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25-1 自由とは?
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25-1 自由とは?
結婚式の喧騒が去り、レクサス王国での生活が始まった。
王妃となった――とは名ばかりの五歳児、セリカは胸の内で静かに期待していた。
(レクサス王は言っていたわ。“自由にやれる場を与える”って。
なら、ディオール領でやってきたみたいに……もっと大きな国で、もっと多くの人を救えるかもしれない)
幼い胸に膨らむ、確かに本物の希望。
新たな国で、これまで以上に知恵を振るえる未来を思い描いた。
だが――それは残酷なほどあっさりと、現実に打ち砕かれていく。
---
◆「王妃としての政務」は、想像していたものと違った。
結婚後、セリカは王宮の政務室へ連日連れられた。
「こちら王国西部の税制改革の資料でございます」
「王妃様、南の灌漑施設の建設案へのご署名を」
「こちらは新たな交易路の協定案で――」
山のような書類、終わらない会議、休む間もなく次の審議。
年齢?
配慮?
そんなものは誰も考えていなかった。
(えっ……これ、全部私が決めるの?
というか……王様はどこ?)
結婚当日こそ堂々と彼女の隣に立っていたレクサスⅧ世。
だが、それ以来――政務に顔を出すことは一度もなかった。
不在。
徹底した不在。
そこでセリカは悟る。いや、悟りかける。
(もしかして……“自由にやれる場”って……
“国の全部丸投げするから勝手にやってね”って意味じゃないでしょうね?)
自信満々に政務を振られるセリカ。
しかし彼女は五歳児であることを忘れてはならない。
侍女に抱えられるようにして椅子に座り、
巨大すぎる机に埋もれながら必死で書類を読む姿は、もはや可哀想を通り越してシュールですらあった。
---
◆王の姿はどこにもない。
数日後。
重要会議の場にも、レクサスⅧ世は現れなかった。
「陛下は……どちらですか?」
セリカが尋ねると、役人たちは顔を見合わせる。
「お、お忙しいのです……」
「王妃様の判断で問題ございませんので……」
(いやいやいやいや。
“王家の長”の仕事、全部私に押しつけてません?)
ディオール領とは比べ物にならない広さの国。
問題の数は百倍、責任は千倍。
幼女一人で抱えるには、あまりにも大きすぎる。
それでも、彼女は自分の能力で国を助けようと必死だった。
けれど、ふとした瞬間に思う。
(……これ、本当に“自由”なの?)
---
◆違和感は、静かに膨らんでいく。
数日後。
歩くたびに机ごと書類を持って追いかけてくる従者たちと、
引っ張られるように政務室へ向かうセリカ。
ふと、立ち止まる。
(自由にやれる“環境”じゃなくて、
自由に“全部任せる”って意味じゃ……?)
胸の中に浮かんだ小さな疑念は、
もはや否定できるほど小さくはなかった。
レクサスⅧ世は、この国の実務を手放している。
その代わり――彼はセリカを表向きの王妃として置き、
王国運営の全てを彼女に肩代わりさせている。
(……私、まさか“便利な労働力”として呼ばれただけ?)
期待は薄れ、疑問と不安が重なっていく。
レクサス王の言った「自由」は、
セリカの求めた“自由に選べる未来”とは――まったく別物だった。
---
「自由って……
自分で選んだ道を歩くことじゃなかったの?」
幼い王妃の目に映る現実は、
甘い夢とはほど遠く、冷たい政治の世界そのものだった。
---
結婚式の喧騒が去り、レクサス王国での生活が始まった。
王妃となった――とは名ばかりの五歳児、セリカは胸の内で静かに期待していた。
(レクサス王は言っていたわ。“自由にやれる場を与える”って。
なら、ディオール領でやってきたみたいに……もっと大きな国で、もっと多くの人を救えるかもしれない)
幼い胸に膨らむ、確かに本物の希望。
新たな国で、これまで以上に知恵を振るえる未来を思い描いた。
だが――それは残酷なほどあっさりと、現実に打ち砕かれていく。
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◆「王妃としての政務」は、想像していたものと違った。
結婚後、セリカは王宮の政務室へ連日連れられた。
「こちら王国西部の税制改革の資料でございます」
「王妃様、南の灌漑施設の建設案へのご署名を」
「こちらは新たな交易路の協定案で――」
山のような書類、終わらない会議、休む間もなく次の審議。
年齢?
配慮?
そんなものは誰も考えていなかった。
(えっ……これ、全部私が決めるの?
というか……王様はどこ?)
結婚当日こそ堂々と彼女の隣に立っていたレクサスⅧ世。
だが、それ以来――政務に顔を出すことは一度もなかった。
不在。
徹底した不在。
そこでセリカは悟る。いや、悟りかける。
(もしかして……“自由にやれる場”って……
“国の全部丸投げするから勝手にやってね”って意味じゃないでしょうね?)
自信満々に政務を振られるセリカ。
しかし彼女は五歳児であることを忘れてはならない。
侍女に抱えられるようにして椅子に座り、
巨大すぎる机に埋もれながら必死で書類を読む姿は、もはや可哀想を通り越してシュールですらあった。
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◆王の姿はどこにもない。
数日後。
重要会議の場にも、レクサスⅧ世は現れなかった。
「陛下は……どちらですか?」
セリカが尋ねると、役人たちは顔を見合わせる。
「お、お忙しいのです……」
「王妃様の判断で問題ございませんので……」
(いやいやいやいや。
“王家の長”の仕事、全部私に押しつけてません?)
ディオール領とは比べ物にならない広さの国。
問題の数は百倍、責任は千倍。
幼女一人で抱えるには、あまりにも大きすぎる。
それでも、彼女は自分の能力で国を助けようと必死だった。
けれど、ふとした瞬間に思う。
(……これ、本当に“自由”なの?)
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◆違和感は、静かに膨らんでいく。
数日後。
歩くたびに机ごと書類を持って追いかけてくる従者たちと、
引っ張られるように政務室へ向かうセリカ。
ふと、立ち止まる。
(自由にやれる“環境”じゃなくて、
自由に“全部任せる”って意味じゃ……?)
胸の中に浮かんだ小さな疑念は、
もはや否定できるほど小さくはなかった。
レクサスⅧ世は、この国の実務を手放している。
その代わり――彼はセリカを表向きの王妃として置き、
王国運営の全てを彼女に肩代わりさせている。
(……私、まさか“便利な労働力”として呼ばれただけ?)
期待は薄れ、疑問と不安が重なっていく。
レクサス王の言った「自由」は、
セリカの求めた“自由に選べる未来”とは――まったく別物だった。
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「自由って……
自分で選んだ道を歩くことじゃなかったの?」
幼い王妃の目に映る現実は、
甘い夢とはほど遠く、冷たい政治の世界そのものだった。
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