69 / 106
69 決勝第2試合
しおりを挟む
試合を終えた俺が観客席に戻ると、苦い顔の魔王が立ち去ろうとしているところだった。
「ブランクのところに行くのか?」
皮肉抜きのストレートに訊ねると、魔王は頷いた。
「いかにも……せっかくの我の作戦が無為になったわ」
「残念だったな。無関係の選手を使えば俺を殺せると思ったか」
「かなわんかったがな」
「いくら強力な力を持っていても、それに相応する実力がなければ意味がない」
そうだ。俺は不意を衝いて魔法の元であるガントレットにダメージを与え、再起不能になるまで彼女の骨を砕いたが、彼女が俺の攻撃に気づいていれば……あるいは実戦の感覚がより磨かれていれば防御されていた。
――おそらく魔王であれば、防がれていた。
「自分の剣技と併せていたのは見事というほかなかったがな。よく付け焼刃であの戦い方ができたものだ」
決してブランクが弱いわけではない。彼女の剣の腕は達人の域に達しているだろう。若いのに大したものだ。
しかし幾度となく死線をくぐりぬけて研ぎ澄まされる自分の実力というのは、借り物の力では身につかないものだ。
「当たり前だ。正体を隠しながら決勝まで生き残った猛者ぞ」
「すべからくお前本人が直接挑むべきだ。年齢不問のトーナメントがあればな」
「あればな! ないわ!」
「だろうな」
「ふん、おぼえておれ! バーカ!」
「では忘れることにしよう」
「猫の毛を鼻に詰まらせて大事なカーペットの上で無残にコーヒーむせろ!」
魔王はぷんすかしながら立ち去っていく。
「……やかましいのが去ったか」
なんかよくわからん捨て台詞を聞き流し、俺は一息つく。
次は、第二試合。
《暁の魔法使い》ライジング対《竜殺し》ゼビカである。
俺は観客席で、それが始まるのを腕組しながら待つ。
「よう、おつかれさん」
試合の準備が整うのを待っていると、隣の空いた席に若い男が俺をねぎらいながら座ってきた。
《精霊剣使い》フューエルである。
「ああ、どうにか勝てた」
俺は試合場を見下ろしながらうなずいた。
「……トントン、お前も精霊剣使いだったなんてな」
「ああ、まあな」
「しかも英雄ゼノン・ウェンライトと同じ精霊剣ときた」
「《ブーステッド》のことか。そうだ。霊域森羅に棲む精霊の森羅から預かり受けた」
「あんた、マジで何者だ? よく見たらどこか英雄ゼノンの面影があるな?」
「…………」
フューエルの方を向くと、鋭い視線が飛んでいる。じつは正体は不本意ながら最初から明かしている、とは言っても信じんだろう。
「ま、いいがよ」
フューエルは肩をすくめて詮索をあきらめる。
「それより一緒に試合を見ようじゃないかフューエルよ。おそらく俺の試合より盛り上がるぞ」
「あんたの試合はそうだったろう。応援が多くついていたブランクの方があっさり負けたうえ、勝ったあんたは精霊剣出したくせに決まり手は拳だったしな。地味地味の地味で俺様の好みでもなかった。ブランクの戦い方のほうがよかったね」
「俺だってがんばったんだぞ」
「言ってろ」
そうこうしているうちに選手が入場する。
ライジングは、腰の剣のほかにマナ・クォーツを装着した杖を身に着けているが、あれが主な獲物だろう。ゼビカは長剣を手に携え、腰には短剣を差している。
二人は対峙。
「お手柔らかに」
とライジング。
「俺は本気でやるが、そちらはお手柔らかにしてくれるのか?」
ゼビカの言い分に、
「お手柔らかにしようがしまいが、どちらにしろ勝つのは僕だ」
ライジングは答える。
「ほう?」
体格のいいゼビカは、一回り小さいライジングを見下ろす。ライジングは微笑してそれを見上げていた。
「始めいッッッ!!」
立会人が号令をかけると、ライジングはすぐさま後退。ゼビカは長剣を抜いて鞘を捨てた。
魔法陣。剣の間合いの外から、ライジングは魔法を放つ。
炎が渦巻きながらゼビカを襲うも、ゼビカはそれを剣で振り払う。
距離を詰めるゼビカ。剣を振るうも、ライジングはそれを避ける。
「来ないでくれないかい? 剣は苦手なんだ」
ライジングが軽口をたたくも、ゼビカは聞き耳を持たない。
なおも攻めるゼビカ。剣の間合いで振るわれる鋭い剣閃。
たまらずにライジングは、腰のおそらくお飾りで持ってきた剣を抜いて対応。
「くっ!」
しかしゼビカの剛腕にあっさりとはじかれる剣。
ゼビカがとどめを刺そうと、
「…………!」
剣を振るおうとして、それができないことに気づく。
「なんだ?」
つぶやきながら、俺はゼビカの剣を見た。
こぶし大の黒いキューブ型の何かが四つ、空中に張り付くようにしてゼビカの剣に張り付いていた。
「ブランクのところに行くのか?」
皮肉抜きのストレートに訊ねると、魔王は頷いた。
「いかにも……せっかくの我の作戦が無為になったわ」
「残念だったな。無関係の選手を使えば俺を殺せると思ったか」
「かなわんかったがな」
「いくら強力な力を持っていても、それに相応する実力がなければ意味がない」
そうだ。俺は不意を衝いて魔法の元であるガントレットにダメージを与え、再起不能になるまで彼女の骨を砕いたが、彼女が俺の攻撃に気づいていれば……あるいは実戦の感覚がより磨かれていれば防御されていた。
――おそらく魔王であれば、防がれていた。
「自分の剣技と併せていたのは見事というほかなかったがな。よく付け焼刃であの戦い方ができたものだ」
決してブランクが弱いわけではない。彼女の剣の腕は達人の域に達しているだろう。若いのに大したものだ。
しかし幾度となく死線をくぐりぬけて研ぎ澄まされる自分の実力というのは、借り物の力では身につかないものだ。
「当たり前だ。正体を隠しながら決勝まで生き残った猛者ぞ」
「すべからくお前本人が直接挑むべきだ。年齢不問のトーナメントがあればな」
「あればな! ないわ!」
「だろうな」
「ふん、おぼえておれ! バーカ!」
「では忘れることにしよう」
「猫の毛を鼻に詰まらせて大事なカーペットの上で無残にコーヒーむせろ!」
魔王はぷんすかしながら立ち去っていく。
「……やかましいのが去ったか」
なんかよくわからん捨て台詞を聞き流し、俺は一息つく。
次は、第二試合。
《暁の魔法使い》ライジング対《竜殺し》ゼビカである。
俺は観客席で、それが始まるのを腕組しながら待つ。
「よう、おつかれさん」
試合の準備が整うのを待っていると、隣の空いた席に若い男が俺をねぎらいながら座ってきた。
《精霊剣使い》フューエルである。
「ああ、どうにか勝てた」
俺は試合場を見下ろしながらうなずいた。
「……トントン、お前も精霊剣使いだったなんてな」
「ああ、まあな」
「しかも英雄ゼノン・ウェンライトと同じ精霊剣ときた」
「《ブーステッド》のことか。そうだ。霊域森羅に棲む精霊の森羅から預かり受けた」
「あんた、マジで何者だ? よく見たらどこか英雄ゼノンの面影があるな?」
「…………」
フューエルの方を向くと、鋭い視線が飛んでいる。じつは正体は不本意ながら最初から明かしている、とは言っても信じんだろう。
「ま、いいがよ」
フューエルは肩をすくめて詮索をあきらめる。
「それより一緒に試合を見ようじゃないかフューエルよ。おそらく俺の試合より盛り上がるぞ」
「あんたの試合はそうだったろう。応援が多くついていたブランクの方があっさり負けたうえ、勝ったあんたは精霊剣出したくせに決まり手は拳だったしな。地味地味の地味で俺様の好みでもなかった。ブランクの戦い方のほうがよかったね」
「俺だってがんばったんだぞ」
「言ってろ」
そうこうしているうちに選手が入場する。
ライジングは、腰の剣のほかにマナ・クォーツを装着した杖を身に着けているが、あれが主な獲物だろう。ゼビカは長剣を手に携え、腰には短剣を差している。
二人は対峙。
「お手柔らかに」
とライジング。
「俺は本気でやるが、そちらはお手柔らかにしてくれるのか?」
ゼビカの言い分に、
「お手柔らかにしようがしまいが、どちらにしろ勝つのは僕だ」
ライジングは答える。
「ほう?」
体格のいいゼビカは、一回り小さいライジングを見下ろす。ライジングは微笑してそれを見上げていた。
「始めいッッッ!!」
立会人が号令をかけると、ライジングはすぐさま後退。ゼビカは長剣を抜いて鞘を捨てた。
魔法陣。剣の間合いの外から、ライジングは魔法を放つ。
炎が渦巻きながらゼビカを襲うも、ゼビカはそれを剣で振り払う。
距離を詰めるゼビカ。剣を振るうも、ライジングはそれを避ける。
「来ないでくれないかい? 剣は苦手なんだ」
ライジングが軽口をたたくも、ゼビカは聞き耳を持たない。
なおも攻めるゼビカ。剣の間合いで振るわれる鋭い剣閃。
たまらずにライジングは、腰のおそらくお飾りで持ってきた剣を抜いて対応。
「くっ!」
しかしゼビカの剛腕にあっさりとはじかれる剣。
ゼビカがとどめを刺そうと、
「…………!」
剣を振るおうとして、それができないことに気づく。
「なんだ?」
つぶやきながら、俺はゼビカの剣を見た。
こぶし大の黒いキューブ型の何かが四つ、空中に張り付くようにしてゼビカの剣に張り付いていた。
26
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界で至った男は帰還したがファンタジーに巻き込まれていく
竹桜
ファンタジー
神社のお参り帰りに異世界召喚に巻き込まれた主人公。
巻き込まれただけなのに、狂った姿を見たい為に何も無い真っ白な空間で閉じ込められる。
千年間も。
それなのに主人公は鍛錬をする。
1つのことだけを。
やがて、真っ白な空間から異世界に戻るが、その時に至っていたのだ。
これは異世界で至った男が帰還した現実世界でファンタジーに巻き込まれていく物語だ。
そして、主人公は至った力を存分に振るう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる