大丈夫だ。それに宿屋の裏庭だから、もし倒れてもすぐに人を呼べるだろ」
「やれやれ。また倒れるのが関の山っすよ」
「とにかく、今日の夕食代を無料にしてくれるんだからいいだろ」
裏庭に来ると以前にあった屋外便所が取り壊されている。
「おや、あの便所がなくなっているなあ」
「リーダーが壁板に描いてあった紋章のようなものを見て魔法陣とかわけのわからないこと言ってた便所っすね。リーダーのせいで変な噂を立てられるのが嫌だから撤去したんじゃないすか。ハゲデブブサイクのおっさんの妄想にはかまってられないと」
「うるさいぞ」
そんなわけで、裏庭にあるガラクタを整理、処分していく。
「うむ、正直、つまらん仕事だな」
「自分で請け負っておいて、なに文句を言ってんすか」
「しょうがないだろ。これも食費代節約のためだ」
さて、だいたいきれいになったと裏庭を眺める。
すると、屋外便所があった場所の隅っこに妙なオレンジ色の植物がある。
「おお、これはもしかしてマンドラゴラじゃないか」
そのオレンジ色の植物は半分ほど土から出ていて人の形をしている。
「おい、マンドラゴラとはなあ、人の形をしている植物で錬金術の原料とかになるのだが、しかし、こいつをうっかりひき抜くと絶叫をあげるんだ。そして、その声を聞いた者は死んでしまうんだぞ」
「知ってますよ、その伝説。まあ、これはマンドラゴラではないでしょ。つーか、実際にマンドラゴラって呼ばれてる植物はありますよ。毒を持ってるみたいっすけど、別に引き抜いたって絶叫はあげませんよ。でも、これはニンジンが自生したんじゃないすか」
相棒はその植物を引き抜こうとする。
「おい、待て。もし、本当にマンドラゴラだったらどうするんだ。やはりあの便所は魔法陣でこのマンドラゴラを栽培するのに使っていたのではないか、宿屋の主人は」
「何をバカなことを言ってんすか。子供向け冒険小説の読みすぎっすよ。じゃあ、俺っちの耳をリーダーが両手でしっかりとふさいでくれますか。それなら安全でしょ」
「おお、そうか、それなら大丈夫だな」
俺は屈んだ相棒の後ろに立って耳をふさいでやる。
「じゃあ、引き抜きますよ」
あれ、おかしいぞ。
「おいおい、俺はどうすんだよ。死んじゃうじゃないか」
焦る俺を無視して相棒はマンドラゴラを引き抜く。
「ギャアアアアア!」
悲鳴があがった。ああ、その悲鳴を聞いた俺は死んでしまうんだ。こんな安宿の裏庭の便所があった場所で死ぬとは何て情けない人生だったんだ……って、死なないな。
「おい、今の悲鳴はお前が出したんだろ」
「そうっす。面白かったすよ。慌てるリーダーを見てると」
ヘラヘラしながら笑っている相棒。
「全く、ふざけんな。で、この植物はなんなんだ」
「だからニンジンっすよ。どうします。まあ、便所のあった場所に生えていたニンジンは食べる気にはならないっすね」
「何言っている、節約だ、節約。便所がどうしたって言うが、畑には肥しを使ったりするじゃないか」
「言われてみればそうすね」
そんなわけで、そのニンジンを掘り起こす俺たち。
けっこう採取できた。
「うむ、これで当分食費に困らないな」
「でも、ニンジンばっかりだとつまらないすよ」
「冒険者とはいつ何時でも過酷な状況でも耐えられなくてはいけないんだぞ。どんな恐怖にでも打ち勝つ必要があるんだ」
「何を偉そうに言ってるんすか。俺っちの悲鳴にびびっていたハゲデブブサイクの歯抜け爺さんのくせに」
「うるさいぞ」
いつも通りの下らない会話を相棒としながら、宿屋に戻って主人に報告する。
「裏庭の整理は終わりました」
「お疲れ様です。あれ、その持っている物は何ですか」
「いやあ、ニンジンが生えていたんで食べようかと。それとも勝手に抜いたのはまずかったですか」
俺が恐縮していると主人が慌てている。
「それ、毒ニンジンですよ。食べられませんよ」
「ええ、そうなんですか」
……………………………………………………
天井の修理が終わった部屋でくつろぐ俺と相棒。
「やれやれ。マンドラゴラではなかったが、毒ニンジンとはなあ。マンドラゴラならともかくニンジン食って死んだら笑いものだったなあ」
「でも、あの毒ニンジンって薬草になるって聞いたこともありますねえ」
「なに、ではやはりあの宿屋の主人は悪の魔法使いであの毒ニンジンで怪しげな薬でも作ろうとしたのではないか」
「またわけのわからないことを言ってますね、リーダーは」
「冗談だ。さて、飯でも食べに行くか。今日は無料だぞ」
俺は立ち上がる。
「ウォ!」
「どうしたんすか、またぎっくり腰っすか」
「いや、今度は右膝に痺れがきたぞ」
「裏庭の整理くらいで張り切り過ぎっすよ。ちょっと休みますかね」
「うむ、少しベッドに横になるぞ」
「じゃあ、食事はここに運んできますかね」
相棒が食堂から食事を持ってきた。
「野菜スープっす」
「おお、ありがとう……って、おい、ニンジンが入ってるぞ」
「大丈夫っすよ。あの毒ニンジンとは全然色が違うじゃないすか」
それでも恐々ニンジンスープを食べる俺。
「何をびびってるんすか。冒険者ならどんな過酷な状況でも恐怖にも打ち勝つ必要があるんじゃないすかね」
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