目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく

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第39話 はじめての魔法授業

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 王立魔法学院での生活が始まり、数日が経った。

 入学式の余韻はまだ残っているけれど、
 今日はついに――通常授業の初日。

「……緊張する」

 小さく呟くと、隣からくすっと笑い声がした。

「今さら?」
「魔術大会優勝者が、初授業で緊張?」

 エリオスだ。
 余裕そうな表情のまま、教室を見渡している。

 案内された教室は、かなり広かった。
 段々状の席が並び、魔法実技にも対応できる造りになっている。

(……人、多い)

 同級生たちは年齢も様々だ。
 十五~十六歳が多いけれど、
 私より年上も、私とあまり変わらなそうな子も混じっている。

 ――そして。

(……見られてる)

 入室した瞬間から、
 明らかに視線が集中していた。

「ねえ、あの子……」
「ルクシア・ノクティスだよね」
「思ったより、ずっと小さい……」

 ひそひそ声が、あちこちから聞こえてくる。

(……聞こえてます)

 なるべく気にしないようにして、席に着いた。

 前から二列目。
 視界が、やけに良い。

「ここ、落ち着かないな……」

 小声で呟くと、
 後ろの席から同意する声が飛んでくる。

「だよな」
「注目されすぎ」

 振り返ると、同年代くらいの生徒が苦笑していた。

(……少し、安心)

 やがて。

 ――がたん。

 教室の扉が開く。

「静かに」

 入ってきたのは、長身の男性教師だった。
 黒に近い濃紺のローブを纏い、落ち着いた雰囲気を持っている。

「本日から、お前たちに魔法基礎を教える」
「名は、ヴァルド」

 低く、よく通る声。

「まず言っておくが――」

 ヴァルドは、教室全体を見渡した。

「ここにいる全員、実力も年齢もバラバラだ」
「だが、学院ではそれは関係ない」

 ぴし、と空気が引き締まる。

「魔法は、平等に危険だ」
「才能があろうがなかろうが、扱いを誤れば命を落とす」

 何人かが、息を呑むのが分かった。

「よって、今日は“威力”ではなく――」
「制御を見る」

(……制御)

 胸の奥で、光と闇が静かに反応する。

「まずは簡単な魔力放出だ」
「属性は問わない。小さく、安定させろ」

 生徒たちが、次々と前へ出る。

 炎。
 風。
 水。
 土。

 それぞれの属性が、教室内に現れては消えていった。

「よし、次――」

 ヴァルドの視線が、こちらに向く。

「……ルクシア・ノクティス」

 教室が、一瞬で静まり返った。

(……やっぱり、来るよね)

 私は立ち上がり、前へ出る。

 視線が、痛いほど集まる。

「小さくでいい」
「無理はするな」

「……はい」

 深く息を吸い、
 胸の奥に意識を向けた。

(光だけで……)

 ――ぽう。

 手のひらに、淡い光が灯る。

 以前よりも、ずっと安定している。
 揺れも、暴走の気配もない。

「……」

 ヴァルドはじっとそれを見つめ、
 やがて短く告げた。

「良い制御だ」
「年齢を考えれば、優秀すぎるほどだな」

 教室が、ざわつく。

「やっぱり……」
「すご……」
「本物だ……」

(……よかった)

 私は光を消し、席へ戻った。

 心臓は少し早く打っている。
 それでも――

(……ちゃんと、できた)

 その実感の方が、ずっと大きかった。

 初めての魔法授業は、
 静かで、緊張感があって。

 そして――

 この学院で、
 私は確かに「一人の生徒」として立っている。

 そう思える、時間だった。
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