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第9章 ネシアのダンジョン編
さあ、ネシアへ行こう!
しおりを挟むしっかりと早い時間から休んだ翌日、俺達はミストさん達や屋敷の人達にしばらく留守にすることを告げる。
屋敷の人たちはもう出発する日にちは知っていたようで、現地で食べられるようにとお弁当を用意してくれていた。
そして執事さんはみんなを代表して「無事に帰ってきてくださいね?」と言って送り出してくれる。
俺達はどうせなら……と、みんなが集まっている玄関で転移することにした。
とりあえずつかまる場所が必要なのでユーリとセバスは腕輪の中に入ってもらい、他のメンバーは俺の体にしっかりとつかまってもらう。
悠馬もしっかりと俺につかまってね?
……いや、俺が掴むか?それが一番安全だよな。
とりあえずみんなが俺につかまっていることを再確認をし、見送りに来ているみんなに「いってきます!」と言う。……まぁ、いつでも帰ってこれるんだけどね!
そして俺はいつものようにネシアの入り口の目の前を思い出しながら転移をした。
転移をした一瞬後、光が収まるとそこはもう全くの別世界。
そう、俺たちがしばらく前にいたネシアの玄関口だ。
「うわぁ……!!シエルにぃに、すごいね、これっ!えっ、何、これ本当に魔法なの!?ビックリだよ、ホント!家の玄関から突然こんな所に来れるなんて!」
悠馬は驚いた顔で辺りを見渡し、そんな事を言う。
かなり混乱しているようで、パニック気味た。
「落ち着け、悠馬。ほら、お前だけじゃなく皆いるだろ?安心しなさい。」
スコットさんはそう言って悠馬の両肩を軽い力でパンパンと叩いた。
……そうだよね、スコットさんの普通の力で叩いたら悠馬が怪我しちゃうよね。
俺がそんな2人を見て苦笑いをしていると、門の方から声をかけられた。
「お~、久しぶりだな?元気してたかぁ~?ほら、そんな所に立ち止まってないでこっちに来て入国審査をしなさい。」
俺がそう言われて振り向くと、いつもの顔ぶれの門番さんがいた。……いつも同じ人だけど、休みあるのかな?
俺達は促されるまま、入国用の小部屋へと通される。
中ではいつもの人がニコニコしながら俺たちを迎えてくれた。
「よく来たな?みんな元気しているから、お前の顔を見るととても喜ぶぞ?」
「そうなんですね?会うの楽しみだなぁ!」
俺はそう話しながらユーリとセバスを腕輪から出す。
それを見て、一瞬目を丸くした検査員さんは「どこから2人出てきたんだ?」と呟いた。
「あぁ、この腕輪が収納袋になっているんですよ。生き物がそのまま入れられるんです。」
俺がそう言うと、彼は「それはすごいな!」と言って笑った。……信じてない感じだな?
「……おや、新顔が1人いるけど……君、双子だったの?そっくりじゃないか。」
検査員さんは悠馬を見ると、俺の方を見てそう言った。やっぱり他人から見ればそう見えるんだね?
「いえ、双子ではないですけど兄の子供なんで、こう見えて『甥』なんですよ。」
「えっ!?……お兄さん、よっぽど年が離れているんだねぇ。」
俺の言葉に驚いた検査員さんは、最後は何故かしみじみとした口調だった。何故に?
とりあえずみんな問題なく中に入れることになりほっと一安心していると、小屋のネシア側の扉のほうから1人の獣人さんが駆け込んできた。
「ああ、良かった!まだ中にいたね!君たちが来たのが見えたから、さっき慌ててヒューザに知らせに行ってきたんだよ。彼ね、今日大会に参加する日だから、今闘技場にいるんだよ。とりあえず大会の係の人に君たちが来たことは話しておいたから、闘技場に向かえばヒューザには会えるよ。」
その駆け込んできた獣人さんは、どうやら親切にもヒューザの所へ俺たちが来たことを伝えに行ってくれたらしい。それに今の居場所も分かったしね!
小屋の出口から街の中へと入ると、まずはこの前泊まったあの宿へと向かう。
前回と同じように最上階のワンフロアを借り切る予定だ。
あのクオリティーと泊まれる人数を考えると、あれはなかなかリーズナブルだからね!
門からしばらく歩くと右手側に巨大な闘技場が見えてきた。
ここまで来ると前回泊まった宿はすぐそこだ。
その宿はネシアでは珍しく背が高い建物で、暗めの色調のレンガで出来ているシックな雰囲気漂う高級宿は、店に入る入り口にもガードマンが立って宿泊客を守っている。
俺たちが宿に近づくと、そのガードマンの1人が俺を見て微笑んだ。
「お帰りなさいませ、皆さま方。またこの宿にお泊まりいただけるのでしょうか?」
ガードマンが俺を見た後、スコットさんにそう声をかける。……多分、俺の髪色で思い出したのではないだろうか?
スコットさんは頷き、「宿はまだ空いてるかな?」と聞いた。
ガードマンは俺たちに向かって中へ入るよう促し、「この前お泊まりいただいたフロアでしたら空いています」と答えた。おぉ、ちょうど良かったね!
俺達は中に入り、スコットさんはフロントへと向かい、残りはロビーのソファーへと座る。
このソファーも部屋と同じく座り心地が良いね!
そうやって皆でワイワイ話しているうちにチェックインを済ませたスコットさんがやってきた。
このホテルはフロントに鍵を預けて出かけるタイプではないので、鍵さえ受け取れば出入り自由なのだ。
「さあ、闘技場へ行ってヒューザに挨拶しに行こう。」
珍しくとても嬉しそうな表情をしているスコットさん。
スコットさんはヒューザに久々に会えるのが楽しみでしょうがないらしい。
「お前、ホント、ヒューザと仲良いな。」
「そういうリッキーだってパニアさんと会えるの楽しみなんじゃないの?」
「……まぁな。クーガーには酷い目にあったが、その兄のパニアは逆に良いやつだったからな。闘技場に行ってヒューザと一緒に会えたら良いな?」
リッキーはそう言ってニヤリと笑う。
そうだね、今回ダンジョンに行くのはヒューザとクーガーだけだからね。一緒に会えたらちょうど良い。
とりあえず俺達は、部屋には行かずにすぐさまとんぼ返りで闘技場へと向かう。
現在、まだ昼前。
たとえ試合が最終日たったとしても、多分ヒューザの試合が始まるのはまだこれからだろう。俺達がそうだった。
俺たちが闘技場へ向かう間、悠馬は初めてのものばかりでキョロキョロしまくっている。……まぁ、気持ちは分かるけどね!
「悠馬~、ちょっとキョロキョロしすぎじゃない?もっと落ち着きなさいよ?」
エミリーさんがとうとう我慢できずにそう言ってしまった。
言われた悠馬は拗ねた顔をしてエミリーさんを見る。
「……母さんはこっちで生まれ育っているから物珍しくないだろうけど、俺は日本から来たんだよ?獣人なんて見たことないんだからしょうがないじゃん!」
「だからって、その行動目立ちすぎるわよ。せめて目線だけで見回しなさい。顔まで動かすからそうやって注目浴びちゃうのよ。」
「……。」
エミリーさんからそう言われた悠馬は、とうとう何も言い返せなくて沈黙してしまった。
「まぁ、しょうがないさ。俺たちももし同じ状況だったらここまでキョロキョロしないまでもやっぱり物珍しくて見てしまうだろうさ。……なっ、悠馬?」
スコットさんはそう言って悠馬の頭を撫でた。
すると更に悠馬は拗ねてしまったようだ。……気持ち、分かるよ?
そうやっているうちに闘技場に着いたので、そこのスタッフを探してヒューザの試合のことを聞いてみる。
するとヒューザはお昼後の最初の試合に出るそうで、まだ試合のチケットは販売中なんだそうだ。
それならばと俺達はヒューザの試合チケットを購入し、闘技場の周りで飲み物やスープを購入して早速闘技場の座席へと向かう。座席は指定席じゃないからだ。
中へと入ると、闘技場の観戦席は半分ほど埋まっている感じだ。
最前列付近はほぼ埋まっているので、中段位で試合が良く見える位置の座席を探して確保する。
「ほら、リッキーの屋敷でもらったお弁当だよ。俺のマジックバッグは時間停止機能があるからまだ温かいからね。」
俺は座席を確保したところで、みんなにお弁当を配る。
みんなも先ほど買ったスープと一緒にお弁当を食べ始めた。……俺も食べるか。
お弁当を開けると、中は食べやすい様におにぎりとおかずに分かれて2箱に入っていた。
おにぎりは色々な具が入っているようで、みんなは美味しそうに食べている。
おかずの方はなんだか懐かしい感じのお弁当の具で、厚焼き玉子やソーセージ、ちょっとしたサラダが入っている。……なぜに厚焼き玉子を作れるんだろうね?
いろんな疑問はあったが、美味しそうなので気にしないことにする。
そうやってお弁当を食べている間にどんどん座席が埋まっていく。
さぁ、もうすぐ試合が始まる。
俺たちと離れている間にどれだけヒューザが強くなったのか。
試合が始まるのが、とても楽しみだね!
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