封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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68 決勝第1試合、決着

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「……念のため持っておいてよかったということにしておこう」

もはやおなじみとなりつつある食事用のナイフとフォークを構えながら、俺は舌打ちする。案外、手ごわい。

甲冑を脱いで軽量化したブランクは、これを好機と見て、双剣を畳みかける。

リーチの差は歴然。ここは攻撃を防ぎつつ、反撃の機会をうかがう。

「あいつと似た魔法を撃つ選手だという解釈もできるが、やはり違うか」

そもそも、当たったら即死するような超威力の魔法をバンバン撃てる人間など存在するはずがない。

距離をとる。

それから観客席を見ると、大盛りあがりの魔王がジュースのお代わりを頼んでいた。

「いささか戸惑ったが、なるほど合点がいったぞ」

俺は、表情を変えないブランクに言った。

「ブランクお前、さてはウルカを名乗る魔法使いと結託しているな」

言うと、ブランクの眉が一瞬動いた。やはりか。

「おおかた、俺と試合するとなってから、ウルカのほうからお前に近づいて事前に魔法を仕込むなどと甘言でも囁いたのだろう。あいつの魔法は悔しいが強力だ。お前も渡りに船だったわけだ」

「ウルカなる人物など知らない」

やや棘のある声色で答え、また距離を詰めてくる。

「しかしさすが抜け目ないというべきか……大人しく観客やってるかと思えば、しっかり俺の邪魔をしにきているとは……」

「何が言いたい?」

「ブランク、お前もお前だ。あんな見た目偉そうなだけの幼女の企みによく乗ったな。今度はそういう提案は突っ返したほうがいい。あれは悪魔の言葉だ。耳を貸すことは身の破滅につながる」

「黙れ」

力で双剣を弾き返す。やや距離を取って、俺は魔法陣を展開させた。

「お前があの阿呆と共闘しているというのなら――」

間髪入れず距離を詰めてくるブランクに、俺はナイフとフォークを投擲して足止めする。

「――本気を出させてもらうぞ。《ブーステッド》!」

右手の紋章が光り、第一精霊剣《ブーステッド》を召喚する。

「精霊剣を召喚する暇を与えないよう攻撃しようとしているな? 俺の情報は筒抜けになっていると考えて相違ないか。だが……召喚された今どう対処する?」

場内が騒然となる。

《帰らぬ英雄》ゼノンの石像をでかでかと掲げ、剣士の知識が多少なりともある者なら気づいているだろう。
俺が初代剣帝と同じ獲物を有していることを。

当然戸惑うだろう。まあ、俺がそのゼノンだとは夢にも思うまいが。

今度は俺の方が距離を詰める。踏み込みから一瞬で懐へ。

「!」

一撃入れる。ブランクは双剣で防ぐも、力に圧されて後方へ飛ぶ。
下段に振った《ブーステッド》で、試合場の石畳を砕き、そのまま破片をブランクにぶつける。
面となって襲い来る破片たちをブランクは《障壁》の魔法にてガード。

ガードするまでは想定通りだ。
その間に俺は障壁の脇を駆け、ブーステッドを振るう。

――が、俺の剣は空を切った。

炎が舞ったと思ったら、限りなく姿勢を低くしたブランクが、俺の懐に潜り込んでいた。

「――力のみで勝てると思うな!」

双剣の刃に、魔法陣が展開し《獄炎》が噴き出す。ただし、後ろ方向にだ。
《獄炎》のエネルギーで、振るう剣を加速させたのだ。
肉眼でほとんど見えないほどに加速された双剣。

「力のみかどうか、身をもって教えてやる」

それを俺は的確にガードしてやり過ごす。

「!」

俺は着ていたボロボロの黒いローブを脱ぎ捨ててブランクへ放り投げる。
黒いローブでできた死角から《ブーステッド》を投擲。

「甘い!」

ブランクはそれさえ防ぐが――俺はさらに正面から突っ込み、《ブーステッド》で強化された回し蹴りでブランクの手首関節をガントレットごと破壊した。

「――――」

とたんにブーイングが飛ぶが無視だ。女だろうが老人だろうが、戦いに来ている戦士に容赦など不要である。

双剣を取り落とすブランク。
魔法を発動させようとするが、魔法の元であるガントレットは砕けているため、展開が遅い。何かされる前に、俺はわき腹を狙って拳の鉤突きを繰り出し、あばらを砕く。

「がはぁっ!」

たまらず転がって膝をつくブランク。

「今まで数多の魔族や魔獣と殺し合った。一応、戦いの経験は積んできているのでな」

「!?」

「もっとも、観客の受けは悪いだろうが……悪く思うな。もともと生死問わずの戦いだ」

「――――」

立ち上がろうとして突っ伏すブランク。そのまま気を失い倒れたところで、

「勝負ありッッッ!!」

立会人は駆けつけて試合を止めた。
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