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第十二章
第211話 まじない師
「ふう。どうしましょうかね。」
「いや、厄災なのだからどうするかは分かり切っている!」
「ねえミサキ、稲荷神はどういう神様だったかしら?」
「基本的には五穀豊穣ですが、商売繁盛や家内安全などでも信仰されていました。」
「私はそれに縛られないといけないの?」
「別にそこに縛られる必要はないかと存じます。」
「じゃあ、何をやってもいいのね?」
「はい。レイミ様の行いが、新たな信仰を作っていかれるものと承知しております。」
「分かったわ。ならば、私は母を支援する。」
「ほう。」
「えっ?」
「母親が安心して子を産んで、育てられる世界を支援していくわ。」
「それは……」
「例えその子がヒトとの間にできた子でも、家族との間にできた子であったとしてもね。」
「「えっ!?」」
「ど、どういうことだ!」
「だって、この子には親密になるような相手はいなかったんでしょ。」
「それは、さっき聞きましたが……」
「この子は妊娠しているって教えたときに、一瞬だけど嬉しそうな顔をしたのよ。」
「ああ、ワシもそれには違和感を覚えたな。」
「親しい異性もいないこの子が、妊娠を喜ぶ相手……。家族くらいしかいないんじゃなくて?」
「家族……父親か……」
ジョディの顔が少し引きつっている。
「ち、違います……」
「亡くなったジョディの両親には子ができなくてな。みなしごだったジョディを引き取ったのだが……」
「違う!違う違う!」
「さっきの反応からすると、無理やり手籠めにされた訳でもなさそうよね。」
「ちがう…………」
「長、この里では近親者に対するそういうのは禁じられているのかしら?」
「そういう掟はないのだが、親子で子をなすのは嫌われておるかな。というか、父親にとっては恥だと……甲斐性がなくて……」
「……違うの……この子はお母さんの子供で……」
ジョディは目の焦点があっていなかった。
まるで催眠状態にある子供のように……
パチンと指を鳴らして、レイミはジョディを眠らせた。
「あまり追い詰めない方がいいわ。」
「な、何が……」
ジョディはシーさんがベッドに運んで眠らせた。
「何があったのかは、まだ分からないわね。でも……この子には精神的にプレッシャーがかけられている。」
「プレッシャー?」
「精神的に追い込まれるような事があったとか、時間をかけて聞き出した方がいいかもしれないわね。」
「だが、時間がかかってしまうと腹も大きくなって……」
「基本的には産む方向で考えた方がいいと思いますよ。」
「もし、ヒトとの混血だったら……」
「その時は私がスキルを消しますよ。」
「その時は本当に厄災は消えるのですか?」
「多分、大丈夫でしょう。」
「多分って、そんな無責任な!」
「問題は、遺伝の事を里に広めたら、里のヒトが彼女の妊娠に注目しちゃうでしょうね。」
「そうだ、里長としてそれは看過できぬ!」
「まあ、そこは里の問題だし、私が首を突っ込んでいい事じゃないけど……」
「ならば、里としては先ほどの件を追及して、父親の子である可能性をはっきりさせねばならん。」
「でも、それを追及する事で、彼女を追い込んでしまうかもしれませんよ。」
「どういう事だ?」
「父親との性交があったのは間違いないとして、母親の関与があったかどうか。もしくは、催眠術のようなもので彼女に言う事を聞かせていたとか……」
「バカな!リョクサはそのような男ではない!」
「ヒトには他人の知らない一面があるものじゃ。長ならばそれくらい分かっておろう。」
「いや、我が里のモノに、そのような事は絶対にない!」
「催眠術というよりも、暗示のような意識下に残す感じだな。」
「それって、洗脳?」
「おお、それじゃ!この里には、洗脳のスキルを持ったモノはおらんのか?」
「洗脳とは何ですか?」
「ヒトを思い通りに操るような能力じゃ。」
「……呪い師ならおりますが。」
「それは、どういう事をするのじゃ?」
「里の子供たちは、6才になると崖から飛ぶのですが、尻込みする子もおりますからな。勇気づけて飛ばせるために、子供から恐怖心を取り去るのを専門にやっている家ですな。」
「それは、他のことに使われないんですか?」
「まあ、最年長のババじゃから、相談には乗ってやっているようだが……」
【あとがき】
ああ、足にチカラが入りません
「いや、厄災なのだからどうするかは分かり切っている!」
「ねえミサキ、稲荷神はどういう神様だったかしら?」
「基本的には五穀豊穣ですが、商売繁盛や家内安全などでも信仰されていました。」
「私はそれに縛られないといけないの?」
「別にそこに縛られる必要はないかと存じます。」
「じゃあ、何をやってもいいのね?」
「はい。レイミ様の行いが、新たな信仰を作っていかれるものと承知しております。」
「分かったわ。ならば、私は母を支援する。」
「ほう。」
「えっ?」
「母親が安心して子を産んで、育てられる世界を支援していくわ。」
「それは……」
「例えその子がヒトとの間にできた子でも、家族との間にできた子であったとしてもね。」
「「えっ!?」」
「ど、どういうことだ!」
「だって、この子には親密になるような相手はいなかったんでしょ。」
「それは、さっき聞きましたが……」
「この子は妊娠しているって教えたときに、一瞬だけど嬉しそうな顔をしたのよ。」
「ああ、ワシもそれには違和感を覚えたな。」
「親しい異性もいないこの子が、妊娠を喜ぶ相手……。家族くらいしかいないんじゃなくて?」
「家族……父親か……」
ジョディの顔が少し引きつっている。
「ち、違います……」
「亡くなったジョディの両親には子ができなくてな。みなしごだったジョディを引き取ったのだが……」
「違う!違う違う!」
「さっきの反応からすると、無理やり手籠めにされた訳でもなさそうよね。」
「ちがう…………」
「長、この里では近親者に対するそういうのは禁じられているのかしら?」
「そういう掟はないのだが、親子で子をなすのは嫌われておるかな。というか、父親にとっては恥だと……甲斐性がなくて……」
「……違うの……この子はお母さんの子供で……」
ジョディは目の焦点があっていなかった。
まるで催眠状態にある子供のように……
パチンと指を鳴らして、レイミはジョディを眠らせた。
「あまり追い詰めない方がいいわ。」
「な、何が……」
ジョディはシーさんがベッドに運んで眠らせた。
「何があったのかは、まだ分からないわね。でも……この子には精神的にプレッシャーがかけられている。」
「プレッシャー?」
「精神的に追い込まれるような事があったとか、時間をかけて聞き出した方がいいかもしれないわね。」
「だが、時間がかかってしまうと腹も大きくなって……」
「基本的には産む方向で考えた方がいいと思いますよ。」
「もし、ヒトとの混血だったら……」
「その時は私がスキルを消しますよ。」
「その時は本当に厄災は消えるのですか?」
「多分、大丈夫でしょう。」
「多分って、そんな無責任な!」
「問題は、遺伝の事を里に広めたら、里のヒトが彼女の妊娠に注目しちゃうでしょうね。」
「そうだ、里長としてそれは看過できぬ!」
「まあ、そこは里の問題だし、私が首を突っ込んでいい事じゃないけど……」
「ならば、里としては先ほどの件を追及して、父親の子である可能性をはっきりさせねばならん。」
「でも、それを追及する事で、彼女を追い込んでしまうかもしれませんよ。」
「どういう事だ?」
「父親との性交があったのは間違いないとして、母親の関与があったかどうか。もしくは、催眠術のようなもので彼女に言う事を聞かせていたとか……」
「バカな!リョクサはそのような男ではない!」
「ヒトには他人の知らない一面があるものじゃ。長ならばそれくらい分かっておろう。」
「いや、我が里のモノに、そのような事は絶対にない!」
「催眠術というよりも、暗示のような意識下に残す感じだな。」
「それって、洗脳?」
「おお、それじゃ!この里には、洗脳のスキルを持ったモノはおらんのか?」
「洗脳とは何ですか?」
「ヒトを思い通りに操るような能力じゃ。」
「……呪い師ならおりますが。」
「それは、どういう事をするのじゃ?」
「里の子供たちは、6才になると崖から飛ぶのですが、尻込みする子もおりますからな。勇気づけて飛ばせるために、子供から恐怖心を取り去るのを専門にやっている家ですな。」
「それは、他のことに使われないんですか?」
「まあ、最年長のババじゃから、相談には乗ってやっているようだが……」
【あとがき】
ああ、足にチカラが入りません
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