406 / 529
第9章 ネシアのダンジョン編
一気に行こう!
しおりを挟む降りてきた11階層。
そこは9階層までとはまたガラリと変わって、何故か壁にあたる部分が密集した蔓だった。
普通、蔓は他の植物に絡まって広がるものなんだが、この蔓はものすごい数あるからそれだけでかなりの強度があるみたい。
壁の厚さもかなり分厚くなっていそうで、ちょっとやそっとではぶち破れなさそう。
まるで長い蔓のアーチの中を進んでいるような気分で進む中、やはりというか……このフロアからの出現する魔物が昆虫系に変わったようだ。
10階層までのアンデッドも嫌だったが、昆虫系は昆虫系で嫌なものだ。……例の『黒い悪魔』もいるはず。
とりあえず今のところはバッタみたいな魔物やカマキリみたいな魔物が主に出てきているので武器攻撃や風魔法で対処しているが、『黒い悪魔』が出てきたらうっかり気持ち悪さから火魔法を使ってしまいそうだ。
「……ネシアにいるだけならこんな魔物達に出会うこともなかったんだな。」
お昼休憩の時に、ヒューザがおにぎりを食べながらぽつりと呟く。
このダンジョンは他のダンジョンと比べて非常に1フロアの敷地面積が狭いのでサクサク進んで現在13階層なのだが、敷地面積が狭いからなのかわからないが魔物の数が半端ない。
まるでギュッと詰め込まれた様だ。
そんな魔物たちをみんなで倒しながら進んでいるのだが、ようやく魔物を討伐することに慣れてきたヒューザとクーガーは何かしら思うことがあるのだろう。
「そうだな……あそこにいただけなら、それはそれで安全な一生を送れたかもしれない。だが万が一、国をこんな魔物が襲ってきた場合、あそこに住んでいるだけの住民では恐怖が先立って戦えないだろう。それでは国を魔物が蹂躙して滅んでしまうかもしれない。俺はな、神聖法国に捕まっていた奴らにも声をかけているんだが……国の軍隊にもこのダンジョンでしっかりと訓練をしてもらったらと思っていたんだ。」
ヒューザとクーガーにそんな事を言ったパニアさん。
だけど……このダンジョンじゃあ危険なんじゃないかなぁ?
俺がそんな事を思っていると、やはりパニアさんも考えを改めたらしく「でもな、このダンジョンに久しぶりに来て、それは無理だなと考え直したよ。」と言った。
「まさかここが、こんなにも冒険者にとって危険なダンジョンになっているとは思ってなかったからな。本当ならこのダンジョンは1番『変換期』になっても分かりづらい場所だから、定期的に軍が入ることでしっかり管理できると考えたんだが。……ネシアの近くでは他にも確かダンジョンがあったはずだから、やっぱりそっちを推薦してみるかな。もちろん1度は潜ってみないことには始まらないが。」
パニアさんは肩をすくめて、残念そうにそう言った。
そっか、もう1つあるんだね?
なら別にこっちでなくても良いわけだ。
逆にこっちに軍隊が来ると、要らぬ妄想をするやつも出てくるかもしれないしね。
「じゃあ今度ダンジョン潜る時はそっちに行ってみるか?」
スコットさんがニッコリと笑ってバニアさんに声をかけ、拳を突き出す。
パニアさんはそれに対して「ああ、その時はよろしくな!」と拳を突き出し、軽く当てた。
それから俺達はまたダンジョンを進み、日暮れ近くになった時には無事に15階層の休憩所に辿り着けた。
この15階層は暗くて良くは分からないが、森の中だということだけは確かだ。
地面には特に凸凹があったり、葉っぱや草があって歩きづらいということはない。
今のところはまだ魔物に遭遇していないので、立ち止まると耳が痛くなるような静寂と真っ暗闇が広がっている。
歩いている分には足音が微かにするので全くの無音ではない。
……それが何となくホッとするのは、『1人ではない』と感じられるからだろうか?
しばらく進むとその森の中の開けた場所に、休憩所があったのだ。
その休憩所、どうやらここも柵はあるが休憩所としての機能は全く作動しておらず、俺が結界を張ってから中を浄化した。
もちろん地面から魔物が出られても困るから、地面にもしっかり結界を張ったけどね!
それからみんなでテントを張り、それが終わったら俺は作り置きのビーフシチューを温める。
今日は簡単な物でぱぱっと食べ、お風呂でもゆっくり入りたいな!
温めている間にご飯のスイッチを入れ、サラダを作っておく。炊けたら夕飯だよ!
ご飯が炊けるまでにまだ時間もあるし、お風呂を取り出すと周りにテントを張ったりお湯をはったりして、入れるように準備をする。
「みんな~、ご飯炊けるまでに時間かかるから、先にお風呂入っておいて~!」
俺が大声で声をかけると、まずは先に女性陣がお風呂に向かった。
俺は入れ違いでテントへと戻る。
「なんか……この森、不気味じゃないか?」
「あぁ。なんていうか……『生き物がいない』っていう感じだな。」
クーガーが顔を顰めてそんな事を言うと、ヒューザまでもがそんな事を言う。……いや、分かるけどね?
「……本当に、このダンジョンはどうしたんだろうな……。」
パニアさんがぽつりとこぼす。
パニアさんによると、以前来た時にはもっとたくさんの冒険者がいて、この階層くらいまでなら休憩所も賑わっていたんだそうだ。
だが今のところ、この休憩所には俺達しかいない。
……まぁ、危険だからと10階層の所で助けた彼らにはダンジョンの外へと行かせたんだけどね?
……と、俺は考え、ふと気づく。
10階層、転移陣がなかった、と。
俺はてっきりロックさんが言っていたように、このダンジョンのダンジョンマスターが俺たちを逃さないように彼らを外に出した後に転移陣を消したんだ、と思っていた。もちろんその可能性もしっかりとある。
だが……もし、もしだよ?
彼らがいた時にも転移陣がなかったとしたら?
彼らは外に出られなくて、俺たちと同じく下の階層へと向かっただろう。
……だが、俺達は今のところ誰にも遭遇していない。
だ…大丈夫、だよね?みんな、外に出れたよね?
俺は何でか突然そんな事を考えて、とても不安になった。
すると、突然そんな俺の手をギュッと握った人がいる。
そちらを見ると、ユーリが真剣な顔で俺を見て手を握っていた。
そんなユーリを見ていると、何だか先ほどまでの不安感が払拭されるような感じがする。
「……にぃに、気をしっかり持って?惑わされたら駄目だよ?」
「……えっ?」
そんな俺に、ユーリは真剣な顔でそんな事を言う。
周りを見ると、他のメンバーにもそれぞれアクアさんやグリーさん、アースさんがユーリと同じようなことをしていた。……一体、何が?
「あのね、この森なんだけど……人を不安にさせる作用があるようだよ?僕たちドラゴンには効かないけどね。だから後で一緒にエミリーさん達に声をかけに行こう?多分彼女たちも同じ現象になっているんじゃないかなと思うんだ。」
ユーリのその言葉に、俺は少し安心した。
そうだよね、彼らはもうダンジョンから脱出できたはずだ。
それから俺はユーリと一緒にお風呂の所へと向かう。
お風呂の外から俺は声をかけ、そしてユーリは子竜の姿へと変化させ、中へと入っていった。
中では俺にしたのと同じ事をしたらしく、やはり2人とも何故か不安な気持ちになっていたそうだ。
それから2人と一緒にテントへと戻り、男性陣は揃ってお風呂へ向かう。
女性陣にはユーリとセバスがついていてくれることになった。
「それにしても……まさかダンジョンの中でこんな風に風呂に入れるとはなぁ……。」
パニアさんが体を洗ってから湯船に入ると、そんな事を呟く。
それにクーガーとヒューザは同意するように頷いている。
「そうだぜ?まさかの『風呂』があるとはなぁ?スコットたちの旅はかなり快適なんだな!」
ヒューザがニヤリと笑ってスコットさんに声をかけると、スコットさんもニヤリと笑った。
「まぁな。だが俺たちもまさかシエルがここまでするとは思ってなかったんだ。もう以前の旅には戻れなさそうだ。」
「そりゃそうだろうさ!」
スコットさんとヒューザ、パニアさんは3人でガハハと笑っている。
……まぁ、俺はやはり現代日本人だから、旅といえば快適な方が良い。
これからもこのスタンスで行くから、みんなよろしくね!
俺はそんな事を心に思いながら、湯船の縁に頭を乗せて目を瞑った。
163
あなたにおすすめの小説
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~
fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。
しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。
気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。
裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。
無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる