目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく

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第38話 王立魔法学院入学式

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王立魔法学院の大講堂は、想像以上に広かった。

 高い天井。
 白い石柱。
 壁には歴代の偉大な魔術師たちの肖像画が並び、中央には王国旗と学院旗が掲げられている。

(……すご)

 思わず、きょろりと見回してしまう。

「前見て、ルクシア」

 小声で注意してきたのは、ユリウスお兄様だった。

(はっ)

 慌てて姿勢を正す。

 席はすでに決まっており、
 身分や成績、特別枠によって分けられているらしい。

 私は――

「……ここ?」

 案内された席に、一瞬言葉を失った。

 最前列。
 しかも、王族席のすぐ後ろ。

(いやいやいや)

「妥当だね」

 レオンハルト王子が、あっさり言う。

「一般の部優勝者だし、光属性持ちだし」
「むしろ後ろの方が騒ぎになるよ」

(そういう問題じゃ……)

 周囲から、ひそひそ声が止まらない。

「近くで見ると、ほんとに……」
「幼いのに、雰囲気すごくない?」
「あの席ってことは……やっぱり」

 中には、明らかに警戒する視線も混じっていた。

(……評価、割れてるなあ)

 やがて。

 ――ゴン、と重厚な音が響く。

 講堂全体が、しん、と静まり返った。

「これより、王立魔法学院・入学式を執り行う」

 壇上に立ったのは、学院長。

 白髪を後ろで束ねた老魔術師で、
 穏やかながらも鋭い眼差しを持っている。

「新入生諸君、入学おめでとう」

 形式的な挨拶が続く中、
 私は背筋を伸ばしながら耳を傾けていた。

「本学院は、才能を伸ばす場所であると同時に――」

 学院長は、少し間を置いてから言った。

「力の“責任”を学ぶ場所でもある」

 その言葉に、胸の奥がわずかに反応する。

(……責任)

「今年は、例年にない特別な年だ」

 ざわり、と空気が揺れた。

「一般の部より、異例の形で入学した者がいる――」

 学院長の視線が、
 真っ直ぐに、こちらを向いた。

(……来た)

「ルクシア・ノクティス」

 名を呼ばれ、立ち上がる。

 一斉に、視線が集中した。

「彼女は、魔術大会一般の部において優勝」
「その実力は、すでに王国中が知るところだ」

 評価の声と、戸惑いの空気。

「しかし」

 学院長は、あえて厳しい声を続ける。

「才能は、称賛されるべきものだ」
「だが、制御できなければ――災いにもなり得る」

 胸が、きゅっと締めつけられる。

(……闇のこと、だ)

「本学院は、彼女を特別扱いしない」
「同時に、放置もしない」

 その宣言に、
 教師席の何人かが静かに頷いた。

(……見られてる)

 入学式は、滞りなく進んでいく。

 だが。

 式が終わり、生徒たちが立ち上がった瞬間――
 再び、ざわめきが一気に戻った。

「ねえ、さっきの子……」
「ルクシア・ノクティス、だっけ」
「光属性だけじゃないって噂……」

(……やっぱり)

 その一方で。

「でも、闇魔法使えるって……危なくない?」
「制御できてるの?」
「学院、大丈夫なの?」

 警戒と不安の声も、確かにあった。

 私は、静かに息を吐く。

(……全部、想定内)

 そのとき。

「気にするな」

 低い声が、耳元で囁かれた。

 振り向くと、リヒトが少し離れた場所に立っていた。

「評価は、結果で黙らせればいい」

 その言葉に、
 ユリウスお兄様とレオンハルトも頷く。

「俺たちがいる」
「一人じゃないよ」

 胸の奥が、すっと落ち着いた。

 光も、闇も。
 視線も、噂も。

 全部背負ったまま――
 私は、この場所に立っている。

 王立魔法学院。

 才能が集い、
 野心が渦巻き、
 未来が決まる場所。

 ここで私は、

 ルクシア・ノクティスとして生きる。

 守られるだけの存在ではなく。
 恐れられるだけの存在でもなく。

 ――選ばれる側として。

 私の学院生活は、
 こうして、本当に始まった。
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