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8章 幸せになろう
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しおりを挟む「ねえローガン、変じゃない?」
「変じゃない。とても素敵だよ」
彼女は俺の言葉に満足げに微笑むと、新作のワンピースをひらりと翻す。彼女の薬指につけられている青色の宝石がきらりと光り、それを見て思わず笑が溢れた。俺の薬指には、勿論緑色の宝石が埋め込まれた指輪がある。
「丁度カスミソウが咲いている時期で良かったわ。村のみんなのおかげでアーチはすぐに完成したし、料理の準備も万端よ」
「それが少し心配なんだが…過剰なもてなしは受けないという話だろ?」
「賄賂とか誘致の話は受けないとかでしょう?これくらい平気よ。それに二人の記事、発行される度に飛ぶ様に売れてるらしいじゃない。これはいい宣伝になるわよ」
そう言ってにやりと笑う彼女は、もうすっかり経営者と領主の顔をしている。
今日はついに全国行脚中の彼らがうちの領地にやってくる。あの日から一年経過したが、宣言通り公務をこなしつつも順調に進めていっている様だ。
全国行脚をする意図が分からないと、最初の頃は懐疑的な国民が多かった。だが二人の熱心な姿に段々と受け入れる様になってきて、今では二人の学びをまとめた記事を見るのが国民の楽しみの一つになっている。ちなみにその記事を担当しているのはゴドウィン氏だ。彼はちゃんと真実を見抜ける目と心を持っているので、絶対に忖度をしないと言い切れる。お陰で安心して彼らの動向を見守っていた。
更に先日他国との会合で、二人がこの行脚中に知ったお菓子でもてなした所好評だった様で、ぜひ我が国にも提供して欲しいという話が持ち上がったという。早速学びを糧にしてくれている様で、彼女のためだったとはいえ、二人にもいい影響与えられて良かったと思う。
「どうしてニヤニヤしてるの?」
「え?」
どうやら顔に出ていたらしい。俺は誤魔化す様に彼女を後ろから抱きしめ、すっかり膨らんだ彼女の愛しいお腹に触れた。
新作のワンピースとはマタニティ仕様のものだ。全然可愛いものがないと嘆いた彼女が、きっと同じ想いの女性は多くいるはずと手掛け始めた。元からやっていたリメイク品も順調だが、このワンピースもかなり注文がきていて、どんどん新作を出している。オンズローは本当に野心家で、特に彼女のやりたいことはなんでもやらせてくれるし、それがまたちゃんと売れるから驚きだ。お陰で新事業はすっかり安定した利益を出せる様になった。
リンダは相変わらず仕事熱心だし、ニイナは彼女が帰ってきてからも前線に立ってくれ、彼女が出て行った頃に毎日泣きながら仕事をしていたのが嘘みたいに逞しくなった。
両親は俺達が夫婦になったことを心から喜んでくれ、そろそろ生まれてくる孫の為に家を建て替え、何がなんでも長生きすると息巻いている。
マリアとウィンターはメイド、執事業を引退し、他の屋敷で働いていた息子を呼び戻し二人は現在村の方で暮らしている。ちなみにその息子レジェとニイナはどうやら何かある様で、俺と彼女はこっそり応援している。
ロレンツォは無事第二子が生まれ、その報告と改めて俺に謝罪したいという手紙がきた。俺は本当に気にしないで欲しい、むしろ感謝したいと送り、今度家族揃ってうちの領地に遊びに来てくれる事になった。彼との縁は今後もずっと大切にしていくつもりだ。
子どもが生まれたら彼女の母親が手伝いに来てくれる事になっている。これまでも何回かうちに来てくれているが、来るたびにここが好きになっていくと嬉しい言葉を言ってくれる。今回はいつもより長く過ごせるので、安心させるためにももっとここの魅力を伝えられたらなと思う。
「ミラ、幸せかい?」
俺がそう問うと彼女が何か疑う様な視線を寄越した。
「何よ突然。やましいことでもあるの?」
「どうしてそうなるんだ」
「ふふ…冗談よ」
彼女がクスクスと笑う。俺はこの笑い声が大好きだ。
「当たり前じゃない、幸せよ。そしてこれからもっと幸せになるの。この子と一緒にね」
そう言って微笑んだ彼女に口付ける。そう、俺達はもっと幸せになる。ずっと、永遠に。
数ヶ月後、元気な男の子が生まれた。髪はミルクティ色で瞳は青色の、俺達それぞれの特徴を継いでいるそれはそれは愛おしい子だった。
fin.
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