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第9章 ネシアのダンジョン編
一気に行こう!
しおりを挟む降りてきた11階層。
そこは9階層までとはまたガラリと変わって、何故か壁にあたる部分が密集した蔓だった。
普通、蔓は他の植物に絡まって広がるものなんだが、この蔓はものすごい数あるからそれだけでかなりの強度があるみたい。
壁の厚さもかなり分厚くなっていそうで、ちょっとやそっとではぶち破れなさそう。
まるで長い蔓のアーチの中を進んでいるような気分で進む中、やはりというか……このフロアからの出現する魔物が昆虫系に変わったようだ。
10階層までのアンデッドも嫌だったが、昆虫系は昆虫系で嫌なものだ。……例の『黒い悪魔』もいるはず。
とりあえず今のところはバッタみたいな魔物やカマキリみたいな魔物が主に出てきているので武器攻撃や風魔法で対処しているが、『黒い悪魔』が出てきたらうっかり気持ち悪さから火魔法を使ってしまいそうだ。
「……ネシアにいるだけならこんな魔物達に出会うこともなかったんだな。」
お昼休憩の時に、ヒューザがおにぎりを食べながらぽつりと呟く。
このダンジョンは他のダンジョンと比べて非常に1フロアの敷地面積が狭いのでサクサク進んで現在13階層なのだが、敷地面積が狭いからなのかわからないが魔物の数が半端ない。
まるでギュッと詰め込まれた様だ。
そんな魔物たちをみんなで倒しながら進んでいるのだが、ようやく魔物を討伐することに慣れてきたヒューザとクーガーは何かしら思うことがあるのだろう。
「そうだな……あそこにいただけなら、それはそれで安全な一生を送れたかもしれない。だが万が一、国をこんな魔物が襲ってきた場合、あそこに住んでいるだけの住民では恐怖が先立って戦えないだろう。それでは国を魔物が蹂躙して滅んでしまうかもしれない。俺はな、神聖法国に捕まっていた奴らにも声をかけているんだが……国の軍隊にもこのダンジョンでしっかりと訓練をしてもらったらと思っていたんだ。」
ヒューザとクーガーにそんな事を言ったパニアさん。
だけど……このダンジョンじゃあ危険なんじゃないかなぁ?
俺がそんな事を思っていると、やはりパニアさんも考えを改めたらしく「でもな、このダンジョンに久しぶりに来て、それは無理だなと考え直したよ。」と言った。
「まさかここが、こんなにも冒険者にとって危険なダンジョンになっているとは思ってなかったからな。本当ならこのダンジョンは1番『変換期』になっても分かりづらい場所だから、定期的に軍が入ることでしっかり管理できると考えたんだが。……ネシアの近くでは他にも確かダンジョンがあったはずだから、やっぱりそっちを推薦してみるかな。もちろん1度は潜ってみないことには始まらないが。」
パニアさんは肩をすくめて、残念そうにそう言った。
そっか、もう1つあるんだね?
なら別にこっちでなくても良いわけだ。
逆にこっちに軍隊が来ると、要らぬ妄想をするやつも出てくるかもしれないしね。
「じゃあ今度ダンジョン潜る時はそっちに行ってみるか?」
スコットさんがニッコリと笑ってバニアさんに声をかけ、拳を突き出す。
パニアさんはそれに対して「ああ、その時はよろしくな!」と拳を突き出し、軽く当てた。
それから俺達はまたダンジョンを進み、日暮れ近くになった時には無事に15階層の休憩所に辿り着けた。
この15階層は暗くて良くは分からないが、森の中だということだけは確かだ。
地面には特に凸凹があったり、葉っぱや草があって歩きづらいということはない。
今のところはまだ魔物に遭遇していないので、立ち止まると耳が痛くなるような静寂と真っ暗闇が広がっている。
歩いている分には足音が微かにするので全くの無音ではない。
……それが何となくホッとするのは、『1人ではない』と感じられるからだろうか?
しばらく進むとその森の中の開けた場所に、休憩所があったのだ。
その休憩所、どうやらここも柵はあるが休憩所としての機能は全く作動しておらず、俺が結界を張ってから中を浄化した。
もちろん地面から魔物が出られても困るから、地面にもしっかり結界を張ったけどね!
それからみんなでテントを張り、それが終わったら俺は作り置きのビーフシチューを温める。
今日は簡単な物でぱぱっと食べ、お風呂でもゆっくり入りたいな!
温めている間にご飯のスイッチを入れ、サラダを作っておく。炊けたら夕飯だよ!
ご飯が炊けるまでにまだ時間もあるし、お風呂を取り出すと周りにテントを張ったりお湯をはったりして、入れるように準備をする。
「みんな~、ご飯炊けるまでに時間かかるから、先にお風呂入っておいて~!」
俺が大声で声をかけると、まずは先に女性陣がお風呂に向かった。
俺は入れ違いでテントへと戻る。
「なんか……この森、不気味じゃないか?」
「あぁ。なんていうか……『生き物がいない』っていう感じだな。」
クーガーが顔を顰めてそんな事を言うと、ヒューザまでもがそんな事を言う。……いや、分かるけどね?
「……本当に、このダンジョンはどうしたんだろうな……。」
パニアさんがぽつりとこぼす。
パニアさんによると、以前来た時にはもっとたくさんの冒険者がいて、この階層くらいまでなら休憩所も賑わっていたんだそうだ。
だが今のところ、この休憩所には俺達しかいない。
……まぁ、危険だからと10階層の所で助けた彼らにはダンジョンの外へと行かせたんだけどね?
……と、俺は考え、ふと気づく。
10階層、転移陣がなかった、と。
俺はてっきりロックさんが言っていたように、このダンジョンのダンジョンマスターが俺たちを逃さないように彼らを外に出した後に転移陣を消したんだ、と思っていた。もちろんその可能性もしっかりとある。
だが……もし、もしだよ?
彼らがいた時にも転移陣がなかったとしたら?
彼らは外に出られなくて、俺たちと同じく下の階層へと向かっただろう。
……だが、俺達は今のところ誰にも遭遇していない。
だ…大丈夫、だよね?みんな、外に出れたよね?
俺は何でか突然そんな事を考えて、とても不安になった。
すると、突然そんな俺の手をギュッと握った人がいる。
そちらを見ると、ユーリが真剣な顔で俺を見て手を握っていた。
そんなユーリを見ていると、何だか先ほどまでの不安感が払拭されるような感じがする。
「……にぃに、気をしっかり持って?惑わされたら駄目だよ?」
「……えっ?」
そんな俺に、ユーリは真剣な顔でそんな事を言う。
周りを見ると、他のメンバーにもそれぞれアクアさんやグリーさん、アースさんがユーリと同じようなことをしていた。……一体、何が?
「あのね、この森なんだけど……人を不安にさせる作用があるようだよ?僕たちドラゴンには効かないけどね。だから後で一緒にエミリーさん達に声をかけに行こう?多分彼女たちも同じ現象になっているんじゃないかなと思うんだ。」
ユーリのその言葉に、俺は少し安心した。
そうだよね、彼らはもうダンジョンから脱出できたはずだ。
それから俺はユーリと一緒にお風呂の所へと向かう。
お風呂の外から俺は声をかけ、そしてユーリは子竜の姿へと変化させ、中へと入っていった。
中では俺にしたのと同じ事をしたらしく、やはり2人とも何故か不安な気持ちになっていたそうだ。
それから2人と一緒にテントへと戻り、男性陣は揃ってお風呂へ向かう。
女性陣にはユーリとセバスがついていてくれることになった。
「それにしても……まさかダンジョンの中でこんな風に風呂に入れるとはなぁ……。」
パニアさんが体を洗ってから湯船に入ると、そんな事を呟く。
それにクーガーとヒューザは同意するように頷いている。
「そうだぜ?まさかの『風呂』があるとはなぁ?スコットたちの旅はかなり快適なんだな!」
ヒューザがニヤリと笑ってスコットさんに声をかけると、スコットさんもニヤリと笑った。
「まぁな。だが俺たちもまさかシエルがここまでするとは思ってなかったんだ。もう以前の旅には戻れなさそうだ。」
「そりゃそうだろうさ!」
スコットさんとヒューザ、パニアさんは3人でガハハと笑っている。
……まぁ、俺はやはり現代日本人だから、旅といえば快適な方が良い。
これからもこのスタンスで行くから、みんなよろしくね!
俺はそんな事を心に思いながら、湯船の縁に頭を乗せて目を瞑った。
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−−−−−−
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