見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお

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4-1 疑惑

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4-1 疑惑

学校が動き出してから数日。
セリカは毎日授業に参加しながら、子供たちの反応や教師たちの変化を細かく観察していた。
教師たちの態度は以前より真剣になり、授業も少しずつ改善されている。
――それでも、ひとつだけ見逃せない違和感があった。

「……給食が、あまりにも貧相ね」

配膳された皿を見下ろす。
薄いスープに黒っぽいパン、そして干からびたような豆の煮物。
栄養価も彩りも感じられず、どこか“やっつけ仕事”の匂いがした。

昼休み、隣の席の少年に声をかける。

「ねえ、この給食、あんまりおいしくないと思わない?」

少年は驚いたように目を丸くしたあと、遠慮がちに笑った。

「え? でも、毎日お昼が食べられるだけでありがたいよ。
うちじゃあ、日によっては何も食べられないこともあるから……」

その一言が、セリカの胸に刺さった。
自分にとって“普通”だったことが、彼らにとっては“贅沢”。
貴族として育った彼女は、その価値観の違いに言葉を失った。

「……そう。そうなのね」

笑って返したものの、心の奥はざわついていた。
――それでも、給食の質が悪いことには変わりない。
子供たちが学ぶなら、まず健康でなければならない。
そのための栄養が欠けているなんて、あってはならないことだ。

だが、問題は「なぜ」なのか。
予算が足りないのか、それとも――。

セリカは翌日、調理場に足を運んだ。
鍋から立ちのぼる湯気と、漂う豆の匂い。
忙しそうに動く職員たちは、突然現れた貴族令嬢に驚いた表情を見せた。

「お、お嬢様!? どうなさいましたか?」

「少し、給食についてお聞きしたいの。どうして、こんなに質素なのかしら?」

問いかける声は穏やかだったが、その瞳は真剣だった。
職員の一人がため息をつき、やや苦い顔で答える。

「正直に申し上げますと……限られた予算の中で、精一杯やっております。
できるだけ栄養のバランスも考えてはいるんですが、材料費が……」

「予算が、足りないの?」

「はい。最初に聞かされていたよりも、実際に届く金額がずいぶん減りまして。
仕入れも削らざるを得なくて……」

その説明を聞くうちに、セリカの眉がわずかに寄った。
――“届く金額が減る”?
つまり、どこかで誰かが“抜いている”ということでは?

「ありがとう。お話を聞けてよかったわ」

礼を述べ、調理場を後にしたセリカは、廊下を歩きながら呟いた。

「……おかしいわ。予算が削られている? そんな報告、聞いていないのに」

胸の奥に、じわりと嫌な予感が広がる。
学校運営のどこかに、不正がある。
そう確信したとき、セリカの瞳に小さな炎が宿った。

その夜。
セリカは自室でエル・ドライドを呼び出し、机の上に資料を並べながら切り出した。

「エル・ドライド、給食の予算がどうもおかしいの。
 きちんと使われているとは思えないのよ」

エル・ドライドは腕を組み、静かに目を閉じる。

「なるほど……。そのような不正があるとすれば、放置はできませんね。
 ですが、資金の流れを追うのは容易ではありません。
 管理部門に根回しし、記録を確認する必要があります」

「根回し……そんな悠長なことをしていられないわ。子供たちの健康がかかっているのよ」

思わず声が強くなる。
だが、彼女の焦りに反して、エル・ドライドの表情は穏やかだった。

「……お嬢様の意志は固いようですね。ならば、協力いたしましょう。
 ただし、調査は慎重に。敵は一枚岩ではありません」

セリカは深く頷いた。
もう決めていた。
誰が何を隠していようと、真実を見つけ出す。

翌朝。
セリカは粗末な服を身にまとい、髪を布で隠した。
鏡に映るのは、どこにでもいる平民の少女。
名門アルジェリカ家の娘とは誰も気づかないだろう。

「行ってくるわ、エル・ドライド」

「お気をつけて。……そして、決して一人で抱え込まぬように」

扉を開けた瞬間、朝の光が差し込んだ。
その光の中で、セリカは静かに微笑む。

「真実は、必ず見つけてみせるわ」

――領地の教育改革を揺るがす“闇”を暴くために。
セリカの孤独な調査が、今始まった。

次節(4-2)は、
🕵️‍♀️「内部告発と裏帳簿」――セリカが帳簿の不自然な点を突き止め、領地の役人に疑惑を向ける緊迫の展開
として続けましょうか?

より真剣になり、授業も少しずつ改善されている。
――それでも、ひとつだけ見逃せない違和感があった。

「……給食が、あまりにも貧相ね」

配膳された皿を見下ろす。
薄いスープに黒っぽいパン、そして干からびたような豆の煮物。
栄養価も彩りも感じられず、どこか“やっつけ仕事”の匂いがした。

昼休み、隣の席の少年に声をかける。

「ねえ、この給食、あんまりおいしくないと思わない?」

少年は驚いたように目を丸くしたあと、遠慮がちに笑った。

「え? でも、毎日お昼が食べられるだけでありがたいよ。
うちじゃあ、日によっては何も食べられないこともあるから……」

その一言が、セリカの胸に刺さった。
自分にとって“普通”だったことが、彼らにとっては“贅沢”。
貴族として育った彼女は、その価値観の違いに言葉を失った。

「……そう。そうなのね」

笑って返したものの、心の奥はざわついていた。
――それでも、給食の質が悪いことには変わりない。
子供たちが学ぶなら、まず健康でなければならない。
そのための栄養が欠けているなんて、あってはならないことだ。

だが、問題は「なぜ」なのか。
予算が足りないのか、それとも――。

セリカは翌日、調理場に足を運んだ。
鍋から立ちのぼる湯気と、漂う豆の匂い。
忙しそうに動く職員たちは、突然現れた貴族令嬢に驚いた表情を見せた。

「お、お嬢様!? どうなさいましたか?」

「少し、給食についてお聞きしたいの。どうして、こんなに質素なのかしら?」

問いかける声は穏やかだったが、その瞳は真剣だった。
職員の一人がため息をつき、やや苦い顔で答える。

「正直に申し上げますと……限られた予算の中で、精一杯やっております。
できるだけ栄養のバランスも考えてはいるんですが、材料費が……」

「予算が、足りないの?」

「はい。最初に聞かされていたよりも、実際に届く金額がずいぶん減りまして。
仕入れも削らざるを得なくて……」

その説明を聞くうちに、セリカの眉がわずかに寄った。
――“届く金額が減る”?
つまり、どこかで誰かが“抜いている”ということでは?

「ありがとう。お話を聞けてよかったわ」

礼を述べ、調理場を後にしたセリカは、廊下を歩きながら呟いた。

「……おかしいわ。予算が削られている? そんな報告、聞いていないのに」

胸の奥に、じわりと嫌な予感が広がる。
学校運営のどこかに、不正がある。
そう確信したとき、セリカの瞳に小さな炎が宿った。


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その夜。
セリカは自室でエル・ドライドを呼び出し、机の上に資料を並べながら切り出した。

「エル・ドライド、給食の予算がどうもおかしいの。
 きちんと使われているとは思えないのよ」

エル・ドライドは腕を組み、静かに目を閉じる。

「なるほど……。そのような不正があるとすれば、放置はできませんね。
 ですが、資金の流れを追うのは容易ではありません。
 管理部門に根回しし、記録を確認する必要があります」

「根回し……そんな悠長なことをしていられないわ。子供たちの健康がかかっているのよ」

思わず声が強くなる。
だが、彼女の焦りに反して、エル・ドライドの表情は穏やかだった。

「……お嬢様の意志は固いようですね。ならば、協力いたしましょう。
 ただし、調査は慎重に。敵は一枚岩ではありません」

セリカは深く頷いた。
もう決めていた。
誰が何を隠していようと、真実を見つけ出す。


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翌朝。
セリカは粗末な服を身にまとい、髪を布で隠した。
鏡に映るのは、どこにでもいる平民の少女。
名門アルジェリカ家の娘とは誰も気づかないだろう。

「行ってくるわ、エル・ドライド」

「お気をつけて。……そして、決して一人で抱え込まぬように」

扉を開けた瞬間、朝の光が差し込んだ。
その光の中で、セリカは静かに微笑む。

「真実は、必ず見つけてみせるわ」

――領地の教育改革を揺るがす“闇”を暴くために。
セリカの孤独な調査が、今始まった。


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