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第10章 国立学校 (後期)
『ブレイズ』へのダンジョン遠征 14
しおりを挟む初めて降りてきた16階層。
そこはやはり壁に囲まれた通路だったのだが、これまでの11~14階層とは違い、まるで遺跡のような通路だった。
……なんていうんだろう、『壁』というよりは『柱がくっついて立っている』とでも言えばいいだろうか。
日本にも赤鳥居が長距離で並んているところがあるが、あれの『隙間のない白い石の柱』バージョンだね。
そんな通路を眺めながら歩いていると、索敵魔法に小部屋が写った。
「珍しいね、このダンジョンで初めての小部屋だよ。」
俺は思わずそう溢すと、隣を歩いていたリッキーも頷く。
どうやらあちらの方でも写ったらしい。
「そうだな、あの時の『部屋』とは違い、普通に通路から入る小部屋だな。どうする、入ってみるか?」
リッキーは俺にそう聞くと、スコットさんに声をかけ、少しだけ列を外れることを伝えた。
「大丈夫だとは思うが、気をつけていけよ?」
「もちろんだよ。それにこいつもいるしな!」
スコットさんの心配そうな声にリッキーはそう答えると、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「……我も行ってみたいのだが、駄目か?」
珍しくアンドリューがそう主張すると、周りにいたセイン、クロード、ローラの3人も「行きたい!」と言い出した。
それを聞いたリッキーは一つため息をつき、「その代わりにきちんということを聞くこと!」と約束させる。
「もし約束を破ったり、危険があると判断したら即座にシエルの腕輪に入ってもらうから、それだけは頭に入れておいてくれ。」
リッキーのその言葉に、4人は真面目な顔で頷いた。
それから俺たち6人は学校の皆とは別行動をし、少し先の角を曲がって小部屋へと入る。
そこはまるで休憩所の様な、広くて壁の近くに綺麗な水の湧いている噴水?の様なものがある場所だった。
「……なんだ、ここ?」
キョロキョロしていたセインが首を傾げてそんな事を言う。
「まるでダンジョンの中のセーフティフロアみたいだな。」
「……セーフティフロア?」
「ああ、ここのような巨大なダンジョンには、たまにこういう部屋があるんだ。多分だが、この部屋には魔物は入ってこれないし、出現もしないだろう。だから休憩所と同じようにここで宿泊ができる。……なるほど、どうもこのフロアから1つの階層が広くなったと思っていたが、5階層ごとの休憩所まで辿り着けなくても大丈夫な様になっている訳か。」
なんだか納得したような顔のリッキーが、辺りをキョロキョロ見ていると、1つの壁に目が止まった。
そしてその壁に近づくと、壁に手を当てて撫で出す。
……何やってんだ?
しばらくすると「おっ、あった。」と言って壁の一部をグッと押す。
するとそこの壁がガコンッ!と音がしたと思ったら、急に入り口が現れた。……えっ、隠し扉!?
「リッキー!ここって何なんだ!?」
俺がびっくりしてリッキーに聞くと、リッキーは「そっか、お前は初めてだったか」と笑う。
「ここはこういう古いダンジョンにある『隠し部屋』ってやつだ。まぁ、そのまんまだな。大抵はこういう所には宝箱が……おっ、あるな!」
部屋の中を覗きながらそう言ったリッキーは、俺たちを置いてさっさと中に入って行く。
俺たちも顔を見合わせるとすぐにリッキーについて行った。
中に入るとそこは案外狭く、2坪程の広さしかない小部屋だったが、そこに思ったより大きな宝箱がでんと置かれている。
そこの前でしゃがみ込んでいたリッキーが、俺の方を振り向き「鑑定できるか?」と頼んできた。
なるほど、確かに『宝箱イコール罠がある』の可能性は高いよね!
俺は早速宝箱に向かって鑑定をする。
『鑑定結果』
この宝箱には大した罠はないようですが、開ける時に宝箱の目の前の床にはいないように注意して開けてくださいね?そこに落とし穴が開きますので。
中身は見てからのお楽しみですので教えませんよ。
……。
……なんだ、それ?
とりあえず落とし穴は分かった。
でも、じゃあどうやって開けろって話なんだが……目の前の床が開くのか。
「リッキー、その宝箱って鍵かかっているのか?」
「ん?どういう事だ?」
俺はリッキーに鑑定結果を教えると、リッキーは声を上げて笑い出した。
「相変わらずだな、お前の鑑定スキル!なんだ、それ?鑑定になってねぇじゃん!」
「……お前もそう思うか?宝箱の中身がわからないんじゃあ、何の為の『鑑定』なんだかなぁ?」
「確かに、それなっ!」
リッキーと俺がお互いを見合いながら笑っている間、周りにいたセインたち4人がキョトンとした顔で俺たちを見ていた。
「……それで?どうやって宝箱を開ける?」
「それなんだけど、宝箱に鍵かかってるか?」
「……いや、鍵はなさそうだな。」
「じゃあ……ただ箱を開けるだけか?」
「そうみたいだな。」
「それならさ、リーチの長い物で開けるのはどうだ?」
俺はそう提案しながら、腕輪から物干し竿を取り出した。
「……お前、それ、まだ持ってたのか?」
「何言ってんだよ、お前にとっては『まだ』かもしれないけど、俺にとっては『最近』だ。」
「あ~……そりゃそうか。了~解!」
俺が言いたかったことをすぐに理解したリッキーは苦笑いをしてそう言った。
そう、俺にとってはこの世界に来てからすぐに『山田』に収納してもらった物だが、『リッキー』にとってはそれから何十年も経っている。
とりあえず皆には少し離れてもらい、俺が物干し竿を使って少し宝箱から距離をとって蓋を開けることにした。……もちろん『保険』はかけておいたけどね!
慎重に小部屋の外から宝箱へと物干し竿を伸ばし、ゆっくりと蓋を開ける。
すると鑑定通りに、突然目の前の床全部が消えた。
しかも宝箱の下の床までだ。
……部屋の外から開けて良かったねぇ。
俺は呆れ気味に、その開いた空間へと足を踏み入れる。
そこには前もって俺が床に結界を張っておいたので、宝箱も落とし穴に落ちずに済んだけど……もし何の対策もしてなければこのまま宝箱と一緒に下に落ちていたんじゃないかな。
俺はそう思いながら、足元を見る。
そこは全く先の見えない真っ暗闇だった。
……落ちなくて良かった。
ホッとしながら宝箱の元へと行くと、中身を覗き込む。
するとそこには沢山のカットされていない宝石と、その上に1つの剣が乗っていた。
とりあえず俺は宝箱ごと腕輪に収納し……そして思った。
『収納できるなら、別にここで開けなくても良かったよね!?』と。
少しガックリしながら戻ると、皆から「中身、そんながっかりするものだったのか?」と聞かれてしまった。
「いや、違うよ。こうやって腕輪に収納できるなら、わざわざ落とし穴を発動させなくても良かったんじゃないか?って思っただけだよ。」
俺は苦笑いをして、皆の前に改めて宝箱を出す。
そして開けてみせると、とても驚かれた。
「こりゃ凄ぇやっ!ってか、この剣、魔剣かっ!?なっ、なっ!早く鑑定しろよっ!」
セインが興奮気味にそんな事を言うので、俺は魔剣を手にして鑑定をする。
『鑑定結果』
この剣は『魔剣アネモイ』です。属性は風。ちょうど風属性竜の長グリーやその子孫であるネシアのアンドリュー王子がいるので、差し上げてはどうでしょう?
……なるほど。
そんな提案もするんだね。へぇ~……。
「この剣、アンドリューが使うと良いよ。」
俺は皆に鑑定結果を伝え、魔剣アネモイをアンドリューに手渡す。
アンドリューはその魔剣をじっと見つめたまま、握りしめている。
「……わかった。この剣は我か大事に使わせてもらう。」
アンドリューは一度目を瞑って剣を両手に握ると俺の目の前に片膝をつき、剣の柄を額に当てる。
「我、風の属性竜の元長ウィンディの子孫であるアンドリューは、そなたに忠誠を捧げるとこの剣に誓う。」
アンドリューは真剣な顔で俺を見て、そんな事を言った。
……えっ?なんだ、急に?
こいつに何があったんだ!?
俺が戸惑っている間にアンドリューは立ち上がり、「みんなの元へ戻ろう」と言う。
リッキー以外の他の3人も戸惑いながらも頷き、みんな揃って本流へと急ぐ。
……それにしてもあのアンドリューが、あんな事を口にするなんて考えもしなかったなぁ。
俺は未だに信じられない思いで、みんなのいる場所へと向かった。
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