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第13話 国王の激怒
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第13話 国王の激怒
朝議の空気は、重苦しかった。
玉座の前に並ぶ官僚たちは、誰一人として顔を上げようとしない。
手元の報告書に視線を落としたまま、ただ沈黙を守っていた。
「……」
国王は、机に積まれた書類を一枚ずつめくっていく。
物流停滞。
物価上昇。
地方からの抗議。
財務の赤字見通し。
どれも単体なら、対処可能な問題だ。
だが――
(同時に起きている)
それが、何よりも危険だった。
「エリシオン」
低い声が、広間に響いた。
「これは、どういうことだ」
「父上」
エリシオンは一歩前に出る。
「改革の過程で、一時的な混乱が生じておりますが――」
「一時的?」
国王は、書類を一枚、机に叩きつけた。
「港が止まり、物が届かず、
庶民が不満を募らせている。
これを“些細な混乱”と呼ぶのか」
ざわ、と周囲が息を詰める。
「殿下の方針通りに進めております」
エリシオンは、なおも言い張った。
「改革には痛みが必要です。
今、引けば――」
「誰が引けと言った!」
国王の怒声が、玉座の間を震わせた。
「私は、対処を問うている!」
一瞬の沈黙。
エリシオンは、言葉を探した。
「……調整を、検討しております」
「調整?」
国王の目が、鋭く細められる。
「それは、誰が行うのだ」
答えは、分かっている。
だが、あえて問う。
「……官僚たちが」
「違う」
国王は、はっきりと言った。
「以前は、アヴェンタドール・ローウェンが行っていた」
その名が出た瞬間、
広間の空気が凍りつく。
エリシオンの肩が、わずかに揺れた。
「……書類を整えていただけです」
絞り出すような声。
国王は、ゆっくりと立ち上がった。
「まだ、そんなことを言うか」
歩み寄り、
エリシオンを見下ろす。
「お前が“成果”と誇っていたものは、
彼女が、お前のどうしようもない案を、
現実に落とし込んでいた結果だ」
一語一語が、重い。
「それを、自分の功績だと思い込み、
挙句に“女は馬鹿くらいがいい”だと?」
貴族たちが、息を呑む。
「……」
エリシオンは、反論できなかった。
「有能な者を、
黙って支え続けてくれる存在を、
自ら切り捨てておいて――」
国王の声が、低く震える。
「何を、王の器を語っている」
沈黙。
誰も、口を挟めない。
その時。
「……父上」
場の空気を読まず、
別の声が響いた。
第2王子、サイノスだった。
「兄上には、王太子の地位は、
少々荷が重いのではないかと」
ざわめきが、走る。
「この混乱を見るに、
今こそ、体制を見直すべきかと存じます」
国王は、サイノスを睨みつけた。
「黙れ」
一言で、場を制する。
「今は、お前の野心を披露する場ではない」
サイノスは、静かに一礼した。
「……失礼いたしました」
だが、その口元には、
一瞬だけ、薄い笑みが浮かんでいた。
国王は、深く息を吐く。
「エリシオン」
「……はい」
「この事態、
すべて、お前の責任だ」
逃げ道は、与えられなかった。
「対処案を出せ。
今すぐにだ」
「……承知いたしました」
だが、その声には、
先ほどまでの自信はなかった。
朝議が終わる。
官僚たちは、重い足取りで散っていく。
その背中を見送りながら、
国王は、胸の奥で確信していた。
(……間違えた)
有能な者を、
守るべきだった。
だが、もう遅い。
王宮はすでに、
戻れない場所まで来ていた。
朝議の空気は、重苦しかった。
玉座の前に並ぶ官僚たちは、誰一人として顔を上げようとしない。
手元の報告書に視線を落としたまま、ただ沈黙を守っていた。
「……」
国王は、机に積まれた書類を一枚ずつめくっていく。
物流停滞。
物価上昇。
地方からの抗議。
財務の赤字見通し。
どれも単体なら、対処可能な問題だ。
だが――
(同時に起きている)
それが、何よりも危険だった。
「エリシオン」
低い声が、広間に響いた。
「これは、どういうことだ」
「父上」
エリシオンは一歩前に出る。
「改革の過程で、一時的な混乱が生じておりますが――」
「一時的?」
国王は、書類を一枚、机に叩きつけた。
「港が止まり、物が届かず、
庶民が不満を募らせている。
これを“些細な混乱”と呼ぶのか」
ざわ、と周囲が息を詰める。
「殿下の方針通りに進めております」
エリシオンは、なおも言い張った。
「改革には痛みが必要です。
今、引けば――」
「誰が引けと言った!」
国王の怒声が、玉座の間を震わせた。
「私は、対処を問うている!」
一瞬の沈黙。
エリシオンは、言葉を探した。
「……調整を、検討しております」
「調整?」
国王の目が、鋭く細められる。
「それは、誰が行うのだ」
答えは、分かっている。
だが、あえて問う。
「……官僚たちが」
「違う」
国王は、はっきりと言った。
「以前は、アヴェンタドール・ローウェンが行っていた」
その名が出た瞬間、
広間の空気が凍りつく。
エリシオンの肩が、わずかに揺れた。
「……書類を整えていただけです」
絞り出すような声。
国王は、ゆっくりと立ち上がった。
「まだ、そんなことを言うか」
歩み寄り、
エリシオンを見下ろす。
「お前が“成果”と誇っていたものは、
彼女が、お前のどうしようもない案を、
現実に落とし込んでいた結果だ」
一語一語が、重い。
「それを、自分の功績だと思い込み、
挙句に“女は馬鹿くらいがいい”だと?」
貴族たちが、息を呑む。
「……」
エリシオンは、反論できなかった。
「有能な者を、
黙って支え続けてくれる存在を、
自ら切り捨てておいて――」
国王の声が、低く震える。
「何を、王の器を語っている」
沈黙。
誰も、口を挟めない。
その時。
「……父上」
場の空気を読まず、
別の声が響いた。
第2王子、サイノスだった。
「兄上には、王太子の地位は、
少々荷が重いのではないかと」
ざわめきが、走る。
「この混乱を見るに、
今こそ、体制を見直すべきかと存じます」
国王は、サイノスを睨みつけた。
「黙れ」
一言で、場を制する。
「今は、お前の野心を披露する場ではない」
サイノスは、静かに一礼した。
「……失礼いたしました」
だが、その口元には、
一瞬だけ、薄い笑みが浮かんでいた。
国王は、深く息を吐く。
「エリシオン」
「……はい」
「この事態、
すべて、お前の責任だ」
逃げ道は、与えられなかった。
「対処案を出せ。
今すぐにだ」
「……承知いたしました」
だが、その声には、
先ほどまでの自信はなかった。
朝議が終わる。
官僚たちは、重い足取りで散っていく。
その背中を見送りながら、
国王は、胸の奥で確信していた。
(……間違えた)
有能な者を、
守るべきだった。
だが、もう遅い。
王宮はすでに、
戻れない場所まで来ていた。
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