見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお

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25-2 騙されてる?

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25-2 騙されてる?

レクサス王国での結婚生活が始まって数ヶ月。
セリカの生活は――ひと言でいえば、地獄に近かった。

朝。
まだ太陽が上りきる前から、彼女の執務室には山のような書類が積み上がる。

昼。
会議→会議→会議。
「王妃様のご判断を」「王妃様の采配を」「王妃様の署名を」と、次々に責任がのしかかる。

夜。
書類。
さらに書類。
もはや食事を取りながら書類を読むのが当たり前になってしまった。

(これが……私の思っていた“自由”……?)

あの日、レクサスⅧ世が言った言葉が脳裏で響く。

――“君には自由にやれる場を与える”

期待していた。
信じていた。

でも今、はっきりしている。

(自由に“やれる”じゃなくて、自由に“丸投げされる”の間違いだったんじゃないの?)

書類の山を前に、五歳の王妃は額に手を当てた。

「これ、誰が国王なのか本当にわからなくなるわ……」


---

◆王の姿が、どこにもない。

政務会議。
レクサスⅧ世が出席したことは一度もない。

国境紛争の対応、税制の見直し、予算の再編成、貴族たちの利害調整――
全てセリカ任せ。

国王の影すら見えない。

(陛下、国のトップってどこ行ったの?
 お散歩? 昼寝? それとも別荘?)

想像がどんどん嫌な方向へ膨らむ。

(まさか……本当に働く気がない……?)

この疑念は、心のどこかでずっと見ないふりをしていた種だった。
だが、日を追うごとに芽を出し、今や大木のように胸に根を張っていた。

(……これ、騙されてるのかな?)


---

◆ついに、直接対決。

ある夜。
限界を感じたセリカは意を決して、王の私室へ向かった。

案の定――

「はぁ~~~っ、最高だ!」

王は豪華な椅子にもたれ、ワインを片手にご満悦。
超リラックスモードであった。

(働けッッ!!)

心の中でツッコミを入れつつも、セリカは姿勢を正した。

「少しお話がございます、レクサスⅧ世。」

「おや、セリカ。どうしたんだい? 政務は順調かい?」

――その、無邪気な笑顔。

(順調なわけないでしょうが!!!)

叫びたい気持ちを押し殺しながら、彼女は言った。

「最近、私一人がすべてを抱えているように感じるのです。
 誰が国王なのか、本当にわからなくなってしまうほどに。」

レクサスⅧ世は軽く笑い、グラスを揺らした。

「だって君は優秀だろう? 君が最善の判断をしてくれるさ。
 私は君の働きを“見守って”いるだけだよ。」

(見守る!? それサボってるだけ!!!)

セリカの中で、何かがブチッと音を立てた。

「……見守るのは、働かない言い訳にはなりません!」

「いやいや、君の“自由”を奪いたくなくてね。私は口出ししないと決めたんだよ。」

(出して! 口! 出して!
 “何もしないことが自由”だと思ってるの!?)

セリカは深呼吸して、冷静に続けた。

「確かに、口出しはしていませんね。
 でも、それは“放置している”というだけではありませんか?」

レクサスⅧ世は気にも留めず、にこやかに返す。

「君には才能がある。それを信じているだけだよ。」

その瞬間、セリカは悟った。

――これは信頼ではない。
――ただの責任放棄だ。

そして、気づいてしまった。

(ああ……私、騙されてたんだわ)


---

◆幼女王妃の胸に燻る怒り

執務室に戻り、書類の山を見た瞬間、セリカはぽつりと呟いた。

「……結局、“自由”って……」

“好きに政策を選べる自由”じゃない。
“国の全部を押し付けられる自由”だった。

「これ……自由じゃなくて、ただの“ワンマンブラック企業”よね……?」

五歳児が、一国のすべてを背負わされている。

その重さに、幼い肩は震えた。
悔しさで胸がいっぱいになった。

「やっぱり……私、騙されてるよね……」

その言葉は、涙と怒りが混ざった、胸の奥でしぼり出されたものだった。


---
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