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第九章〈正義の目覚め〉編
9.12 王太子の面影(1)
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ブルターニュ公失踪にともなうブルターニュ情勢について述べておこう。
アルテュール・ド・リッシュモンはヘンリー五世に臣従することを誓い、その見返りに援助を求めたが、結局、イングランドの出る幕はなかった。ブルターニュ公は前触れなく突然帰ってきたからだ。
リッシュモンは兄を捜索・救出するために帰郷を願い出ていたが、その必要はなくなった。
だが、ヘンリーのフランス遠征に付き添う名目で、あっけないほど簡単にブルターニュ帰郷が実現した。
リッシュモンは5年ぶりにフランスの地を踏み、兄弟は再会を喜んで抱き合った。
「虜囚生活はつらくないか? 私にできることがあればなんでも言ってくれ」
「人の心配をしている場合ですか! 兄上こそよくぞご無事で……」
ブルターニュ公から見ても、リッシュモンは誇り高い騎士であり自慢の弟だった。
その弟が、柄にもなく冷静さを欠いている。
「心配かけてすまなかった」
ブルターニュ公は、泣いている子供をなだめるようにリッシュモンの頬を撫でた。
兄よりたくましくなっても弟であることに変わりない。
「私こそ、不甲斐ない弟で申し訳ありません」
「何を言う。普通は兄が弟を守るものだろう」
「いいえ。幼いころ、私は兄上とブルターニュを守る騎士になると誓いました。それなのに、肝心なときに何もできなかったことが悔しくてなりません」
兄が無事だったことは喜ばしいが、リッシュモンは自分の無力さを痛感していた。
ブルターニュ公のやつれた様子と、昔から変わらない優しさはリッシュモンの自責の念をより一層強めた。
「痩せてしまいましたね」
「まぁな。でも、これでも少しは回復したんだぞ」
ブルターニュ公は快活に何でも話したが、失踪中の出来事については固く口を閉ざした。
何も話さないことが解放の条件だったかも知れず、またどこに敵が潜んでいるかも分からなかったため、無理やり聞き出すことははばかられた。
「ブルターニュはアルテュールの故郷だ。ゆっくり寛いでいってくれ」
「そのつもりです」
「母上はお元気だったか?」
「はい。元気すぎて叩かれました」
「母上に? おまえが? どうしてそうなったのか後でゆっくり聞かせてくれ」
念願の帰郷が叶ったのに、リッシュモンはどこか上の空だった。
(兄上を救いたい一心でヘンリーに臣従を誓ったものの……)
臣従してもしなくても、結果は同じだったかもしれない。
もっと言えば、リッシュモンがどれほど強くなっても何も変わらないのかもしれない。
(私は正しい道を歩んでいるのだろうか。本当にこれで良かったのか?)
ブルターニュの問題が解決しても、リッシュモンの迷いは一向に晴れなかった。
***
「叔父上、お帰りなさい!」
ブルターニュ公妃ジャンヌ王女と、その子供たちがリッシュモンの帰郷を歓迎した。
前ブルターニュ公夫妻——リッシュモンの両親は不倫と謀殺の疑惑があったが、現ブルターニュ公夫妻は仲睦まじい夫婦だった。
「長きにわたる虜囚生活、本当にお疲れ様でした」
「義姉上、ご心配をおかけしました。それから兄救出の件では大変世話になりました」
リッシュモンは義姉に向き直ると、敬意を込めて一礼した。
「議会を開催したと聞きました。義姉上の感動的な演説のおかげで『誘拐犯は改心してブルターニュ公を解放したのだ』と評判になっています」
ブルターニュ公が失踪した直後、公妃ジャンヌは救援要請の手紙を送った。
義弟リッシュモン、実家のフランス王家、リッシュモンの身柄を預かるイングランド王家、そして私——実弟の王太子シャルルにも。私に対しては「ブルターニュ公失踪に関わっているのではないか」と疑惑を投げかけた。
しかし、トロワ条約締結を控えて、英仏ともにブルターニュ情勢に関わる余裕はなく、公妃ジャンヌは外部からの救援を諦めるしかなかった。
「わたくしは何もしてませんよ」
「ご謙遜を」
「本当です。さる人物から言われるままに行動しただけなのです」
リッシュモンとブルターニュ公は顔を見合わせた。
「私ではないぞ」
「義姉上、さる人物に心当たりは?」
「分かりません。その使者は『主人から託された』と言って、わたくしに手紙を差し出しました。現物はありません。読んだらすぐ燃やすように指示されたので」
「その手紙に、議会で演説をするように指示が書かれていたと?」
「ええ。演説の内容を覚えきれなくて困りましたが、使者は『手紙を燃やすのを見届けるまでが使命だ』と言って聞かなくて……」
この時代、特に私の周りには女傑と呼ぶにふさわしい貴婦人がたくさんいるが、ブルターニュ公妃ジャンヌは「深窓の姫君」である。幼くして政略結婚でパリを離れて以来、ずっと優しい夫・ブルターニュ公に守られ、愛されながら成長した。姉王女たちの中でも特におっとりした性格だ。
その深窓の姫君が、夫の同伴なしで男性ばかりの議会に出席して演説するなど、気が動転してもおかしくない。
だが、公妃ジャンヌは意を決して、ブルターニュの領主たちを招集して議会をひらいた。
領主一同の前に、公妃は子供を抱いて現れたという。緊張と心痛で青ざめ、涙ぐみながらブルターニュ公失踪のいきさつと救援をもとめる演説をおこなった。
演説の内容と出来栄えは大した問題じゃない。罪なき姫君が窮地におちいり、男たちは騎士道精神を発揮するまたとない好機だと伝われば充分だった。
領主一同は、儚げな公妃にほだされた。
そして、ブルターニュ公を救うために協力すると誓った。
ブルターニュ中のブルトン人が味方になれば、誘拐犯がパンティエーヴル家でもイングランド王家でもフランス王家でも、そう簡単にブルターニュ公を傷つけることはできなくなる。
それから間も無くして、ブルターニュ公はひょっこり帰ってきた。
最後に目撃されたパンティエーヴル家の城内にいたらしいが、この件でパンティエーヴル家が処罰されることはなく、失踪事件の真相はうやむやになってしまった。
***
ブルターニュ地方は、ケルト由来の独自文化が根付いている。
小麦が育ちにくく、蕎麦粉のガレットや挽き割り粥を主食としているが、海産物が豊富でおまけに良質の塩が取れたので豊かな食文化が発達していた。
「アルテュール、遠慮をするな。小麦の白パンもたんとあるぞ」
「遠慮してません。この素朴な味わいが好きなのです」
家族の晩餐で郷土料理を味わい、夜は兄弟水入らずで林檎酒を飲み交わした。
酔って気が緩んだのか、リッシュモンはもう一度「失踪の真相」について問い詰めたが、ブルターニュ公は「あまり私を困らせないでくれよ」と苦笑してごまかした。
「もういいんだ。こうして無事に再会できたことを喜ぼう」
「兄上は慈悲深い。しかし、悪事をおこなった者は罰を受けなければなりません」
ヘンリー五世とブルゴーニュ公は、亡き王弟クラレンス公と無怖公の復讐を果たすために連合軍を結成した。
近いうちに、大軍を率いてパリ近郊にある都市モーを攻囲する。モーは、王太子を支持する最北端地域だった。
「ブルターニュ公を誘拐した黒幕は王太子だという話を聞きました」
「ふむ、興味深いな」
「事実なら、私は全力で報復するつもりです。たとえ相手が王太子だろうと容赦しない」
リッシュモンは酒を飲むと生来の頑固さに拍車がかかるようだ。
ブルターニュ公は、弟の静かな怒りを受け流すと「誘拐犯の黒幕よりも、私は恩人の正体を知りたいね」と言った。
「恩人ですか」
「ああ。手紙の送り主だよ」
ブルターニュ公失踪事件に関して、誘拐犯の黒幕も、公妃ジャンヌに助言した者の正体も分かっていない。
「『手紙を燃やすまで見届けろ』とはずいぶん慎重な人物だ。よほど正体を明かしたくないと見える」
「調べてみましょうか」
「そうしてほしい。復讐を考えるよりも、恩返しについて考える方がずっといい」
ひどい目にあったはずなのに、ブルターニュ公のしなやかな精神は曲がらなかった。
リッシュモンの真面目すぎる正義感が暴走しないで済んだのは、穏やかで聡明な兄・ブルターニュ賢明公のおかげかもしれない。
アルテュール・ド・リッシュモンはヘンリー五世に臣従することを誓い、その見返りに援助を求めたが、結局、イングランドの出る幕はなかった。ブルターニュ公は前触れなく突然帰ってきたからだ。
リッシュモンは兄を捜索・救出するために帰郷を願い出ていたが、その必要はなくなった。
だが、ヘンリーのフランス遠征に付き添う名目で、あっけないほど簡単にブルターニュ帰郷が実現した。
リッシュモンは5年ぶりにフランスの地を踏み、兄弟は再会を喜んで抱き合った。
「虜囚生活はつらくないか? 私にできることがあればなんでも言ってくれ」
「人の心配をしている場合ですか! 兄上こそよくぞご無事で……」
ブルターニュ公から見ても、リッシュモンは誇り高い騎士であり自慢の弟だった。
その弟が、柄にもなく冷静さを欠いている。
「心配かけてすまなかった」
ブルターニュ公は、泣いている子供をなだめるようにリッシュモンの頬を撫でた。
兄よりたくましくなっても弟であることに変わりない。
「私こそ、不甲斐ない弟で申し訳ありません」
「何を言う。普通は兄が弟を守るものだろう」
「いいえ。幼いころ、私は兄上とブルターニュを守る騎士になると誓いました。それなのに、肝心なときに何もできなかったことが悔しくてなりません」
兄が無事だったことは喜ばしいが、リッシュモンは自分の無力さを痛感していた。
ブルターニュ公のやつれた様子と、昔から変わらない優しさはリッシュモンの自責の念をより一層強めた。
「痩せてしまいましたね」
「まぁな。でも、これでも少しは回復したんだぞ」
ブルターニュ公は快活に何でも話したが、失踪中の出来事については固く口を閉ざした。
何も話さないことが解放の条件だったかも知れず、またどこに敵が潜んでいるかも分からなかったため、無理やり聞き出すことははばかられた。
「ブルターニュはアルテュールの故郷だ。ゆっくり寛いでいってくれ」
「そのつもりです」
「母上はお元気だったか?」
「はい。元気すぎて叩かれました」
「母上に? おまえが? どうしてそうなったのか後でゆっくり聞かせてくれ」
念願の帰郷が叶ったのに、リッシュモンはどこか上の空だった。
(兄上を救いたい一心でヘンリーに臣従を誓ったものの……)
臣従してもしなくても、結果は同じだったかもしれない。
もっと言えば、リッシュモンがどれほど強くなっても何も変わらないのかもしれない。
(私は正しい道を歩んでいるのだろうか。本当にこれで良かったのか?)
ブルターニュの問題が解決しても、リッシュモンの迷いは一向に晴れなかった。
***
「叔父上、お帰りなさい!」
ブルターニュ公妃ジャンヌ王女と、その子供たちがリッシュモンの帰郷を歓迎した。
前ブルターニュ公夫妻——リッシュモンの両親は不倫と謀殺の疑惑があったが、現ブルターニュ公夫妻は仲睦まじい夫婦だった。
「長きにわたる虜囚生活、本当にお疲れ様でした」
「義姉上、ご心配をおかけしました。それから兄救出の件では大変世話になりました」
リッシュモンは義姉に向き直ると、敬意を込めて一礼した。
「議会を開催したと聞きました。義姉上の感動的な演説のおかげで『誘拐犯は改心してブルターニュ公を解放したのだ』と評判になっています」
ブルターニュ公が失踪した直後、公妃ジャンヌは救援要請の手紙を送った。
義弟リッシュモン、実家のフランス王家、リッシュモンの身柄を預かるイングランド王家、そして私——実弟の王太子シャルルにも。私に対しては「ブルターニュ公失踪に関わっているのではないか」と疑惑を投げかけた。
しかし、トロワ条約締結を控えて、英仏ともにブルターニュ情勢に関わる余裕はなく、公妃ジャンヌは外部からの救援を諦めるしかなかった。
「わたくしは何もしてませんよ」
「ご謙遜を」
「本当です。さる人物から言われるままに行動しただけなのです」
リッシュモンとブルターニュ公は顔を見合わせた。
「私ではないぞ」
「義姉上、さる人物に心当たりは?」
「分かりません。その使者は『主人から託された』と言って、わたくしに手紙を差し出しました。現物はありません。読んだらすぐ燃やすように指示されたので」
「その手紙に、議会で演説をするように指示が書かれていたと?」
「ええ。演説の内容を覚えきれなくて困りましたが、使者は『手紙を燃やすのを見届けるまでが使命だ』と言って聞かなくて……」
この時代、特に私の周りには女傑と呼ぶにふさわしい貴婦人がたくさんいるが、ブルターニュ公妃ジャンヌは「深窓の姫君」である。幼くして政略結婚でパリを離れて以来、ずっと優しい夫・ブルターニュ公に守られ、愛されながら成長した。姉王女たちの中でも特におっとりした性格だ。
その深窓の姫君が、夫の同伴なしで男性ばかりの議会に出席して演説するなど、気が動転してもおかしくない。
だが、公妃ジャンヌは意を決して、ブルターニュの領主たちを招集して議会をひらいた。
領主一同の前に、公妃は子供を抱いて現れたという。緊張と心痛で青ざめ、涙ぐみながらブルターニュ公失踪のいきさつと救援をもとめる演説をおこなった。
演説の内容と出来栄えは大した問題じゃない。罪なき姫君が窮地におちいり、男たちは騎士道精神を発揮するまたとない好機だと伝われば充分だった。
領主一同は、儚げな公妃にほだされた。
そして、ブルターニュ公を救うために協力すると誓った。
ブルターニュ中のブルトン人が味方になれば、誘拐犯がパンティエーヴル家でもイングランド王家でもフランス王家でも、そう簡単にブルターニュ公を傷つけることはできなくなる。
それから間も無くして、ブルターニュ公はひょっこり帰ってきた。
最後に目撃されたパンティエーヴル家の城内にいたらしいが、この件でパンティエーヴル家が処罰されることはなく、失踪事件の真相はうやむやになってしまった。
***
ブルターニュ地方は、ケルト由来の独自文化が根付いている。
小麦が育ちにくく、蕎麦粉のガレットや挽き割り粥を主食としているが、海産物が豊富でおまけに良質の塩が取れたので豊かな食文化が発達していた。
「アルテュール、遠慮をするな。小麦の白パンもたんとあるぞ」
「遠慮してません。この素朴な味わいが好きなのです」
家族の晩餐で郷土料理を味わい、夜は兄弟水入らずで林檎酒を飲み交わした。
酔って気が緩んだのか、リッシュモンはもう一度「失踪の真相」について問い詰めたが、ブルターニュ公は「あまり私を困らせないでくれよ」と苦笑してごまかした。
「もういいんだ。こうして無事に再会できたことを喜ぼう」
「兄上は慈悲深い。しかし、悪事をおこなった者は罰を受けなければなりません」
ヘンリー五世とブルゴーニュ公は、亡き王弟クラレンス公と無怖公の復讐を果たすために連合軍を結成した。
近いうちに、大軍を率いてパリ近郊にある都市モーを攻囲する。モーは、王太子を支持する最北端地域だった。
「ブルターニュ公を誘拐した黒幕は王太子だという話を聞きました」
「ふむ、興味深いな」
「事実なら、私は全力で報復するつもりです。たとえ相手が王太子だろうと容赦しない」
リッシュモンは酒を飲むと生来の頑固さに拍車がかかるようだ。
ブルターニュ公は、弟の静かな怒りを受け流すと「誘拐犯の黒幕よりも、私は恩人の正体を知りたいね」と言った。
「恩人ですか」
「ああ。手紙の送り主だよ」
ブルターニュ公失踪事件に関して、誘拐犯の黒幕も、公妃ジャンヌに助言した者の正体も分かっていない。
「『手紙を燃やすまで見届けろ』とはずいぶん慎重な人物だ。よほど正体を明かしたくないと見える」
「調べてみましょうか」
「そうしてほしい。復讐を考えるよりも、恩返しについて考える方がずっといい」
ひどい目にあったはずなのに、ブルターニュ公のしなやかな精神は曲がらなかった。
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