魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした

月影みるく

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第33話 学びの始まり、選ぶ覚悟

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翌朝。

魔界城に、久しぶりに澄んだ空気が流れていた。

セラフィナは、自分の部屋の窓を開け、深く息を吸う。

「……よし」

まだ少し、胸の奥がざわつく。
でも、昨日よりは――立っていられる。

(逃げたままは、嫌だ)

* * *

執務室。

魔王は書類に目を落としていたが、
扉が開いた気配に、すぐ顔を上げた。

「セラフィナ?」

「うん」

セラフィナは、まっすぐ父を見た。

「お願いがある」

魔王の表情が、一瞬で引き締まる。

「……何だ」

「剣と、魔法」

はっきりと言う。

「ちゃんと、習いたい」

沈黙。

魔王の魔力が、微かに揺れた。

「……却下だ」

即答だった。

「危険すぎる」

「お前は、もう十分――」

「十分“守られた”」

セラフィナは、言葉を遮る。

「でも、私は」

一歩、前に出る。

「守られるだけじゃ、いられない」

「クロウが怪我して」

声が、少しだけ震える。

「みんなが、私を庇って」

「……それで、何もできないのは、嫌」

魔王は、娘を見つめた。

怒りではない。
恐怖だ。

「……お前が、傷つく可能性がある」

「あるよ」

即答。

「でも、何もしなくても、誰かは傷つく」

「それなら」

「私は、選びたい」

魔王は、目を伏せた。

その時。

「失礼いたします」

控えめな声。

クロウ・フェルゼンが、扉の脇に立っていた。

「姫君」

「本気ですか」

「うん」

迷いはなかった。

クロウは、一拍置いてから、魔王を見る。

「……魔王様」

「姫君の意思は、明確です」

「私は」

「その選択を、尊重すべきだと考えます」

魔王は、深く息を吐いた。

「……条件がある」

セラフィナが、顔を上げる。

「剣は、基礎のみ」

「魔術は、制御のみ」

「危険を感じたら、即中止だ」

「……いい」

セラフィナは、うなずいた。

「ありがとう、パパ」

* * *

訓練場。

朝の光が、白い石床に反射する。

「では、姫君」

クロウは木剣を差し出した。

「まずは、構えからです」

「……重い」

正直な感想。

「はい」

「ですが、剣とは」

「重さを、預けるものです」

セラフィナは、真似して構える。

腕が、少し震える。

(……怖い)

一瞬、魔獣の影が脳裏をよぎる。

「……っ」

「姫君」

クロウの声は、静かだった。

「力を、入れすぎておられます」

「……わかってる」

「だけど、体が言うこときかない」

「それで、結構です」

クロウは、距離を保ったまま言う。

「剣を振る前に」

「立っているだけで、十分です」

セラフィナは、ゆっくり息を吐いた。

「……こう?」

「はい」

初めて、クロウが小さく微笑んだ。

「今のは、とても綺麗です」

少し、頬が熱くなる。

「……褒めすぎ」

「事実です」

* * *

次は、魔術訓練。

広い魔導陣の中央に立つ。

「今日は、出す練習ではない」

魔王が、はっきり告げる。

「“止める”練習だ」

「……止める?」

「魔力を、灯して」

「自分の意思で、消せ」

セラフィナは、目を閉じる。

胸の奥。

あの、巨大な力。

(……怖い)

指先に、光が集まる。

空気が、歪む。

「……っ」

一瞬、制御が揺らぐ。

床が、軋んだ。

「セラフィナ!」

「……だいじょうぶ」

歯を食いしばる。

(私が、止める)

光が、強くなり――

次の瞬間。

すっと、消えた。

静寂。

「……できた」

小さな声。

魔王は、目を見開いた。

クロウは、息を止めていたのを、ようやく吐く。

「……よく、抑えました」

「……こわかった」

正直な言葉。

「でも」

セラフィナは、ゆっくり顔を上げる。

「逃げなかった」

クロウは、片膝をついた。

「姫君」

「本日は、ここまでにしましょう」

「……うん」

疲れた。

でも。

胸の奥に、確かなものがある。

(……一歩)

(ちゃんと、進めた)

* * *

訓練場を出るとき。

セラフィナは、ふと立ち止まる。

「ねえ、クロウ」

「はい」

「私さ」

「強くなりたい」

「でも」

少しだけ、笑う。

「一人で立つ勇気は、ないから」

クロウの表情が、揺れた。

「……承知しました」

低く、真剣に。

「では私は」

「姫君が倒れぬよう」

「隣に、立ち続けます」

セラフィナは、うなずいた。

「それでいい」

こうして。

恐怖から逃げていた姫は、
剣を取り、力と向き合い始めた。

まだ、小さな一歩。

だがそれは――
確かに、“自分で選んだ道”だった。
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