見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお

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24-4 結婚

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24-4 結婚

――気がついたら、花嫁? しかも花嫁は五歳児なんですけど?

式典が始まった瞬間、セリカは空気の重さに息を呑んだ。

眩いシャンデリア、赤い絨毯、左右には隙なく並ぶ各国の使節団。
その中央に――彼女は立っている。

五歳の幼女が“王妃として戴冠される結婚式”。

参列者たちの視線は好奇と期待、そして政治的思惑でぎっしり詰まっていた。
自分の身長の二倍はある祭壇を見上げながら、セリカは思わず心の中で叫びたくなる。

(いやいや……どう考えても、これ主役じゃなくて“飾り”じゃない?)

逃げられるはずもなく、しかし納得もできないまま、式は進んでいく。

レクサスⅧ世が隣に立ち、小さな彼女の手を包むように握った。
堂々とした王の姿は威厳そのものだが、その眼差しには隠そうともしない野心が宿っていた。

「セリカ。
 君の才覚は、国にとって宝だ。
 今日から――レクサス王国の未来を共に支えてほしい」

低く落ち着いた声が響く。
幼い彼女には重すぎる言葉。しかし、この男はその重みを彼女に背負わせるつもりらしい。

(つまり……私は“政治利用のための即席花嫁”ってこと?
 五歳児に課す重責のレベルじゃないでしょ、これ)

そう思いながらも、セリカはぎゅっと唇を結んだ。
ここで泣き叫んでも、状況は変わらない。
むしろ――彼女は戦わなければならない。

式典は粛々と進み、ついに「誓いの言葉」へと移った。

聖職者が問う。

「セリカ・ディオール。
 あなたはレクサスⅧ世を夫とし、この国に尽くすことを誓いますか?」

(いや、誓うも何も……そもそも話が勝手に進みすぎでは?)

しかし会場全体が、彼女の答えを待っていた。

逃げられない――けれど、負けるわけにもいかない。

セリカは小さな胸に息を吸い込み、澄んだ声で言った。

「私は……
 私がすべきと判断した時、責任を持って行動します。
 この結婚が“国のためになるなら”、その力を尽くします」

幼い少女の堂々たる言葉に、会場がざわめいた。
レクサスⅧ世も一瞬、目を見開く。

(完全な肯定でも否定でもない――
 “私の判断が最優先”って宣言、聞こえた?)

王は笑った。
敗北ではない。だが、完全な勝利でもない苦い笑みだった。

「素晴らしい覚悟だ、セリカ。
 君がいれば、レクサスはさらに強くなる」

やがて誓いの印が交わされ、式典は最高潮に達した。
拍手が響き、楽団が演奏を始める。
セリカはその音を聞きながら、静かに思う。

(……ここからが勝負よ。
 私は“ただの幼女”じゃない。
 ディオール領を繁栄させた、領主代理。
 利用されるだけの存在で終わる気はないわ)

式が終了し、控室に戻ったセリカはようやく安堵の息を吐いた。

そこへ、ドライドが恭しく頭を下げて近づいた。

「お疲れ様でございます、セリカ様。
 ……いえ、これからは“王妃様”とお呼びすべきでしょうか」

「ちょ、ちょっと恥ずかしいわ。その呼び方……」

セリカは頬を赤らめる。
でも、目は決して怯えていなかった。

「私はまだ王妃なんて思えないし、
 それに……まだ何も決めたつもりはないの。
 でも、これから“私がどう生きるか”をしっかり考えるわ」

ドライドは深くうなずき、微笑んだ。

「その強さと賢さこそが、皆を導く力となるでしょう。
 セリカ様なら、どちらの国も救えます」

その言葉を聞き、セリカは静かに目を閉じた。

(……うん。
 これから先、きっと大変なことが山積み。
 でも――絶対に屈しない)

幼い王妃の物語は、
ここからようやく始まるのだった。


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