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第9章 ネシアのダンジョン編
新入生の話
しおりを挟むネシアでの話をしようと思った時、ふとお土産の存在を思い出した。
「そういえば……これ、お土産に買ったんだよ。美味しいから食べてみてね!」
俺は腕輪からお土産の屋台飯をテーブルの上に取り出す。
皆は器もそのままのその屋台飯を見て、目をきょとんとさせた。
「まさか本当にお土産を買ってきていたとはな。2人を宥めるだけの口実だったんだが。」
クロードは穏やかに微笑んで、嬉しそうな声でそう言った。
「美味そうだな!これがあるって前もってわかっていたら、さっきあんなに食べなかったんだがなぁ。う~ん……このままじゃ冷めちゃうよなぁ……。」
「じゃあじゃあ~、時間停止のマジックバッグを持ってきてもらいましょうよ。私、外の兵士に頼んでくるわ!」
お土産を見てセインがしょんぼりしてしまったところでローラが『良いことを思いついた!』といった感じにそう提案し、ドアから顔だけ出して外にいる兵士に頼んだ。
……そう、『頼んだ』のだ。
俺が出会ったばかりの時には考えられない出来事だと思う。
こういうところを見ると、彼女もちゃんと『普通の王女』へと戻ったんだな、と感じる。
俺がそんな風に感慨深く思っていると、そんな俺を見たローラは首を傾げ「なんかあった?」と聞いてきた。
「多分お前が『普通』な事に驚いたんじゃないか?」
ニヤニヤしながらセインがローラに向かってそう言うと、ローラは少しムッとした顔でセインを睨んでいる。
……と思ったら、俺も睨まれた。
「んもうっ!『あの時』の私は正気じゃなかったのよ!もう忘れてちょうだいっ!」
ローラはそれだけ言うと、耳だけ真っ赤にしてプイッとそっぽを向いた。
「まぁ落ち着きなよ。ほら、どうやらマジックバッグが届いたんじゃないか?」
クロードが苦笑いをしながらドアの方を見ると、その直後にドアが開いて、兵士がドアの外からマジックバッグを差し出してきた。
「お前、相当耳よくないか?俺たち全然気づかなかったぞ?」
兵士がドアを閉めてからセインが目を丸くしている。
それは俺も思った!何で分かったのかな?
するとクロードは苦笑いの表情のまま、「足音じゃないよ」と答えた。
「じゃあ何だよ?」
「実はね、シエルがダンジョンに行った時に『索敵魔法』っていうのをやっていただろ?後期にもまたダンジョンに行くことになっているから、その時に便利なように教えてもらったのさ。」
訝しげな顔のセインに向かって、クロードはそう言って笑った。
そっか、それなら『敵』、『味方』の区別と位置が分かるもんね。
なるほど、後期にもダンジョンに行くことがあるのか。
次に行く時は3人とも普通に行けると良いね!
それから俺はネシアでの話をし、今度学園にネシアの王子様がやってくることを3人に告げる。
すると三人三様の表情になった。
セインは何だかワクワクした顔になり、ローラはまるで夢見る乙女のような表情に。
そしてクロードは明後日の方向をを見つめて悟ったような表情をしている。
……なるほど、きちんと理解しているのはクロードだけのようだ。
「2人とも、どんな人が来るのか分かってるの?」
俺が2人にそう聞くと、2人とも「分かってるって!」と笑顔で言う。……本当に分かってるのか?
「だってあれだろ?ネシアの王族って確か『竜』が起源なんだろ?ってことは、獣人なんだし、顔はトカゲみたいな顔してるんじゃないか?」
「ばっかねぇ!そんな訳ないじゃない!やっぱり『王子様』っていうからには見目麗しい男の子のはずよっ!」
「馬鹿なのはお前の方だろ!良く見てみろよ、俺たちを。『見目麗しい』感じか?」
「……。」
互いに言い合っていた2人だが、セインの最後の言葉に対してローラは何も言えなかった。
……ローラ、それは2人に失礼なんじゃない?
「ま、まぁ……俺も会ったことないから正確ではないけど、少なくても国王様は『リーシェさんみたいな人』だったよ?」
俺のフォロー?にローラはまた目を輝かせた。
「……それはどういう意味だ?」
「見た目はとても体格の良い中性的な男性で、年齢はかなりの高齢……って事だよ。リーシェさんもああ見えてかなり年齢いってるからね。」
俺がはっきりと言うと、クロードは「なんだ、そのままか」と言って苦笑いをする。
「ってことは、あれか?見た目が俺たちと同じでも年齢が違うってことか?」
「違うよ、年齢だけは俺たちと同じだ。見た目は……よく分からないな。エルフみたいに大人になるまでには人の何倍も時間がかかる種族もあれば、そうじゃない種族もあるしね。そこは来てからのお楽しみ、ってところじゃない?」
「なるほどなぁ。でもシエルが言った感じなら、残念ながら俺の考えているような顔じゃない、ってことは間違いなさそうだな。」
「そして、私の予想は当たりそうね!」
2人とも対照的な顔をしているが、新しく来るネシアの王子様が気になってしょうがないらしい。
でもなぁ……ネシアの王様から「我儘で自分中心に世界が動いていると思っている」と聞かされた俺としては、この2人と彼が衝突して国家の大事態にならないと良いなと切に思うよ。
……頑張れ、クロード!
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