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リヒト
みんな違ってみんなかわいい
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ジャンが灰色熊から人の姿に戻った。
馬車に引っ掛けていた服を着ている。変身するのに、いちいち全部脱がないといけないのって面倒そうだ。
一人だけ全裸って、シュールな光景だよね。
人前で全裸になっても平然としてるのは、慣れてるからかな。
自分の肉体に自信があるからだったりして。
いいカラダしてるもんな……。
「パーシヴァルは変身することあるの?」
いつも、全身鎧をきっちり着込んでるけど。
脱ぎにくそう。
『あんまないね。J・Jは速いけど、俺は元の姿に戻るのに時間掛かるし、獣の姿では戦闘力も落ちるから』
足はチーターのほうが速いし。
変身してキバや爪で攻撃するよりも、人型になって剣で切ったり弓を射たほうが強いって。
魔法も、人型のほうが使いやすいとか。
ええ……。
そんなもんなんだ……。
†‡†‡†
『そういえば、チーター、パンサー、ジャガー、ピューマの区別つく?』
「つくよ。全然違うじゃないか」
チーターは胴が長く、脚が細長く、頭が小さくて、ネコ科で唯一爪の出し入れが出来ない。
一番足が速いけど、他のものより力が劣る。木登りが苦手。黒色斑が散らばる斑紋で、目の下には黒い線がある。
豹とレパードとパンサーは名称が違うだけで基本的に同じもので。
尻尾が長くて木登りが上手。全身に梅の花状の斑紋がある。
パンサーは、主にクロヒョウに使われる名称かな?
ジャガーは、足が太くて顎が強く、顔は大きめ。
尻尾は短くて体の半分ほどしかない。木登りも泳ぎも上手。
豹とジャガーの見分け方は、梅の花状の黒色斑紋の中にさらに黒い点があったらジャガー。
それとジャガーのほうが見た目ががっちりして頑丈。
ピューマは別名クーガー。
赤ちゃんの時には斑紋があるけど、6カ月ほどすると消える。見た目は小型の雌ライオンみたい。
前足に対して後足が大きく、尻尾の先が黒い。
みんな違うし、みんな可愛い。
『す、凄いね。仲間内でも、わりと見分けつかない人多いんだよ。でも、J・Jのやつ、もっとひどいんだよ。みんなネコ呼ばわりするの。ライオンも、大きなネコだって。ひどくない?』
確かにみんなネコ科ではあるけど。
区分が乱暴すぎる。
興味が無い人には、全部同じように見えるのかな?
ペンギンの群れや、サル山のサルの一個体、それぞれの区別がつくかと言われると、悩みどころだ。
「覚えてあげなよ。ジャンだって、友達にマレーグマやアナグマと間違えられたり、みんな同じクマだって言われたら悲しいでしょ?」
『わかった。努力しよう』
『素直だ!』
即答したジャンに、パーシヴァルが笑う。
このやり取りに、ヤマネコの獣人だという御者もチェシャ猫みたいに笑ってた。
この世界には、色々な獣人がいるようだけど。
牛とか豚とか、食肉にされてる動物と同じ獣人は、複雑な気持ちにならないのかなあ、と思ったり。
人は人、獣人は獣人、獣は獣で。
それぞれ別種の生き物だと割り切ってるのかな?
まだこの世界の倫理とか、よくわからないけど。
それは追々知っていこうと思う。
今は、この国に迫っている危機を回避することに集中しよう。
†‡†‡†
城へ戻ると。
診療所の建設はかなり進んでいた。
外壁の石組みは、剛力自慢の獣人が集まってやっているようだ。
思わず見惚れてしまうほどの腕前で。見る間にどんどん組みあがっていく。
その見事な流れ作業を眺めていたら。
ジャンに顔の向きを変えられた。
作業の素早さと正確さに感心していただけで。
別に、職人の肉体に見惚れてた訳じゃないってば。
わりと嫉妬深いんだな。
そんなジャンを見て。
パーシヴァルは腹を抱えて笑っていた。
採取した薬草の薬効成分抽出や、乾燥などをデュランに手伝ってもらう。
魔法で乾燥を早めることもできるそうだ。
薬の作成はデュランに一任して大丈夫だというのでお願いしておく。
『あれ、毒薬もあるよ?』
デュランは毒薬には詳しいけど、薬の知識はないようだ。
治療魔法があるせいかな?
端から毒を、違う用途で使う考えが無かった。
「毒も使いようによっては薬にもなるし、薬も、使用法を間違えれば毒にもなるんですよ」
『そういえばそんなこと言ってたっけ。なるほど。じゃあ、僕の毒薬コレクションの中で薬に使えそうなのがあれば使っていいよ。遠慮なく言って?』
と、毒薬リストを渡してくれた。
ありがたい。
僕も師匠って呼んだほうがいいかって聞いたら。
同僚になるんだし、デュランで構わない、敬語もいらない、と言った。
35歳も年上なんだけど……。
†‡†‡†
食材などは料理長に作り方とかを説明して渡して。
病人食の試作品を作ってもらった。
脱水症状になった人に投与する、生理食塩水の作成。
点滴用の針などの医療道具は、鍛冶職人や、それぞれ細工を得意とする職人に作ってもらった。
細菌由来かウイルス由来かでも対応が違うので、あとは臨機応変に行こう。
とりあえず、下準備としてはこんなものか。
『皆から聞いたぞ、相当な知識だと褒めていた。さすが救世主として召喚されただけあって頼もしい限りではないか』
食堂で病人食を試食する間に魔導書を読んでいたら。
ルロイ王が来た。
『先日は子ども扱いして申し訳なかった。失礼を詫びよう』
マントを捌いて華麗に礼をした。
パーシヴァルから、僕の本来の年齢を聞いたようだ。
でも、せっかく年齢の近い友人が出来たと喜んでいるようなので。
メイベルには黙っといてくれるって。
「いえ、皆さんに比べて精神的にも子供っぽいのは事実なので」
『ふふ、謙遜を』
肩を竦めて笑った。
……謙遜じゃないんだけどなあ。
馬車に引っ掛けていた服を着ている。変身するのに、いちいち全部脱がないといけないのって面倒そうだ。
一人だけ全裸って、シュールな光景だよね。
人前で全裸になっても平然としてるのは、慣れてるからかな。
自分の肉体に自信があるからだったりして。
いいカラダしてるもんな……。
「パーシヴァルは変身することあるの?」
いつも、全身鎧をきっちり着込んでるけど。
脱ぎにくそう。
『あんまないね。J・Jは速いけど、俺は元の姿に戻るのに時間掛かるし、獣の姿では戦闘力も落ちるから』
足はチーターのほうが速いし。
変身してキバや爪で攻撃するよりも、人型になって剣で切ったり弓を射たほうが強いって。
魔法も、人型のほうが使いやすいとか。
ええ……。
そんなもんなんだ……。
†‡†‡†
『そういえば、チーター、パンサー、ジャガー、ピューマの区別つく?』
「つくよ。全然違うじゃないか」
チーターは胴が長く、脚が細長く、頭が小さくて、ネコ科で唯一爪の出し入れが出来ない。
一番足が速いけど、他のものより力が劣る。木登りが苦手。黒色斑が散らばる斑紋で、目の下には黒い線がある。
豹とレパードとパンサーは名称が違うだけで基本的に同じもので。
尻尾が長くて木登りが上手。全身に梅の花状の斑紋がある。
パンサーは、主にクロヒョウに使われる名称かな?
ジャガーは、足が太くて顎が強く、顔は大きめ。
尻尾は短くて体の半分ほどしかない。木登りも泳ぎも上手。
豹とジャガーの見分け方は、梅の花状の黒色斑紋の中にさらに黒い点があったらジャガー。
それとジャガーのほうが見た目ががっちりして頑丈。
ピューマは別名クーガー。
赤ちゃんの時には斑紋があるけど、6カ月ほどすると消える。見た目は小型の雌ライオンみたい。
前足に対して後足が大きく、尻尾の先が黒い。
みんな違うし、みんな可愛い。
『す、凄いね。仲間内でも、わりと見分けつかない人多いんだよ。でも、J・Jのやつ、もっとひどいんだよ。みんなネコ呼ばわりするの。ライオンも、大きなネコだって。ひどくない?』
確かにみんなネコ科ではあるけど。
区分が乱暴すぎる。
興味が無い人には、全部同じように見えるのかな?
ペンギンの群れや、サル山のサルの一個体、それぞれの区別がつくかと言われると、悩みどころだ。
「覚えてあげなよ。ジャンだって、友達にマレーグマやアナグマと間違えられたり、みんな同じクマだって言われたら悲しいでしょ?」
『わかった。努力しよう』
『素直だ!』
即答したジャンに、パーシヴァルが笑う。
このやり取りに、ヤマネコの獣人だという御者もチェシャ猫みたいに笑ってた。
この世界には、色々な獣人がいるようだけど。
牛とか豚とか、食肉にされてる動物と同じ獣人は、複雑な気持ちにならないのかなあ、と思ったり。
人は人、獣人は獣人、獣は獣で。
それぞれ別種の生き物だと割り切ってるのかな?
まだこの世界の倫理とか、よくわからないけど。
それは追々知っていこうと思う。
今は、この国に迫っている危機を回避することに集中しよう。
†‡†‡†
城へ戻ると。
診療所の建設はかなり進んでいた。
外壁の石組みは、剛力自慢の獣人が集まってやっているようだ。
思わず見惚れてしまうほどの腕前で。見る間にどんどん組みあがっていく。
その見事な流れ作業を眺めていたら。
ジャンに顔の向きを変えられた。
作業の素早さと正確さに感心していただけで。
別に、職人の肉体に見惚れてた訳じゃないってば。
わりと嫉妬深いんだな。
そんなジャンを見て。
パーシヴァルは腹を抱えて笑っていた。
採取した薬草の薬効成分抽出や、乾燥などをデュランに手伝ってもらう。
魔法で乾燥を早めることもできるそうだ。
薬の作成はデュランに一任して大丈夫だというのでお願いしておく。
『あれ、毒薬もあるよ?』
デュランは毒薬には詳しいけど、薬の知識はないようだ。
治療魔法があるせいかな?
端から毒を、違う用途で使う考えが無かった。
「毒も使いようによっては薬にもなるし、薬も、使用法を間違えれば毒にもなるんですよ」
『そういえばそんなこと言ってたっけ。なるほど。じゃあ、僕の毒薬コレクションの中で薬に使えそうなのがあれば使っていいよ。遠慮なく言って?』
と、毒薬リストを渡してくれた。
ありがたい。
僕も師匠って呼んだほうがいいかって聞いたら。
同僚になるんだし、デュランで構わない、敬語もいらない、と言った。
35歳も年上なんだけど……。
†‡†‡†
食材などは料理長に作り方とかを説明して渡して。
病人食の試作品を作ってもらった。
脱水症状になった人に投与する、生理食塩水の作成。
点滴用の針などの医療道具は、鍛冶職人や、それぞれ細工を得意とする職人に作ってもらった。
細菌由来かウイルス由来かでも対応が違うので、あとは臨機応変に行こう。
とりあえず、下準備としてはこんなものか。
『皆から聞いたぞ、相当な知識だと褒めていた。さすが救世主として召喚されただけあって頼もしい限りではないか』
食堂で病人食を試食する間に魔導書を読んでいたら。
ルロイ王が来た。
『先日は子ども扱いして申し訳なかった。失礼を詫びよう』
マントを捌いて華麗に礼をした。
パーシヴァルから、僕の本来の年齢を聞いたようだ。
でも、せっかく年齢の近い友人が出来たと喜んでいるようなので。
メイベルには黙っといてくれるって。
「いえ、皆さんに比べて精神的にも子供っぽいのは事実なので」
『ふふ、謙遜を』
肩を竦めて笑った。
……謙遜じゃないんだけどなあ。
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