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最終章 人質でなくなった王女と忘れない王太子
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戴冠式を見たあと、離宮に戻って急いでスイートポテトを焼いていると、ギルバート様が顔を出す。
「悪かったな、シャーロット。午前中戴冠式に出て疲れているだろう」
「いいえ。お菓子作りは私の趣味ですから、大丈夫ですわ」
私がにっこりとギルバート様に言うと、ジュディが目をつり上げた。
「大丈夫じゃないです! 夜のためにさっさと湯あみをしてきてください。焼き上がりはわたしが見ておきますから。もう時間がないんですよ」
「湯あみしてドレス着るだけじゃない」
「違います。湯あみして、マッサージしてパックしてヘアトリートメントして、やることはたくさんあるんです!!」
「そんなこと、してもしなくてもたいして変わらないわよ」
「か、わ、り、ま、す!!」
私とギルバート様は、ジュディの勢いにタジタジになり、私が湯あみをしている間、なんとギルバート様はオーブンの前で焼き色を見ているという、ランバラルドの公爵様にお願いするようなことではないことをジュディが頼んでその場は収まった。
私が一連の作業を終わらせて一階のリビングに行くと、ジュディがオーブンから出してくれたスイートポテトを堪能しているギルバート様がいた。
「なんだ? シャーロット、腕がテカテカしているぞ」
「……オイルを塗られたんです」
私もリビングの椅子に座ると、マリーが紅茶を入れてくれる。
「姫様、あんまり触らないでくださいね。そのうち馴染んできますから」
渋々、そのまま紅茶に口をつける。
「女性は大変だな。まあ、シャーロットが綺麗にしていれば、ライリーやフレッドが喜ぶだろうが」
「私なんて、オイルやお化粧をつけたからって、誰も喜ばないですよ。だからいいって言ってるのに……」
私がため息をつくと、ギルバート様は微妙な顔をした。
ギルバート様は、2年前のように、オヤツを堪能すると、さっさと離宮から去って行った。
そこから、数時間かけて、私の支度がされる。
髪はハーフアップに結い上げられてサイドに三つ編みを施し、下ろした部分にはホットカーラーが巻かれてカールされる。
私の顔は、キャンバスかと言うくらい、マリーが化粧筆を持って真剣な顔でいろいろ施し、ドレスを着せられてボナールのティアラを乗せられた。
ドレスは、この日の為に新調したあのドレスだ。
黄色を基調にした、オフショルダーのドレスで、胸元まで大胆に開けている。
鎖骨の前には、大きなイエローダイヤのネックレスを付けて、イヤリングは同じくイエローダイヤで花がモチーフになっている。
白のオーガンジーのショールが虹色に光り、直接肌を見せないようにしているが、18歳はランバラルドでは成人になるので、ちょっと大人を意識している。
ウエストはこれでもかと言うくらいに詰めて、そこから花びらのように何枚ものレースがドレスを膨らませて。
全ての支度が終わり、応接間に足を運ぶと、フレッド様がもうお迎えに来ていた。
フレッド様は私を見るとソファから立ち上がる。
「シャーロットちゃん、綺麗だ……。天使様が舞い降りたのかと、思ったよ」
フレッド様は耳まで赤くして褒めてくれる。
「ふふ。フレッド様、おだてても何も出ませんわよ?」
「おだててる訳じゃないよ。本当に綺麗だよ」
「ありがとうございます」
フレッド様もパーティーに備え、テイルコートに着替えているが、それもまたとっても素敵。
スッと、腕を差し出すフレッド様に、私がちょこんと手を掛けると、ジュディが興奮した様子で両手を握りしめた。
「天使のような姫様と、いつもの残念な様子は見えないカッコいいフレッド様、とてもよくお似合いです。フレッド様の髪色と、姫様のドレスがすごくマッチしてますよ!」
「いつもの残念な様子って何!?」
そう言いながらも、フレッド様は照れたように笑っていた。
フレッド様に手を引かれ、本宮の方へと足を運んだ。
本宮の方へは何度も行ったけれど、下級メイドと国賓とでは、通る道も違えば行き着く先も違うので、見慣れぬ廊下をドキドキしながらフレッド様と歩いた。
当然、フレッド様は何度も通ったことがあるそうだ。
会場の中に入ると、ギルバート様がすぐにこちらにいらしてくださった。
ギルバート様も、黒のテイルコートに身を包み、いつもの王子様的な見かけでなく、ちゃんと威厳ある公爵様に見える。
「シャーロット、また別人のように綺麗だな」
「ギルバート様も。今日はみなさんお口がお上手ですこと。褒めてくださっても、昼間のスイートポテト以外は何もでませんわよ」
「スィートポテトがあれば上等。…じゃなくて、ほんとに綺麗だぞ」
背が高くなって見上げるようなギルバート様のお顔は、目を細めて眩しそうに私を見ていた。
「シャーロット、悪いが今日は挨拶回りで多分手一杯になると思う。ダンスのひとつも誘えなくて残念だが、またの機会にな」
ギルバート様は手を振って、人混みに紛れて行った。
「ギルバート様も成人したから、いよいよ公爵としての仕事を始められるんだな」
フレッド様がギルバート様を見送りながら呟いた。
「みんな大人になって変わっていきますのね」
「そうだね……。さあ、王子、じゃなかった。ライリー陛下が出てきたら、オレたちも順番に挨拶するから、控えの場所に行っておこう」
フレッド様が手を引いて、私を控えの場所まで連れて行ってくれる。
当然、戴冠式と同じく、私たちは他国来賓の中で、一番最後だ。
しばらくすると、会場にライリー陛下が現れた。
ライリー陛下のお父様とお母様、前国王と前王妃もライリー陛下の後ろにやって来た。
会場の中で、数段高いところにライリー陛下たちの席が設けられており、私たちから見て左側にライリー陛下、右側に前国王夫妻が腰を下ろす。
一番最初に、帝国の使者の方が壇上に上り、陛下へのご挨拶が始まった。
かなり時間が経ってから、やっと私たちの順番が回ってきた。
最初に、前国王ご夫妻にご挨拶をする。
前国王様は前にお会いした時と同じ、お優しいお顔で、「ボナールの再建を心より祈っている」とおっしゃってくださった。
私が前国王ご夫妻へのご挨拶が終わると、フレッド様がご夫妻へとご挨拶を始める。
フレッド様は、昔から前国王ご夫妻とは面識があるので、お話が弾んでいるようだった。
その間に私は、ライリー陛下の前へと移動し、腰を折り礼をする。
ドキドキしながら顔を上げると、昼間遠くにしか見られなかった、ライリー陛下がすぐ近くで私のことを見つめていた。
「悪かったな、シャーロット。午前中戴冠式に出て疲れているだろう」
「いいえ。お菓子作りは私の趣味ですから、大丈夫ですわ」
私がにっこりとギルバート様に言うと、ジュディが目をつり上げた。
「大丈夫じゃないです! 夜のためにさっさと湯あみをしてきてください。焼き上がりはわたしが見ておきますから。もう時間がないんですよ」
「湯あみしてドレス着るだけじゃない」
「違います。湯あみして、マッサージしてパックしてヘアトリートメントして、やることはたくさんあるんです!!」
「そんなこと、してもしなくてもたいして変わらないわよ」
「か、わ、り、ま、す!!」
私とギルバート様は、ジュディの勢いにタジタジになり、私が湯あみをしている間、なんとギルバート様はオーブンの前で焼き色を見ているという、ランバラルドの公爵様にお願いするようなことではないことをジュディが頼んでその場は収まった。
私が一連の作業を終わらせて一階のリビングに行くと、ジュディがオーブンから出してくれたスイートポテトを堪能しているギルバート様がいた。
「なんだ? シャーロット、腕がテカテカしているぞ」
「……オイルを塗られたんです」
私もリビングの椅子に座ると、マリーが紅茶を入れてくれる。
「姫様、あんまり触らないでくださいね。そのうち馴染んできますから」
渋々、そのまま紅茶に口をつける。
「女性は大変だな。まあ、シャーロットが綺麗にしていれば、ライリーやフレッドが喜ぶだろうが」
「私なんて、オイルやお化粧をつけたからって、誰も喜ばないですよ。だからいいって言ってるのに……」
私がため息をつくと、ギルバート様は微妙な顔をした。
ギルバート様は、2年前のように、オヤツを堪能すると、さっさと離宮から去って行った。
そこから、数時間かけて、私の支度がされる。
髪はハーフアップに結い上げられてサイドに三つ編みを施し、下ろした部分にはホットカーラーが巻かれてカールされる。
私の顔は、キャンバスかと言うくらい、マリーが化粧筆を持って真剣な顔でいろいろ施し、ドレスを着せられてボナールのティアラを乗せられた。
ドレスは、この日の為に新調したあのドレスだ。
黄色を基調にした、オフショルダーのドレスで、胸元まで大胆に開けている。
鎖骨の前には、大きなイエローダイヤのネックレスを付けて、イヤリングは同じくイエローダイヤで花がモチーフになっている。
白のオーガンジーのショールが虹色に光り、直接肌を見せないようにしているが、18歳はランバラルドでは成人になるので、ちょっと大人を意識している。
ウエストはこれでもかと言うくらいに詰めて、そこから花びらのように何枚ものレースがドレスを膨らませて。
全ての支度が終わり、応接間に足を運ぶと、フレッド様がもうお迎えに来ていた。
フレッド様は私を見るとソファから立ち上がる。
「シャーロットちゃん、綺麗だ……。天使様が舞い降りたのかと、思ったよ」
フレッド様は耳まで赤くして褒めてくれる。
「ふふ。フレッド様、おだてても何も出ませんわよ?」
「おだててる訳じゃないよ。本当に綺麗だよ」
「ありがとうございます」
フレッド様もパーティーに備え、テイルコートに着替えているが、それもまたとっても素敵。
スッと、腕を差し出すフレッド様に、私がちょこんと手を掛けると、ジュディが興奮した様子で両手を握りしめた。
「天使のような姫様と、いつもの残念な様子は見えないカッコいいフレッド様、とてもよくお似合いです。フレッド様の髪色と、姫様のドレスがすごくマッチしてますよ!」
「いつもの残念な様子って何!?」
そう言いながらも、フレッド様は照れたように笑っていた。
フレッド様に手を引かれ、本宮の方へと足を運んだ。
本宮の方へは何度も行ったけれど、下級メイドと国賓とでは、通る道も違えば行き着く先も違うので、見慣れぬ廊下をドキドキしながらフレッド様と歩いた。
当然、フレッド様は何度も通ったことがあるそうだ。
会場の中に入ると、ギルバート様がすぐにこちらにいらしてくださった。
ギルバート様も、黒のテイルコートに身を包み、いつもの王子様的な見かけでなく、ちゃんと威厳ある公爵様に見える。
「シャーロット、また別人のように綺麗だな」
「ギルバート様も。今日はみなさんお口がお上手ですこと。褒めてくださっても、昼間のスイートポテト以外は何もでませんわよ」
「スィートポテトがあれば上等。…じゃなくて、ほんとに綺麗だぞ」
背が高くなって見上げるようなギルバート様のお顔は、目を細めて眩しそうに私を見ていた。
「シャーロット、悪いが今日は挨拶回りで多分手一杯になると思う。ダンスのひとつも誘えなくて残念だが、またの機会にな」
ギルバート様は手を振って、人混みに紛れて行った。
「ギルバート様も成人したから、いよいよ公爵としての仕事を始められるんだな」
フレッド様がギルバート様を見送りながら呟いた。
「みんな大人になって変わっていきますのね」
「そうだね……。さあ、王子、じゃなかった。ライリー陛下が出てきたら、オレたちも順番に挨拶するから、控えの場所に行っておこう」
フレッド様が手を引いて、私を控えの場所まで連れて行ってくれる。
当然、戴冠式と同じく、私たちは他国来賓の中で、一番最後だ。
しばらくすると、会場にライリー陛下が現れた。
ライリー陛下のお父様とお母様、前国王と前王妃もライリー陛下の後ろにやって来た。
会場の中で、数段高いところにライリー陛下たちの席が設けられており、私たちから見て左側にライリー陛下、右側に前国王夫妻が腰を下ろす。
一番最初に、帝国の使者の方が壇上に上り、陛下へのご挨拶が始まった。
かなり時間が経ってから、やっと私たちの順番が回ってきた。
最初に、前国王ご夫妻にご挨拶をする。
前国王様は前にお会いした時と同じ、お優しいお顔で、「ボナールの再建を心より祈っている」とおっしゃってくださった。
私が前国王ご夫妻へのご挨拶が終わると、フレッド様がご夫妻へとご挨拶を始める。
フレッド様は、昔から前国王ご夫妻とは面識があるので、お話が弾んでいるようだった。
その間に私は、ライリー陛下の前へと移動し、腰を折り礼をする。
ドキドキしながら顔を上げると、昼間遠くにしか見られなかった、ライリー陛下がすぐ近くで私のことを見つめていた。
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