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最終章 人質でなくなった王女と忘れない王太子
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あれから、大臣達の力を借りて内閣を作り、様々な行政組織を作り、法整備も進める傍ら、隣国と主要国を招いてのパーティーの準備もしてきた。
ダンスもマナーも付け焼き刃ではあるけれど、ディリオン様の合格をもらい、いよいよ今日はパーティー当日。
貧乏国ながら見栄を張り、少ない予算を(主にディリオン様が)やりくりしながら、なんとか見られるように設えた。
私も朝早くからジュディとマリーが2人してああでもないこうでもないと、ドレスやアクセサリーを準備して、今日ばかりは2人以外の侍女も総動員して顔や腕、肩など見えるところにはオイルマッサージを施した。
おかげで私は、今までの中で一番ピカピカだ。
戴冠式で使った、七色の宝石を埋め込んだ王冠を被って控え室に行くと、言い争うような声が聞こえた。
「なんでオレがエスコートじゃダメなんだよ。シャーロットの夫はオレだぞ」
「ばかめ。今日は帝国の者も招待してある。そこでランバラルドの権力が増すようなフラグを立ててどうするのだ」
「対外的にもシャーロットが側妃であると言う話は出回っているだろう」
「そうだ。あくまで側妃で、正妃は別に据えると考える。ボナールを完全に乗っ取るのではなく、多少の援助は仕方なしと思わせるためだ。それがボナールの即位を知らせるパーティーで、お前がべったりとシャーロット陛下と居れば、正妃にしてボナールもランバラルドが吸収するのではないかと怪しまれる。だから、王子が今日エスコートすべきはシャーロット陛下ではない。未来のランバラルドの正妃だ。……まあ、いるのならばだが」
「いないんだから、シャーロットをエスコートするべきだろうが」
「くどいっ! 何度言わせる気だ。ダメなものはダメだ」
廊下までライリー殿下とディリオン様の声が響いている……。
私はそうっと控え室のドアを開けた。
「あのー、私は1人で歩けますけれど……」
私の一声でみんながこちらを見る。
「シャーロット!! なんて綺麗なんだ。いつも綺麗だけど、今日は一段と綺麗だ」
ライリー殿下がにこにことこちらへ向かってくる。
「な、こんなに綺麗な女王様を1人で歩かせるなんてできないだろう?」
ライリー殿下は私の手を取り、私を椅子に座らせた。
ライリー殿下は即位の儀の時と同じ軍服を着ていて、勲章がいくつか付いている。
ディリオン様のたちもいつもとは違い、モーニングコートを着ている。
ディリオン様は腕を組む。
「だから、1人ではなく、フレッドがエスコート役だと言っているだろうが」
「夫はオレなのに!」
私はライリー殿下の顔をじっと見つめた。
「ライリー殿下、今日だけのことではないですか。ディリオン様がそう仰るには、事情があるはずですわ。ディリオン様に従いましょう」
ライリー殿下はふいっと私から目線を逸らす。
「~~わかったよ。今日のところはオレと2人で出るのは諦めるよ」
今日はライリー殿下たちが騒がなくても、城の中がざわざわしている。
広間の方からざわめきが伝わってくると、私もそのざわめきの大きさに合わせて緊張が増してくる。
開始時刻が近くなった時、ライリー殿下が立ち上がる。
「じゃ、シャーロット。先に行ってる。大丈夫。ちゃんとうまくやれるよ。しっかり見てるからね」
ライリー殿下は王冠を触らないようにして、私の頭をポンポンと撫でてから、控え室を出て行った。
部屋に残ったのは私とフレッド様、あとは護衛のアーサーだけ。
途端に意識して、手が震えてくる。
両手を組んで額にあてていると、フレッド様が優しくその手を包んでくれた。
「大丈夫。今日は隣にオレがいるから。シャーロットちゃん1人じゃないよ」
「フレッド様……。ありがとうございます」
そのまま、フレッド様が私の目を覗き込むので、私も見つめ返していると、アーサーの方から咳払いが聞こえた。
「こほん。フレッド様、もうそろそろ入場ですよ。姫様の手を離してくださいませんか」
言われて時計を見ると、確かにもう行かなければならない時間だった。
「アーサー、ありがとう。行きましょう」
立ち上がり、フレッド様のエスコートで会場に向かった。
もちろん、アーサーも後ろから付いてきてくれている。
扉の前までくると、会場の騒めきが間近に聞こえてドキドキしてくる。
ふうっと、息を吐くと、それに気付いたフレッド様がきゅっと手に力を入れてくれる。
扉の向こうで、近衛の「入場!」という声が聞こえて、扉が開く。
目の前には整列した近衛の列。
その中をフレッド様に手を引かれ、歩いて行く。
上座、段の中央に来た時、フレッド様が手を離し、少し離れて傅いた。
私は正面を見て、深く息を吸い込む。
「ボナール憲法、及び議会の承認によりここに王位を継承致しましたことを、ご報告いたします。これまでの歴史を深く受け止め、国民と共に歩んで行くことを誓い、世の平和、しあわせと発展のため尽力いたします」
わあっと沸き上がる場内。
国内の貴族や、近隣からの招待客も笑顔で私を見守ってくれた。
その後、すぐに各国主要人物からの挨拶を受ける。
一番は帝国からの来賓と聞いていたが、随分と若い。
黒いフロックコートがよく似合う、黒髪に黒曜石のような瞳を持つ背が高いその人は、20代後半くらいだろうか。若いのに、とても威厳に満ちていた。
偉い人が来ると聞いていたので、おじいちゃんが来ると思っていたから、少し驚いた。
その人は私の手を取り、甲に口付けを落とした。
「わたしは帝国の王、ジルベール・クレイグ・ガートナー。ボナールの女王が、こんなに若いとは驚きだ」
手を取ったままにやりと笑うジルベール王に、ひきつらないように微笑んで挨拶するのが、やっとだった。
ダンスもマナーも付け焼き刃ではあるけれど、ディリオン様の合格をもらい、いよいよ今日はパーティー当日。
貧乏国ながら見栄を張り、少ない予算を(主にディリオン様が)やりくりしながら、なんとか見られるように設えた。
私も朝早くからジュディとマリーが2人してああでもないこうでもないと、ドレスやアクセサリーを準備して、今日ばかりは2人以外の侍女も総動員して顔や腕、肩など見えるところにはオイルマッサージを施した。
おかげで私は、今までの中で一番ピカピカだ。
戴冠式で使った、七色の宝石を埋め込んだ王冠を被って控え室に行くと、言い争うような声が聞こえた。
「なんでオレがエスコートじゃダメなんだよ。シャーロットの夫はオレだぞ」
「ばかめ。今日は帝国の者も招待してある。そこでランバラルドの権力が増すようなフラグを立ててどうするのだ」
「対外的にもシャーロットが側妃であると言う話は出回っているだろう」
「そうだ。あくまで側妃で、正妃は別に据えると考える。ボナールを完全に乗っ取るのではなく、多少の援助は仕方なしと思わせるためだ。それがボナールの即位を知らせるパーティーで、お前がべったりとシャーロット陛下と居れば、正妃にしてボナールもランバラルドが吸収するのではないかと怪しまれる。だから、王子が今日エスコートすべきはシャーロット陛下ではない。未来のランバラルドの正妃だ。……まあ、いるのならばだが」
「いないんだから、シャーロットをエスコートするべきだろうが」
「くどいっ! 何度言わせる気だ。ダメなものはダメだ」
廊下までライリー殿下とディリオン様の声が響いている……。
私はそうっと控え室のドアを開けた。
「あのー、私は1人で歩けますけれど……」
私の一声でみんながこちらを見る。
「シャーロット!! なんて綺麗なんだ。いつも綺麗だけど、今日は一段と綺麗だ」
ライリー殿下がにこにことこちらへ向かってくる。
「な、こんなに綺麗な女王様を1人で歩かせるなんてできないだろう?」
ライリー殿下は私の手を取り、私を椅子に座らせた。
ライリー殿下は即位の儀の時と同じ軍服を着ていて、勲章がいくつか付いている。
ディリオン様のたちもいつもとは違い、モーニングコートを着ている。
ディリオン様は腕を組む。
「だから、1人ではなく、フレッドがエスコート役だと言っているだろうが」
「夫はオレなのに!」
私はライリー殿下の顔をじっと見つめた。
「ライリー殿下、今日だけのことではないですか。ディリオン様がそう仰るには、事情があるはずですわ。ディリオン様に従いましょう」
ライリー殿下はふいっと私から目線を逸らす。
「~~わかったよ。今日のところはオレと2人で出るのは諦めるよ」
今日はライリー殿下たちが騒がなくても、城の中がざわざわしている。
広間の方からざわめきが伝わってくると、私もそのざわめきの大きさに合わせて緊張が増してくる。
開始時刻が近くなった時、ライリー殿下が立ち上がる。
「じゃ、シャーロット。先に行ってる。大丈夫。ちゃんとうまくやれるよ。しっかり見てるからね」
ライリー殿下は王冠を触らないようにして、私の頭をポンポンと撫でてから、控え室を出て行った。
部屋に残ったのは私とフレッド様、あとは護衛のアーサーだけ。
途端に意識して、手が震えてくる。
両手を組んで額にあてていると、フレッド様が優しくその手を包んでくれた。
「大丈夫。今日は隣にオレがいるから。シャーロットちゃん1人じゃないよ」
「フレッド様……。ありがとうございます」
そのまま、フレッド様が私の目を覗き込むので、私も見つめ返していると、アーサーの方から咳払いが聞こえた。
「こほん。フレッド様、もうそろそろ入場ですよ。姫様の手を離してくださいませんか」
言われて時計を見ると、確かにもう行かなければならない時間だった。
「アーサー、ありがとう。行きましょう」
立ち上がり、フレッド様のエスコートで会場に向かった。
もちろん、アーサーも後ろから付いてきてくれている。
扉の前までくると、会場の騒めきが間近に聞こえてドキドキしてくる。
ふうっと、息を吐くと、それに気付いたフレッド様がきゅっと手に力を入れてくれる。
扉の向こうで、近衛の「入場!」という声が聞こえて、扉が開く。
目の前には整列した近衛の列。
その中をフレッド様に手を引かれ、歩いて行く。
上座、段の中央に来た時、フレッド様が手を離し、少し離れて傅いた。
私は正面を見て、深く息を吸い込む。
「ボナール憲法、及び議会の承認によりここに王位を継承致しましたことを、ご報告いたします。これまでの歴史を深く受け止め、国民と共に歩んで行くことを誓い、世の平和、しあわせと発展のため尽力いたします」
わあっと沸き上がる場内。
国内の貴族や、近隣からの招待客も笑顔で私を見守ってくれた。
その後、すぐに各国主要人物からの挨拶を受ける。
一番は帝国からの来賓と聞いていたが、随分と若い。
黒いフロックコートがよく似合う、黒髪に黒曜石のような瞳を持つ背が高いその人は、20代後半くらいだろうか。若いのに、とても威厳に満ちていた。
偉い人が来ると聞いていたので、おじいちゃんが来ると思っていたから、少し驚いた。
その人は私の手を取り、甲に口付けを落とした。
「わたしは帝国の王、ジルベール・クレイグ・ガートナー。ボナールの女王が、こんなに若いとは驚きだ」
手を取ったままにやりと笑うジルベール王に、ひきつらないように微笑んで挨拶するのが、やっとだった。
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