俺の婚約者は悪役令息ですか?

SEKISUI

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8 クッキー事件

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 放課後の昼下がり、俺は1人窓辺で黄昏ていた
 放課後セドは理事長にお呼ばれして居ない
 偶には1人の時間を謳歌したい
 はっきり言っていて帰りたい
 だが、しかし、後々面倒臭い
 別れる時もセドは「私以外の人に付いて言っては駄目だよ」と言われていた
 幼児の範囲に入らない17 歳の俺はハイハイと適当に返答して、よ~しよ~しと頭をポンポンして張り付くセドをロイが引き剥がし、引き摺られて行くセドを見送った
 暇なので窓辺から見える令嬢令息、その他を人間がひとーり、ふたーりと数えていたら、ハチミツ色の髪の令嬢が声を掛けて来た

 そして今に至る
 「あの……これ、貰って下さい」
 令嬢が両手でオレンジ色の包装紙でラッピングされた物を俺に差し出して来た
 「えっ俺に?」
 マジか?セドじゃなくて俺にか?
 「はい」
 素晴らしい
 普通の女の子にクッキーを貰っちゃった
 でも知らない人だけど、まあいい
 今分かってることは、俺にもまともな女の子との春が来たって事だけだ
 今日は何て良い日だろう
 やはり日頃の善行?が俺にも幸運を運んだに違いない
 知らんけど
 婚約者?ああそんなの居たね
 気にしない、気にしない
 浮気じゃないかって?
 違うよ
 相手の性別は女子だもん
 だ・か・ら、浮気にならないんだ
 だいたいバレなければいいんだよ
 セド達は一分前に別れたばかりだし

 ウキウキとラッピングを解いた中身はクッキーだった
 程よくキツネ色した……ハートではないんだな
 ハートって定番じゃない
 好きな人にハート?なんてのは男の夢、あるあるだろ
 それにしてもクッキーの1枚1枚にリアルな
動物の顔、身体はない
 芸術的だな
 上手いこと現実的に絵ががれてるけど……生首みたいで食べ辛い
 彼女は一般的な女子とは感性が違うようだ
 普通ってなんだろう
 そっと視線を天井のシミに向けてしまう
 
 「いっ、頂こぅ、かな……」  
 瞳をとじれば、何も見えない
 きっと但のクッキーだ
 令嬢を見ればギラギラしてた
 えっ?食べたらやばいやつ
 口に入れるのを躊躇してたら強烈な視線を感じて振り向けば奴がいた
 お早いお戻りで
 やばい………証拠隠滅する前に戻って来た

 「あっーっと、えっーと………セド…これは」
 うーわ怖
 目が据わってる
 やばい、やばいやばいやばい!!
 でも俺は悪くないと思う
 俺が催促したわけじゃない
 イヤちょっと位は悪かったかも、しれないけど
 「違うよ」
 まだ浮気にはなっていない
 「ローレン」
 声が3オクターブ低いな
 怖くてセドの方を向けない
 背筋が寒い
 「こ、これはぁあぁ、あのぉ、そのぉ………食べる?………」
 ぁあぁあああああああ俺のバカぁぁあああ!!何いってんのおぉぉぉぉおおお!!!
 「へぇ、これがローレンを拐かすクッキーか?」
 俺からラッピングごとクッキーを奪ったセドは黒い笑みを浮かべる
 やだ、顔が無駄に整ってるだけに恐怖しか感じない
 逃げて、何とかいう令嬢
 たかがクッキー、されどクッキー
 怒ってる意味がちょっと分からない
 「貰っただけだよ」
 事実だけを言ってみた
 令嬢はセドを見て青ざめてる、けど俺は全く庇わないから
 自分の身が一番大事な俺はどうにかしてこの場を誤魔化したかった
 残念ながら何も浮かばんかったけど
 「そう」
 セドは俺のクッキーを床に叩き捨てた
 「そこの女、私の婚約者と知っての所業かな?」

 

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