異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第9章 ネシアのダンジョン編

15階層のフロアボス

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翌朝、早めに寝たこともあって、かなり気分爽快で起きることができた。やっぱりお風呂サイコーだね!

昨夜はお風呂入った後に用意しておいた夕飯をみんな揃って食べ、子供組の俺とユーリは早々にベッドに向かった。

大人組の皆はそれから少しだけ飲むとのことで、俺は寝る前につまみになるような物を2品ほど作って出しておいたよ。

お酒はスコットさん達の自前で飲んでちょうだい!



今朝は本当に寝起きが良かったので、誰よりも早く起きたらしい。……いや、大人組は飲み過ぎか?

多分飲み過ぎだろうと予測をつけて、今朝は胃に優しい鶏ガラ出汁で作った雑炊にしようかな!

材料はこの前山田に頼んで買っておいてもらった鶏ひざ軟骨のパックと鶏もも肉、長ネギ、玉子、中華の鶏ガラだし顆粒、塩、料理酒、生姜チューブ、そしてご飯だ。

とりあえず時間がかかるので鍋に鶏ひざ軟骨と水を入れて茹で、そこに臭み取りの料理酒を入れる。

アクを丁寧に取り除きながら、その合間に鶏もも肉を一口大に切り、長ネギは細い斜め切りにする。

ある程度鍋の水が少なくなってきたら、水を足しつつ鶏もも肉と改めて料理酒を少し入れ、火が通ってきたら長ネギと適量より少し多めの鶏ガラだし顆粒を入れて味をみる。

味が薄かったら塩で調え、そこに洗っておいたご飯を投入。

そこに溶き卵を回しかけて少しほぐすように混ぜ、味をみて適宜塩や生姜を少量加えて調えれば完成だ。

胃にも優しくてもボリュームを感じる一品になっている。

俺が朝食を作り終えた頃、ようやくみんなが起き出してきた。おはよう、みんな!

「……今日は元気だなぁ、シエルは。」

起き出してきたリッキーはそう言ってまたあくびをした。……起きたんじゃないの?

リッキー以外のメンバーはそんなに飲まなかったのかとても元気なようで、俺が作った寸胴鍋いっぱいの雑炊を見て「いい匂いだ!腹減ったよ!」と言っている。

まだ作りたてで熱々なので、早速みんなに盛ってあげる。今日は各自取りに来てもらう配給スタイルだ。

みんな席についていただきますをすると、早速パクリ!うん、少量だったけど生姜が効いているからなんだか身体がポカポカしてくる感じだね。

「やっぱり飲んだ翌日はあっさりとした物が食いたくなるよな!」

「……まぁな。だがお前、魔道具が浄化できないほど飲まなければ良かったのに。今日はボス戦だぞ?」

スコットさんはリッキーの話に同意はしつつも、呆れた声でそう言った。

そう言われたリッキーは頭を軽く掻きながら「流石にもうしねぇよ」と苦笑いをする。

「パニアはこのフロアのボスは何なのか知ってるのか?」

スコットさんが食べながらパニアさんに聞く。

聞かれたパニアさんは首を横に振り、「以前とは出てくる魔物が違っているら参考にならないぞ」と返した。

「でもまぁ参考程度にするというなら言うけど、このフロアのボスは巨大な熊が出てきていた。たが、このフロアまで来る間の昆虫ゾーンでさえも本来は虫じゃなくて狼とかの魔物が出てくるはずだったんだが、それも変わっている。だからこのフロアのボスも今までとは全く違うんじゃないか、っていうのが俺の意見だ。」

……なるほど、11~14階層の出現する魔物からして、以前とは違っていたんだね。

でも森にいそうな魔物が出てきていたという共通点が以前の魔物にはあったのなら、今回の11~14階層に昆虫が出てきていたということは、ボスも昆虫なのかもしれない。

……まぁ、これも単なる予想だけどね。



そんな話をしながら食事をとった後、綺麗にお片付けをして休憩所を出発する準備を整える。

この際だから10階層の休憩所と同じように、休憩所に張った結界は今後のためにも張ったままにしておく。

これなら夜といわずに1日中結界が張ってあるから、ここにさえ入れば安心できる『セーフティルーム』となってくれるだろう。

……そうだ、それならここには『万が一』の時のために外へと連絡のできる装置が置けないものだろうか?

俺はそう思って魔石を2個取り出し。それぞれにリンクするように魔法をこめる。

こめる魔法は『片方を起動するともう片方も起動し、言葉を届ける』という魔法だ。

初めて作ってみた魔法だが、上手くいったかどうかの作動確認はする暇が無いので、そのまま休憩所の中央に台座を作ってその上に置いておく。



それから俺達は休憩所を出発して、一路ボス部屋へ。

パニアさんの案内と俺とリッキーの索敵魔法により、森の中を迷うことなくボス部屋に辿り着けた。

ボス部屋は休憩所と同じく開けた広場にあった。

その広場は周りを森に囲まれてはいるが、上空まで木々で覆われているわけでは無いので閉塞感はない。

そのボス部屋だが……正確に言うと、『部屋』というものはない。

その広場の中央に、2メートルくらいの高さの塀があるだけだ。屋根はない。

とりあえず俺達は塀の所にある扉を開く。

中を覗くとまだ何もなく、ただがらんとしているだけだ。

ここも他のボス部屋と同じく、中に全員が入って扉を閉めるとボスが出現するタイプなのだろう。

そして案の定、皆が中に入ると中央に光が出てきた。

今回の光は上にも横にも広がり、巨大な光の球へとなって弾けた。

その一瞬の眩しさに目を瞑り、そして目を開くと目の前には変わった魔物がいた。


なんていうんだろう……蜘蛛の胴体に、その頭の部分から女性の身体が生えている?

そんな表現しかできないが、まさにそんな感じだ。

ただ、女性の部分はきちんと服を着ており、まるで冒険者のような服を着ている。

その女性を見ると、彼女は生きているのか死んでいるのか分からないような虚ろな目をし、焦点も合っていないようだ。

……なんにせよ、人っぽい魔物と対するのはオーク以来なので、これはとても戦いづらそうだ。

とりあえず向こうから来る様子がないと思ったその時、突然リッキーが叫んだ。

「おいっ!あの魔物、魔物と人の『合成』で出来てるぞ!」

この部屋に入ってからずっとその魔物を見ていたリッキーが、そんな事を言う。

ならばそれは『見た目だけじゃない』ってことだ。

まだリッキーの能力を知らない獣人3人組は苦笑いをしているが、その他のメンバーは驚いた顔でその魔物を見ている。

そりゃそうだろう、確かに見た目からして『蜘蛛と人の合成』だ。

だがそれが『1つの体じゃない』となれば、話は別だ。

「どういう事だ?」

スコットさんがリッキーにそう問いかける。

多分頭では分かっているのだろう。だが信じたくないのだ。

そんなスコットさん以外にも聞こえる声で、はっきりとリッキーは答えた。

「あの魔物、本体はあの蜘蛛だ。上の女性は取り込まれているのか、蜘蛛の身体に合成されている。女性の辛うじて残っている意識が、『助けて』と言っているんだ。」



それを聞いた俺は、一気に怒りが沸点に達した。

間違いなくこれをやったのは、このダンジョンのダンジョンマスターだ。

そいつは一体、冒険者をなんだと思っているのか?

自分のおもちゃ?それとも自分の栄養源?

なんにせよ、『人の命』を軽んじているのが許せない。

俺は怒りに身を任せつつ、頭の芯は冷静に魔力を紡ぐ。

この魔物に囚われた哀れな女性を救うために、どうすれば救えるのか考える。

そして1つの魔法が完成すると、それを魔物へと撃ち込んだ。

その魔法は蜘蛛の身体にぶち当たると一気に広がり、一瞬で蜘蛛の部分を消し去った。

俺は魔法を打ち出した後、蜘蛛に魔法が当たる前に蜘蛛に向かって走り出しており、到着した時はちょうど蜘蛛の部分が消え去って女性の身体だけになっていた。

地面に横たわっているその女性は俺の予想通り、蜘蛛にくっついていた部分から下が、無い。

まだ辛うじて息をしているので、俺はすぐに彼女に神聖魔法の回復魔法をかけ続ける。

すると徐々に消え去っていた部分が再生し始めた。

……良かった、間に合ったんだね。


俺は安堵のため息をつき、回復魔法をかけつつ周りを見る。

するとスノーホワイトのメンバーと4属性竜の長達はすぐにこちらへとやってきたようだ。

獣人3人組はまだ驚いた顔で、その場で固まっている。

やはり俺との付き合いが長い人はすぐに動き出せるようだ。……びっくりさせてごめんね?



「……その女性、助かったのか?」

こちらへとやってきたスコットさんが、俺にそう聞いた。

俺は頷き、「多分大丈夫だと思う」と答える。

現在、まだ腿から下を再生中だからだ。

もちろん下半身には布をかけておいてあるから、そのまま再生しても安心だよ!


1度魔物に取り込まれてしまい体の組成が少し変わり始めていたので、それを元に戻しつつの再生だから時間がかかるのだ。



その再生が完了してホッとした頃、突如その場に拍手が鳴り響く。

みんな驚き、一斉にそちらを振り向いた。

「いやぁ~、お見事!流石『勇者』だねぇ?」

そこにいたのは俺と同じくらいか、もしくは少し上に見える男の子だ。……一体、誰だ?

俺たちが訝しそうな顔で見ていると、その子はさらに言う。

「これまでの『余興』は楽しんでもらえたかな?」

その子は口元だけをニヤリとした、冷たい目で俺たちの方を見ている。

「初めまして、『勇者』殿。僕が、このダンジョンのダンジョンマスターをしている者だよ。よろしくね?」

彼はそう1言言うと、一瞬で俺のそばまでやってきた。

俺は咄嗟に、そばにいるみんなに結界を張る。

次の瞬間、彼は俺の胸へとその鋭い爪を持った手を伸ばす。


だが、それは届かない。

『例の人』からもらった魔道具が、その鋭い爪から守ってくれたのだ。

「チッ!結界か!」

ダンジョンマスターは一旦距離を取ると、苦々しげにこちらを見ている。

今のうちに俺は仲間への結界をもう1枚張る。

これでみんなも安全だ。

「まさか結界を張っていたとは思わなかった。これじゃあ君には手出しできないね。」

ダンジョンマスターは肩をすくめてそう言った。

一体、彼は何の為に目の前へと現れたのだろうか……?
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