スキル買います

モモん

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第十二章

第210話 妊娠

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「俺がバンピの長トーラスだ。」

「レイミと言います。私たちは、仲間を探して世界中を旅しているところです。」

「ん?お前たちは商人ではないのか?」

「まあ、商人の真似事はしていますけど、取引をするにはここは遠すぎます。余程珍しいものがあれば別ですけど。」

「珍しいものだと?」

「そうです。例えば美容液とかとか化粧品、香水等ですね。」

「ならば、女どもに用意させよう。里にはこういう武器が必要なのだ。」

「それは、殆ど錆びないステンレスという鉄でできています。武器としてよりも、こういう包丁とかナイフとかの生活用品として使った方が役立つでしょうね。」

 レイミは収納から包丁・ナイフ・ノコギリ等を出してトーラスの前に並べた。

「うぉ!い、今どこから出したのだ?」

「私たちには”収納”というスキルがあって、空間にモノを入れておけるんです。」

「それは、どれくらいのモノをいれられるんだ?」

「えっと、少なくともこの里全部を入れられますけど。」

「な、なんと!」

「まあ、そういう事が出来る程度に覚えておいてください。」

「それで、この剣やナイフは譲って貰えるのか?」

「出した分は差し上げますけど。これ以上は交換できるものがあるかどうかですね。」

「この里に、お主等の必要なモノがあるとは思えぬが……」

「それを判断するのは私たちですので、とりあえず里を見せて貰えますか。」

「それは構わぬが……」

「のう、お主は今いくつじゃ?まだ若いと思うが……ちなみにワシは1000才を超えてから若返っておるからお主よりも年上じゃぞ。」

「えっ?1000才を超えて?」

「そうじゃ。ワシはオオカミのケモノビトなのじゃ。」

「俺は650才だが……それにしても、最強種と言われたオオカミとは……。」

「うん?この里には他のケモノビトの情報があるのか?」

「時々里を訪れる吟遊詩人から聞いたのだ。」

「へえ、吟遊詩人なんて存在してるんだ。」

「面白いですね。その吟遊詩人は、大陸を超えて情報を集めているかも知れないと。」

「それで、ケモノビトには他にどんな種族がいるかご存じですか?」

「吟遊詩人の歌に出てきたのは、オオカミとネコ、空を手に入れた我らに兎人とそこにいる狐人。」

「バカな、私は御先です。稲荷の眷属ではありますがヒト族ではありません!」

 ミサキが大きな声で異を唱え、あまりの迫力に長がビクッと飛び上がった。

「まあ、今のお前は半獣化したケモノビトと変わらん。聞き流しておけ。」

「しかし!……シー様がそう言われるのなら、分かりました。」

「他にはいないんですか?例えば獅子族とかオルカ族とか。」

「吟遊詩人の歌の中にはこれだけです。」

「そうすると、最低でも狐人と兎人はいるという事ですね。まあ、獣化のスキルで勝手にフェンリルになっちゃった人とか豹になっちゃった女王様とかいますけど。」

「フェンリル?豹?、それはいったい……」

「ワシらがケモノの姿に変われるのは獣化というスキルのおかげじゃろう。ならば、その獣化スキルをヒトが使ったらどうなるかという事じゃ。」

「どうなるのだ?そもそも、スキルを移すことなどできるのか?」

「スキルを操作できるのは我々の技能ですが、それは極秘事項です。」

 ミサキがきっぱりと告げる。

「まあ、そのうえで申し上げると、獣化のスキルを使う前に明確なイメージを持っておけば、ほぼ望む姿に変身できるという事が分かりました。」

「望む姿だと!」

「このミサキを見てもらえれば分かりますが、こんな朱色の入った狐など、自然界には存在しないですよね。」

「それはそうだが……」

「ただ、おそらく獣化のスキルを得たからといって、寿命とか本質的な事は変わらないと思うんですよね。」

「どうだろうな。獣化のスキルを使うことで、回復力は強くなっているのだぞ。」

「そうじゃな。これはよく見極める必要がある。」

「ところで、この里では、ヒトと交わった例はないのですか?」

「うん?どういう事だ?」

「別の種族での話しですが、ヒトとケモノビトの間で子を成すと、男の子には狂暴になって暴れてしまうスキルが発生する事が分かっているのです。」

「あっ!」

 この時になって初めて、同席していた長の婦人が声をあげた。

「思い当る事例があったようですね。」

「俺は知らぬが、そんな事があったのか?」

「ええ。里にはおりませんが、ヒトの元に嫁に出た娘が、自分の産んだ子供に殺されてしまったと……」

「なにぃ!そんな話は初めて聞いたぞ!」

「親元も、そんな話はヒトに言いませんし、嫁ぎ先ともそういう交流はありませんからね。」

「何という事だ!それが事実ならば、ヒト族との婚姻は禁止しないと……」

「まあ、幸せな未来はやってきませんからね。」

「それは、他者に説明できるのか?」

「はい。」

 レイミは両親から受け継がれる遺伝の仕組みについて説明した。

「なるほどな。確かに子供には両親の特徴が受け継がれるが、そういう仕組みだったとはな……」

「私たちがいれば、その問題となる遺伝子を消してあげられますが、いつまでも面倒を見てあげられる訳でもないですし、そうなる事を防げれば一番だと思います。」

「そうは言いますが、一度好き合ってしまうと歯止めが効かなくなってしまうのも男女の仲ですよね。」

「そうですね。ただ禁止するのではなく、ちゃんと理解してもらわないと……、悲しい結末を迎える事もあると思います。」

「……待てよ、それが婚姻ではなくマグワッた事で発生するのなら……」

「あっ、ジョディ……」

「何かあったんですか?」

「先日、盗賊に襲われて助けられた娘がおるのですが……」

「まさか、妊娠?」

「はっきりとはしていませんが、その可能性は……」

「まず、確認した方がいいですね。」

「確認する方法があるのか?」

「はい。」

 レイミたちはそのジョディという娘の元に出向いた。

「ジョディ、具合はどうだ?」

「あっ、里長……」

「辛かったであろうが忘れてしまえ。」

「はい……大丈夫です……」

「こちらは、里の外から来られた治療師様だ。」

「あっ、はい。」

「具合の悪いところがないか、診てもらうといい。」

「はい、お願いします。」

 レイミはジョディの両手を握った。

「レイミと言います。目を閉じて心を落ち着けてください。」

 治癒師ではないものの、落ち着かせるために色々と話しかけながら探査を放った。

「うん、身体の中に異常はみられませんね。でも……」

 レイミは少し間をあけて告げた。

「あなた、妊娠していますね。」

 その瞬間、女性は一瞬だけ明るい表情をみせた。
 レイミはその違和感に気付いたが、理由は分からない。

「できれば堕胎した方がいいと思います。」

「堕胎?」

「子供を堕す事です。」
ふう、何とか3000文字 
「イヤです!子供がいるのなら産みます!」

「だが、お前の両親は死んでしまったのだぞ。」

「大丈夫……私は産んで育てます……」

「ジョディ、そうは言うが、ヒトとの混血は、里に厄災をもたらしかねんのだ。」

「大丈夫です。私がちゃんと育てますから!」

「まあまあトーラスさん、今は混乱しているでしょうから、一晩考えてもらって明日また話しましょう。」

「わ、私は何があってもこの子を産みます!」

 レイミたちは一旦里長の家に戻った。

「ジョディは何故分かってくれんのだ……」

「あの子、妊娠していると告げたとき、嬉しそうだったんですよね……」

「なにぃ!」

「どういう事だレイミ?」

「考えられるのは、自分が望んだ妊娠だという事。」

「盗賊の、既に処刑された奴らの子だというのにか!」


【あとがき】
 ふう、何とか3000文字 
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