39 / 40
第39話 はじめての魔法授業
しおりを挟む
王立魔法学院での生活が始まり、数日が経った。
入学式の余韻はまだ残っているけれど、
今日はついに――通常授業の初日。
「……緊張する」
小さく呟くと、隣からくすっと笑い声がした。
「今さら?」
「魔術大会優勝者が、初授業で緊張?」
エリオスだ。
余裕そうな表情のまま、教室を見渡している。
案内された教室は、かなり広かった。
段々状の席が並び、魔法実技にも対応できる造りになっている。
(……人、多い)
同級生たちは年齢も様々だ。
十五~十六歳が多いけれど、
私より年上も、私とあまり変わらなそうな子も混じっている。
――そして。
(……見られてる)
入室した瞬間から、
明らかに視線が集中していた。
「ねえ、あの子……」
「ルクシア・ノクティスだよね」
「思ったより、ずっと小さい……」
ひそひそ声が、あちこちから聞こえてくる。
(……聞こえてます)
なるべく気にしないようにして、席に着いた。
前から二列目。
視界が、やけに良い。
「ここ、落ち着かないな……」
小声で呟くと、
後ろの席から同意する声が飛んでくる。
「だよな」
「注目されすぎ」
振り返ると、同年代くらいの生徒が苦笑していた。
(……少し、安心)
やがて。
――がたん。
教室の扉が開く。
「静かに」
入ってきたのは、長身の男性教師だった。
黒に近い濃紺のローブを纏い、落ち着いた雰囲気を持っている。
「本日から、お前たちに魔法基礎を教える」
「名は、ヴァルド」
低く、よく通る声。
「まず言っておくが――」
ヴァルドは、教室全体を見渡した。
「ここにいる全員、実力も年齢もバラバラだ」
「だが、学院ではそれは関係ない」
ぴし、と空気が引き締まる。
「魔法は、平等に危険だ」
「才能があろうがなかろうが、扱いを誤れば命を落とす」
何人かが、息を呑むのが分かった。
「よって、今日は“威力”ではなく――」
「制御を見る」
(……制御)
胸の奥で、光と闇が静かに反応する。
「まずは簡単な魔力放出だ」
「属性は問わない。小さく、安定させろ」
生徒たちが、次々と前へ出る。
炎。
風。
水。
土。
それぞれの属性が、教室内に現れては消えていった。
「よし、次――」
ヴァルドの視線が、こちらに向く。
「……ルクシア・ノクティス」
教室が、一瞬で静まり返った。
(……やっぱり、来るよね)
私は立ち上がり、前へ出る。
視線が、痛いほど集まる。
「小さくでいい」
「無理はするな」
「……はい」
深く息を吸い、
胸の奥に意識を向けた。
(光だけで……)
――ぽう。
手のひらに、淡い光が灯る。
以前よりも、ずっと安定している。
揺れも、暴走の気配もない。
「……」
ヴァルドはじっとそれを見つめ、
やがて短く告げた。
「良い制御だ」
「年齢を考えれば、優秀すぎるほどだな」
教室が、ざわつく。
「やっぱり……」
「すご……」
「本物だ……」
(……よかった)
私は光を消し、席へ戻った。
心臓は少し早く打っている。
それでも――
(……ちゃんと、できた)
その実感の方が、ずっと大きかった。
初めての魔法授業は、
静かで、緊張感があって。
そして――
この学院で、
私は確かに「一人の生徒」として立っている。
そう思える、時間だった。
入学式の余韻はまだ残っているけれど、
今日はついに――通常授業の初日。
「……緊張する」
小さく呟くと、隣からくすっと笑い声がした。
「今さら?」
「魔術大会優勝者が、初授業で緊張?」
エリオスだ。
余裕そうな表情のまま、教室を見渡している。
案内された教室は、かなり広かった。
段々状の席が並び、魔法実技にも対応できる造りになっている。
(……人、多い)
同級生たちは年齢も様々だ。
十五~十六歳が多いけれど、
私より年上も、私とあまり変わらなそうな子も混じっている。
――そして。
(……見られてる)
入室した瞬間から、
明らかに視線が集中していた。
「ねえ、あの子……」
「ルクシア・ノクティスだよね」
「思ったより、ずっと小さい……」
ひそひそ声が、あちこちから聞こえてくる。
(……聞こえてます)
なるべく気にしないようにして、席に着いた。
前から二列目。
視界が、やけに良い。
「ここ、落ち着かないな……」
小声で呟くと、
後ろの席から同意する声が飛んでくる。
「だよな」
「注目されすぎ」
振り返ると、同年代くらいの生徒が苦笑していた。
(……少し、安心)
やがて。
――がたん。
教室の扉が開く。
「静かに」
入ってきたのは、長身の男性教師だった。
黒に近い濃紺のローブを纏い、落ち着いた雰囲気を持っている。
「本日から、お前たちに魔法基礎を教える」
「名は、ヴァルド」
低く、よく通る声。
「まず言っておくが――」
ヴァルドは、教室全体を見渡した。
「ここにいる全員、実力も年齢もバラバラだ」
「だが、学院ではそれは関係ない」
ぴし、と空気が引き締まる。
「魔法は、平等に危険だ」
「才能があろうがなかろうが、扱いを誤れば命を落とす」
何人かが、息を呑むのが分かった。
「よって、今日は“威力”ではなく――」
「制御を見る」
(……制御)
胸の奥で、光と闇が静かに反応する。
「まずは簡単な魔力放出だ」
「属性は問わない。小さく、安定させろ」
生徒たちが、次々と前へ出る。
炎。
風。
水。
土。
それぞれの属性が、教室内に現れては消えていった。
「よし、次――」
ヴァルドの視線が、こちらに向く。
「……ルクシア・ノクティス」
教室が、一瞬で静まり返った。
(……やっぱり、来るよね)
私は立ち上がり、前へ出る。
視線が、痛いほど集まる。
「小さくでいい」
「無理はするな」
「……はい」
深く息を吸い、
胸の奥に意識を向けた。
(光だけで……)
――ぽう。
手のひらに、淡い光が灯る。
以前よりも、ずっと安定している。
揺れも、暴走の気配もない。
「……」
ヴァルドはじっとそれを見つめ、
やがて短く告げた。
「良い制御だ」
「年齢を考えれば、優秀すぎるほどだな」
教室が、ざわつく。
「やっぱり……」
「すご……」
「本物だ……」
(……よかった)
私は光を消し、席へ戻った。
心臓は少し早く打っている。
それでも――
(……ちゃんと、できた)
その実感の方が、ずっと大きかった。
初めての魔法授業は、
静かで、緊張感があって。
そして――
この学院で、
私は確かに「一人の生徒」として立っている。
そう思える、時間だった。
25
あなたにおすすめの小説
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた
nionea
恋愛
ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、
死んだ
と、思ったら目が覚めて、
悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。
ぽっちゃり(控えめな表現です)
うっかり (婉曲的な表現です)
マイペース(モノはいいようです)
略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、
「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」
と、落ち込んでばかりもいられない。
今後の人生がかかっている。
果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。
※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。
’20.3.17 追記
更新ミスがありました。
3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。
本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。
大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!
夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。
挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。
だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……?
酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。
※小説家になろうでも投稿しています
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる