異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第9章 ネシアのダンジョン編

ヒューザの試合

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お弁当を食べ終わったので皆で氷の入ったお茶でティータイムを堪能していると、しばらくしてアナウンスが流れた。

「さぁ~、皆さんっ!お昼ご飯は食べましたか?そろそろ午後からの試合が始まりますので、チケットをお持ちの方は座席へとお戻りくださ~い!」

そのアナウンスを聞いて、それまでまだまだあちこち空席があった闘技場の座席もどんどん埋まっていく。

あっという間にほぼ満席になってしまった。

さすがヒューザ。大人気だね!

「座席も埋まってきましたので、そろそろ試合を始めさせていただきま~す!さぁ、本日大会6日目の第2試合は、以前この大会に出場したシエル選手たちの影響を受けてさらなる強さを手に入れたヒューザ選手が出場です!対するは決勝戦常連のクーガー選手の兄であるパニア選手!彼は大会に出場するのはこれで2回目です!彼は弟の力で押してくるクーガー選手とは違い、長年の冒険者生活で培われた槍術を駆使して戦いますので、ヒューザ選手との初対戦が楽しみですね!」

なるほど、これからの試合はちょうど会いたかった2人の試合だったんだね!ちょうど良かった。


それにしても……今回はヒューザは不利なんじゃないかなぁ?爪と槍では間合いが全然違うからね。

しかもヒューザは冒険者になったことがないから、実際に魔物と戦ったことは数えるほどしかないって言ってたし。

その点から考えても、ヒューザは不利なんじゃないかと思う。


するとちょうど俺たちから見て舞台の左側にある入り口で係の人が合図をしたようだ。

「さて!選手たちの方も準備ができたようです!では……まずはヒューザ選手、入~場~っ!!」

アナウンスの声に、ヒューザが入場してくる。

良かった、元気そうだね!

俺が身を乗り出して見ていると、あちこちに手を挙げて歓声に答えているヒューザが俺に気づいたようで、それまでとは違って破顔した笑顔で俺に向かって手を振ってきた。

その腕には俺が作ってプレゼントした腕輪がしっかりとはまっている。

「良かったな、シエル。ちゃんと使ってもらえてるようだ。」

隣に座っているリッキーから笑顔でそう言われた。

そうだね、あれをつけてもらえているなら何かあっても大抵は大丈夫だ。

ヒューザが舞台中央へ到着すると、またアナウンスが流れた。

「お次は挑戦者のパニア選手、入~場~っ!」

その声に促され、パニアさんはゆっくりと…堂々とした態度で入場してきた。

そのパニアさんがヒューザの方を見ると、ヒューザは俺の方へと指をさす。

それに気づいたパニアさんはさされた方を見て俺の存在に気づくと、こちらも先ほどのように笑顔で手を振ってきた。もちろん俺も振り返したよ!

舞台中央に2人が揃うと、戦う前に俺の方を見ながら少し話している。

多分試合後に俺たちの所に揃って来るんじゃないかな?

それから2人は適度に距離を取った。

「舞台中央に両選手が揃いました!そ~れ~で~は~、これから試合を始めたいと思います!両選手、構えてください!それでは……始め!」


試合開始のアナウンスがあると、既に武器を構えていた2人は一気に戦闘態勢に入ったが、パニアさんは動かずにヒューザが一気に距離を詰めてきた。

それでも流石に槍術の使い手だけあって、ヒューザがある一定の距離まで来るとそれ以上内側に入られないよう動いている。

ヒューザもなんとか間合いの内側に入りたいのだが、そこは日頃命がけの戦いを魔物と繰り広げている冒険者のパニアさんの槍の前では、大会の覇者といえども簡単には思ったようにいかないようだ。

そこでヒューザは一旦槍の扱いづらい距離まで詰め寄ることを諦め、距離を取る。

思ってる以上に距離を取ったヒューザ。

……一体何をするつもりだろう?

よくよく見てみると、ヒューザは自分の魔力を武器に込めだしたようだ。

それを見たパニアさんも槍を後ろに引きつつ、自分も武器の先端に魔力を集中させる。

次の瞬間、2人同時に動いた。

ヒューザは装備している爪をまるで目の前の相手に斬りつけるかのように動かし、パニアさんは後ろに引いていた槍を勢いよく前へ押し出す。

すると2人の武器からそれぞれ魔力の攻撃が飛び出した。

ヒューザは自分の魔力でできた4本の斬撃の束が、パニアさんはスクリュー型の長い魔力の渦が発生したのだ。

……なるほど、これはこの前俺がこの大会で使った技の応用だね!

それがちょうどぶつかった時、その互いの魔力がせめぎ合い、やがて爆散した。

そのパワーは元々会場の観客席に張られている結界を通しても、驚くべき威力なのは分かる。


だが驚くのはそれだけではない。

ヒューザの攻撃は爆散してしまったのだが、パニアさんの攻撃は相殺された部分だけじゃなかったのだ。

そのスクリュー型の渦はヒューザの攻撃を抑えてなお威力を残していた。

その渦がそのままヒューザに向かってすごいスピードで飛んでくる。どうやらヒューザの方が『力負け』したようだ。

ヒューザはチッ!と舌打ちをするとその攻撃を避ける。

避けたと思ったら、周りが魔力の爆散によってできた土埃で視界が悪くなっている事を利用して、パニアさんに一気に迫った。

だがその土埃を消すかのように、パニアさんは槍の中心を地面と水平に持った状態で回転をし、自身の周りから風力で土埃を強制的に排除した。

そうとは気づかずに近づいていたヒューザは、うっかりその槍によって横腹に大怪我を負ってしまった。

「くっ……!まさかそう来るとはなっ!俺としたことがうっかりしていたぜ。……だが、この腕輪のおかげでもう完治だ!シエル様々だな!」

とても痛そうな顔をしていたヒューザは、そう話している間に横腹にできた大怪我が完治してしまった。

……でもね、傷は治っても流した血は戻らないんだよ?横腹から下が血だらけじゃないのさ。

俺はとてもヒヤヒヤした気持ちで見ていたが、とりあえず怪我が治ってよかったよ。

「おぉ~っと!どうやら先ほどのパニア選手の攻撃でヒューザ選手の横腹に怪我ができていたようです!ですが、たった一瞬で怪我が完治した模様!これは一体どうしたことか!?」

アナウンスが会場に先ほどの事を説明している。

どうしたも何も、俺のプレゼントしたブレスレットのおかげだと思うよ?


「……協議の結果、先ほどの攻撃で受けた脇腹の怪我により、ヒューザ選手の判定負けが決まりました。本来はあれほどの怪我をした場合、即座に審判による試合停止が宣言されて判定に入りますので、この場合もそれに則らせていただきます。ですが今回使用した様な視界が悪い中でのあの攻撃は対戦相手に全く見えませんので、パニア選手は次回は使用しないでください。また、ヒューザ選手も傷を癒したアイテムがあるようであれば、それも次回の大会では使用不可ですので、頭に入れておいてください。……それでは今回の勝敗を審判、判定よろしくお願いします!」

アナウンスがそう言うと、舞台の下にいた審判は舞台に上がり、2人に駆け寄る。

そしてヒューザの有り様を目の当たりにした審判は「だ……大丈夫ですか?」と頬を引きつらせてヒューザに聞く。

ヒューザは自分の服の一部でその箇所を拭いて見せ、傷が全く無いことを確認させると肩をすくめた。

「しょうがねぇな、そんな規則なんてなかったからうっかりと付けて出てしまったよ。申し訳なかったな。」

「いえ、あなたが大怪我がなくて良かったです。……では今回の判定ですが、ヒューザ選手の横腹への怪我により、今回はパニア選手の勝ちとなります!」

ヒューザの反省を聞いた審判は、大きな声でそう宣言をする。


その瞬間、静まり返っていた会場に大歓声が響き渡った。

勝負が決した後に、ヒューザとパニアさんは互いの肩を叩き合いながら互いの健闘を称えた。

これでパニアさんは明日の決勝戦に進める。

代わりにヒューザは少し残念そうな顔をしていた。


……しょうがない、ヒューザには明日のパニアさんの試合が終わって今大会が閉会したら2人と一緒にダンジョンへと行くことを告げて、元気だしてもらおうかな?

俺は心にそう思いながら、皆と観客席を後にするのだった。
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