134 / 187
18章 王位剥奪
3
しおりを挟む
ボナールへの移動は今回も馬車でのものにした。
だが、今回は帝国に渡る騎士団と一緒の移動になる上、近衛騎士も連れているので、物々しい規模になっている。
オレが乗っている馬車は6人乗りの比較的大きなものだが、フレッド、ディリオン、コンラッドと男3人で乗っていれば手狭に感じる。
馬車内の空気は重い。
ボナール国王が退位に同意をしなかった場合、どうなるだろうか。
ランバラルドが戦争に勝利した時に、賠償金で片を付けているため、ランバラルドの意見で退位を迫ることは難しい。
ただ、支払いが滞っており、そこを突いての退位請求となるならば、支払い期限を先日延ばしてしまったので、その期日が来るのを待つしかない。
待っても、賠償金が支払われてしまえば、権利がなくなる。
「新たに、ランバラルド国民誘拐罪で、賠償金を上乗せするか……」
オレが外を見ながら呟くと、ディリオンが同意する。
「それしかあるまい。だが、新たに入手した売買リストを見ると、ランバラルドの国民より、自国ボナールの国民を多く売り飛ばしているからな。ランバラルド国民の数を考えると、賠償金の額はそう多くは請求できない」
フレッドがため息をつく。
「自国の民を売り飛ばすなんて、ほんと考えられない」
コンラッドが資料を見ながら顎の下を指で擦る。
これは、コンラッドが(珍しく)考え事をするときの癖だ。
「王子、ランバラルドの民を買い戻すのはいいとして、ボナールの民はどうする?」
国庫金を使うのだ。
人の命の重さは同じとはいえ、ランバラルドの税金でボナールを助けるのは、国民感情として、どうなのだろう。
「しかし、見殺しにはできまい」
フレッドが少し考えてから意見を述べる。
「向こうの宰相は、少し話がわかる人だったと思うよ。ボナールが共和制になった時に、ランバラルドへ返金してもらうように、交渉してみようよ」
「そうだな。全額ではなくていいから、返還してもらえれば、ランバラルド国民も納得するだろう」
何しろ、ボナールの民は戦争で殺し合った相手になる。
家族を殺された者もいるだろう。
そんな相手を自国の血税で助けると言えば、反発が起こるに違いない。
少しでも、言い訳を用意しておいた方がいい。
「コンラッド、コンラッドには騎士団と一緒に帝国へ行ってもらうが、何か心配事はあるか?」
「いや、これと言ってはないが…王子の方が心配だな。今回は影武者も立てず、王太子としての正体を晒して交渉するんだろ? 暗殺されるなよ?」
ディリオンが眉根を寄せる。
「バカ者。不吉なことを言うな。オレとフレッド、しかもジェイミーまでいるんだ。みすみす王子を死なせる訳があるまい」
「ま、そりゃそーか」
ボナールの港は、王城から半日ほど北に下ったところにある。
途中でコンラッドとは別れて、コンラッドと騎士団は港から帝国へ。
オレたちと近衛騎士団は、ボナール城へと向かう予定だ。
馬車の中から空を見上げると、薄暗い雲がかかっている。
なんとなく、嫌な予感がオレの周りを取り巻いていた。
だが、今回は帝国に渡る騎士団と一緒の移動になる上、近衛騎士も連れているので、物々しい規模になっている。
オレが乗っている馬車は6人乗りの比較的大きなものだが、フレッド、ディリオン、コンラッドと男3人で乗っていれば手狭に感じる。
馬車内の空気は重い。
ボナール国王が退位に同意をしなかった場合、どうなるだろうか。
ランバラルドが戦争に勝利した時に、賠償金で片を付けているため、ランバラルドの意見で退位を迫ることは難しい。
ただ、支払いが滞っており、そこを突いての退位請求となるならば、支払い期限を先日延ばしてしまったので、その期日が来るのを待つしかない。
待っても、賠償金が支払われてしまえば、権利がなくなる。
「新たに、ランバラルド国民誘拐罪で、賠償金を上乗せするか……」
オレが外を見ながら呟くと、ディリオンが同意する。
「それしかあるまい。だが、新たに入手した売買リストを見ると、ランバラルドの国民より、自国ボナールの国民を多く売り飛ばしているからな。ランバラルド国民の数を考えると、賠償金の額はそう多くは請求できない」
フレッドがため息をつく。
「自国の民を売り飛ばすなんて、ほんと考えられない」
コンラッドが資料を見ながら顎の下を指で擦る。
これは、コンラッドが(珍しく)考え事をするときの癖だ。
「王子、ランバラルドの民を買い戻すのはいいとして、ボナールの民はどうする?」
国庫金を使うのだ。
人の命の重さは同じとはいえ、ランバラルドの税金でボナールを助けるのは、国民感情として、どうなのだろう。
「しかし、見殺しにはできまい」
フレッドが少し考えてから意見を述べる。
「向こうの宰相は、少し話がわかる人だったと思うよ。ボナールが共和制になった時に、ランバラルドへ返金してもらうように、交渉してみようよ」
「そうだな。全額ではなくていいから、返還してもらえれば、ランバラルド国民も納得するだろう」
何しろ、ボナールの民は戦争で殺し合った相手になる。
家族を殺された者もいるだろう。
そんな相手を自国の血税で助けると言えば、反発が起こるに違いない。
少しでも、言い訳を用意しておいた方がいい。
「コンラッド、コンラッドには騎士団と一緒に帝国へ行ってもらうが、何か心配事はあるか?」
「いや、これと言ってはないが…王子の方が心配だな。今回は影武者も立てず、王太子としての正体を晒して交渉するんだろ? 暗殺されるなよ?」
ディリオンが眉根を寄せる。
「バカ者。不吉なことを言うな。オレとフレッド、しかもジェイミーまでいるんだ。みすみす王子を死なせる訳があるまい」
「ま、そりゃそーか」
ボナールの港は、王城から半日ほど北に下ったところにある。
途中でコンラッドとは別れて、コンラッドと騎士団は港から帝国へ。
オレたちと近衛騎士団は、ボナール城へと向かう予定だ。
馬車の中から空を見上げると、薄暗い雲がかかっている。
なんとなく、嫌な予感がオレの周りを取り巻いていた。
16
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。
恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。
そして、屋敷から出ると決め
計画を実行したら
皮肉にも失敗しそうになっていた。
そんな時彼に出会い。
王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす!
と、そんな時に聖騎士が来た
【完結】見返りは、当然求めますわ
楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。
この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー
「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」
微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。
正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))
働きませんわ。それでも王妃になります
鷹 綾
恋愛
「私は働きませんわ」
そう宣言して、王太子から婚約破棄された公爵令嬢エルフィーナ。
社交もしない。慈善もしない。政務にも口を出さない。
“怠け者令嬢”と陰で囁かれる彼女を、王太子アレクシスは「王妃に相応しくない」と切り捨てた。
――だが彼は知らなかった。
彼女が動かないからこそ、王家は自力で立つことを覚えたのだということを。
エルフィーナは何もしない。
ただ保証を更新せず、支援を継続せず、静かに席を外すだけ。
その結果――
王家は自らの足で立つことを強いられ、王太子は“誰の力にも頼らない王”へと変わっていく。
やがて外圧が王国を揺らしたとき、彼は気づく。
支配でも依存でもなく、並んで立てる存在が誰だったのかを。
「君と並びたい」
差し出されたのは、甘い救済ではない。
対等という選択。
それでも彼女の答えは変わらない。
「私は働きませんわ」
働かない。
支配しない。
けれど、逃げもしない。
これは――
働かないまま王妃になる、公爵令嬢の静かなざまあ恋愛譚。
優雅で、合理的で、そしてどこまでも強い。
“何もしない”という最強の選択が、王国を変えていく。
死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」
千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。
だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。
それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。
しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。
怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。
戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる