139 / 202
第八章〈殺人者シャルル〉編
8.22 悪夢の記憶(1)
しおりを挟む
ひどい悪夢を見ていた。
私はモントローの橋上で意識を失った。
次に目が覚めたとき、本当は私が死んだのかもしれないと思った。
「ここは天国なの?」
「どうしてそう思うんですか」
「だって、ジャンがいる」
幼なじみのジャンは王太子の身代わりとなってパリに残った。
どんな理由があるにしろ、私は親友を置き去りにして逃げたのだ。
あれからずっと手を尽くして探しているのに行方がわからない。
「俺は死んでませんよ。生きて帰ってきました」
頭がぼんやりして、何を言っているのか理解できない。
侍医が来て気付け薬を飲まされた。
味覚と嗅覚と喉ごしの不快な刺激で、思わずむせた。
「うぅ、まずい……」
「どうかご辛抱を」
最近の私は辛抱してばかりである。
口直しに冷えた果汁を飲まされると、ようやく意識がはっきりしてきた。
侍医のかたわらで、デュノワ伯ジャンが心配そうに私を見つめていた。
にわかに信じられなくて、「本当に? 本物?」とたずねた。
「もちろん本物です。触ってみますか」
ジャンの手が伸びて、子供のときのように私の頭をぽんぽんと撫でた。
しばらくの間、されるがままに撫でられていたが、疑り深い私はやはり自分で触ってみないと信じられない。ジャンの手を取り、自分の手を重ねた。
「あたたかい」
さっきよりだいぶマシだが、まだ意識が完全に覚醒していないようだ。
感触を確かめるように互いの指を絡めた。
指先が少し痺れている。頭も体もふわふわとして曖昧だったが、懐かしい友人の手に違いなかった。
「ずっと探していたんだ。でも、全然見つからなくて……」
「聞きました。俺も連絡したかったんですが、色々ありまして」
「ときどき、悪い想像をしてた。ジャンは死んでしまったのだろうかと」
「あいかわらず悲観的ですねぇ」
ジャンはからからと屈託なく笑い、「王太子の方がよっぽど死にそうな顔をしてますよ」とからかった。侍医は「縁起でもない!」と呆れていた。
侍医の見立てによると、私は暑気あたりで倒れたらしい。
この物語を読んでいる読者諸氏にわかりやすく例えると、熱中症だ。
まだいくらか暑さが残る9月上旬、綿を入れた布の服と鎖帷子と甲冑を重ね着して、日中の屋外で一日中飲まず食わずでいたら「暑さにやられて倒れるに決まっています」だそうだ。
侍医は、体力が回復するまで安静に過ごすようにと言い含めると、どこか気遣うように「精神は正常ですからご安心ください」と付け加えた。
「精神だって?」
「少し物忘れがあるかもしれませんが、思い出して父君のように心を病むよりは……」
侍医の話は歯切れが悪くて要領を得なかった。
違和感を感じたが、私は意識を取り戻したばかりで物事を深く考える余裕がなかった。
言われるまま、風通しの良い部屋でおとなしく休むことにした。
「何か飲みますか。どこか痛いところは?」
「うーん、大丈夫だと思う」
昔のようにジャンが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。
頭が割れるように痛かったが、またまずい薬を飲まされそうなので黙ってやり過ごした。
この一年間に何をしていたのか、数日かけて少しずつ話をした。
アルマニャック伯の非業の死を悼んだとき、いつも快活なジャンが不自然に黙り込んだ。
「どうしたんだ」
「ありがとうございます!」
唐突に礼を言われたが、さっぱり理由がわからない。
「急にどうしたんだ」
「俺は王太子に礼を言いたかったんです。心から感謝しています!」
ジャンは居住まいを正すと、深々と頭を下げた。
「よくわからないけど、どういたしまして」
「この先、俺は王太子のためなら何でもします!」
「う、うん。程々にね……」
「きっと兄も喜んでると思います」
「シャルル・ドルレアンが?」
まったく話が噛み合わない。
ジャンは私の顔色を伺うようにじっと覗き込んできた。
私は背筋を伸ばすと親友を見返した。
「私はジャンを信じている。気遣いは無用だよ」
「俺も王太子を信じています。前よりも見直したと言ってもいいくらいです」
私は吹き出した。昔も今もジャンは遠慮を知らない。
もう子供ではないのだから主従らしく一線を引くべきだが、このままの方が心地いい。
私が元気そうなのを確認すると、ジャンは意を決したように告白した。
「では、はっきり言います。アルマニャック伯と父の仇を取ってくれてありがとうございます!」
頭で理解するよりも早く、心臓がどきりと跳ねた。
あの日以来、意識の底に沈んでいた記憶がじわりと浮かび上がった。
アルマニャック伯とジャンの父、すなわち王弟オルレアン公の仇といえば無怖公ブルゴーニュ公に相違ない。
「私が仇を取った……?」
「はい。アルマニャック派の人たちはみんな大喜びで王太子を称えて……シャステル隊長も……」
ジャンの声が遠のき、モントロー橋の殺戮の記憶が急速によみがえってきた。
シャステルの恐ろしい怒号。仲間たちの目を疑うような凶行。10人がかりで滅多刺しにされて、私の足元にブルゴーニュ公のちぎれた右手が飛んできた。解体されたばかりの手は大きな蜘蛛に似ていた。生々しくも鮮やかで、血と脂にまみれて艶を帯びている。今にも動き出しそうだ。きもちがわるい。私はそれに触りたくなくて足を引いた。
ひざまずいていたブルゴーニュ派の立会人がようやく剣を抜いて止めに入った。
見知らぬ誰かがすさまじい形相で私をにらみながら「王太子、貴様のしわざか!」と叫び、飛びかかってきた。私は首を横に振った。知らない、知らない、こんな話は聞いていない、こんなひどいことが起きるなんて想像もしなかった、和平のために条約を結ぶ、署名をする、花嫁を迎える、そして、それから——
誰かが私を引っ張り、橋上から引きずり出されるように撤退した。
馬車に押し込められるとものすごい勢いで走り出した。
びっしょりと汗をかいていた。血の気が引いているのに暑くてたまらない。早くこの甲冑を脱ぎたかったが、ひとりで着脱できる代物ではない。甲冑の脚部に、血と脂と肉片がまざった手形がべったりとついていた。よく見ると、床は血染めの足跡だらけだ。何かを叫んで逃げ出そうとしたが馬車には外から鍵がかけられていた。私はここから逃げられない。逃げることは許されない。血まみれの右手が追いかけてくる。私をつかんで離してくれない。
喉の奥から胃液がこみ上げてきて何度も吐いた。涙と血と吐瀉物にまみれて馬車から下ろされた。
「私は狂ってしまったのだろうか」
「いいえ、侍医がいうには正気だそうですよ」
ジャンも侍医も、誰もが皆「倒れたのは暑気あたりのせい」だと言い張った。
アルマニャック派の重臣たちはブルゴーニュ公を憎んでいた。
彼らは王太子の偉業を称え、私が眠っている間に祝福の手紙や贈り物が山ほど届いた。
その一方で、ブルゴーニュ派は王太子を糾弾し、報復と失脚させるための計画が進んでいた。
私は手紙や贈り物を差し出されても喜ぶ気分になれず、片付けるように頼んだ。
ジャンは「礼状を書くのは回復してからにしましょう」と気遣ってくれた。
「違うんだ、そうじゃないんだよ……」
私は心痛と悔恨でむせび泣き、ジャンは「王太子は勇敢なことをしたんです。誇ってください」と慰めてくれたが、私の心情は一向に晴れなかった。
ジャンは戸惑い、いつしか私もわかってもらうことを諦めた。
私はモントローの橋上で意識を失った。
次に目が覚めたとき、本当は私が死んだのかもしれないと思った。
「ここは天国なの?」
「どうしてそう思うんですか」
「だって、ジャンがいる」
幼なじみのジャンは王太子の身代わりとなってパリに残った。
どんな理由があるにしろ、私は親友を置き去りにして逃げたのだ。
あれからずっと手を尽くして探しているのに行方がわからない。
「俺は死んでませんよ。生きて帰ってきました」
頭がぼんやりして、何を言っているのか理解できない。
侍医が来て気付け薬を飲まされた。
味覚と嗅覚と喉ごしの不快な刺激で、思わずむせた。
「うぅ、まずい……」
「どうかご辛抱を」
最近の私は辛抱してばかりである。
口直しに冷えた果汁を飲まされると、ようやく意識がはっきりしてきた。
侍医のかたわらで、デュノワ伯ジャンが心配そうに私を見つめていた。
にわかに信じられなくて、「本当に? 本物?」とたずねた。
「もちろん本物です。触ってみますか」
ジャンの手が伸びて、子供のときのように私の頭をぽんぽんと撫でた。
しばらくの間、されるがままに撫でられていたが、疑り深い私はやはり自分で触ってみないと信じられない。ジャンの手を取り、自分の手を重ねた。
「あたたかい」
さっきよりだいぶマシだが、まだ意識が完全に覚醒していないようだ。
感触を確かめるように互いの指を絡めた。
指先が少し痺れている。頭も体もふわふわとして曖昧だったが、懐かしい友人の手に違いなかった。
「ずっと探していたんだ。でも、全然見つからなくて……」
「聞きました。俺も連絡したかったんですが、色々ありまして」
「ときどき、悪い想像をしてた。ジャンは死んでしまったのだろうかと」
「あいかわらず悲観的ですねぇ」
ジャンはからからと屈託なく笑い、「王太子の方がよっぽど死にそうな顔をしてますよ」とからかった。侍医は「縁起でもない!」と呆れていた。
侍医の見立てによると、私は暑気あたりで倒れたらしい。
この物語を読んでいる読者諸氏にわかりやすく例えると、熱中症だ。
まだいくらか暑さが残る9月上旬、綿を入れた布の服と鎖帷子と甲冑を重ね着して、日中の屋外で一日中飲まず食わずでいたら「暑さにやられて倒れるに決まっています」だそうだ。
侍医は、体力が回復するまで安静に過ごすようにと言い含めると、どこか気遣うように「精神は正常ですからご安心ください」と付け加えた。
「精神だって?」
「少し物忘れがあるかもしれませんが、思い出して父君のように心を病むよりは……」
侍医の話は歯切れが悪くて要領を得なかった。
違和感を感じたが、私は意識を取り戻したばかりで物事を深く考える余裕がなかった。
言われるまま、風通しの良い部屋でおとなしく休むことにした。
「何か飲みますか。どこか痛いところは?」
「うーん、大丈夫だと思う」
昔のようにジャンが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。
頭が割れるように痛かったが、またまずい薬を飲まされそうなので黙ってやり過ごした。
この一年間に何をしていたのか、数日かけて少しずつ話をした。
アルマニャック伯の非業の死を悼んだとき、いつも快活なジャンが不自然に黙り込んだ。
「どうしたんだ」
「ありがとうございます!」
唐突に礼を言われたが、さっぱり理由がわからない。
「急にどうしたんだ」
「俺は王太子に礼を言いたかったんです。心から感謝しています!」
ジャンは居住まいを正すと、深々と頭を下げた。
「よくわからないけど、どういたしまして」
「この先、俺は王太子のためなら何でもします!」
「う、うん。程々にね……」
「きっと兄も喜んでると思います」
「シャルル・ドルレアンが?」
まったく話が噛み合わない。
ジャンは私の顔色を伺うようにじっと覗き込んできた。
私は背筋を伸ばすと親友を見返した。
「私はジャンを信じている。気遣いは無用だよ」
「俺も王太子を信じています。前よりも見直したと言ってもいいくらいです」
私は吹き出した。昔も今もジャンは遠慮を知らない。
もう子供ではないのだから主従らしく一線を引くべきだが、このままの方が心地いい。
私が元気そうなのを確認すると、ジャンは意を決したように告白した。
「では、はっきり言います。アルマニャック伯と父の仇を取ってくれてありがとうございます!」
頭で理解するよりも早く、心臓がどきりと跳ねた。
あの日以来、意識の底に沈んでいた記憶がじわりと浮かび上がった。
アルマニャック伯とジャンの父、すなわち王弟オルレアン公の仇といえば無怖公ブルゴーニュ公に相違ない。
「私が仇を取った……?」
「はい。アルマニャック派の人たちはみんな大喜びで王太子を称えて……シャステル隊長も……」
ジャンの声が遠のき、モントロー橋の殺戮の記憶が急速によみがえってきた。
シャステルの恐ろしい怒号。仲間たちの目を疑うような凶行。10人がかりで滅多刺しにされて、私の足元にブルゴーニュ公のちぎれた右手が飛んできた。解体されたばかりの手は大きな蜘蛛に似ていた。生々しくも鮮やかで、血と脂にまみれて艶を帯びている。今にも動き出しそうだ。きもちがわるい。私はそれに触りたくなくて足を引いた。
ひざまずいていたブルゴーニュ派の立会人がようやく剣を抜いて止めに入った。
見知らぬ誰かがすさまじい形相で私をにらみながら「王太子、貴様のしわざか!」と叫び、飛びかかってきた。私は首を横に振った。知らない、知らない、こんな話は聞いていない、こんなひどいことが起きるなんて想像もしなかった、和平のために条約を結ぶ、署名をする、花嫁を迎える、そして、それから——
誰かが私を引っ張り、橋上から引きずり出されるように撤退した。
馬車に押し込められるとものすごい勢いで走り出した。
びっしょりと汗をかいていた。血の気が引いているのに暑くてたまらない。早くこの甲冑を脱ぎたかったが、ひとりで着脱できる代物ではない。甲冑の脚部に、血と脂と肉片がまざった手形がべったりとついていた。よく見ると、床は血染めの足跡だらけだ。何かを叫んで逃げ出そうとしたが馬車には外から鍵がかけられていた。私はここから逃げられない。逃げることは許されない。血まみれの右手が追いかけてくる。私をつかんで離してくれない。
喉の奥から胃液がこみ上げてきて何度も吐いた。涙と血と吐瀉物にまみれて馬車から下ろされた。
「私は狂ってしまったのだろうか」
「いいえ、侍医がいうには正気だそうですよ」
ジャンも侍医も、誰もが皆「倒れたのは暑気あたりのせい」だと言い張った。
アルマニャック派の重臣たちはブルゴーニュ公を憎んでいた。
彼らは王太子の偉業を称え、私が眠っている間に祝福の手紙や贈り物が山ほど届いた。
その一方で、ブルゴーニュ派は王太子を糾弾し、報復と失脚させるための計画が進んでいた。
私は手紙や贈り物を差し出されても喜ぶ気分になれず、片付けるように頼んだ。
ジャンは「礼状を書くのは回復してからにしましょう」と気遣ってくれた。
「違うんだ、そうじゃないんだよ……」
私は心痛と悔恨でむせび泣き、ジャンは「王太子は勇敢なことをしたんです。誇ってください」と慰めてくれたが、私の心情は一向に晴れなかった。
ジャンは戸惑い、いつしか私もわかってもらうことを諦めた。
10
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる