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#038 『大小の』
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3年ほど前の話。
当時、まだ高校生だった清水くんが学校からの帰り道、家の近くの空き地を通り過ぎようとして その敷地の中に妙なものが存在しているのに気付いた。
トーテムポール、だったという。
しかも2本。
見上げるほど高く、3mにも達するかという立派なものが1本と、子供の背丈くらいしか無くて、これもトーテムポールなんですかミニチュアじゃないんですかと言いたくなるほど低いものが1本。
昨日までは―― いや、今朝までは確かにこんなもの無かったのに。
どういうつもりでこんなものを? 首を捻りながらも、家に帰ってご飯を食べ、寝っ転がりながら漫画を読んでいるうちに すっかり忘れてしまっていた。
そのうち、「ただいまー」と玄関からいつもの声が聞こえてきた。
中学生の弟である。
野球部に所属している弟は、部活の関係で清水くんより一時間ほど遅く帰って来る。
汗まみれ泥まみれの練習の末なので、いつも帰宅後は風呂場へ直行する筈の弟なのだが――
「・・・おい兄ちゃん。ちょっといいか」
何故か今日は、真っ直ぐ清水くんの部屋を訪ねてきたのである。
「話したいことがあるんだけど、いいかな・・・」
「どうしたんだよ。お前、汗臭いぞ。風呂に入ってからにしろよ」
「いや、直ぐ済むよ。あのさ・・・ウチの近くの空き地」
「あ・・・!」
「! 見たか、兄ちゃんも見たのか!!」
ああ、そりゃ見たさと答える。
トーテムポールだろ? 清水くんには、弟が何でこんなにソワソワしているのかがわからない。
「えっ、兄ちゃん何言ってんの?トーテム?はぁ?」
「いや、だからトーテムポール。でっかいのとちびっこいのと、2本」
「う、うん。確かに2つあって、でっかいのとちびっこいのだったけど、」
「それがどうしたっての?」
「いや、だからトーテムポールじゃねぇっつーの!」
じゃあ何だよ。ムッとしながら清水くんは弟を睨んだ。
弟は、バツが悪そうに俯いた後、もごもごしたような口調でもって、
「・・・キューピー」
「え??」
「キューピー人形、じゃなかったのかよ・・・」
※ ※ ※ ※
5分ほど前のことである。
何時になくハードだった練習でくたくたに疲れ果てて帰路を歩いていた弟くんは、例の空き地の近くを通りかかった際、何かがそこに屹立しているのを発見した。
何だろう。2つあるな?と思って凝視する。とっぷりと日も暮れていたので、かなり近くに寄らないとそれは確認出来なかった。
うそ、と思った。
大きなキューピー人形だった。
人間の大人より遙かに巨大なお化けみたいなものが1体と、自分よりも遙かに小柄な 小学校低学年くらいの背丈のものが1体。
子供ほどもあるキューピーですらインパクト絶大なのに、このデタラメにでっかい人形ときたら何だ。誰が、何の目的でこんなものを置いているんだ。
弟くんは、完全に 呆気にとられてしまった。
と、
『◎トっ◇挽K*〆_☆●●_々~』
『#㏄仝▲♂\↑∥ぱ&§〓類.♪』
何処かから、〝まるで宇宙人の話し声のような〟判読不能な音声が聞こえてきた。
それと同時に、2体のキューピー人形がススス、と角度を変えて、こっちに向き直った。
弟くんは、大小のキューピー人形と睨み合うような形になったという。
その時、はじめてヤバイ、と思った。
――人形の目が、光っている。
でっかい方の光り方など、もう自動車のライトのようだ。
慌てて下を向いて、足早にそこを立ち去った。
完璧に向こうには気付かれているだろうが、それでも「僕は何も見てませんよ」「関係ないですよ」という様を強調した風情で。
無事に家に帰って来れてホッとした直後に更に怖くなって、「兄ちゃんは何か見なかっただろうか」と思い 部屋を訪ねてみたのだ、と。
「兄ちゃん、確かめに行ってみないか、今から・・・」
思い詰めたような表情の弟からそう提案された時は、流石に鳥肌が立ったという。
だが、ここで引っ込んでいては兄貴としてのメンツが立たない。「よし、そのお化けキューピーを退治してやろーじゃねぇか」と わけのわからない啖呵を切りながら、二人で夜道へ繰り出し、空き地へと向かうことにした。
「・・・兄ちゃん。あれ、まだ居るかなぁ。やっぱお化けかなぁ」
「・・・ばか。何のお化けだよ。トーテムポールか?キューピーか?」
「・・・祟りとかねぇかなぁ」
「・・・やめろよ。洒落なんねぇ」
「・・・何で見え方違うんだろう。時間の関係かなぁ。霊感のせいかなぁ」
「・・・ばかっ、ぐだぐだうるせぇんだよ!そんなんだからレギュラーなれねぇんだぞ!!」
道中は二人とも、完全に腰が引けていたという。
※ ※ ※ ※
結果としてその後、二人はトーテムポールもキューピー人形も見なかった。
月光に照らされた空き地は、いつもの何も無い空き地のままだった。
だが、〝何か〟が立っていた2箇所の地面だけは、まるで草が焼け焦げたようなキツネ色に禿げ上がり、燻った臭いが翌日朝まで漂っていたという。
当時、まだ高校生だった清水くんが学校からの帰り道、家の近くの空き地を通り過ぎようとして その敷地の中に妙なものが存在しているのに気付いた。
トーテムポール、だったという。
しかも2本。
見上げるほど高く、3mにも達するかという立派なものが1本と、子供の背丈くらいしか無くて、これもトーテムポールなんですかミニチュアじゃないんですかと言いたくなるほど低いものが1本。
昨日までは―― いや、今朝までは確かにこんなもの無かったのに。
どういうつもりでこんなものを? 首を捻りながらも、家に帰ってご飯を食べ、寝っ転がりながら漫画を読んでいるうちに すっかり忘れてしまっていた。
そのうち、「ただいまー」と玄関からいつもの声が聞こえてきた。
中学生の弟である。
野球部に所属している弟は、部活の関係で清水くんより一時間ほど遅く帰って来る。
汗まみれ泥まみれの練習の末なので、いつも帰宅後は風呂場へ直行する筈の弟なのだが――
「・・・おい兄ちゃん。ちょっといいか」
何故か今日は、真っ直ぐ清水くんの部屋を訪ねてきたのである。
「話したいことがあるんだけど、いいかな・・・」
「どうしたんだよ。お前、汗臭いぞ。風呂に入ってからにしろよ」
「いや、直ぐ済むよ。あのさ・・・ウチの近くの空き地」
「あ・・・!」
「! 見たか、兄ちゃんも見たのか!!」
ああ、そりゃ見たさと答える。
トーテムポールだろ? 清水くんには、弟が何でこんなにソワソワしているのかがわからない。
「えっ、兄ちゃん何言ってんの?トーテム?はぁ?」
「いや、だからトーテムポール。でっかいのとちびっこいのと、2本」
「う、うん。確かに2つあって、でっかいのとちびっこいのだったけど、」
「それがどうしたっての?」
「いや、だからトーテムポールじゃねぇっつーの!」
じゃあ何だよ。ムッとしながら清水くんは弟を睨んだ。
弟は、バツが悪そうに俯いた後、もごもごしたような口調でもって、
「・・・キューピー」
「え??」
「キューピー人形、じゃなかったのかよ・・・」
※ ※ ※ ※
5分ほど前のことである。
何時になくハードだった練習でくたくたに疲れ果てて帰路を歩いていた弟くんは、例の空き地の近くを通りかかった際、何かがそこに屹立しているのを発見した。
何だろう。2つあるな?と思って凝視する。とっぷりと日も暮れていたので、かなり近くに寄らないとそれは確認出来なかった。
うそ、と思った。
大きなキューピー人形だった。
人間の大人より遙かに巨大なお化けみたいなものが1体と、自分よりも遙かに小柄な 小学校低学年くらいの背丈のものが1体。
子供ほどもあるキューピーですらインパクト絶大なのに、このデタラメにでっかい人形ときたら何だ。誰が、何の目的でこんなものを置いているんだ。
弟くんは、完全に 呆気にとられてしまった。
と、
『◎トっ◇挽K*〆_☆●●_々~』
『#㏄仝▲♂\↑∥ぱ&§〓類.♪』
何処かから、〝まるで宇宙人の話し声のような〟判読不能な音声が聞こえてきた。
それと同時に、2体のキューピー人形がススス、と角度を変えて、こっちに向き直った。
弟くんは、大小のキューピー人形と睨み合うような形になったという。
その時、はじめてヤバイ、と思った。
――人形の目が、光っている。
でっかい方の光り方など、もう自動車のライトのようだ。
慌てて下を向いて、足早にそこを立ち去った。
完璧に向こうには気付かれているだろうが、それでも「僕は何も見てませんよ」「関係ないですよ」という様を強調した風情で。
無事に家に帰って来れてホッとした直後に更に怖くなって、「兄ちゃんは何か見なかっただろうか」と思い 部屋を訪ねてみたのだ、と。
「兄ちゃん、確かめに行ってみないか、今から・・・」
思い詰めたような表情の弟からそう提案された時は、流石に鳥肌が立ったという。
だが、ここで引っ込んでいては兄貴としてのメンツが立たない。「よし、そのお化けキューピーを退治してやろーじゃねぇか」と わけのわからない啖呵を切りながら、二人で夜道へ繰り出し、空き地へと向かうことにした。
「・・・兄ちゃん。あれ、まだ居るかなぁ。やっぱお化けかなぁ」
「・・・ばか。何のお化けだよ。トーテムポールか?キューピーか?」
「・・・祟りとかねぇかなぁ」
「・・・やめろよ。洒落なんねぇ」
「・・・何で見え方違うんだろう。時間の関係かなぁ。霊感のせいかなぁ」
「・・・ばかっ、ぐだぐだうるせぇんだよ!そんなんだからレギュラーなれねぇんだぞ!!」
道中は二人とも、完全に腰が引けていたという。
※ ※ ※ ※
結果としてその後、二人はトーテムポールもキューピー人形も見なかった。
月光に照らされた空き地は、いつもの何も無い空き地のままだった。
だが、〝何か〟が立っていた2箇所の地面だけは、まるで草が焼け焦げたようなキツネ色に禿げ上がり、燻った臭いが翌日朝まで漂っていたという。
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